開発圧力に対抗し緑地を守る市民たちの鎌倉

保全される広町の森

2003年10月2日、鎌倉市市議会は、26議席中19議席の賛成多数により、112億8600万円の公的資金を投ずる、広町緑地の買収を可決した。これによって、発端以来25年に及び、鎌倉における緑地保存市民運動の象徴ともなっていた広町の森は、宅地開発の危機から脱却した。鎌倉市は今後、都市公園法に定める都市林として広町を整備していくことになる。
  今回の動きは、昨年(2002年)10月に鎌倉市と腰越・広町地区開発共同事業体(山一土地(株)、戸田建設(株)、(株)間組)の間で取り交わされた合意から始まった。
  それは広町緑地の内、事業体3社が所有する38・9haに対する買収価格について、市が115億円を上限として買い取るという内容である。デベロッパーたちが、この条件に同意したことで、広町の保全を巡る状況は急展開をみせた。
  1996年に都市計画法29条に基づく開発行為許可申請書提出によって巻き起こった、事業3社と行政・市民の攻防は、鎌倉市議会の議決により、緑地買取保全を求める市民団体の勝利で決着したことになる。

住宅の密集した市街地のなかに、約60haの自然が残っている。広町緑地である。ここには谷戸(やと)の多様な動植物が生息している。
  私は「鎌倉・広町の森を愛する会」の池田尚弘さんの案内で2時間近く緑地を歩いた。未整備の小径は、しばしば夏草で行く手を遮られたが、所々にある手製の案内板や足場の悪い場所に板が架けられ、トレイルに沿って手入れの行われていることが分かる。会のメンバーが毎月草刈りなどのボランティア作業を行っているのだ。
  広町緑地は、こうした自然を愛する市民たちの活動によって守られてきた。その一方で、こころない侵入者によって希少種の生き物が持ち去られている。
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