震災1周年の台湾を訪ねて垂水 英司 |
まず1年を経た状況として感じるのは、 条件の整ったケースや早く立ち上がれた人たちの再建が形となって表れてきており、 また、 いくつかの先進的なまちづくりの取り組みが軌道に乗り始めていることである。 しかし一方で、 当初の復興の枠組みから外れるもの、 復興に乗り切れない困難なケース、 さらに新たな問題点等課題も顕在化してきているように思われる。 台湾大地震と阪神大震災とでは被害の様子や復興施策に違いがあるが、 私たちの経験でも1年経った時点といえば、 施策の見直しやメニューの追加が焦眉の課題となった時期である。 以下、 まちづくり、 住宅再建、 学校再建について見聞した印象をかいつまんで紹介したい。
地元のまちづくり委員を含めコンサルタントから説明を聞く(大雁村) |
今回回ったまちづくり地区の選定や段取りをしてくださったのは、 全盟で中心的な役割をされている台湾大学の陳亮全先生である。 当然のことながらこれらの地区は復興まちづくりの先進地で、 それぞれに状況や程度は違っても成果を上げつつあるものであり、 私たちもそこから学ぶ点も多い。 しかし課題は広く大きいだけに、 緒についたばかりのまちづくりが今後紆余曲折ある過程をどう持続発展させるかが注目点であろう。 それと共にまちづくりが進んでないところ、 整備方針が決まっていないところがまだ多く残されているとおもう。 こうした地区の状況については今回あまり把握できなかったが、 復興支援のもう一つのポイントになってくるのではと思う。
竹を使って自力で住宅建設する住民たち(松鶴部落) |
さて1年後の状況であるが、 定量的な把握には及ばないが、 条件の整った人から順次着手していっているのであろう、 町のあちこちで連棟建ての共同住宅や、 また村落の中では戸建て住宅の建設がはじまっている。 いずれも相当頑丈なRC造が多い。 近郊農村の鶴亀村では3階建ての住宅数軒が広場を囲むように協調再建され、 すでに入居しているところを訪れた。 山間の松鶴部落では自分が住んでいた土地に簡易な鉄骨と竹を使って住民の共同作業で自宅再建をしている。 いわば手作りの自力仮設だ。 こうした自宅再建の態様はさまざまであるが、 家賃補助、 全半壊見舞金や低利ローンなどの復興施策が再建の大きな原動力になっていることがそれぞれの地区での聞き取りで伺えた。
しかし一方住宅再建については種々の問題が顕在化してきているようだ。 家賃補助を生活費に使ってしまったケースはあちこちで耳にしたが、 やはりこうしたケースは相当数に上るのではないか。 土地問題もなかなか根深そうだ。 権利関係や建築法規関係で許可が取れないものなど時間のかかる課題が横たわっている。 違反建築も多く対策に苦慮している。 原住民の場合土地が国有で権利が不明確なこともある。 共同住宅の再建についても連棟建てはともかくいわゆる区分所有型のマンション再建へ向けた調整はまだまだこれからのようだ。 その中で雲林県斗六市で倒壊した3棟のマンションのケースは郊外の戸建てに集団移住することで調整が進んでおり、 日本にはなかった方式だけに興味を覚えた。 また、 まちづくりの方針が決まらず住宅再建ができないといった地区もある。 そうしたなかで現在の住宅復興施策の柱である自力再建支援だけでは手が届かない部分が出てきており、 賃貸の復興住宅が必要ではないかといった議論もではじめていると聞いた。 住宅再建はこれからが正念場といったところか。
完成した永楽国民小学校とパワーあふれる梁校長 |
花みどり市民ネットワーク設立まちづくり会社コー・プラン 天川佳美 |
10月2日花みどり市民ネットワーク設立総会の模様 |
10月2日花みどり市民ネットワーク設立総会の模様 |
花の種をまくことで住民のかたがたも私たち支援ネットワークのメンバーも震災から無我夢中で過ごした4ヶ月を振り返り、 もう一度“住まい”や“暮らし”を考え直すよい機会でもありました。 多くの住民のなかには家を無くされただけではなく、 家族や大切なものを無くされその場所に立つことさえ心痛む方々もおられたはずで、 そんな人達に「さぁ、 今から種と土を混ぜて全体にまいてください」と言いながら心の中では「ごめんなさい」と言っていたことが思い返されます。
私たち支援ネットワークの花と緑の活動については“市民まちづくりブックレットVol. 4”に書きましたのでここでは省略いたしますが、 '96年3月の“阪神グリーンネット”の発足とともに花や緑の専門家が力を結集し、 花苗や木々の提供、 緑花相談を始めることになりました。
道路が決定し住宅が建ち始め各地域での復興がはじまると、 阪神グリーンネットは家家の周りの植裁や生垣づくりの手伝いもしました。 街なかの小さな公園を住民と一緒にワークショップで考え、 具体的にできあがった地域もありました。 多くの地区で街角を彩る花や樹が住民の手によることの第一歩だったと思います。
震災から5年が過ぎた今年2000年5月、 『日本造園学会全国大会・2000年記念神戸分科会みどりのNPOフォーラム』が神戸で開催されました。 みどりのまちづくりにかかわるNPOに焦点を当てた会合として、 花やみどりに取り組んでおられるボランティアや地域団体の300人を越える多くの参加があり、 共通の課題への対応やそれぞれの活動をつなぐネットワークのあり方を神戸から提言、 発信しました。
花みどり市民ネットワークの構成図 |
思えば昨年から今年にかけて多くのボランティア活動の拠点がこの花みどりネットワークだけでなく、 NPOとして誕生しました。
アートサポートセンターは島田誠さん率いるアートエイド神戸からの発足です。 しみん基金KOBEは多くのボランティア活動を支えた今田忠さんたちのHAC基金解散後にできました。 そして神戸まちづくり研究所は復興塾のNPOです。
このように震災から5年を経て緊急的な対応から恒久的対応に移ろうとしている時期がやっと訪れたようです。
花みどり市民ネットワークはこれまでの地域での活動をいかしてそれぞれの意志で花とみどりのまちづくりを進めていくとともに、 情報を交流し、 共有化することで「ゆるやかなネットワーク」を形成し、 行政とも新たなパートナーシップに基づく協力や連携を図りながらお互いに支援しあっていくというものです。 それぞれの活動の企画やイベント提案をPRしたり参加を呼びかけたりという情報の発信はささやかではあってもこれからのまちづくりの一場面を作って行くものと思います。
出典:「KOBE2001イベントガイドブック」 |
2001年1月から9月の間に神戸市で開催される『神戸21世紀復興記念事業』。 この事業は震災のときお世話になった全国のみなさんに感謝の気持ちを込めて神戸のまちを、 元気になった私たち市民を見ていただこうというイベントです。
『花』『光』『彩』『夢』の4つのコンセプトで構成されたこの催しをきっかけとして市民も行政も震災からの多くの支援に感謝をあらわし、 人々の暮らしや街の様子を見ていただく機会になればと取り組み始めています。 これらの4つのコンセプトも行政が勝手に行うのではなく震災直後から活動を続けて来た市民やボランティアの成果としてのコンセプトです。 KOBE2001のパンフレットの花のプログラムによると『震災の年の、 あの春を私たちは忘れません。 瓦礫の中から力強く萌え出た若葉のみずみずしさ、 桜の花の心なぐさめる優しさ…。 この感動を全国のみなさんと分かち合うため、 街に、 公園に、 通りに、 市民手づくりの花があふれます。 春から夏へ、 感謝の花の神戸です。 』この言葉どおり、 私たち瓦礫隊や阪神グリーンネットから5年を経て大きく成長した“花みどり市民ネットワーク”の多くの人々やたくさんのグループが既に来年の準備を初めています。 街の中の花やみどりは出来る限り市民活動の成果として参加型ワークショップ形式が始まりました。 布引ハーブ園、 ポートアイランド、 須磨離宮公園といった市の施設にも市民のアイディアや働きが活かされる予定です。 それらの今後の活動状況は「きんもくせい」紙上でお知らせして行きたいと思います。
最終回は、 まず辻さんから公園や広場の計画・設計、 ワークショップ方式による公園計画への住民参加などまち並み緑化の仕事についてと新開地2丁目の事例による市街地再開発事業について講義がされました。 続いて後藤さんから「これからの街づくりの目標像」のテーマで、 近代都市計画の理論、 神戸市総合計画における「まち住区論」、 そしてこれからのまちづくりとして、 「コンパクトシティ」、 「人間サイズのまちづくり」について講義がされました。
基礎コース終了、 各コースは順調に行われています
CA2000報告(その2)
いきいき下町推進協議会 CA2000委員会
修了証を受け取る受講生/基礎コース
茶店きんもくせいでの講義風景
雨の中行われた現地見学001009
基礎コース
NO. 17(00年8月号)で報告しましたCA2000研修の基礎コースが、 10月2日に終了しました。
■基礎コースの講義内容及び出席状況 |
■理論コースの講義内容及び出席状況 |
理論コースの第3回(6月12日)は、 茶店きんもくせいにて「協同居住論」というテーマで、 「コレクティブハウジング」(石東直子)、 「下町気質論」(森崎輝行)の講義がなされ、 その後のディスカッションでは講師と23名の出席者の間で活発な意見交換が行われました。
現在、 全プログラムの半分にあたる第10回が終了しました。 いくつか簡単に内容を振り返りますと、 「福祉まちづくり論」では、 水谷さんからバリアフリーの概念や高齢者・障害者の心身機能と住宅の問題点などから高齢者にとって住みよい住宅について、 野崎さんからは、 「ココライフ魚崎」、 「みくらプラザ5」の事例や震災前の下町の暮らしを紹介しながら、 福祉のコレクティブタウン、 まちづくりにおけるソフトの重要性について講義がされました。 「緑花まちづくり論」では、 辻さんが講義に先立ち受講生にワークショップを体験させることから始まり、 住民参加型の公園づくりや震災後に結成された阪神グリーンネットの活動などまちづくりと緑についての講義がされ、 天川さんからは震災後の緑の活動についてスライドを中心に話がされました。 「共同化建築論」では、 矢島さんの共同化建築と法制度、 共同化事業制度、 震災復興における共同・協調化、 分譲マンションの再建支援についての講義のあと、 瀬戸本さんから集合住宅の再建事例の説明とともに集合住宅の計画手法のめざすものについて、 またトルコの被災地視察の話を交えながら、 設計監理の重要性について講義がされました。
野田北部まち協との交流会の様子 |
また、 理論コースのダイジェスト版としてこうべまちづくり会館で行われてきたハーフコースはすまいづくり理論コースが10月16日にまちづくりコースが10月23日に無事終了しました。
実践コースの面接の様子000828 |
まず最初に石東直子さん(石東・都市研究室)から「高齢者住宅供給制度の全容と概括」というテーマで基調報告が行われました。 高齢化という時代背景をふまえて、 高齢者向け住宅・施設の体系や高齢者向け優良賃貸住宅制度の説明がされました。
パネラーの発表はまず、 豊田みどりさん(エスト・アド琴尾商事(株)代表取締役)から「町なかの不動産仲介業者の高齢者住宅への取り組みと展開」というタイトルで発表がありました。 成人人口の減少で既存の賃貸住宅の需要が減少しており、 既存の賃貸住宅が生き残るためには高齢者向けの住宅改造が求められていますが現実的には問題も多いそうです。 また、 豊田さんはご自身の介護の経験から地域の高齢者が集まれる「シニア倶楽部」という施設を開かれており、 高齢者が目的をもっていきいきとくらせる環境を作ろうとがんばっておられる様子をうかがうことができました。
次に岸広さん(神鋼ケアライフ(株)取締役)からは「エレガーノ摩耶(HAT神戸に建つシニア住宅)」の紹介がありました。 兵庫県では高齢者住宅の供給が全国よりも高く、 震災で入居が促進されました。 高齢者は、 自身の将来を考えると、 介護が保証されているという安心を求める傾向があるとのことでした。
次に田中浩さん(積水ハウス(株)六甲開発事業部)からは、 「六甲アイランドシティイーストコート11番街」の紹介がありました。 「メディケアサービスマンション」と称されていて、 この「メディケア」というのは造語で甲南病院と提携した医療・看護・介護が一貫して提供されていることなどの報告がありました。
最後にフロアー討論が行われました。 2015年には4人に1人が高齢者という高齢社会を迎えます。 その社会をまちがどのように受け入れるのかを考えていかなければならないと思いました。
情報コーナー
第16回阪神白地まちづくり支援ネットワーク記録
10月6日(金)、 神戸市勤労会館において「民間高齢者住宅供給の動向」をテーマとして行われました。
イベント
第48回水谷ゼミナール
21世紀の新しい都市(まち)づくりに向けて
神戸市民まちづくり支援ネットワーク/第35回連絡会
ひょうご住まい・まちづくりフォーラム
目次へ
(1)第2回人間サイズのまちづくり賞授与式
(2)県民フォーラム「安全・安心な住まいまちづくり〜“ひょうご安心住宅”をめざして」
〈課題提起〉外山義(京都大学工学研究科教授)
〈パネルディスカッション〉
上羽慶一(神戸新聞論説委員長)、 外山義、 澤宗則(神戸大学発達科学部助教授)、 森綾子(宝塚NPOセンター事務局長)、 森崎輝行(建築家)
〈「ひょうご安心住宅」提案コンペ募集説明〉
■ 阪神大震災復興 市民まちづくり支援ネットワーク 事務局
〒657-0024 神戸市灘区楠丘町2-5-20 まちづくり(株)コー・プラン内
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担当:天川佳美、 中井 豊、 吉川健一郎
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