*■■■ GO ■■■ 金城一紀 講談社文庫
とても面白かった。ウンチクを織り交ぜながらも、楽しめるエンターテイメントになっていた。読んだ限りでは、「月はどっちにでている(催洋一監督、1993年)」の頃より砕けてきたのでは、という気がした(こういうものが出る背景とかが)。日本人も日系だの他のオリエンタルだのが居るような外国へ放り出されて十把一絡げに扱われると、めでたく初めてアイデンティティクライシスを迎える訳だが、日本に居る限りそんな機会すらない。必要もない。主人公は相当な屁理屈コネだが、更に過酷な状況下で育っているので論理武装が要って当たり前なんだろうな、と思った。
主人公の愛する少女は、心が通い合った末に主人公から在日コリアンであることを告げられ、「・・・お父さんは、韓国や中国の人は、血が汚いんだって言ってた」と呟く。言うと、破滅であれ再構築であれ、確かに話は進むんだけども。でも現実の流れでは言わないわな。純文学でも言わせないだろう。バカヤロウとか殴り合いとか、なにがしかすぐにアクションの積み重ねがあるのがエンターテイメント。全部が表沙汰にされながら話が進んでいくのはスッキリするが、でもやっぱりエンターテイメントだよなあ、と思ってしまった。エンタメは分かりやすい上に楽しいんだけどね。でも、エンターテイメントじゃないのが読んでみたい、とも思った。ありえるかも、と思えるような展開の奴。
◇ Amazon: 「GO」
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