Impressions 2005 vol.2






■ * センス・オブ・ワンダー  レイチェル・カーソン 新潮社 ←↓latest
■  少子化から読み解くヒューマンエコノミー  松原聡 講演
■  アメリカ50州を読む地図  浅井信雄 新潮社
■ * 美しき日本の絵はがき展  @細見美術館
■  海馬  新潮文庫 池谷祐二 糸井重里
■  アーモンド入りチョコレートのワルツ  角川文庫 森絵都
■  2005びわ湖大花火大会  @滋賀県大津市








*■■■ センス・オブ・ワンダー ■■■ レイチェル・カーソン 新潮社

人が貸してくれた。レイチェル・カーソン絶筆の本らしい。

読んでいて、遠くへ行きたくなった。激しい海鳴りや、満天の星の瞬きや、射るような寒さの森。

わたしたちの多くは、まわりの世界のほとんどを視覚を通して認識しています。しかし、目にはしていながら、ほんとうには見ていないことも多いのです。見すごしていていた美しさに目をひらくひとつの方法は、自分自身に問いかけてみることです。 「もしこれが、いままでに一度も見たことがなかったものだとしたら? もし、これを二度とふたたび見ることができないとしたら?」と。
人が文章を書いたり写真を撮ったり絵を描いたりするのは、きっと丁寧に分かるためなのだろうと思う。

◇ Amazon: 「センス・オブ・ワンダー」








■■■ 少子化から読み解くヒューマンエコノミー ■■■ 松原聡 講演(2005/6/11)

某シンポジウムの基調講演。新書一冊分の要点をかいつまんで聞いたような感じだった。こういう形もメモ取りの練習になって面白いかも。

出生率の回復予測というのが75年来毎年政府から出されているのだが、採算の取れる年金計画を提示し続ける為に、人口予測の見直しがないがしろにされてきた。結果、少子化対策が遅れた、この責任は重大である、というのが講演者の論。つまり、国民に年金の支払いを納得させる為、都合の良い人口回復予測を上げ続け、国は益々事態を悪化させてきた、という。数年前に読んだ「スウェーデンの挑戦」(講談社現代新書)のV字回復政策を思い出す。あれを読んだ頃は、“将来必要な”対策なのだろうと思っていたが、実はそうではなかったらしい。現在の合計特殊出生率1.29という数字をみれば、収入の半分近くを税金に持っていかれる社会は今在ってもおかしくないのかもしれない。ただその覚悟は誰にもできていない。景気回復と高齢化対応で手一杯だ。

別の機会に、団塊ジュニアが出産可能期である今こそが人口回復のキーポイントなのだという話を耳にした。しかしその一方で、松原氏が言うような、労組の影響力が強すぎて延長保育が成り立たないY市といった些末な実態なども立ちはだかる。人の子育ての話を聞くと、何処も入園待ちで苦労する、収入との採算がとれない、といった話ばかり。間に合うのか。

氏は、人口回復対策として、非嫡出子の社会的容認や夫婦別姓などの規制緩和が必要であると説いていた。そうなのだろうか。増えさえするのなら、米国のような貧困層の出生率増加や移民による人口増加でも良いとは思えない。産む側の視点で言わせてもらえば、やはり出産一時祝い金などのおためごかしではない「養育インフラ」と「収入(<景気)」が決め手という気がする。

◇  松原聡HP








■■■ アメリカ50州を読む地図 ■■■ 浅井信雄 新潮社

人が持っていたのをお願いして貸りた。以前読んだこの著者の「民族世界地図」というのがよくまとまっていた記憶があったので。

どの州にもインディアン殺戮と土地剥奪の歴史が伺える。こんな風に本当に全国津々浦々に渡っていたのだな、と改めて知った。南米は混じり合ったけれど北米は粒々のまま。しかもインディアンは土地と文化の記憶が残っている分、移民してきた他人種より更に抑圧が大きいかもしれない。根深い。

目に留まったのがサウスカロライナ州。副題に「英国と接触しつつ育てた南部貴族文化」とある。以前某米国人が、シェイクスピアの喋る時代の英語が強く残っていて、本当に何を言っているのかさっぱり分からなかった、といっていた土地があったのだけれど、確かここだったような気がする。ジョージア州の一つ上だ。どんな言葉なのだろう。テキサスなどの映画に出てくるような南部訛りとはまた違うんだろうか。あれも相当聞き取れないのだけれど。

1994年発行で既に古いが、州の歴史や性格を大雑把に知る分には使える。文庫本で出ている筈だ。やっぱりちょっと欲しいかも。

◇ Amazon: 「アメリカ50州を読む地図」








*■■■ 美しき日本の絵はがき展 ■■■ @細見美術館

ボストン美術館所蔵、ローダー・コレクションと呼ばれるものであるらしい(エスティーローダー会長・Leonard A. Lauder氏が集めた、明治から昭和初期にわたる日本の絵葉書コレクション)。

今見る官製葉書より一回り小さいサイズが主流。風景写真は殆どなく、イラストや人物、絵、模様ばかりである。中には書き込んである絵葉書もあって、そういうものには人が群がって一生懸命読んでいた。学のある人は細かい文字でビッシリと、文語調の文体で以て。素養のある人は、たださらさらと一句。読み書きの苦手と思しき人は、平易な漢字に片仮名、処々唐突に平仮名混じりの大きな鉛筆文字で。英語で「これは何々しているゲイシャの姿です、」とか書いてあるものもある。・・・昔の知らない人が出した葉書は、他愛のない内容でも興味をそそる。

現代と決定的に違うのは、兵隊のモチーフが非常に多い処。さすが戦前。カソリック圏の御絵の聖人か、というくらいのポピュラー振りである。コレクションは2万5千枚だそうだが、内訳は地方の学校の陸上大会案内といった無名のものから(無名でも面白い)、上村松園、浅井忠などの高名な日本画家、洋画家まで様々。上村松園は祖母や母が好きで画集がある。絵葉書まで描いていたとは。改めて、「絵葉書」とは一大ジャンルだったんだな、と知る。

目録を購入しようと思ったが、既に完売。世話になっている知人への土産に、絵葉書のデザインから取られた夢二の花見の一筆箋を購入。封筒が置いていなかったので、後で新京極で和紙のものを見繕った。

◇  細見美術館・・・併設のCAFE CUBEも良い。








■■■ 海馬 ■■■ 新潮文庫 池谷祐二 糸井重里

脳科学者とコピーライターの対談。「30歳を過ぎてから頭は爆発的によくなる」とあった。自分の場合、爆発的ほどでないせよ、20代の頃よりかはよくなっているのを感じる。能力は経験のべき乗に基づいて伸びていくので、凡人同士の差より天才同士の差の方が大きいのだそうだ。そういう話を聞くと、なんだか宇宙の話を聞いた時のようにわくわくする。

神経細胞の可塑性を活性化させるものに、朝鮮人参の成分があるとか。ジンセノイドだろうか。田七だったら健康上の理由から飲んでいるのだけれど(朝鮮人参の約3倍のジンセノイドを含む)。・・・頭よくならないかな。

◇ Amazon: 「海馬」








■■■ アーモンド入りチョコレートのワルツ ■■■ 角川文庫 森絵都

初めて読む森絵都。小学生〜中学生が主人公のジュヴナイルである。いづれも作為的な匂いの漂う物語だけれど、割とイイとこ突いているかな、と。

個人的には「彼女のアリア」が実体験と被るので、印象に残った。嘘の世界を作り上げる子というのは本当に居る。でも何故嘘を語るのかまで考えが及んだ時、怒りよりふんわり切ない慈しみでどうでもよくなる。ただ、やはり上手くはいかない。

◇ Amazon: 「アーモンド入りチョコレートのワルツ」








■■■ 2005びわ湖大花火大会 ■■■ @滋賀県大津市

何年かぶりに花火を観た。琵琶湖は初めてかもしれない。打ち上げ箇所は2カ所あり、片方は号数の小さいものが建物に隠れてよく見えなかったけれど、琵琶湖ホテル前のもう片方は、打ち上げポイントより吹き上げる低い連続花火から高い巨大な大菊輪まで、全てがよく見えた(建物の上から眺めていた)。

中にはドラえもんやキティちゃんといった柄も。技術は知らない間に刻々と進化しているらしい。青緑色の花火が美しいと思った。写真を撮ろうとしたが、なかなかきれいに撮れない。思うに人は残像を記憶し、数秒分の映像を統合して認識しているからあれほど美しいと思うのではないか。だから意外にも、瞬間の映像ではなかなか思ったほど華やかなショットが撮れないのだ。しかしさすが1万発。最后のフィナーレは空襲爆撃か何かのようで、「分かった、分かったから、」となだめたくなるような、激しい閃光に継ぐ閃光だった。

建物の上から夜風に吹かれながらスツールに腰掛けて見ていたので、汗や人肌にまみれて火薬の匂いを嗅ぐこともなかった。肉弾戦回避はよしとして、火薬の匂いを嗅げなかったのはちょっと物足りない気持ちがした。火薬の匂いは好きなので。

たまには花火もよい。

◇  2005びわ湖大花火大会







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