『金瓶梅』のことわざ。


69回
「芸者は利口、簪屋はずるい、廓の地まわりすばしこい。」
「龍虎たたかえば、子鹿が難儀する。」            (とばっちり)   

70回
「先を急げば帳もゆらぎ、心はやれば鞭また折れる」
「禁裏に悪人いなければ、都でいくさも起こりゃせぬ」

71回
「とかくよい物長持ちしない、散ってもろいは雲に瑠璃」

72回
「空にゃお日さまお月さま、よろず何事自然にばれる」
「人にあったら三分の話、見せちゃいけない腹の底」
「もやしはちゃんと束ねられるものじゃない。」
「大人は小人のあやまちを見ず。」   (わずかな過ちはとがめない)
「黒い着物を着たら、黒い柱を抱く。」( 雇われたら主人に従う。)

73回
「法は六耳に伝えず。」
「猪八戒は人気のない店には入らない。」   (不景気な顔をしていてはろくなことがない。)
「いい人は薄命、悪者は千年。」
「轆轤で円くならなければ、切って円くする。」( なにごとも円満第一?)
「亭主の顔には犬の毛、女房の顔には鳳の毛」   (亭主はとかくうるさいもの、女房はやさしいもの)
「一夜契れば百夜の情。」

74回
「船は多くても港の邪魔にはならく、車は多くても道の邪魔にはならぬ。」     (いろいろあって世の中)

75回
「お先真っ暗道険し、二六時たゆまず精を出せ。」
「姑がいくらやかましくても、嫁の耳に入らぬ。」           (聞いて聞かぬふり)
「一枝手折れば、百株損ねる。」    (物はその類を傷む。)
「風が揺さぶらなけりゃ、木も動かぬ。」
「養老院にも、頭に立つ人はいる。」
「たたき合う手はろくでもない、怒鳴り合う口はろくでもない。」    (理由はどうあれ、もめ事は良くない)
「十本の指をみんな自分の口に入れなければ気がすまない。」   (欲張りなこと。)

76回
「鶏は一羽死ねば一羽が鳴く」
「新しい鶏は泣き方が美しい。」
「大根を引っこ抜いて地所が広くなる。」    (邪魔者を取り除く。)
「下水の瓶は大きくなくちゃ。」
「君子は一人で十人の相手をする。」
「人は怒りを忍び、仏は香を受けるもの。」
「牡丹の花はよいけれど、やはり助けるは緑の葉。」  (身内が大事ということ?)
「安く買った物は安く売る、たやすく手に入れたものはたやすく捨てる。」
「人が善ければ人から馬鹿にされ、馬が善ければ人に乗られる。」
「大正しからざれば、小敬せず。」
「牝犬が尾を振らなければ、牡犬は乗っからぬ。」   (女性に責任がある。)
「虎を描いて皮を描くも骨は描き難し、人を知って顔を知るも心は知り難し。」
「事は密ならざれば害成る。」

77回
「碑文ほるなどむだなこと、道行く人の口が碑文。」   (大事なことは知らせなくても、自然に伝わる)

78回
「関羽の豆腐売り」    (品物はやわらかくても人は手強い)
「驢馬の糞は丸くてぴかぴかしているけど、中がどんなだかわからない。」
「実子はからだの一部分。」
「おっかさんの顔を見たら、一本の木に桃の花千輪」    (母親はありがたい)
「兵は神速を貴ぶ。」
「先に米を炊いたものが、先に飯を食べる。」   (早い者勝ち)

79回
「一己の精神に限りあり、天下の色欲に限りなし。」
「嗜欲深き者はその生機浅し。」
「金は火に煉られて質が分かり、人は金をつかんで心を見せる。」

80回
「揚州よいというけれど名ごり惜しがる場所じゃない。」
「西江の水汲んだとて、洗い落とせぬ赤い顔。」    (お酒を飲んだことが歴然。)
「色の度胸はこわいもの知らず、閨もしぐれる深情け。」
「生きているときに、つまみ食いして口をぬぐうことをしなければ、死んでからのち、騒ぎを起こして家を去る。」
                (主人がいるとき不正を働く人間は、死後離反する)
「蛇は洞の中で正体をあらわし、鳥は籠を出ればすぐ飛んで行く。」
「交わりは風流情事にあり、絵は山河自然にある。」

81回
「天に不測の風雲あり、人に旦夕の禍福あり。」   (運命はわからない。)
「道を守ればおまんまの食い上げ。」      (融通を利かせないといけない。)
「籠を破って鳳凰飛び立ち、鎖ちぎってこう龍逃げ出す。」
「股を切ってくれたのも知らず、香を焚いてくれたのも知らず。」  (恩知らず。)
「人の挑発にのったら、ひょうたんをなくす。」        (挑発に乗ると、大事なものを失う)   
「弱り目には下男が主人をだまし、たたり目には人がわるだくみ。」

83回
「噛む蚊は団扇でたたかれ、口は禍のもと。」
「とかくよいこと邪魔が入り、長く続かぬ内証事。」
「両手で開く生死の路、さっと飛び出す是非の門。」


85回
「好事門を出でず、悪事千里に伝わる。」
「便所の煉瓦は臭くてかたい。」
「何仙姑だって、亭主をもっている。」
「いざこざは来たって耳に入れど、聞かざれば自然に無し。」
「天が倒れかかったって、支えてくれる大男はいるもの。」    (何とかなる。)
「よい男は別れるときの飯は食わぬ。よい女は嫁入りのときの着物は着ない。」
「上を瞞しても下は瞞さぬ。」        (下々の仁義)

86回
「垣根に隙あり壁に耳あり。」
「蟇を飼って水蠱児病にかかった。」
「一日の腹立ちじゃ、からだは凍らぬ。」
「恩と恨みが半々ならば、千年たつとも騒ぎなし。」
「来るもなこうど、去るもなこうど。ふたりの世話をかけるな。」
「蛇のくぐった穴は蛇が知っている。 」     (自分のしたことは自分が一番知っている。)
「船旅は千里続いても、おひらきならない宴会はない。」
「頭の出たたるきは先に腐る。」
「人には名あり、木には影あり。」
「蠅は割れ目のない卵にはもぐれぬ。」
「木の葉は落ちても、根元へとどく。」
「とかく世間はつらいもの、どうせ死別か生き別れ。」
「龍と虎との道連れなれば、吉か凶かはわかりゃせぬ。」

87回
「探すときには影さえみえず、見つけりゃ手間ひまいらぬこと。」
「兎は山を駆け回っても、やっぱりもとの古巣へ戻るもの。」
「仇敵には仇敵のこころがよくわかる。」
「仇敵には相手がおり、借金には貸し主がおる。」
「三寸の気があってこそ役もする、一旦無事で万事休する。」
「眉をしかめる事せねば、歯がみするような人もいない。」

88回
「人間生まれて地あり、死して処あり。」
「一尺の水に十丈の波。」    (大げさなこと。)
「天から降る鈎と糸、地に禍を引き起こす。」

89回
「嫁しては夫があるじ。」
「木の葉もふれ合うときがあり、人も運がむくときがある。」

90回
「家の神をものにしなければ、家の鬼はどうしょうもない。」

91回
「お前が手品を使っても、こっちは飲ませる洗足の水。」  (その手には乗らない。)
「疾風怒濤は寡婦の門に入らず。」
「お上の使いは、まちがいない。」
「人のためは自分のため。」
「海の深さはわかるけど、人の心はわからない。」
「縁は糸に牽かれる。」
「女房がふたつ多ければ、黄金はどんどん伸びてゆき、女房が三つ多ければ、黄金は積もって山となる。」
「縁は前世の約束なれば藍田に玉を植えもする。」
「三十年目の報い。」
「醜いのは家の宝、きれいなのは騒ぎの種。」    (奥さんが美人ではトラブルのもと)

92回
「月の玉兎や月の金烏さえ、みごと捕らえるはかりごと。」
「盲が五道将軍に出会い、餓鬼が鍾馗にぶるかる。」
「故郷の人ならみななつかしく、郷里の水ならみなうまい。」
「恨みは解くべし、結ぶべからず。」
「酒情深きこと海のごとく、色胆大なること天のごとし。」
「清いものは清いし、濁っているものは濁っている。」    (いつかは答え出る)
「きれいな花にも刺があり、とかく毒ある人ごころ。」
「人心は鉄、法律は炉。」
「禍と福は人の勝手に招くもの、楽の果てには悲ありと知れ。」

93回
「坐して食らえば山さえ空し。」
「若草は霜には弱いが、霜は日に弱い。」        (悪は悪なりに持つ悩み。)
「咽の深きこと海のごとく、日月の快きこと梭のごとし。」   (食費はばかにならぬ)
「三日で売れない一荷の真、一日で売ったり三荷の嘘。」   (真実は疑われ、嘘はすぐ信じられる)
「色目使うは金のため、泣いて見せるも銭のため。」

95回
「愛に溺るれば目がくらみ、利を貪る者は飽くことなし」
「羊と酒均しくゆきわたらざれば駟馬鎮に奔り、家の取締り正しからざれば奴婢怨みを抱く。」

96回
「暮らしの道がなければ一斗桝の金があってもだめ。」    (財産があるだけでは生きていけない)

97回
「小僧っ子よけいな邪魔をして、情けを仇にすり変える。」

98回
「たとえお前が鬼でも蛇でも、洗脚の水を飲んでやろ。」    (惚れ込みました。)

99回
「黒い頭の虫(人間のこと)は助けちゃならぬ、助けりゃ人の肉を食う。」


                            元へ戻る