Impressions 2003 vol.1







■  三四郎  夏目漱石 新潮文庫
■  村上朝日堂はいかにして鍛えられたか  村上春樹 新潮文庫
■  The Other Side of Midnight  Sidney Sheldon, Warner Books
■  リターナー  監督:山崎貴 主演:金城武
■ * ゴースト・ワールド  監督:テリー・ツワイゴフ 制作:ジョン・マルコヴィッチ
■  オテサーネク  監督:シュバンクマイエル
■  ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ  主演・監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル
■  京都大学総合博物館
■ * 荒神橋付近の木の下のベンチ
■ * 島津創業記念資料館−科学の森−
■  アルプスの少女ハイジとスイス展  @京都高島屋
■  仄暗い水の底から  監督:中田秀夫 主演:黒木瞳
■  横尾byヨコオ  @京都国立近代美術館
■  私と直観と宇宙人  横尾忠則 文春文庫
■  さみしさの周波数  乙一 角川スニーカー文庫
■  アート・オブ・スターウォーズ展  @京都国立博物館
■  劇団四季展 @美術館「えき」KYOTO
■ * 英雄〜ヒーロー〜  監督:チャン・イーモウ 主演:ジェット・リー、トニー・レオン、マギー・チャン、チャン・ツィイー
■ * 夜の建仁寺の境内
■  第27回京都大骨董祭  @パルスプラザ








■■■ 三四郎 ■■■  夏目漱石 新潮文庫

この本は高校くらいの時に図書室のを一回、二十歳を過ぎてから自分で買って一回読んでいる筈。・・・筈、というのは、内容を全く覚えていないから。隣り合わせに並んでいる「虞美人草」もまるで覚えていない。ついでに言えば中学校の時に塾で借りて読んだ「坊ちゃん」に至っても全くストーリィを覚えていない。・・・きっと、今回感想を書いてもまた忘れるような気がする。

田舎から東京の大学に出てきたばかりの三四郎が、あっちにもこっちにも気のある素振りを見せるちょっと頭の良い女に振り回されて失恋する話。話の有様は大して面白い訳ではなく、基本的にダサい人(=三四郎)のダサい日記みたいな感じだった。ダサい人が「俺ってダサいんじゃあ(汗)」とビクビクしながら周囲を眺め回している様を見せつけられるのはイタイ。悪いけど、あまり見たくない。酒飲み話であれば笑い話に加工されるのが常だけど、小説はそのまま見せようとするから困ったもんだ。一応読者は、三四郎が段々と東京に馴れていく様を見る塩梅になっている。三四郎はさておき、時折女達の台詞がちょっと気の利いたエッセイみたいだったり、当初は格好良く見えた人が見方を変えれば案外そうでもないことが訳分かってきたり、そういう処は面白かった。

文体は凄く好き。媚びていなくて、格好良い。ざくざく切り進むような感じ。平行して内田百ケンを読んでいるけれど、残念ながら圧倒的に力量の差を感じる。本当に格好イイ文体というは、旧仮名遣いを新仮名に置き換えても、決して色褪せないということが分かる。

◇ Amazon: 「三四郎」








■■■ 村上朝日堂はいかにして鍛えられたか ■■■ 村上春樹 新潮文庫

誰かのHPを読んでいるかのような(って半HPなのかな)、トロトロと続くエッセイ。同時期に平行して「アンダーグラウンド」を執筆していたので、丁度良いバランスだった、との話。とりとめのない話でも翻訳物でも、使われている言葉は易しいものばかり。なのにやっぱりこの人の空気はどこまでもついてまわっていて。話も大事だけれど、空気の方がもっと大事ってことなんだろう、自分にとっては。

一般読者から一風変わったマンション・ラブホテルの名前を募って紹介している箇所が面白かった。ウケたのが「MOTHER'S WOMB」なる名前のマンション。凄すぎる(笑)。“沖縄の円墓”みたいだ。みんな毎晩疲れてぞろぞろ“母の子宮”へ帰ってくる辺りを想像すると、何やら深淵かつ哲学的。私の想像では、そんな名前をしているマンションなんていうのは、壁は漆喰、ゆるゆると丸くカーブしていて、腰を屈めないと入れないようなドーナツの穴のような丸い入り口がぽっかり空いていて。でも奥は真っ暗で表からはどうなっているのかよく分からない。入ってみると、もやん、と灯りが点いて、フンデルト・ヴァッサーの建築物内部か「シュナの旅」の巨人製造器みたいな感じに、有機的にぐねぐねしていることを知るのだ。部屋の内装はベージュの土壁で、ここもまた照明もないのにぼんやりと明るい。そして部屋の中は空っぽ。毎晩そこでは眠るだけ。でも疲れはよく取れる。・・・なかなか良いではないですか。釜風呂型カプセルって感じで(笑)。

あと、「心臓を貫かれて」という小説の紹介があったのだが、読んでみたいと思った。文庫化されているようだ(文春文庫)。

◇ Amazon: 「村上朝日堂はいかにして鍛えられたか」








■■■ The Other Side of Midnight ■■■ Sidney Sheldon, Warner Books

邦訳題は「真夜中は別の顔」。次々に男を乗り換えて出世の階段を上っていく、知的でセクシーなフランス女優、Noelle Page。そのノエルを過去に孕ませ捨てた浮気性の米国人男前パイロット、Larry Douglas。申し分のない恋人をにべもなく捨て、その親友ラリーと電撃結婚した真面目で仕事熱心なCatherine。受けた恨みは三倍返し、ノエルが辿り着いた頂点の男、怖いギリシャ人大富豪、Constantin Demiris。この四者が繰り広げる、愛と裏切りと仕返しのサスペンスなのだった。

エンタメといえば、勧善懲悪。主要登場人物において、罪と罰の程度は各々比例しているのがお約束だ。物凄く悪い奴には悲惨な結末が待っているし、ちょっと悪い処もない訳ではなかった奴にはほろ苦い結末が待っている。また身の上の「不幸」は「罪」を軽減する免罪符として使われる。悪人でも可哀想な動機があれば多少許してしまうのが人情、そういった処がストーリィの結末にも反映されるという。その辺を踏まえて四人を見てみると、ちょっと納得のいかない処がある。

整理してみると、「罪」に関して、ノエルは男を利用しまくってきたという点、デミリスに隠れてラリーと付き合っていたこと、ラリーの妻の殺人未遂。ラリーは自分勝手で数々の女(妻含む)を泣かせてきた点、妻殺し未遂。キャサリンは善良な男を裏切り他の男に走った点、デミリスはビジネスにおける報復の名の下に裏で散々人を殺しまくってきた点で説明がつく。それぞれの「不幸」は、ノエルについては最初父親に愛人としてのレールを敷かれて始まった点、時に無一文で苦労してきたこと、若い頃ラリーに騙された点。ラリーに関しては無し、キャサリンは夫に裏切られ続け、殺されかけたこと、デミリスは幾多の裏切りを自力で乗り越えなくてはならなかったこと。その辺を差し引きして、「罰」はどう出たか、というとノエルとラリーは本当は無罪なのにハメられて死刑、キャサリンは溺れて錯乱して廃人に、そして、デミリスは無傷といったもの。

・・・善良な男をドタキャンする女は廃人レベルの「罰」を受け、愛人は作り邦題、裏で報復とはいえ人を殺しまくってきた筈のデミリスは無罪放免ですよ。また、「不幸」なしの、最初から最后までロクでもないラリーの「罰」が、幾多の「不幸」を抱えてきたノエルと同程度だなんて。・・・ちょっとそれって、かなり不公平じゃないのよう(怒)。エンタメ作り話の王道を行く作者なのに、いまいち勧善懲悪具合のバランスが宜しくない("THE MASTER OF THE GAMES"なんてその辺はっきりしてたのに)。純文学みたいな不条理や儚さを出したい訳でもないので、なんだかオチの収まり具合が心地悪い。いや話自体、つまり読んでいる最中は面白かったんだけどね。読み終わってふと気が付いて、こんなんで良いのかと。

米国のエンタメ小説って大体そうなのだろうが、シドニー・シェルダンという人も、これでもか!というくらい人物描写に縷々筆舌を尽くす人だと思う。根本的な処で理屈を並べることをダサイとし、あうんの呼吸で雰囲気を伝えるのをヨシとする日本人も、此処まで緻密かつ徹底的に、機関銃のように延々まくし立てられたら、ぐぅの根も出ないのでは。・・・というか私は出ないよ。喧嘩にしても書くにしても、きっとこんなに飽きずにまくしたてられない。選び抜いた凄烈かつ強靱な言葉でさえ、この畳みかけるような言葉の奔流にはあっさり飲み込まれてしまうに違いない(って、なんか夫婦喧嘩論みたいだな)。やっぱ「言わなきゃ分からない文化」には負けるわー、と思う。

◇ Amazon: "The Other Side of Midnight"








■■■ リターナー ■■■ 監督:山崎貴 主演:金城武

日本を代表する低予算SF映画監督の映画。ハリウッドの良いとこ取りっぽく普通に面白かったけどレンタルで丁度加減。タイムパラドックスをどう説明するんだろう、と思って解説版もDVDで観てみたけど、話題を避けていた(笑)。ミリが消える時、ああ死ぬのね、と普通に思ったよ。だって死ぬはずの人間がゴロゴロ助かることになれば、ミリは生まれなかったかもしれないし。・・・金城がミリを信じたように見せかけて首の爆弾を剥がさせようとするくだりは、展開が分かりすぎちゃってちょっとベタ。また、ミリが「きっと助けに来るよ」と呟いた時点で最后どう助けに来るのか「おっ」と期待したけど、その辺上手い具合に作られていた。でもじかに助けに来てもいいと思うなあ。積もる話もあるだろうし。・・・ってそれじゃ演出的に詰まんないのか。

この監督ってとことん性善説な人なんだなあと思う。「ジュブナイル」そうだったけど、根底に流れるテーマがとても甘い。でろ甘(笑)。「話せばきっと分かる」「やればきっと出来る」みたいな。今回のは対象年齢何歳くらいだったんだろう。高校生くらい? でも爆破で剥き出しになったナマ脊椎付き下半身死体とか出しちゃったらX-ratedよね、米国公開の場合。「いい人」な割に、殺戮の見せ方に命掛けてるし(笑)、この監督ってなんかアンバランスで子供っぽいイメージだ。いや貶してる訳でも褒めてる訳でもなく。

ポスターの金城武カッコ良すぎ。でも蓋を開けてみたら岸谷五郎のキレっぷりがステキだった。あれはやってる本人も作り上げてるスタッフも楽しかろうて。

◇  リターナー HP
◇ Amazon: 「リターナー」








*■■■ ゴースト・ワールド ■■■ 監督:テリー・ツワイゴフ 制作:ジョン・マルコヴィッチ

むっちゃツボ。いーわー。Ened(イーニド)も、演じているThora Birch(ソーラ・バーチ)も、とても気に入る(メガネも古着も黒髪も、実は幼い瞳も大好きよ)。Steve Bucemi演じるマニアでヲタクなオヤジが、キラリとイカすのかやっぱ気色悪いだけなのか悩んで、1.8回ほど観た。結論。やっぱり気色悪い(ホッ)(ホッとしてる自分も何だか)。でもイーニドの気持ちは分かる。いろいろと。

作中、"Hi, guys! "と声を掛けながら二回ほどキャピキャピッと登場する、所謂フレンドリーなナイスガール(タイプ的には「キューティ・ブロンド」の主人公)。アレを二人は毛嫌いする訳だが、それを見て妙なカタルシスを覚えた。あの日の当たる正当派キャラなら実際其処此処にゴマンと存在する。一種の必須社交コードといってもいいくらいだ。実際にイイ奴かどうかは別次元の問題なんだが。

なんでイーニドは逃げちゃったんだろう。歳の差という米国的社会常識に無意識に負けてしまったんだとしたら、ちょっと詰まらない。あれで強けりゃ無敵なのになー。自由と孤独と変人はワンセットでしょ? ・・・でもある意味、あの反則技(逃避リセット)は普通の現実のデフォルメなのかもしれない。その代わり、エンドレスというオマケが付いてくるが。一回くらい逃げた処で、人生終わってはくれない訳で。

◇  予告編フィルム・・・二人の女の子の物語、っていうよりどっちかというとイーニドの物語。
◇  ゴースト・ワールド HP
◇ Amazon: 「ゴースト・ワールド」








■■■ オテサーネク ■■■ 監督:シュバンクマイエル

チェコ人形アニメは時々観たくなる。人形展へ行っても本で見てもチェコの人形は無骨でザツいが、映画に出てくる人形達やその亜種も、人間とは一線画してあるような気がする。映画自体は、作り物めいた感じがツボ。2000年頃のチェコって1960年くらいの日本の雰囲気だ。レトロなのではなく、古汚く、物がまだ浪費されていない感。その分、妙に生活感のある、人間臭のする画面になっていた。

最后にオテサーネクが切り刻まれる処が観たかった。すっきりしない。何人も骨にしてきた野郎なのになー(笑)。

子役のオーディションフィルムを観たが、何を基準に「ヨシこの子で行こう!」なのか凄く不思議。すんごいダメダメで、その辺に転がってるただの子って感じなんだもん。でも段々形になってくるんだな。監督にはあの中に何が見えていたんだろうか。

◇ Amazon: 「オテサーネク」








■■■ ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ ■■■  主演・監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル

オフブロードウェイのが映画になった奴らしい。ロッキー・ホラー・ショーにまではメジャー化していない模様。

異形の者は忌み嫌われつつ崇められる。こういうのを何かの指針にするほど感情移入するのは好きでない。あの挿入歌の歌詞にせよ、ギリシアの哲学者がその昔言い出したこと。セレブが熱狂、とあるけれど、セレブとは私、生きてきた背景が違うもんなぁ。無理もない。

でも楽しむのは好きだ。舞台があれば観たいかも。

◇  ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ HP
◇ Amazon: 「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」








■■■ 京都大学総合博物館 ■■■

名物・チンパンジーのアイちゃんと勝負したが、数字当てゲームの方はタッチパネルの感度が悪くて時間負け。ついでに色漢字当てゲームの方で斜めから見た画面の色がよく分からなくて(茶色か紫か)一問不正解。・・・猿くらい、気持ちよく勝ちたかったよ。あれ、挑戦者の性別と年齢データを取るんだけど、実際に統計取るのは多分マズイと思う。私なんかルールを聞き流して適当にやり始めたもの。

マレーシアの疑似雨林はちょっといい感じ。休める椅子があればもっといい(びっくりドンキーの内装じゃ駄目なのよ)。もとい、せっかくの森上吊り橋を通らせて欲しかった。・・・あの辺の話は新書で出してくれたなら、是非買って読んでみたいなあ。コーナーも大きく、ある程度詳しく解説が読めて面白かったので。

エンドレスで流れていた「君も自衛隊に入らないか」的青少年向けのPRフィルムが、ちょっと引っ掛かった。勧誘の対象が少年オンリーっぽい。・・・丈夫で利発な少女も誘ってあげてね。

全体的に内容が断片的で、唐突かつマニアック。なるほどここは青少年科学センターではなく、大学研究院をの内容を間引いてきた展示なんだな、と妙に納得した。きっと研究室同士でも、隣の人は何する人ぞ、って感じなんだろう。まあ小振りな博物館だし母体がそういう機関だし、仕方ないのかな。

新しくできたという大学構内のカフェでリゾットを食べる。アルデンテの米。普通に美味しかった。本屋が閉まってて残念。文庫本を束買いして帰ろうと思ってたのに。

◇  京都大学総合博物館








*■■■ 荒神橋付近の木の下のベンチ ■■■

ちょっと記憶があやふやだけど、鴨川沿いの、なんしか京都府立病院の裏。京阪電車で言うと、出町柳と丸太町の間。バス停にあるような古いチャチいベンチが、木のぐるりを無造作に囲んでいる箇所である。鴨川縁はよく歩いたけど前はこんなのあったかな、と。夏場にも関わらず、涼しい川風のお陰でとても心地よい。また、大きな木の下なので日陰で眩しくない。グレードは低いが、十分機能している川床といった感じ(9月時)。コンビニで買ったたらみのゼリーを食べてお茶を飲み、ほっこりした(勿論ゴミはキッチリ持って帰るべし)。本を読む少女等、他にも二三、来客が居た。

これを作った人、維持している人に敬意。殆ど来る機会がないのが残念。

◇  位置(地図中心点)








*■■■ 島津創業記念資料館−科学の森− ■■■

クラフトエヴィング商会の商品。ではなくて、実在の本物。・・・そんなもん一体何に使うねん?、みたいな古い理科器械が、それもかなり凄い職人技の精緻な器械が、大事そう且つ自慢そうに陳列してある。・・・男達のロマンの怨念が籠もってるのを感じた。人はそれを「情熱」と呼ぶのよ。皆さん地上の星なのねえ。なんというか、工芸品なのか理科器械なのかよく分からない感が、現代のブツとの風情の違う処だ。

小学生向けの無用の長物上等なものも沢山。断言しよう。今日び普通の公立小学校ではこんなエエもんつこてない。レントゲンは巨大なマホガニーのクローゼット入りで、名前はダイアナ号。他にも桃山号なんて機械もあった。昔の器械は木と鉄で出来ていて重厚。半端に醜悪なプラスチック類が一切使われていない。ネーミングも良い。人名が付いている製品名は必ず「何々氏何々」、と「氏」が入るところが礼節の国ジパング(今は無き習慣か)。「電卵」なんて素敵な名前も(何に使うのかは忘れた)。「魔的な実験が」なんて表現が説明書きに見られる処、分かってやってる感もある。ところが戦後あたりから、突然「2001年宇宙の旅」みたいなデザインになってくる。即ち表面カヴァーがオール樹脂の世界。戦前・戦後ってまるきり世界が違うんだな、と思った。

長年期待していた通り(五年程)、ステキな代物であった。ノーベル賞取った人がどうとか抜きにして、残しておいて欲しい。建物ごと。

◇  島津創業記念資料館−科学の森−








■■■ アルプスの少女ハイジとスイス展 ■■■ @京都高島屋

おめざフェア(某朝番組の企画らしい)でふらふらと“銀だこ”のたこ焼きを食した後、これまたついふらふらと誘蛾灯につられるように入ってしまった特設展。以前全巻ビデオで見直した友人が、やたらロッテンマイヤーさんの肩を持つので、気になっていた(でまた山に居たままでは行儀も悪く字も読めなかった訳だし、フランクフルトへ降りて良かったよあの子は、みたいなことを言うのだ、オトナめ)。中には同い年くらいの女子が、私と同じく単独でふらふら捕まっているのが見受けられた。・・・魔性のアニメ、ハイジよ(つぶやき)。

全話の軽い解説とセル画が順に並べられ、合間合間にキャラ設定や背景設定の絵コンテ、DVDパッケージの描き降ろし原画などが展示されていた。奥ではフィルムも上映していたが、遅くに入ったので見れなかった(残念)。

そうそう、ドイツでやってるハイジは主題歌のメロディが違うのよね(探せばネット上で聞ける筈。ヨーデルはお約束。絵とテンポは同じ。勿論ドイツ語)。ハイジ、もいちど隅から隅まで観たいな。あんまりよく覚えてない。出口のショップにて自分の分と友達の分のハイジのメモ帳を購入。・・・でも何に使えばいいんだ(悩)。

◇  アルプスの少女ハイジ HP








■■■ 仄暗い水の底から ■■■  監督:中田秀夫 主演:黒木瞳

テーマは母の愛。怖くもゲロくもないマイルドなホラーだった。私はびっくりさせるだけのホラー映画は嫌いだ。ひたすら痛そうな奴もイヤだ。ホラーならまだこういう手合いのがいいなあ。

で、あの黒木瞳は娘がいつか老婆になって死んだ後どうするんだろう。予想としては、娘が死んでも分からなくて、目的意識だけが残って、やっぱりずっと居着くような気がする。あのパワー有りそ気な女の子をあやしながら。人は、霊の強い弱いはランダムである、と考えるのね。人の運や才能がランダムであるように。

◇ Amazon: 「仄暗い水の底から」








■■■ 横尾byヨコオ ■■■ @京都国立近代美術館

横尾忠則のポスターや作品など。こういうのって国立近代美術館で大々的にやるのか、と。ポップアートより更に俗いではないですか。イメージ的には京都駅の美術館「えき」で少々、という感じ。京都国立博物館といい、砕けてきたなあ(独立法人化)。まあ、客としては交通の便が良くて空調が効いてれば、場所の肩書きはまるで問わないんだけれども。

あまり感想が沸いてこない。もう見飽きるほど目にしてきたからだと思う。ポスターを見ても、古いのか新しいのか分からない。1968年のシルクスクリーンの状況劇場のポスターからして既に近年のと同じ蛍光ピンクやイエローがビシバシ使われている。マンネリとも思えるし商業ベースの作品作りとも思えるし時代を超えてイカしてるとも思える。五歳の時描いたという巌流島の決闘シーン。上手いのもさることながら、大人になってもそのモチーフを何度も繰り返してる処が凄い。この人こそ“妄想の子供(オテサーネクの副題)”って感じだ(笑)。

繰り返される滝、覗き見る日本兵、浮遊するウミガメ・・・。こういうobsessionを好きなだけ反芻するのは、生理的に苦し気持ちいいことなんだろうな。放出の場があって、放出されたモノに社会的に認められる何らかの“質”があるっていうのは、かなり奇跡的なことだと思う。大抵は良くて趣味か、悪くて変質者・犯罪者になってしまうから。

◇  横尾忠則 HP
◇  京都国立近代美術館








■■■ 私と直観と宇宙人 ■■■  横尾忠則 文春文庫

こんなエラク大変な人だったのか、とびっくり。ミュージアムショップで何となく買ってきたものの、あまりにもデンパな内容で、もう、どうしようかと。しょっちゅう宇宙と交信してるし、有るはずのないものを見てるし、会話してるし(汗)。おまけに言っていることの辻褄が合わず、支離滅裂だ。最初は、この人ぜったい何か(クスリ)やってるわ、と思わずにはいられなかった。が、途中から考えが変わってきた。この人は、生まれつき、そういうのが見える人なのだ。精神的にだか、脳の欠陥的にだか、分からないけれど。クスリをやらなくても、きっとそういうものが脳から絶えず分泌されている人なんだろう。そう考えると、病床で空中に牛の頭をクッキリ見て、自分はどこかおかしいので医者に診てもらおう、と行動を起こした三浦綾子というのは凄い人なのかもしれない。私は見えたり聞こえたりしたら、信じるよ。とか書くと、養老孟司に、ちっちっち、と言われそうだけど。

クスリをやってそういうものと交信して絵を描くのと、クスリをやらずにそういうものと交信しながら絵を描くのでは、健康と法律問題以外は大差ないような気がする。脳味噌の中までは取り締まれない。

◇  横尾忠則 HP
◇ Amazon: 「私と直観と宇宙人」








■■■ さみしさの周波数 ■■■  乙一 角川スニーカー文庫

いまいちだった。どれも物足りない。強いて言えば、一番最后の「失はれた物語」がまだ。交通事故で右腕の感覚だけになってしまった男の、それからと死ぬまでの話なんだけれども。でも実際は死ぬ以前にさっさと気が狂いそうだ。

◇ Amazon: 「さみしさの周波数」








■■■ アート・オブ・スターウォーズ展 ■■■ @京都国立博物館

子供の頃からジオラマなんかを見るのは結構好きだ。特に、入念に汚してあったり、焦げさせてあったり、錆びさせてあったりするのを見るのが好きだ。どんなに空想の産物であろうと、人間が使い込んだことからくる実用感が一番実在性の説得力を持つと思うからだ。

で、私は旧スターウォーズを、通しで見たことがない(ホンマか;)。これを書いている時点でエピソードIとIIは観ているので、IIIを終えたら残りを順番に観てみようと思っている。・・・残念ながら、観ていたらもっと楽しめただろうなあ、というのが感想。館内には使われている実際のシーンが至るところで流してあったけど、映画で観たことのあるポッドレースの乗り物(Iに出てくる。ちょっとだけおまけでおいてあった)は念入りに眺めてしまったもの(デカい。そして殆ど機能的に有り得ない形をしている)。ちょっとジレンマを感じるとともに、メイキングフィルムが観たいなあ、と思った。

これらもまた制作者たちの執念を感じる。生き霊憑いてそう(笑)。巨大なオブジェでも一面イレギュラーな溝がミリ単位で人の手で掘られていたり、壮大な背景シーンが写真に見えて手描きだったりする。でもやっぱり作り物はどこかチャチな作り物止まりで、撮って初めてヨゴシが活きたり迫力が出たりするんだなあ。その辺の溝は今後どんどん埋まっていくだろうから、セットを作る人も大変だろう。もとい世間では、CGだけではペラい、と模型合作回帰の傾向があるらしいし。

生ヨーダの御本尊を拝みつつ(これって何体あるんだろう?)、コレって本来あるべき国立博物館の展示物としても妙に雰囲気がマッチしているなぁ、とヘンに感心。また今度エピソードI〜の分をやるらしいので多分来るだろう。どうせならIIIがきちっと終わってからやって欲しいけど。

◇  京都国立博物館








■■■ 劇団四季展 ■■■ @美術館「えき」KYOTO

ミュージカル劇団になる前の姿の紹介が少しと、ミュージカル四作品の衣装展示。「スターライトエクスプレス」がない、ということはあれは四季ではなかったのか(マヨが出てたということは違うな)。「美女と野獣」の衣装では、ベルの衣装が一番つまらなく地味臭く感じてしまうほど、他の衣装(というより被り物)が間近で見ると凄まじくゴテゴテかつインパクト大。これは主役に抜擢されるより余程嬉しいんでは、という意見に収まった。

最后に人間に戻った時の王子の衣装(とベルの衣装)があったのだけれど、これまたベルベットに満面のビーズ刺繍が施してあったりして、豪華絢爛綺羅綺羅しいこと極まりない。多分六万年振りに火星が地球に近づくのと同じくらいの率で、日本男児はこのような衣装を着る機会はないだろう、としみじみ眺めてしまった。

次の舞台の音楽はまたもやティム・ライスとエルトン・ジョンの共同製作だそうだ。ミュージカル音楽のお作法的に、エルトン・ジョン一人では無理と判断されているのか、ティム・ライスが譲れないのか。「アイーダ」、いつか何処かで観たい。








*■■■ 英雄〜ヒーロー〜 ■■■ 監督:チャン・イーモウ 主演:ジェット・リー、トニー・レオン、マギー・チャン、チャン・ツィイー

秦の始皇帝暗殺にまつわる刺客達の話。これは劇場で観ようと思っていたけど、アタリな映画で良かった。削がれ抜いた台詞と、シンプルで力強いストーリィ。色分けされた回想シーン、道を極めた者同士が引き立つ美しい演出。数々のアクションも、度重ね翻される物語に溶け込んでいて無理がなかった。あまり好きでないワイヤ使いもまだ比較的自然で気にならなかったし(グリーン・デスティニーのアレはちょっとなァ;)。

演出も凄く効いていたけれど、脚本が練れていた。ギリギリまで削ってある。無駄でダサい台詞や甘ったるい台詞は一切無し。クドい説明台詞も無し。必要最小限に留めることで、逆に語られなかった部分が大きく訴えかけてくるような、そんな脚本にしてあった。・・・こういうのが好きだ。特に痴情のもつれなんて何処でなりと語り尽くされてるし、失敗したら単なる火サスだもんねぇ。勘弁してくれだもの。痴話喧嘩ですらスッと刺さるように観せられる話ってのは、なかなか無い。・・・上手い。

しかし男はでかく大儀の為に死ねたけど、女はそんな風には死ねてないよなあ、あれ。勿論、物語としても男女の陰陽的にも、大儀の対比に情が来てこそ引き立つんだろうけども。その辺、自分が女なのでちょっと引っ掛かった。

◇ Amazon: 英雄〜ヒーロー〜








*■■■ 夜の建仁寺の境内 ■■■

禅居庵へ芝居を観に行ったのだが、そっちはさておき、人気のない夜の境内がいい感じなのだった。ごうごうと天高く流れる雲。合間にチラつく星。まばらにそそり立つ松。西門より無言でザッザと列をなして入ってくる雲水。寒かったのですぐに帰ってしまったが、暖かければもう暫くそこに居たかった。ああいう空間に、誰も介さず独人きりで居る贅沢。

◇  建仁寺(けんにんじ)








■■■ 第27回京都大骨董祭 ■■■ @パルスプラザ

無茶苦茶久し振りに行ってみた。全国から集まった骨董屋によるワンダーランドである。しかし場所代交通費を鑑みてか、割高だったような気もする。貴婦人の為に、ひとつの精巧なペンダントを三ヶ月をかけて作ることが求められた時代があった。色とりどりの大柄なデザインの着物が、日常的に着られている時代があった。そういうことを知り歩くだけでも楽しい。結局、古い更紗と友禅の端切れ、白蝶貝で細工した銀の指輪を買った。お金の動かない会話を沢山交わした。値切ると安くしてくれた。値切らなければ、片目をつぶって「気持ち(笑)」といって多少オマケしてくれた。ここはまだコミュニケーションの活きている市場だ。

◇  京都大骨董祭







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