開発圧力に対抗し緑地を守る市民たちの鎌倉

連携する市民組織

鎌倉市は、鎌倉と大船にNPOセンターを開設し、現在(2003年3月)、254団体が登録している。
 このうち、広町緑地保全関係の主な民間団体としては、次の団体がある。
(1)鎌倉の自然を守る連合会
〒248‐0033 鎌倉市腰越1718‐35 電話・FAX/0467‐31‐3074
(2)NPO法人鎌倉広町・台峯の自然を守る会
〒248‐0033 鎌倉市腰越1718‐104 電話・FAX/0467‐31‐4559
(3)鎌倉広町の森市民協議会
〒284‐0006 鎌倉市大町2‐8‐23 電話・FAX/0467‐23‐2518
  ここで注目すべきは、鎌倉では、市民たちが独自な提案を示し、行政や企業に互して交渉する能力を持つようになっていることだ。行政を動かす上で、決め手になるのは、この当事者能力である。鎌倉の市民たちは、次第にいくつかの団体が連携することによって、この能力を蓄積してきた。
 最初に、それが発揮されたのは、市民が主体となった環境美化条例づくりである。
 鎌倉市民同窓会は、1994年に発足し、福祉、環境、文化などの分野の市民活動経験者47人で構成されたインターミディアリー(仲介組織)である。とかく個々の市民団体ごとに孤立し対立していた運動を連携させる動きをみせた。
 96年2月、市民同窓会は「鎌倉市環境美化条例(仮称)の制定について」という陳情書を市議会に提出した。これが「鎌倉市みんなで散乱のない美しい町を作る条例」を制定する運動のスタートとなった。
 6月、散乱ごみの防止や公衆トイレの美化に取り組んできた「鎌倉を美しくする会」に協力してシンポジウムを開催。
 二つの市民団体が連合したことは、鎌倉市の反応を誘発するのに十分だった。10月、鎌倉市資源再生部からパートナーシップ形成の申し入れがあった。先の2団体に相模湾のビーチ・クリーンアップ活動に取り組んでいた「COP」を加え、「鎌倉美化ワーキンググループ」が結成された。このWGは98年4月に、竹内謙市長に「美化条例」制定の要望書を提出。同時に「(仮称)鎌倉市環境美化条例案」をまとめた。
市民の動きはこれにとどまらなかった。行政に一任せず、市民全体の意見を結集することによって、条例の実効性を高めようとした。このため「市民フォーラム」(市民集会)を呼びかけたのである。環境・福祉関連66団体に呼びかけた結果、98年に18団体が参加し「呼びかけ人会議」が開催された。こうして「キープ鎌倉クリーン市民フォーラム」が99年6月5日に約150名の市民の参加を得て開催された。パネルディスカッションには竹内市長も加わり「市民の努力の積み重ねから条例が出来てくるようであれば、画期的なことだ」と述べた。すでに「(仮称)鎌倉市環境美化条例案」を改定した「鎌倉市美化市民条例(案)」が市長に提出されていた。
市民フォーラムの成功を踏まえて7月26日に、「キープ鎌倉クリーン推進会議」(KKC)が誕生した。これは呼びかけ人会議を母体に、市民フォーラム参加者を加えた拡大版の市民組織である。このKKCが具体的な条文をめぐる市側との検討を経て、2002年3月に条例が成立したのである。
 この実績は大きい。


台峯から円覚寺を望む。作家のなだ・いなださんが理事長を務めるNPO法人台峯ナショナル・トラスト『北鎌倉の景観を後世に伝える基金』が主催する「なだいなだと北鎌倉を歩く」の集まり。手前の後ろ姿がなだ・いなださん。
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