触法心神喪失者等に対する精神医療の改革にあたっての要望書

平成14年2月10日

厚生労働省精神保健福祉課長 殿

日本精神障害者リハビリテーション学会

                              会長 江畑敬介

学会事務局住所:112-0012 東京都文京区大塚3-29-1

筑波大学教育研究科カウンセリング専攻リハビリテーションコース内

電話:03-3942-6830

当学会は、精神障害者のリハビリテーションを研究し、それによって精神障害者の社会参加を促進するよう努力しているものである。当学会としては、精神障害者のリハビリテーションを進める立場から、触法心神喪失者等の処遇の改革にあったては、次の点を十分に配慮されるよう望むものである。

 

1)触法心神喪失者等の地域リハビリテーションと社会参加を円滑に促進するためには、大規模な施設を少数つくるのではなく、例えば、一病棟30床以内とし、可能な限り開放的な環境を提供する司法精神医療施設を各都道府県につくることが必要である。

2)司法精神医療病棟の運営にあたっては十分な施設と人員を必要とするので、現行の医療法と診療報酬体系に基づかないものでなければならない。高度の精神科治療とリハビリテーションを提供できるようにするためには、例えば、看護職員数は患者一人当たり、少なくても二人は確保するように配慮願いたい。また、入院中より再発の防止には格別の取り組みが必要であり、高度の心理教育及び認知行動療法を実施するための作業療法士、精神保健福祉士、臨床心理士の配置に特段の配慮を願いたい。

3)入院措置および通院措置の有効期間には期限を設け、その必要性の判定は1年毎に裁定することとする。

4)精神障害者が心神喪失等によって触法行為に至ることを予防するためには、今後、地域精神医療と地域リハビリテーションをより一層充実しなければならない。司法精神医療体制だけが突出することによって、精神障害者は危険であるとの差別と偏見を助長することのないように万全を図られたい。精神医療と地域リハビリテーションの今後充実すべきことについては別の機会に意見を述べる。

5)司法精神医学の発展と精神医療従事者に対する司法精神医療の研修を充実するために司法精神医学研究機関を設置する。

6)触法心神喪失等に対する精神医療に関する法案については、その運用にあたり、わが国では、臨床的にも法律的にも,知識、技術、経験が乏しい現状を踏まえ、新法は5年の期限をつけて見直しを行うよう要望する。

 

以上。


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