台湾台北「遊記録」
August 2004






■■■ 朝の公園デビュー with 太極拳 ■■■

太極拳を始めて五年、念願の公園デビューである。初めて中国文化圏を訪れた時が公園デビューの時だなあ、とぼんやり心待ちにしていたが、それがこの度台湾と相成った訳だ。場所は晶華酒店(ホテル)の南東向かいにある公園。朝の公園にさえ行けば、何かやっているだろうと思って、とりあえず一番近い公園でそれらしき人々を探した。→まとめはこっち

金曜朝六時。人々は居た。揃いのTシャツとパンツの数人の集団がひとつ。何らかの太極拳のようではあったが、ユニフォームがちょっと入りにくい雰囲気。先へ進む。他に二集団発見。そのうちのひとつ、気功以上、しかし太極拳の準備運動には到底及ばないくらいのゆるいストレッチ体操をしている、老人ばかりの集団に入れて貰うことにする。英語と日本語で声を掛けると、一人のお爺さんが日本語で「どうぞどうぞ、お入んなさい」と応対してくれた。見るとお爺さんは足首にプラスチックのハーネスを付けており、他にもサポーターをしている人、片足を引きずっている人など、さまざま。リハビリと健康維持を目的とした集団であるらしい。お年寄りがこういった場を毎朝無料で利用できるのはいいことだなあ、と改めて感心する。寝不足かつ旅疲れかつ慢性早朝低血圧の身体にもマイルドな体操であった。お爺さんは、八十二歳だと言う。戦前日本統治下に日本語教育を受けた世代のご多分に漏れず、とても親日的な雰囲気で、「どこから来なすったの」「京都は行ったことあります。台北と同じ盆地ね」と色々気さくに話しかけてくれた。

ゆるい体操はゆるいまま終わり、隣でやっていた別の体操に寄ることにする。先ほどのお爺さんが言う。「あんたたちは若いからそっちの方がいいでしょう。やってると嬉しくなるという名前の体操です」 ・・・“嬉しくなる体操”(汗)とやらは、それ専用の音楽に合わせてやるらしい。ラジカセを前に半円形に人が並び、先ほどから何曲も続きでやっている。こちらの年齢層は主に中年で、太極拳とカンフー体操を真似てちょっと愉快にしたような体操だ。跳ねるようにして、主に左右にさっさと動く。やってみると、初めての謎の体操の割には、案外ついていけた。シエブーやシャーシー、ゴンブーなど、太極拳の歩型が随所に出てくるからだろう。ただしこれも、あくまで体操という感じで、太極拳的な細かい身法は無視されている。最初は簡単で体にマイルドな動きだが、何曲も曲が進むにつれ、少しずつストレッチ度が上がる仕組になっていた。そして、最后の一曲では何式だかよく分からない太極拳の套路となっていた。終わる頃には、向かいで別の集団が、また違う太極拳もどきな体操をやっていたが、そろそろ帰ることにする。時は七時半になっていた。

日曜朝六時半。再び公園を訪れる。が、誰も居ない。まばらに一人二人、木の傍に立って気功をしている人が居るだけ。背中を木に向けて腕を横から後ろに振ったり、正面を向いて船を漕ぐような動作で「エイサ!、エイサ!」と声を出したり(←これ凄くポピュラーな模様)、それをいつまでも延々繰り返している。集団のは無いのかなあ、と思いながら生ぬるくストレッチしていると、やがてこないだの老人集団が集まりだした。ほぼ七時。寄せて貰う。今日は先生が居る日らしかった。黒武術パンツ・黒シューズに白のランニングシャツ。今日の体操は、太極拳の準備体操を生ぬるくしたような奴だ(先日のより微妙にハード)。しかし先生は、ゆるくても“やってる人”の動きなのが分かる。やってるうちに、だんだん普通の中国武術的準備体操のレベルに近づいてくる。

そのうち、別の先生がやってきた。同じ出で立ちで、パンツがばっさり破れている。中肉中背、筋肉付き。長拳選手のような体型だ。先ほどの先生と入れ替わる。こっちの先生は本気の部分を担当だったみたいで、いきなり太極拳的な動きになってきた。套路ではないけど、その場で色んな功を足も付けてやるのだ。はっきり言って、ぜんぶ発勁。動き早い(汗)。しかも左右それぞれ二十回くらいづつ繰り返す。そして休みなしで、別の功へとガンガン進む。おのずと呼吸と動作が一致する。というか一致させないと息が持たない。そのうち血が指先に溜まって、手がじんじん浮腫んできた。周りの老人達の動きはヘロヘロ。大丈夫か、こんな激しいのをリハビリレベルの老人集団にやらせて(汗)、とか思っていると、先生がクリッと振り返って私に言った。「分かる? ポン・リー・チー・アン・ツァイ・リエ・ジョウ・カオの八手法の練習をやってる訳だ(←用法だけ聞き取れるので、推測)。はいでは次、ヨウローシーアオブ!(←功の名前)」 ポン勁も、発した後は腕が伸び切ってもよいらしい(太極拳は座腕〔肩肘張らないカーブした腕の形〕が基本なので、ゆっくりの套路では腕をまっすぐに伸ばすことは普通ない)。採(ツァイ:掌で下を押さえる手法)も割と適当。放鬆(ファンソン:力を抜くこと)第一って感じだ。

ひーこらやっていると、また先生が何か言った。今度はお爺さんが訳してくれる。「あなた、なかなか宜しい、って言ってます」 それはどうもです。「謝々」と答える。しんどかったのはリュイ(両手で相手を捉えて脇下に流し倒す動作)。流し倒す側の膝をいちいち蹴り挙げるのだ(つまりウェストが捻られる)。しんどい。しんどいよー。こんな長拳みたいなキツい早い動作、延々教室でやったことなんてないよー、とか思いつつ、手を抜いてバランスを崩したりしていると、先生がチラッと振り返ってこっちを見た。若者はサボったらアカンらしい(汗)。その他、知らない功もあったりしたが、真似する。やっぱりやったことのない功は、我ながらヘナチョコい。雲手(ユンショウ)では、上の掌が体表を向いていて、胸の高さだった(これって何式?)。簡化どおりに目の高さでやっていると、いきなり先生がやってきて、ガッと肩を掴んでグイグイ下へ押され、掌の位置も低く直された(←なんか言ってるけど分からない;)(←ついでにお爺さんも咄嗟に訳せない)。多分、後から考えてみれば、「腕を高く上げすぎ、腕はポンなんだから。そんなに腕が高いと肩に余計な力が入るだろ。ポン勁が崩れるの分かる?」みたいなことを言っていたのだと思う(・・・あくまで推測)。そう言って先生は自分の腕で棚(ポン)を作って、私をぐわっと押した。強烈な力で後ろへバランスを崩される。うんうん、ポンですよねぇ、と思ったので、ポンと答えてみる(←通じた w)。しかるべき姿勢と意識と手法で発したポン勁は、力を抜いていてもブルドーザーのような力が出るのだ。あと、馬歩(マーブー)(という歩型)の膝を一度注意されて直した。

・・・八時二十分。予定があるのでそろそろ止めないといけない。練習はまだまだ続くようで名残惜しかったが、お礼を言って、抜け出した。汗だくだ。VAAMを持ってきて飲んでおいて良かった、と思った(ヘトヘト;)。それでも後からウェストや上腕、太股の後ろ側が筋肉痛になった。

まとめ。一公園しか見ていないので何とも言えないが、見たところ台湾の公園では、
1.年齢、健康状態に合わせた、色んな武術(ウーシュー)っぽい体操をやっていて楽しい。
2.個人や二〜三人で木の傍で気功をしている人々も(普通のおじちゃんおばちゃん)。
3.若者は少ない(というか今回全く見掛けなかった)。中年〜老人が主。
4.先生は、居たり居なかったりする。
5.意外やそんなに上手くない人がたくさんで、気楽な雰囲気。一見さんでも参加可能。
6.平日は朝五時半から七時半くらいまで、日曜はお休みだったり七時始まりだったりする。

中正記念堂公園など大きい処へ行くと、梅花扇や剣(つるぎ)など色々見られるらしい。いつかまたそっちも行ってみたいなあ、と思った。

◇ 健康増進のための新しい太極拳・・・台湾の太極拳事情。光華雑誌社という台湾の出版社の雑誌記事(日本語訳)である。1ページ目右肩の写真が馬歩(マーブー)の歩型。腰低い。キツそう(汗)。







◇ 台湾 @ All About Japan・・・台北旅行情報サイト 格安チケット等





back
corner's top
home