xx 癒しの森 xx 3
二人で住んでいるというので、太一はマンションを想像していたのだが、何と連れて行かれたのは、こぢんまりとしてはいたが立派な一戸建ての家だった。 太一は春也の許可をもらって、部屋の中を物色し始めた。 まずは、本棚。 「世界毒舌辞典」…「ペットと法律」「幾何学的思考」「家庭料理レシピ」「AERA」 ??? 節操がなくて、傾向が掴みきれない。 いや、節操がないのが特徴と言おうか。 「俺、雑誌ばっか買ってるからね、本のたぐいは殆ど愛のだよ」 「《家庭料理レシピ》も?」 「そう。俺も愛も、結構料理するの。ウチの台所、いろいろ揃ってて自慢なんだ。愛はねぇ、こりだすとスゴイよ?もう、プロも顔負け」 その深愛は帰ってきて奥に入ったっきり、太一の視界から消えたままだった。 機嫌損ねたかな…? 心配になって聞いてみる。 「かわいいv 太一。大丈夫だよ。多分あいつは、風呂」 「フロ…?」 「そう、一番風呂がスキなの。あ、そうだ!今から二人で押しかけようか?三人で入ろう!」 「え、え?」 太一が思わぬ展開に目を白黒させているうちに、春也は太一の腕を掴んで奥へと連れて行ってしまう。 「ちょっ…と」 脱衣所で抗議をしようとした太一を、シーッと春也が人差し指を立てて制す。 「ほら、脱いで」 小さな声で言うと、春也はさっさと自分の服を脱ぎ始める。 どうせ、後で存分に見られるであろう自分の体なのだ。 恥ずかしがるのも、今更、という気がする。 何より、春也が惜しげもなく自分の裸体をさらしていた。 何が何だか分からないが、自分一人が着衣のままでいることもできず、言われるままに太一は裸になった。 「こっち」 小声で春也に呼ばれ、肩を引き寄せられる。 春也の滑らかな素肌と触れ合って、太一はちょっとドキドキした。 「せーの」 小さな掛け声と共に、春也はバッと浴室のドアを開け、太一を押した。 「わわわわ!」 勢いづいて突っ込んでいった先には大きな背中があった。 自分で自分を止められなくて、太一はその背中に抱きついてしまう。 無意識の内に閉じていた目を、そろそろと開ける。 目の前に見えたのは、人の肌の色だけ。 「おい…いいかげんどけ」 背中からこもった声が聞こえてきて、太一はあわてて身を起こす。 「春…。俺が髭でも剃っててみろ。大怪我してるぞ」 「ごめんね。愛、許して?」 言って、春也はチューっと音を立てて深愛に口づけた。 深愛もだんだんとそれに応え、春也の細い腰を抱き寄せる。 深愛の手が、春也の臀部に移動する。 ついていた石鹸の力を借りて、深愛の手は滑らかに腰とお尻を行き来した。 ど…どうしよう! 太一は身の行き場をなくしてしまった。 自分は、出ていたほうがいいんだろうか?? 思いながらも、ついつい目で深愛の手の動きを追っていると、ふと視線を感じ顔を上げる。 深愛だった。 春也と激しいキスを交わしながら、目だけで太一の方を見ている。 太一と目が合うと、少し眉を上げて見せた。 頬をパチパチと叩かれて、春也さんは「ん…」と吐息を漏らしながら、口を離す。 「こら、ガキが困ってんぞ。出てからにしろよ」 春也は太一の方を見て照れたように笑った。 「ごめんね。愛の体ってば、えっちくさいからさ、見た途端欲情しちゃった」 いい具合に筋肉のついている深愛の体は、さっき少し触れただけでも気持ち良かった。 太一は納得して頷いてしまう。 「春!お前俺の体なんか、いつも見てるだろうが!ガキも、そこで頷くな!!」 ギャーギャー騒ぎながら、三人で湯船に入る。 少し大きめの湯船も三人入れば、ギチギチだ。 春也が足の間に太一を入れて抱き、深愛が春也をその後ろから抱く。 まだ湯船に入って少ししか時間が経っていないのに、太一はのぼせそうな気がした…。
2000.03.16 脱稿 |