きんもくせい50+33号
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参画と協働へ、 市民活動社会に向けて

まちづくり会社コー・プラン代表 小林 郁雄

 兵庫県のほぼ中央に位置する生野町の「地域づくり生野塾」の手伝い・助言をしに行きはじめて4年半になる。 生野銀山で有名な町である。 地域ごとの住民参加ワークショップ方式で「好きです!わたしの町生野」という総合計画が1996年9月につくられた。 計画づくりの過程で行われた町民参加について、 計画実現の段階においても引き続き発展継続させ、 町民主体のまちづくりが展開されるように、 という審議会答申の付帯意見にしたがって、 「みんなで作った総合計画を、 みんなで実現していこう!」を合言葉に、 生野塾がスタートしたのが、 1997年6月であった。 委員は(第1期9706〜9903は85人、 第2期9908〜0109は76人、 第3期0111〜は74人)、 住民のまちづくり委員と役場の地域担当職員(いづれも公募)がほぼ半々である。 9つのグループ(2期・3期は8)に分かれ、 それぞれ3つぐらいの地域計画施策(全部で28施策)を担当する。 ほぼ月1回グループごとに集まって、 自主的に施策の具体的な事業化を検討している。 1期2年で、 現在3期目の塾生で進められている。

 地域づくり生野塾で現在行なわれている事業を少し紹介してみよう。 「生野銀山と共に歩む地域の活性化」という地域施策に取り組むグループ(「へいくろう」の会)がやっているのが、 毎年4月のヒカゲツツジが咲く頃に開かれる「へいくろう祭」である。 すべて生野塾生を中心とした手づくりの祭で、 これまで2回開催されたが、 神戸からの観光バスが出るまでになっている。 もちろん、 2002年も4月21日日曜に開かれる予定である。 「美しい清流・水辺空間の保全」への具体施策としては、 水質水生生物調査、 啓発チラシの製作配布、 鯉の放流、 河川公園整備計画づくりワークショップなどとともに、 実際の河川沿いの枝打ち清掃も行っている(ECOグループ)。 グループさんないは、 同じようなテーマの施策「美しい森と清流の保全」として、 ホタルの養殖から河川への放流、 餌になる巻貝(カワニナ=さんない)の育成などに力をいれており、 昨年夏試験的に放たれたホタルが20〜30匹舞うまでになった。

 地域づくり生野塾は、 町民委員と担当職員が対等平等に計画づくり・実施方法などを討議(ワークショップ方式)し、 実際に共に汗をかく活動から成り立っている。 参画と協働そのものである。 ワークショップは、 日本のトップリーダーである東京の伊藤雅春さん(大久手計画工房)の誘導で、 総合計画策定時の地域委員会からはじめられ、 今では、 生野町ではすべての(といっていい)会議がワークショップ形式の円卓グループ討議によって行われている。
 (
http://www2.chiiki-dukuri-hyakka.or.jp/inpaku/wagamati/zirei/ikuno.htm 参照 )
 ( http://www.mha.go.jp/wmachi/s-kinki/ikuno17.html 参照 )

 こうした生野塾の経験に立って、 生野町では北海道ニセコ町にならって「まちづくり基本条例」の策定を目標にした「住民参加のまちづくり推進懇話会」(会長中川幾郎帝塚山大学教授)が県の「まちづくり推進モデル市町支援事業」を活用して設置され、 2000年度にほぼ月1回のペースで検討を重ねた。 メンバー構成は、 住民代表10人、 生野塾選抜8人、 役場職員9人、 その他5人(県職員2人、 神戸新聞記者、 まちづくりアドバイザー、 会長)の計32人であった。 その成果を基本に、 2001年度は「生野町まちづくり基本条例検討委員会」が同じく中川先生を座長に進められている。 メンバーは住民などからの公募委員12人と職員(プロジェクトチームC21)11人。 7月より月1〜2回の検討会議が、 すべてワークショップ方式で行われ、 12月18日の第9回検討会で、 ほぼ条例試案がまとまった。

 偕和の精神にもとづく格調高い「前文」にはじまり、 自律共助・情報共有・参画協働という3つの「まちづくりの基本原則」、 人権・学ぶ権利・まちづくりへの参加権利などの「町民の権利と責務」、 「町と議会の役割と責務」、 総合計画等への町民参加・実施評価段階での協働・委員公募などの「参画・協働の推進」、 情報公開・説明責任・政策評価・住民投票など「信頼される行政」、 町外の人々・他の自治体などとの「連携・交流」、 最後にこの条例が持つ「最高規範性」を定めた全7章35条の案である。


 兵庫県は井戸新知事になって、 貝原県政の継続は標榜されているが、 21世紀の兵庫づくりに「参画と協働の県政」の推進が強調されている(「報告きんもくせい」01年8月号の井戸敏三「パートナーシップ」参照)。 2000年度から続けられてきた、 「準公職」をテーマにした住民の参画と協働システム検討にひき続き、 今年度はより原点からの整理も含めて「県民の参画と協働の推進に関する条例化等検討委員会」で密度の高い検討が重ねられ、 12月には条例骨子案がまとめられた。 委員会の公開はもとより、 資料や議事録などもすべてホームページに公開されている。 さらに、 夏には県下各地で「参画と協働県民フォーラム」も数多く開催され、 直接県民の意見交換の機会も持たれた。
 ( http://www.hyogo-intercampus.ne.jp/gallery/cocoron/sankakukyodo.html 参照 )

 条例の骨子は1月にはホームページに公開され、 広くパブリックコメントを求めて修正し、 年度内には条例化が予定されている。 その大まかな構成は、 条例の目的、 参画と協働の基本理念・基本原則をもとに、 「地域社会の共同利益(コモンズ)」と「県政」への参画と協働の道具が用意される。 道具とは、 情報提供、 場の提供、 地域づくりの担い手支援、 情報共有のしくみ、 計画立案等(会議公開、 公募委員、 パブリックコメントなど)や事業等の実行(公共施設の協働運営、 推進員や協力員、 アウトソーシングなど)さらに評価・検証(モニターチェックなど)への参画・協働方法である。 それらを使って、 参画協働を進めていくのに、 提言・支援する第三者機関としての参画協働推進委員会を用意するというのが、 その概略の検討されている内容である。


 神戸市でも11月に新たに矢田市長が就任し、 その最大の公約は「市民主役のまちづくり」であり、 当面の課題対応として、 市街地活性化、 危機管理、 市民参画の三つのプロジェクトチームが立ち上げられた。 さっそく、 市民参画室が設置され、 多様なセクターの市民と行政が同じ場所に集い参画し、 様々な協働のアイデアを出しあい、 実現をめざしていく「参画と協働のプラットフォーム」としての役割を担おうとしている。 さらに来年夏をめどに広く市民の意見を集めて、 市民の手による「市民参画条例」の検討・制定を目指している。


 こうした市民の「参画と協働」への取り組みは、 全国各地で疾風のように燃え広がっている。 これは20世紀の都市を支配してきた企業活動中心社会から、 21世紀の「市民活動社会」のはじまりを示すものである。 地域主権・情報共有を条件として、 市民が主体となってコンパクトな自律生活圏が多重にネットワークしている「自律連帯社会」である。 それは、 国家やグローバル経済といった「国際・企業」時代から、 個人や地域ネットワークによる「民際・市民」世界が基本像であり、 その最も基本となるキーワードが、 参画と協働である。  (011221記)


 

西二郎のまちづくり

地域計画 安田 正

 この原稿を書くに当たって、 きんもくせいを改めて読み直してみましたが、 どうも場違いなところに来たものだという気持ちをぬぐいがたく、 とりあえず六甲山の北側でのまちづくりの事例のひとつを簡単に紹介させていただいて、 この文章を読むであろう方々にお許しをいただこうと思います。

 西二郎(にしにろうと読みます)は、 神戸市北区、 神戸電鉄田尾寺駅の北側に位置する二郎イチゴで知られる農村地区でしたが、 1980年代以降、 地区のまわりで藤原台や北神星和台などの大規模な住宅開発が進められてきたことから、 地区内においても宅地化の波が押し寄せつつありました。

 まちづくりの取り組みは、 10年以上まえの高層マンションの建設反対運動をはじまりとして、 まちづくり協議会をつくる、 まちづくり憲章を決める、 まちづくり提案やまちづくり協定を締結するなどの活動を行ってきました。

 ここでの基本的な目標は、 当初はスプロール対策でした。 そのため、 まちづくり協定で敷地規模や用途の制限、 建築物の高さや壁面位置の制限などを行っていますが、 事業制度をともなわない規制誘導型のまちづくりの限界が見えてきており、 新たなまちづくりの方向を求めて模索しているところです。

 また、 震災以降は宅地細分型のミニ開発などが地区内で進み、 世帯数が大きく増加したため、 新たな住民の流入による地域コミュニティの再編成などの問題が起こってきました。 そこで、 新旧住民の交流を目的として小さな規模ですが「体験農業の会」を結成し、 地区内の休耕田を借り受けて無農薬の野菜作りなどを行っています。

 私どもの活動は極めて小さなものですが、 被災地における多様な農園や菜園づくりなどの試みが同時並行的に進んでいるのを知って、 何かまちづくりの可能性のひとつを見たような気がしています。

 例えば、 震災空地における天川佳美さんたちの「ガレキに花を咲かせましょう」、 南芦屋浜団地における住民が共同して野菜や草花などを育てる「だんだん畑」、 尼崎南部再生研究室(あまけん)における浅野さんたちの「尼いもクラブ」、 長田区番町地区における改良住宅団地での「菜園づくり計画」、 その他にもいろいろとあるようです。

 目的や活動形態は多様ですが、 一人暮らしの老人が畑仕事をするなかでいろいろな人と係わることができたり、 都会育ちの子どもたちが田んぼの中を走り回ったり、 普段パソコンのキーボードしかさわらない人が土にふれる、 草花や野菜を育てる、 収穫する・食べることで、 人間らしい感覚を取り戻せているのかも知れません。

 西二郎のまちづくりは、 「体験農業の会」をはじめとして極めて小規模で手づくり感覚の活動ですが、 神戸市の北区や西区にひろがる農村地区において同様の試みが可能なものだと考えており、 ひとつの事例として参考にしていただけたらうれしく思います。 活動の詳細は、 以下のホームページをご覧ください。

 西二郎地区のまちづくりホームページ
 

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「体験農業の会」設立記念写真 恒例のイチゴ狩り 夏の子どもたち
 

 

「ふれあい住宅連絡会」が
行政に協同居住の課題改善についての要望書を提出

石東・都市環境研究室 石東 直子

〇ふれあい住宅連絡会の活動

 震災で芽ばえた「公営コレクティブハウジング・ふれあい住宅」の10地区(341戸)の居住者ネットワークである「ふれあい住宅連絡会」は、 2001年1月21日に発足して11ヶ月になります。 「ふれあい住宅連絡会」はふれあい住宅の居住者の自律した集まりで、 入居前後から居住サポートを続けてきたコレクティブハウジング事業推進応援団が開催していた「ふれあい住宅居住者交流会」が発展して誕生しました。 連絡会設立の目的のひとつは、 10地区のふれあい住宅の居住者が相互に交流し、 親睦を深め、 共通の課題を検討したり、 時には共にイベントを開いたりして、 安心して楽しく暮らせる協同居住を育んでいくことにあります。 もうひとつの目的は、 居住者の加齢や社会環境の変化によって、 これから生じてくるであろう様々な協同居住の問題、 とりわけ居住者たちだけでは解決が難しいような問題に対して、 関係者や支援者などに対応策やアドバイスを求めるときに、 居住者を代表した組織となることです。

 このような目的にそって2ヶ月毎に、 「ふれあい住宅連絡会世話役会」をもち、 情報交換などを行っています。 ふれあい住宅の居住年数は長い住宅で4年4ヶ月を迎え、 短い住宅でも2年半9ヶ月になりますが、 この度、 「公営コレクティブハウジング・ふれあい住宅の協同居住にかかわる課題の改善」について検討し、 下記のような内容について、 県知事、 県住宅管理室長、 県公社住宅管理課長、 神戸市住宅局長、 市営住宅管理センター管理部長に要望書を提出しました。

 なお、 要望書提出後の11月16日には連絡会代表と石東が、 「さわやか対話室」で井戸知事に直接説明する機会を得ました。 11月19日には連絡会世話役会のメンバーが県住宅管理室長や県公社住宅管理課職員たちと話し合い、 要望内容について詳しく説明し、 県に実状認識をしてもらい、 中島室長からは改善のための方策を検討してみるとの返事をいただきました。

 

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11/19 片山ふれあい住宅で開かれた「ふれあい住宅連絡会世話役会」の情景
 

〇ふれあい住宅の協同居住にかかわる課題の改善についての要望書の抜粋

1. 共同スペースの電気代基本料金の改定に向けての対策について
 多くのふれあい住宅の協同室や共同廊下等の共同スペースの照明は余りにも明るすぎる程の電球がついております。 入居後は日常生活に適切な明るさになるようにと、 1/2から2/3の電球を間引いて、 電気代の節約にも努めてまいりました。

 しかし、 電気設備の設計段階で設定された電気使用容量が大きいため、 電気代の基本料金が高くなっており、 電球を間引いて節約しても、 高い基本料金のまま支払うことになっています。

 例えば、 福井ふれあい住宅では、 協同室や共同廊下等の電気設備設計では16KVAの基本料金設定になっていますが、 実際は電球を間引いているので、 10KVAで十分な容量です。 16KVAから10KVAに改定することで、 1カ月の電気代基本料金は約2,000円が低減されます。 年間では24,000円の節約になり、 協同居住の維持運営費は大きなプラスになります。 居住者の加齢が進み、 医療費等の負担増があり、 できるだけ共益費の低減が望まれていますので、 無用な出費を避けたいと思っています。 まず、 実情を調査し、 改善のための方策を検討していただくようにお願い致します。

2. 共同スペースの水道代基本料金の改定に向けての対策について
 ふれあい住宅の共同使用の水道は水道管の口径が25ミリで、 一般家庭用の20ミリに比べて大口径になっております。 そのために基本料金の設定が一般家庭用と比べて2,000円程高くなっております。

 県営ふれあい住宅(片山ふれあい住宅を除いて)は、 共同洗濯場が各階に設けられているために、 25ミリの大口径になっているものと思われますが、 入居後から現在に至るまで共同洗濯場は使用していません(住戸内に各自の洗濯機を所有しているため)。 従って、 共同洗濯場の水道使用はないのに、 大口径の基本料金を払い続けています。

 これについても、 上記の1. と同様に調査し、 改善策の検討をお願い致します。

3. ふれあい住宅の住まい方についての説明会や学習会等の必要について
 ふれあい住宅は入居後の年月の経過と共に、 途中入居の居住者が増え、 途中入居者は協同居住の説明を受けておりません。

 また、 入居時に説明のあった協同居住のあり方等については、 既に無関心になっている居住者も少なくありません。

 なお、 コレクティブ応援団等が必要なアドバイスのサポートを続けてくれていますが、 居住者全員に自覚してもらうには、 事業主体としての公的な立場からの説明や学習会の開催をしていただくことの必要を感じております。 早急に説明会等を開催していただくことを希望いたします。

4. 協同居住ができない人が移り住めるような方策について
 居住者の中にはふれあい宅全体の協同居住を阻害するような住まい方、 生活をしている人が出てきています。

 例えば、 自分の住戸の清掃や衛生管理が大変悪く、 悪臭や害虫等が共同スペースや隣人に被害を及ぼしています。 自治会で注意を促すのですが、 改善の意志がない人がいます。

 また、 昼夜の生活行動が逆転した生活をしている人がおり、 居住者は被害を被っています。 さらに、 加齢によって寝たきり状態の人や痴呆症のひどい人も出てきました。

 このように居住者どうしの対応では解決が難しいような、 協同居住に支障をきたす人たちが移り住めるような指導と受け皿住宅の提供を希望いたします。

 次に、 途中入居者の決定にあたっては、 入居を希望しているふれあい住宅の独自の協同居住に納得して入居してもらうために、 入居前に自治会役員や居住者たちとの会合の機会を設定していただくことを希望いたします。


<お知らせ>

 2002年1月20日(日)14時〜16時に、 南本町ふれあい住宅の協同室で、 「ふれあい住宅連絡会・第2回総会」を開きます。 一年間の総括と新しい体制について討議いたします。

 また、 来年に予定されている「県営ふれあい住宅の空家募集」の方法や入居希望者の協同居住についての事前学習・体験等について、 望ましい方策を県と話し合います。

 ご関心のある方は、 ぜひご参加ください。


 

新長田駅北地区(東部)土地区画整理事業
まちづくり報告(16)

久保都市計画事務所 久保 光弘

4. 区画整理に関する施策(その2:前回の続き)

4)換地

(1)まちは生きて変わり続けるということ
 ・ 区画整理の面白さは「換地の特質」にある。 換地は権原を従前の宅地から区画形成を変更しながら移行するものであり、 個々の権利者の意志が継続される。 その結果、 区画整理による土地利用は「予定調和の対極にある開放系の未来」の性格をもっており、 その点、 再開発の権利変換と大きく異なる特質である。 すなわち、 区画整理は「まちが生きていること」を前提とした手法である。

 ・ しかし、 従来区画整理における土地利用は、 以下のような対応が一般的である。

 これは言いかえれば、 土地利用への不介入か、 「機械的環境観」による計画手法の介入であるが、 これは住民主体まちづくりが進まない段階での行政やプランナーのデスクワーク中心の限界を示すものであった。

 ・ この震災復興における住民主体まちづくりがブレークスルーしたことは「機械的環境観」から「生命的環境観」へのパラダイムの転換、 又は「近代都市計画」から「複雑系都市計画」へのパラダイムの進化でないかと考え始めている。

(2)換地・土地利用形成軸の手法
 ・ 換地という個々の意志をもつ宅地の集合である土地利用に対応する計画手法として当地区では、 以下の手法が導入された。

 これらは以下の特徴をもつ。

 これらの計画手法の性格の差異は、 例えば土地利用適地の一つである「共同建替適地」と被災地市街地復興特別措置法の「復興共同住宅区」との比較、 「景観形成市民協定」と「地区計画制度」との比較をすれば、 端的に見えてくる。

 ・ 上記の新しい計画手法による計画形成の中であればこそ、 種々の「任意事業」がうまく適用されたといえる。
 区画整理事業は複雑化せずストラクチュアをつくる手法としてシンプルなものとし、 種々の「任意事業手法」のメニューを多く用意されることの方が区画整理の可能性を拡げるように思う。

 ・ いづれにしても区画整理の換地・土地利用軸の計画手法検討は新しいテーマである。

(3)換地の進捗
 ・ 間もなく震災後7年が経過することになる。 関東大震災の震災復興都市計画事業は、 7年間でほぼ完成したとされている(石田頼房「日本近代都市計画の百年」)。

 当地区の換地率は約8割と聞いている。 当地区ではまちづくり活動が活発なのに換地が他地区より遅いのはなぜかと聞かれることがある。
 行政と個々の地権間の事については全く知らないが、 協議会等では、 終始一貫して「換地を早く」という声が出され続け、 行政も努力しており、 表面上にでてくる換地をめぐるトラブルも聞いたことがない。
 この地区が、 他地区よりも換地に時間を要しているのは、 当地区特有の換地操作上の難しさにあると思っている。

 ・ 区画整理の換地について要する時間は、 それぞれの地区の特性によるところが大きい。 区画整理事業に要する時間は、 個人個人の生活設計の判断に大きく影響するだけに地区の特性をよく見て区画整理事業期間の予測をし、 その予測を地権者に難しくとも伝えることは必要である。

 ・ また事業所、 店舗などがある地区においては、 それが震災直後に復旧し、 まちとして生きて継続することが大切であり、 その結果が区画整理事業期間に影響してもやむを得ないのではないかとも思う。


<おわりに>

 ・ この7年たった震災日1月17日には、 またニュースは「長田の人口は戻らない」と伝えるだろう。

 「戻る」という言葉は、 わかりやすいし、 ヒューマンであるけれども、 「まちは、 生きて変わっていく」という事実を見ない、 まちを機械のようにとらえる言葉である。   まちは生物のように環境の変化とともに生きて変わっていくもので、 「不可逆」である。

 ケミカルシューズのまち長田の中核に位置する当地区において、 震災前からの産業構造的問題、 震災、 区画整理事業に加えて、 急激な経済的社会背景の変化という波の中でケミカルシューズの工場・作業所は激減している。 しかし、 靴のパーツ事業所が点在し、 町全体が靴の工場という環境を残している。 しかし、 これも前に「戻す」ことはあり得ない。 生きて変化し続ける過程の「今」なのだ。

 ・ 長田のケミカルシューズ産業は、 昭和25年朝鮮動乱で生ゴムの急騰、 その後の生ゴム統制解除やゴム製品の統制撤廃によるゴムはきものの市場価格の著しい低落により、 当時地域産業であったゴム長靴などのゴム製造の中小企業の半数が倒産した。 そのようなとき塩化ビニールを素材とする靴づくりという、 新しい発想の「ミクロのゆらぎがマクロの大勢を支配」し、 ケミカルシューズ産業の時代を作った。 ケミカルシューズが生まれた時代、 長田には在日の人々を含む長田の人々の中に混乱に近いエネルギーがあったと当時を知る人は言う。

 今、 残された産業構造と空地を新しい資源とみなし、 それを全く新しい発想で産業を創造することが必要である。

 昭和20年代半ばと今日と異なるのは、 地域内のエネルギーが希薄になっていること。 そうであれば、 外から地域資源を新しい目でとらえることのできる企画力のある「起業家」を呼び込むことだ。

 

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シューズプラザ
 
 シューズギャラリー構想、 アジアギャラリー構想を提案した地元のまちづくりリーダー達は、 当地区の「商工活性化部会」として活動を始めている。 そのメンバーとしてアジアギャザリー、 シューズプラザのテナントも参加しているが、 その人達は「三宮では商売の面白さはない。 三宮だったら出店しない。 」と語る人であり、 長田にシーズを見いだすことのできるスモールビジネスの起業家である。

 今後、 長田は、 地域産業、 地域活性化に課題が収斂する。 震災復興の特質の一つとして「初期値の鋭敏性」があげられる。 すなわち、 「流れ」と「タイミング」が将来まちの方向に大きな影響を与える。 長田の産業に関しては今が重要なタイミングである。

 その場合、 行政も商工と都市計画のセクションで別々に考える限り、 要素還元主義の発想から抜け出せることはないだろう。

(01. 12)


 

アフォーダブル住宅と
少子高齢化に対応した住まい方

都市基盤整備公団 田中 貢

■はじめに

 このごろよく聞くワードとして、 社会面ではNY貿易センター破壊、 タリバン、 ビン・ラディン。 経済面では、 グローバリゼーション、 そして構造改革、 行政改革、 特殊法人見直しとなっている。 こういう状況下で、 世界都市ではアフォーダブル(直訳:手が届く)住宅の必要性が求められ、 同時にノンプロフィット(NPO)の活躍が期待される場が広がりつつある。

 違う視点からは、 益々少子高齢化が進行し、 「安心して暮らすための多様な住まい方の展開」への挑戦が続けられている。

 今回は平山洋介先生と石東直子さんに登場願い話題提供受けながら議論を深めた。


■アフォーダブル・ニューヨーク??/平山洋介(神戸大学助教授)

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平山洋介先生
 ニューヨーク(NY)は、 グローバリゼーションの結果世界都市になってきており、 普通の人が住めないくらい住宅価値が高騰している。 70年代には工業がダメになり資本が流出した結果地方政府が破綻し、 銀行も取引しなくなったが、 その後産業転換が成功し、 90年代に入って経済、 人口が回復した。 そして2010年には世界最高の人口都市なると予測されている。 同じように世界都市化に成功した人口増の都市として、 ロンドン・パリがあり、 東京もそうなるであろうとのことである。

 1. 世界都市化の結果、 アフォーダブル住宅がなくなった。 住宅市場がハイエンドとローエンドの二極化してきた。 グローバリゼーションの結果、 ハイエンド、 高い住宅負担に耐えられる者が増える一方、 ローエンド、 移民流入が増えるなど所得格差が広がりつつある。

 2. 新自由主義の住宅政策として、 HUD(日本でいう公団)の縮小、 公共住宅補助住宅の供給停止、 公共住宅の売却、 契約期限が迫っている補助住宅の不安定化が進行。 住宅政策としては家賃補助だけとなり、 高所得者の大幅減税のみが進んでいる。

 3. NYでは、 ジュリアーノ市長政策で、 街頭警官が急増し、 各所の街頭や公園などの公共公益施設からホームレスを排除しつつあるようでる。 町はきれいになるが、 いったいホームレスがどこに行ってしまうのであろうか?

 4. 持ち家や借家より、 その中間の所有形態が増える傾向がでてきている。 ミューチャル住宅といい、 賃貸住宅であるが借家人が理事になり運営する。 そして理事が投票権もっており家賃や修理費を理事会で決定する。 結果、 家賃が安ければ住宅経営が行き詰まるし、 高ければ事業が借家人が出て行き経営が行き詰まるという、 ちょうど良いバランスを自らが決定するシステムとなっている。


■少子高齢化で安心して暮らすための多様なすまい方の展開動向/石東直子(石東・都市環境研究室)

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石東直子さん
 国民生活基礎調査では、 65歳以上のお年寄りの暮し方は、 1960から2000年の間に、 一人暮し又は夫婦のみ世帯が28.1から45.5%に急増しており、 今後もこの傾向が進むものと予測されている。 アメリカではこの40年ではこの率に変化なしであり、 アメリカ追随型では方向を見誤る。 統計からは隣人と触れ合って住まうことが重要となってきている。 友達家族、 共生の住まいなど多様な住まい方がでてきている。

 建物を建てて「それで終わり」ではなく、 維持管理やソフトサービスが伴う住宅供給がいる。

 本来のコレクティブならライフスタイルが同じ者が集まってくるので、 初期的なトラブルはないと思うが、 神戸の被災地の場合は、 復興公営住宅であるのでそれを理解して入居したのは、 2割、 そのためトラブルが続出しいろんな方法で対応した。 仮設住宅での出前説明会、 学習会、 顔見せ会など応援団がいないと、 自然発生的に会が運営できるわけではない。 ましてお年寄りなので叱るわけにもいかない。 さらに居住サポートとして、 80歳入居者にRC住宅の「いろは」を教えることもあった。 近代設備過ぎて、 リモコンが解除されて2週間風呂に入っていなかったという実態もあったようである。

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隣接した住戸をベランダでつないで1戸の住宅とした改修例
 大阪府営住宅で、 隣接する2つの住戸をベランダでつないで、 1戸の住宅として使用できるように改修し、 あわせて段差の解消や風呂やトイレを広くするというグループホームの対応事例も出てきている。

 岡山県では一人暮しで心配だから、 「夜だけ集まって寝ようよ。 」という必要な時だけ寄り添って過ごすという高齢者施策も生まれてきている。


■感想

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70年代にアバンダンメント(住宅放棄)が進み、 捨てられた街となったブロンクスをMBD(CDC)が住宅を建設し再生
 平山先生の講演に、 アバンダメント(放棄住宅)の話があった。 賃貸住宅の所有者が地区外居住で、 当該住宅に不法占拠者が入り込み、 家賃がとれず資産価値が低下する住宅が発生してきている。 そんな場合も地方政府は固定資産税を課税してくるので、 税負担も馬鹿らしくてできなく、 所有者はこの際この住宅を放棄するという行動にでてきている。

 今度は、 その放棄された住宅を地方政府が貰い受けCDCに1ドルで払い下げて、 それをCDCがリニューアルした上で一般に貸し出し、 そこに地方政府は家賃補助をするという、 システムがうまく行っているとのことである。

 でも、 日本では、 所有意識が大であること、 また不法占拠がそれほど簡単にできそうもないので、 こういう放棄住宅が発生しないと思われるが、 地方政府でもない民間でもないCDCのようなNPO組織が、 豊かな市民社会実現に、 ある一定役割を担う時期が来ている。

 NY市民はCDCも一般企業と同じような、 勤め先の一種と認識しており、 CDC経歴を持つ労働者は、 企業から大きく評価されている。 安月給でやっているわけでもなく、 ある時は役所との雇用契約で職員として、 またある時はCDCの職員として活躍しており、 両方のスタンスがわかるので橋渡しの役割をうまくこなしている。

 日本でも、 この種の行政と地元組織の中間役割を担うNPOの必要性が言われて久しいが、 なぜ育ちにくいものであろうか。 行政と地元住民とそして(ここではまちづくりの)NPOとのそれぞれの役割分担の変更が求められる時期を迎えているのではないだろうか。


■おわりに、 もう1点

 結局警察国家の良否とは?。 となると思うが―――。NYのジュリアーニ市長は9.11世界同時テロ発生直後、 どう過ごしたのであろうか。

 J市長はテロ発生後2時間後には、 コマンドセンター(消防中枢)に陣取り指揮。 その午後にはエマージョンコマンドセンター(警察署)に移動。 1週間後にピア92に指揮所移動。 そして罹災家族への各種相談窓口として一箇所で対応するとしてテロ翌日には相談所(ファミリー・アシスタント・センター)を開設。 だがそこは2000m²で狭すぎるからとテロ5日後に13000m²のところにコンピューター装備して開設。 これができ「心のケア」「犠牲者捜し」「保険会社交渉」さらにはその1週間後には職業斡旋までこの場所で可能に。 となった。

 これは(良いも悪いも)優れたリーダーのなせる技と思うだけでいいのだろうか。 彼は阪神淡路の地震(もちろんロス地震の時のFIMAの対応含めて)と日本のサリン事件から、 こういう場合の危機管理対応がどう対応すべきか、 日頃から取り組んできた結果の行動らしい(青山公三上席研究員(NY大学行政研究所)の話から)。

 果たして、 我々は「のど元過ぎれば熱さ忘れる」となっていないだろうか。 皆で自省が必要では。 誰かに責任を転嫁するのではなく、 自らどう行動するか決めておくことが求められている。


 

環境・エネルギー・まちづくり

都市基盤整備公団 太田 亘

■はじめに

 エネルギーと地球環境をとりまく状況は極めて深刻である。 地球環境はもってあと80年、 化石燃料は50年後には石炭だけとの説もある。 一個人、 一国を超えて世界全体で協調していく必要があることは明らかであるが、 様々なレベルでの利害関係や価値観の相違から問題への取組みが進まないのが現状のようである。

 10/24に開かれた第10回会合では、 鉄道とエネルギーの各分野で公共的役割も果たしながら、 現在の状況に警鐘を鳴らしてこられた阪急電鉄の鈴木裕二氏・西田純二氏と大阪ガスの池島賢治氏に講師をお願いいたしました。

 地球環境・利便性・経済性、 相容れにくい指標のどこに解を求めるのか。 そのヒントが三人のお話から伺えるのではないでしょうか。

■交通部門におけるCO2排出量削減方策の検討【鈴木氏】

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鈴木裕二氏
 都市環境システム研究会で行った、 神戸市における都市機能の配置と交通部門におけるCO2排出量削減方策の効果を定量的に示す研究成果について。

○交通手段別CO2排出原単位…鉄道は車の1/10

○交通輸送に伴うCO2削減政策の効果策定
  在宅勤務/3%減、 自動車相乗り/12%減、
  モーダルシフト/25%減、 ハイブリッドカー/14%減、
  道路整備等/8%減

○都市機能の分散化・集中化が交通関連CO2排出量に及ぼす影響
 ・ 業務施設について、 分散化するより集中化したほう が、 負荷は少ない。
 ・ 住宅について、 分散化してもマストラで異動するので、 あまり影響はない。

○まとめ
 ・ 交通部門におけるCO2排出量削減効果は、 土地利用より、 モーダルシフトの方が効果が大きい。
 ・ 単体の環境対策を見るより、 都市全体のシステムとして見る方が効果が大きい。


■鉄道経営と社会環境・経済環境【西田氏】

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西田純二氏
 今後の鉄道利用客需要予測については極めて危機感がある。 特に関西においては深刻で、 阪急電鉄においては、 1991年をピークに減少しており、 今後ピーク時の1/4減る予測がある。

 なぜ、 鉄道旅客が人口以上に減少しているかというと、 高齢化・モータリゼーション・住宅地の外遠化の影響である。 20〜30才代は、 通勤・通学で安定利用するが、 60才代になると、 定年して利用しなくなる。 今の高齢者層は、 モータリゼーションの進化のため車を利用するため、 必然的に鉄道利用者が減る。 特に、 阪急沿線は成熟度が高いので、 高齢化している。

 また、 鉄道運賃とガソリン価格を比べると、 円高に伴ってガソリン価格は下がっているのに、 鉄道運賃は単純増であり、 車に流れるのは当然という面もある。

 この事態は、 10年前から予測していて、 その対策に警鐘を鳴らしていたため、 他社に比べて鉄道部門の赤字を補っている。 電鉄における投資分野は、 輸送力・安全性・サービスである。 利用客数が減るので、 輸送力の増強は止め、 サービスに集中して投資するようにしてきた。 また、 震災では数百億円の損失であったが、 構造改革のチャンスととらえ、 組織・財政・事業の改革の強化を実施している。

 いま「駅」中心の都市構造が衰退している。 特に、 歴史ある駅前ほど道路が悪いためその傾向が強い。 鉄道旅客減少⇔駅周辺施設活性度低下⇔周辺地域魅力度低下の悪循環が、 駅周辺地価の下落につながり、 駅前のさらなる住宅立地の拡大となり、 街としての駅前集積につながらない結果となっている。

 ほとんどが償却済試算の既設鉄道線ですら、 経営は難しいなかで、 新線の独立経営は、 ほとんど不可能に近い。 また、 都心回帰により人口減となり、 市街地以上に車との競合が厳しい、 地方線・支線の経営維持は特に難しい。 これからどうするのか。


■大阪ガスの地域開発を通じて【池島氏】

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池島賢治氏
 大阪ガスもこのままだと駄目になる。 今後、 規制緩和によるエネルギー自由化及び技術開発による、 エネルギーと都市・地域の関わりは劇的に変わるだろう。 燃料電池等による家庭用エネルギー源の変化、 ユニバーサルなファシリティとしてのコモンキャリアによる配線の共有、 地域垂直分割から水平分割への変化、 エネルギーもサービスから商品になり、 市場で取引きされるようになる。

 そもそも都市ガスは供給地域が限られていて、 おいしいところしか供給していない。 にも関わらず、 必要な製造所等の数は減っており、 跡地活用を行ってきた。 その事例紹介を中心に、 これからの都市のあり方について考えたい。

○扇町ミュージアムスクウェア(大阪ガス北営業所跡)
 建物をそのまま劇団等が利用し、 「街の活性化」「大阪ガスのイメージ向上」に貢献。 事業採算性は悪いが、 認知度は高い。

○京都リサーチパーク
 工場跡地7.1ヘクタールの利用。 消去法としての「リサーチパーク」で、 当初は化学ラボをイメージしていたが、 変化へ素早く対応してマルチメディアを中心としたビジネスパークへ変身。 4つのビジネスモデル「家主事業」「インキュベーター業」イベント業」「コンサル業」の確立。

○海遊館
 3セク<大阪ウォーターフロント開発>からの配当を貰っている唯一の例。 はじめ経営は良いように借地にしている。

○神戸ハーバーランド
 地域冷暖房をやると、 地域の真ん中の土地6000m²を特定分譲で取得。 エネルギー複合ビル、 ジョンジャーディー設計オーガスタプラザ。 ガス灯115基。

○りんくうタウン
 80万円/m²で1.5ヘクタールの土地を購入した。 地域冷暖房を地下に入れたが、 当初の構想崩れで、 使用面積はわずか。

○大阪シティードーム
 USJのある土地・天王寺公園の横・現在の岩崎の3候補地から選ばれた。 大阪ガスの発祥の地。 地権者は大阪ガス、 関西電力(大阪市電気局時の土地)、 大阪市交通局、 大阪市環境事業局。 再開発地区計画は建蔽率緩和がないため断念し、 都市計画決定を行い、 現在は都市計画道路の中央分離帯の扱いとなっている。 行政の積極的な関与があったから出来た面があるが、 今だ暫定開発しか出来ていない。 発電器をネットワークして、 廃熱を利用し、 躯体蓄熱、 超省エネビル、 地下鉄(大正駅にまで)にも地域冷暖房をやっている。

○USJ
 もともとは新日鐵堺が候補地であった。 日新製鋼、 住金、 日立造船、 大阪ガス他の土地。 35年の定期借地で暫定施設を運営してその後はまたどうにかしようという事業。 890億ぐらいの区画整理で、 大阪市は保留地を購入して駅を作った。 道路を造って、 鉄道駅を移動し高速の入り口を迎えに行った。 ここでも地域冷暖房を行い、 それにあった基盤整備をやった。

○これからの都市を考える
 4E「都市」「環境」「エネルギー」「経済」の併存が大切。 環境指標→省エネ→都市構造改革というように、 考え方の順序が逆方向になっていくのではないか。


■おわりに

 正直、 阪急電鉄と大阪ガスという企業文化をもった優良企業(傍目にはそう見える)におられながら、 自社の活動を中心とした世の中全体のビジョンについて的確な見識をもっておられるのに接し、 我身が引き締まる思いでした。

 池島氏が講演の冒頭にいわれた、 「関西を愛している」という言葉の意味は大きいと思う。 無限の経済発展ではなく、 限られた資源(人・自然)をいかに有効に利用し豊かな生活を実現するかを考えるとき、 論理では割り切れない愛着やこだわりが必要だと思うからだ。 そのためには、 他者の論理ではなく自分自身で考え行動することが切実に問われているのではないか。

 折しも当公団は廃止の方向に向かっているとのことである。 その是非はさておき、 各々が一市民の立場にたって何ができるのか、 そのためにこれまでの蓄積をどういかせるのかを発想することが大切なのではないだろうか。



情報コーナー

 

阪神白地まちづくり支援ネットワーク・第23回連絡会記録

 「郊外住宅団地のサスティナブル・コミュニティ」をテーマとして、 第23回の連絡会が12月7日(金)、 県立神戸生活創造センターで行われました。

 報告者/テーマは以下の通り。
  (1)齊木崇人さん(神戸芸術工科大学)/新田園都市とサスティナブル・コミュニティ
  (2)後藤祐介さん(ジーユー計画研究所)/民間既存住宅団地のサスティナブル・コミュニティのとりくみ
  (3)菅原康雄さん(兵庫県県土整備部企画調整局)/高齢社会のサスティナブル・コミュニティに向けて〜小野長寿の郷。

 齊木さんからは、 ロンドン郊外にちょうど100年前に着手され、 現在もつくり続けられている田園都市レッチワースの特徴と、 それらから得たことをベースにした筑波と神戸の開発計画について報告がありました。 レッチワースについては、 1年間の生活体験から得た8つのデザイン原理 について、 豊富なスライドをもとに解説されました。

※:「レッチワースの微地形を読む」「既存の集落を取り込んだ多様な街路の空間構成」「わかりやすい住居集合の空間単位」「集落から学んだヴィレッジグリーン、 そして前庭」「多様な住居集合パターン・8類型」「居住地を取り巻くファームベルト」「まちづくりは住民組織で」「共に住むための持続原理」

 後藤さんからは、 ご自身が地域のコンサルタントとして関わっている三木市緑が丘団地についての報告がありました。 約30年前に一気に開発されたことから来る年齢構成のアンバランス、 神戸都心と結ぶ鉄軌道の弱さ、 戸建て住宅地としての土地利用の硬直化などの問題点や、 地元協議会によるアンケート調査結果、 まちづくり基本構想について説明があり、 サスティナブル・コミュニティに向けた取り組みとして、 三木市がまちづくり助成要項を定めたこと、 まちづくり協議会では関心の高いコレクティブハウジングやコミュニティビジネス、 環境問題についての勉強会に取り組みはじめていることが報告されました。

 菅原さんからは、 小野市の約340haのエリアで検討されている「小野長寿の郷構想」について、 様々なデータによる計画の背景、 「構想」がめざすまちのイメージ、 県民モニター制度による計画内容の検討などについて報告がありました。

 3報告の後、 小森星児さん(神戸山手大学)のコメントがあり、 ロンドンではニュータウン開発の反省から近年のドックランド開発やジェントリフィケーションと進んできたこと、 バブル期に開発された住宅地はもっと深刻で、 三木緑が丘住宅地の場合はゆっくりと更新されていくこと、 長寿の郷はサスティナブルへの配慮が必要なこと、 などが指摘されました。

(中井都市研究室/中井 豊)


イベント案内

●被災実態についての学生発表会・第5回(最終回)

●地域防災シンポジウムin神戸

●メモリアルコンファレンス in KobeVII

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