建築思潮05

漂流する風景「「現代建築批判

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 現代の建築状況は、80年代に繰り広げられたポストモダン現象のあとをうけて、再びモダニズム様式が回帰してきたかのような様相を呈していると言える。しかし、モダニズムがあくまでもスタイルの問題として捉えられているならば、それがどれほどの求心力をもつかは疑問だ。また「場所」「環境」「プログラム」といった言葉が「建築」を規定する概念として浮上してきているが、いずれも支配的な規範たり得ているとは考えられない。現代建築はデザインの手掛かりを失い、いかにも混沌としているようにみえる。  『建築思潮05』ではこうした混沌をみすえながら、状況を記録することを意図している。日本の現代建築を様々な断面で構成している作家を個々に問いながら、現代建築の様々な問題を検証する作業をしてみた。個々の作品と、作品が生まれる時代状況の分析から、作家の最もクリティカルな部分に光を当てた、いわば作家論の形をかりた現代建築論の集成ができあがることを目指したわけだ。また現代建築論として、「場所」「プログラム」「地域」といった概念の出自を問い、なぜこのような概念が要請されたかを歴史的、思想的に問うてみた。こうした作業は表層的な概念操作にとどまりがちな現状を打破し、批評に耐える建築言語を確立させるためにも必要な作業だと考えられるからである。

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学芸出版社『建築思潮05』

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