アート・エイド・神戸の活動連載アート・エイド・神戸/その1海文堂書店、 アート・エイド・神戸実行委員会事務局長 島田 誠 |
小林郁雄さんから、 「きんもくせい」に「アート・エイド・神戸」の活動を総括しろという指令である。
しかも連載でゴールデンウィーク中に執筆しろとのこと。
「きんもくせい」の読者のレベルは高い。 私のいつものエッセイ調では失礼だと思い、 つい文章が硬くなった。 面白くなかったら、 緊張のせいである。 お許し願いたい。
島田誠さん。1942年神戸市生まれ。神戸大学経営学部卒。三菱重工勤務の後、73年海文堂書店社長。78年ギャラリー開設。神戸高時代から合唱団で指揮、神戸大グリークラブで関西合唱コンクール2位。アート・エイド・神戸事務局長など文化支援やプロデュースで広く活動。著書も多い。 |
アート・エイド・神戸のネーミングについては神戸の文化を自分達の手で守るという決意と、 芸術家自身も神戸の復興のために力を結集するという願いを込めた命名である。
ともかく2月15日に趣意書を書き上げ、 18日に第一回の実行委員会を開いた。
ある人は「歌舞音曲は秋までは禁止だ」と言い、 別の人は皮肉に゛芸術で神戸が救えるの゛と聞いた。 「それは無理や。 でも人は空気だけでも、 水だけでも生きられへん」と答えた。 「心」の問題は、 どんな状況においても最も重要なことだ。 避難所では「ふるさと」の童謡に、 歌手も、 聞き手も涙し、 ここは自分たちの愛する故郷だと感じ、 自分の詩など無力であると筆をとらなかった詩人たちもアート・エイド・神戸の呼びかけで「震災詩集」を刊行、 その朗読会では、 「詩が、 言葉が、 こんなにも人の心に届くことを再発見した」と語った。
所在地 神戸市中央区元町通3―5―10
海文堂ギャラリー内
TEL∩FAX 078―331―246
これはアート・エイド・神戸がスタートしてまもなくの3月20日の朝日新聞に「芸術家救援、 日米の落差」という記事を見つけたことによる。
この記事はニューヨーク在住の芸術文化事業研究家の塩谷陽子さんの寄稿によるもので、 アメリカのシステムを紹介したのち「日本では考えられない」とした上で「バブルのはじけた今、 不幸な事故にあった芸術家たちに数件、 5万円なり、 10万円なりの救援金を交付していくことは、 低成長時代の日本にとっておあつらえ向きの、 しかも長期間できそうな芸術救援ではあるまいか。 (中略)拠出金一円当たりに対する受け取り側のありがたみ度を尺度にしたらコスト・パフォーマンスだって抜群なのだ。 だれか腰を上げてくれることを期待したい」とあった(注1)。
読んだ瞬間に、 これだと確信し、 すぐに伊勢田委員長に連絡、 実行委員会で決定した。
今回の震災で住宅やアトリエや楽器や稽古場に大きな被害をうけた芸術関係者(照明や音響やマネージャなど裏方さんを含めて)のうち
募集の告知は新聞によった。
芸術関係者緊急支援は全体として支援総額 ¥7,30万 総数82名となった。
この制度はアメリカのNPOにならったものであるが、 実際に審査してみて対象人員については、 ほぼ網羅出来たかと思うが、 金額については、 いかにも少ない。
支援を受けた側からは、 自分達を支えてくれた思いがけない制度として「砂漠で出会ったオアシス」のように感じたという感謝の言葉もいただいたが、 せめて30万円ぐらいの支援をしたい。
心が揺れる日々のなか、 わずか震災3ヶ月後の4月17日に「詩集・阪神淡路大震災」は刊行された。 詩画工房が製作、 海文堂書店が発売元となり、 初版1500部。 定価は1000円であった。
表紙は主体美術協会会員の長尾和先生の水彩画で「2月14日須磨大池町」という記載がある瓦礫と化した街に犬が佇む風景を使わせていただいた。
この詩集は大きな反響を呼び、 最終的には、 この種の詩集としては異例の4000部まで増刷された。
詩集の第二集は、 震災一周年の平成8年1月17日を期して出版された。
第一集は、 震災直後のため、 家が壊れて県外へ避難されていた詩人たちや、 まだ創作活動へ戻る心のゆとりをもてない詩人もいた。 新たに23名の詩人が加わった。
詩集、 第三集は、 震災2周年の平成9年1月17日に「復興への譜」として出版された。 表紙絵には行動美術協会会員の松原政裕氏の「生きるものたちへの讃歌」を選んだ。
こうした詩集は実に大きな反響を呼び、 5月27日、 アート・エイド・神戸音楽部門主催のチャリティーコンサート「こころの響き・大江光作品集から」(朝日ホール)で詩人の自作朗読が試みられ、 満員の聴衆の涙と共感を誘った。
この後、 たびたび朗読会が開催され、 詩人にとっても「朗読詩」という新たな認識を生んだ。 さらにらラジオ、 テレビを通じ発信され、 10月24日にはNHKラジオジャパンを通じて世界19カ国へと流れた。
さらにアート・エイド・神戸音楽部門では、 作曲家に呼びかけ、 この詩集からの作曲を試み、 実に多くの歌曲、 合唱曲、 器楽曲が発表された。
震災という共通体験を本に美術、 音楽、 演劇、 文学、 映画などのジャンルの異なる分野の交流・クロスオーバーが行われた。
こうした詩人たちと、 画家との協力で生まれたのが詩画集「鎮魂と再生のために 長尾和と25人の詩人たち」である。 この25枚の水彩画と、 25編の詩は、 コープこうべに寄贈され、 今も地震の証言者として巡回を続けている。
したがって緊急出動の短期決戦と考えていたので確たる資金計画があったわけではない。
初期活動の資金40万円は公益信託・亀井純子基金から支援をうけ、 チャリティー美術展での売上が芸術関係者緊急支援制度へと結びつき、 音楽会や、 詩集の出版、 文化活動への助成制度へと展開していった。 (注2)
いまや、 アート・エイド・神戸は事業や助成活動から、 次の段階へと役割を移すべき時に至っている。
アート・エイド・神戸が果たした役割は
細街路拡幅整備の挫折と成就阪神・淡路大震災復興まちづくりの実践報告
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細街路の拡幅(≒住環境整備)の取組一覧 |
この細街路の拡幅は、 白地地区を中心にまちづくりに取組んでいる私にとっては、 極めて難しい分野の取組み課題であった。 震災後5年を経過した現在、 8地区のプロジェクトに係わったうち、 6地区は挫折してしまい、 2地区のプロジェクトのみが成就しつつある状況である。
この難しさは、 細街路拡幅は道路=公共施設そのものであり、 行財政と密接につながっていること、 特に、 土地区画整理事業地区のような重点事業地区以外の白地地区においては、 一般に行財政面で予算配分が微小であり、 事業資金的に苦しい面が背景にある。 成就しつつあるプロジェクトは、 西宮市、 芦屋市において白地地区でなく、 「事業地区」として位置づけられ、 行財政面で取組みが積極的な地区に限られている。
細街路の拡幅整備事業(≒住環境整備事業)は、 これからのまちづくりにおける主要課題であるが、 いかに難しい課題であるか痛感しているところである。
新在家南地区細街路等拡幅整備課題図 |
尚、 東西方向の酒蔵の道の拡幅(3.0m→6.0m)については、 現在も酒造会社と検討が続いている。
須磨区関守町1、 2丁目の細街路拡幅整備課題図 |
結果としては、 権利者の2社が大企業であったため、 道路用地を無償で神戸市に寄付する行為が組織として決裁されなかった。
整備計画断面図 |
岡本地区細街路拡幅整備課題図 |
広田地区細街路拡幅整備課題図 |
上大市地区細街路拡幅整備課題図 |
大庄中通2丁目細街路拡幅整備課題図 |
JR西宮駅北地区細街路拡幅整備計画図 |
若宮地区震災状況図 |
若宮地区住環境整備計画図 |
震災後、 芦屋市は一早く復興まちづくりとして、 細街路の拡幅や市営住宅の建設を中心とする、 住環境整備事業に取組むこととした。
三宮地区の区域 |
震災直後の計画づくりは、 現況資料を揃えるだけでも一苦労で、 一方、 地元では店舗や事務所がまだ再開されておらず、 地権者不在ともいえる状況の中、 素案や案を立看板で広告したり、 全地権者に郵送するなど、 混乱の内の作業であった。
'95 1/17 | 阪神大震災 |
2/ 1 | 建築制限(84条)区域の指定 |
2/16 | 神戸市震災復興緊急整備条例の制定 (震災復興促進区域の指定) |
2/28〜3/13 | 地区計画素案(整備方針)の縦覧 |
3/16 | 建築制限(84条)の解除 |
3/ 9〜3/22 | 地区計画素案(整備計画)の縦覧 |
3/17 | 重点復興地域の指定 |
4/ 4〜4/17 | 地区計画案の縦覧 |
4/19 | 市都市計画審議会 |
4/25 | 県都市計画地方審議会 |
4/28 | 都市計画決定(5地区 計 70.6ha) |
なお、 神戸市震災復興緊急整備条例に基づいて3月17日に指定された重点復興地域には、 建築制限のされなかった税関線沿い新神戸までのJR以北区域(税関線沿道景観形成地域)も含まれ、 当初は順次、 地区計画が決定される予定であったが、 地元が未組織であることもあり、 現在に至るまで実施されていない。
一方、 小規模な敷地については共同化の必要性がいわれ続けたにもかかわらず、 これまでに実現したものは3例にすぎず、 いずれも2〜3地権者という小規模なものである。 ビルの共同化を阻む要因としては、 被害の大きかった小規模敷地が必ずしも隣接している訳ではないことに加えて、 次のように整理できる。 (1)住宅の場合と同様もしくはそれ以上に、 地権者は権利関係が複雑になることを忌避する。 とりわけ戦後の混乱期に苦労して入手した経験をもつ地主は土地に対する執着が強く、 自分の土地に自分の建物を建てたいとする意向が強い。 さらに、 借地権の問題が複雑に絡む。 (2)大規模ビルの場合と同様、 共同化によって生まれる増床部分の処分先が不透明である。 (3)共同化によって建築規模が大きくなり、 その結果、 駐車場の附置義務が新たに生じ、 レンタブル面積の大幅増加につながらない(後に、 駐車場の隔地確保が震災特例として制度化されたが)。 (4)行政による支援策として総合設計制度や優良建築物等整備促進事業が用意されているが、 これらによって得られる増床や補助金の額よりも、 空地の確保による経済的デメリットの方が大きいという認識が強い。
1994(H.6)・1 | 「地域計画プロジェクト委員会」設立 |
1994(H.6)・10 | 「歴史の流れに未来を引き継ぐ/ 神戸旧居留地・景観形成計画」策定 |
1995(H.7)・1 | ★阪神・淡路大震災 |
1995(H.7)・2 | 「復興委員会」設立 |
1995(H.7)・4 | ●旧居留地「地区計画」決定 |
1995(H.7)・10 | 「旧居留地/復興計画」策定 |
1996(H.8)・10 | 「防災委員会」設立 |
1997(H.9)・3 | 「旧居留地/都心(まち)づくりガイドライン」策定 |
1998(H.10)・1 | 「事業所のための防災マニュアル作成の手引き」作成 |
1998(H.10) | 地区案内サイン(銘板)整備 |
1998(H.10) | まちづくり功労賞(建設大臣表彰)受賞 |
1998(H.10) | 神戸景観・ポイント賞 特別賞 受賞 |
1999(H.11) | ■神戸・居留地返還100年祭 |
この中で旧居留地では、 企業100余社の集まりである「旧居留地連絡協議会」が震災前からまちづくりや景観形成にも取り組んでおり、 地区計画を念頭においた検討も始まっていた。 そして震災後は平成7年10月に「神戸旧居留地/復興計画」を、 平成9年3月には「都心(まち)づくりガイドライン」を策定し、 まちのあり方を地区内外に提案している。
旧居留地における地区計画や地元組織が策定した復興計画等が目指す街並み形成の要点は、
この中で公開空地の確保については、 建替・新築ビルの敷地規模によって様子を異にする。 旧居留地の地区計画は指定容積率の緩和とあわせて決定された。 ただ、 この緩和の適用を受けるには、 地区計画の各要件を満足し、 一定規模以上の公開空地を確保することが条件となっている。 敷地面積の最低限度が900m²と定められており(新たに分割した敷地でなければ、 900m²未満でも建築行為は可能)、 それ以下の敷地ではたとえ公開空地を確保したとしても容積緩和につながらないことによる。
いずれにしろ震災後の旧居留地には公開空地が増え、 風格ある賑いを醸しだしている。 そして、 その多くはポルティコの形態をとっている。 壁面線を揃えた上で公開空地を確保するという両課題に対応するために、 その解答として採用された結果であるが、 震災前にはない流れであり、 地区の新たな特性となりつつある。
辻信一さん(環境緑地設計研究所)からは、 「よく使われている敷地回りの材料−外構事例」というテーマで阪神間市街地(深江地区)をゴールドクレストやレッドロビンといった緑化材料を使用した外構等についての報告がありました。
小浦久子さん(大阪大学)からは、 「住宅再建からまちづくりへ」というテーマで阪神間市街地(芦屋地区)の調査をもとに、 新しい生活風景につながる町並み要素等の報告がありました。
三輪康一さん(神戸大学)からは、 「外構と敷地内空地の協調化・共同利用化・共同化」というテーマで再建住宅による震災後の下町地区の、 町並みの現状等の報告がありました。 その後、 会場を交えて、 「新しい町並みの兆しを発見する」という意見がかわされました。
情報コーナー
「新しい町並みの兆しを発見する」
震災5年を経て、 被災市街地の再建の現状を見ると「どこでも同じ風景になってきている」といわれています。 そこで、 これからの町並み形成を考えていくために、 形成されてきた町並み景観の実態を読み解くという観点から、 「再建市街地の実態を確認する」、 「再建市街地のなかで、 新しい町並み形成につながる事例を発見する」という2点を目的に、 震災復興・実態調査ネットワークによる調査が行われました。 その調査のメンバーの中から3名による報告会がこうべまちづくり会館で開催されました。
−阪神白地まちづくり支援ネットワーク/第13回連絡会記録('00.4/7)−
(仮題)「市民まちづくりの可能性を探る」−尼崎まちづくりフォーラム−
(第14回阪神白地まちづくり支援ネットワーク連絡会)
〈報告〉中西浩(尼崎市都市局まちづくり担当課長)
〈パネルディスカッション〉コーディネータ/小森星児(神戸山手大学学長)、 パネラー(予定)/頼あゆみ(建設経済研究所)、 横山助成(尼崎市理事)、 三國浩(尼崎市都市局長)、 加藤恵正(神戸商大教授)、 河内厚郎(文芸評論家)、 小林郁雄(コー・プラン)、 野崎隆一(遊空間工房)、 後藤祐介(GU計画研究所)
●日本造園学会全国大会・2000年記念神戸分科会
「みどりのNPOフォーラム」
〈ポスターセッション討議(4グループ)〉
〈神戸へのメッセージ〉/田代順孝(千葉大教授)
〈全体討議〉
コーディネータ/中瀬勲(姫工大)、 パネラー/相川康子(神戸新聞)、 小島哲(奥須磨公園にトンボを育てる会)、 天川佳美(コー・プラン)、 辻信一(阪神グリーンネット)、 林まゆみ(姫工大)、 横山宜致(丹波の森研究所)、 中村順子(CS神戸)、 齋木崇人(神戸芸工大)
●“kobe Speaks 21c”フォーラムIII「花のふる神戸に」
〈コサージュをつくろう!〉望月南穂(コミュニティデザイナー)
〈市民提案〉「花のふる神戸に」
〈基調講演〉「花のあるくらし、 そしてまちづくり」八木波奈子(雑誌「BISES」編集長)
〈パネルディスカッション〉佐野末夫(深江地区まちづくり協議会)、 南里和代(サンテレビ)、 佐藤友美子(サントリー不易流行研究所)、 天川佳美(コー・プラン)
芦屋市まちづくりシンポジウム
「住民参加のまちづくり・その方法と展望」
目次へ
〈芦屋市におけるまちづくりの現状と制度〉富田邦裕(芦屋市助役)
〈パネルディスカッション〉森津秀夫(流通科学大学)、 平山京子(プラニングオフィスカーサ)、 林まゆみ(姫工大)、 小林郁雄(コー・プラン)
■ 阪神大震災復興 市民まちづくり支援ネットワーク 事務局
〒657-0024 神戸市灘区楠丘町2-5-20 まちづくり(株)コー・プラン内
TEL.078-842-2311 FAX.078-842-2203 E-mail:mican@ca.mbn.or.jp
銀行振り込み先、みなと銀行六甲道支店(普)1557327 郵便振替00990-8-61129
担当:天川佳美、 中井 豊、 吉川健一郎
●「きんもくせい英語版」のインターネットアドレス:
◆ http://www.hyogo-iic.ne.jp/~INS93031/