開発圧力に対抗し緑地を守る市民たちの鎌倉

市民たちの鎌倉

 市民組織連携の動きは、緑地保全分野にも波及した。
  広町の森市民協議会は、市民同窓会の活動に参加している澤渡弘幸さんが中心となって2003年3月に結成された。買取が決定した後、広町緑地の保全・活用を目指して、関係5市民団体(風致保存会、もののふの道・グランドワークトラスト、鎌倉広町・台峯の自然を守る会、特定非営利活動法人北鎌倉の景観を後世に伝える基金)が結束したものだ。
  この連携の動きには、準備期間があった。鎌倉風致保存会の中に5団体の定例連絡会を設けたのが発端である。広町緑地保全運動を行っている団体の情報交換の場だ。当初、反発し合っていた市民団体は、相互の状態が分かるにつれ、次第に刺激し合うようになっていった。
  澤渡さんは、もともと市民活動には無縁な経済人である。隣地のマンション開発問題をきっかけに環境活動に参加するようになった。しかし、そこで発見したのは、些細な立場の違いで反発しあう市民の姿だった。厳しい利害のなかで生き残ってきた企業人の感覚からは信じがたいことである。共通の目標のために連携する必要性を主張することで、風致保存会のなかに連絡会が生まれ、市民協議会の誕生に結びついた。
  KKC結成にみるように、連携の動きは偶然に起きたものではない。鎌倉市民の間に、共通の認識として広まってきたものである。その大きな流れのなかで、緑地活用を計画し、運営する市民協議会が形成された。
  市民協議会は代表幹事3名(澤渡、大橋、大屋)、幹事50名で構成され、三つの専門部会(総務委員会、都市林委員会、フィールドワーク委員会)がある。これまでに8回幹事会が開催され、横浜の自然観察の森や舞岡公園を参照に、今後の緑地をどう運営するか、話し合われてきた。鎌倉市に自然生態系の調査や情報公開を求めた意見書を提出。都市林委員会では、自然環境の客観的評価、保全管理の方法、環境教育プログラムの立案、利用・管理法の立案、他公園の調査などを検討している。
  10月半ば開かれた緑政審議会は、広町の森市民協議会を市民代表の検討組織と認めた。10月下旬には、市のみどり課と都市林構想について話し合いがあった。緑地買収後の動きが本格化しているのである。


宅地開発予定地の倉久保の谷戸。台峯の谷で、鎌倉に残る数少ない谷間の湿地。豊かな生態が都心のすぐ傍に生きている。この谷戸と両側の斜面約27haが宅地開発(計画戸数80戸)される予定で、土地区画整理準備組合が設立されている
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