けん引一種


けん引一種取得記
平成14年12月7日
けん引は、経験がないので、さすがに練習もなしに試験場に出向く勇気がなかった。そこで最寄の西脇自動車教習所にて1回練習してみることとした。この教習所では、けん引免許は技能免除とはならないが、時間貸し練習ができる。ちょうど割引キャンペーン中でもあって6,000円で1時間の練習。教習でなく練習なので、教官の接し方もいたって丁寧。しかし、初めて経験するけん引車両、方向変換はいろいろ理屈を教えてもらっても、どうも実感がわかないまま1時間が過ぎた。これは飛び入りではとても無理だと実感。
平成14年12月9日

というわけで、けん引が技能免除となる東播自動車教習所(東加古川)に申し込む。
平成14年12月15日
東播自動車教習所入所式。11時から適性検査を受けてこの日は午前中で終了。
平成14年12月24日
けん引の教習は1段階5時間、修検などはなく第2段階は7時間の合計12時間。この頃は頻繁にスキーに出向いた関係で、なかなか教習の時間がとれなかった。年末年始をはさんでようやく卒業検定に至る。
平成15年1月31日
卒業検定は本来、1月26日に受ける予定をしていたが、手違いで1週間延びる結果となった。最終練習からの期間が空きすぎてつらいと教習所所長さんと交渉した結果、卒検当日にご好意で1時間だけ直前練習を無償でさせてくれることになった。朝9時に到着して30分練習をして、9時30分からの卒検を受けた。100点満点で合格。

平成15年2月5日
免許証交付。明石運転免許試験場にて、新たに適正検査を受けて、発行となる。

けん引免許のための模型作成

けん引免許を取得するにあたって参考となる書籍が実に少ない。私が参考にしたのは、有紀書房の「最新大型トレーラ・けん引免許」というものであり、この中に、けん引の後退は模型を作ってその理論を体得すべしとあった。早速、材料を購入して作ってみた。確かに、頭で考えるのと違って模型で理解した方が早い部分もある。少し工夫して、ハンドル操作ができる模型を作成した。後退で右に曲がりたければ左にハンドルを切るということの真意がやっと分かった。

【模型作成のポイント】
トラクタとトレーラの連結部分(キングピン)はトラクタの後輪車軸より少し前方にする。
トレーラのホイールベースはトラクタの1.2〜2.0倍ぐらいの長さ。短いのと長いトレーラを2種類作ってみると、トレーラが短いほど後退が難しいことが分かる。
車輪は台車用のコマを使用。操舵輪となる先頭の2つだけは360度回転するタイプ。他は、軸が回転しないタイプ。操舵輪が左右同時に動くように、多孔プレートをコマの一方に固定。ハンドル操作は、瓶の蓋などを利用して、回転力が車軸に伝わるように太めの針金で接続。

方向変換の実際 (動画:アニメーションGIF)
けん引は方向変換がすべてといっても過言ではない。実際の試験では3回までの切り替えしは認められているものの、4回切り返すようでは検定は中止。全くけん引車両の運転の経験がない場合はかなり戸惑うであろう。せめてボートトレーラや耕運機で連結車両のバックの経験が1回でもあれば、けん引のバックがハンドルの切れが逆になるという言葉の意味が分かると思う。
要は、トレーラの前輪はトラクターそのものなのである。つまり、トレーラの前輪はトラクターの角度の通りにハンドルが切られていると考えればよい。そのハンドルとしてのトラクターの向きを変えるのは、やはりトラクターの前輪なのである。トラクターの向きを例えば右に折りたければ、トラクターを右に傾けるためにハンドルを左に切るという訳である。
けん引車は前進の場合は右は右、左は左。後退の場合は右は左、左は右と割り切って覚えてしまう。身体で覚えるといっても、なかなか実感が体得できるまでには相当時間がかかるものだ。
左の動画は模型を用いた右方向変換の例であり、前輪の切り方とトレーラの動きの関係を理解するためのシミュレーションである。

(けん引一種の明石試験場でのコースについてはここを参照)

けん引車両用語
けん引車には、構造上、セミトレーラー、フルトレーラー、ポールトレーラーの3種類に大別できるが、最も一般的なセミトレーラーについて述べる。
けん引車は文字通り、「トラクタ」に「トレーラ」が連結された車両をいうが、それぞれの部分の呼び名がいろいろあるので整理しておく。

トラクタ 運転車両のこと。トラクターヘッドまたは単にヘッドともいう。
トレーラ 荷台車のこと。被けん引車両または単に台車とかシャーシともいう。

けん引車両のトラクターの運転に必要な免許について
トレーラのヘッド(トラクタ)のみを運転する場合、ヘッドがの車両総重量が8t未満であっても大型やけん引の免許は必要なのであろうか?第5輪荷重(カプラーにかかる重量)が5t未満であれば、最大積載量が5t未満であると解釈して、普通トラックと同様に普通免許で運転可能となり、何もけん引していないからけん引免許も不要である。2軸に限らず3軸のセミトラクターの車両であっても、トラクター単体の車両総重量(車両重量+乗車定員1〜3名、1名につき55kgで換算、第5輪荷重の数値は含まない)が8t未満の車両であれば、普通免許で運転できる。詳しくはこちらを参照。


カブラー物語
トラクタの背中には「カプラー」と呼ばれる連結器が装着されており、ここにトレーラの前方下部に付いている「キングピン」をが接続される。
セミトレーラの場合、カプラーにはトレーラの荷重を支えており、これを第5輪荷重といい、トラクター部分の最大積載量のようなものである。トラクターの4つの車輪に次いで車重を支えるものという意味で第5輪荷重という。

キングピン物語
けん引車両の連結は直径8cmこのキングピンたった1個でなされているのだ。このピンのせん断力はかなりのものである。潤滑のためのグリースがたっぷり塗られている。キングピンは、トラクターの後輪車軸より少し前(後輪2軸では、2軸中心より少し前)に設置されており、車軸の中心からカプラー中心までの距離をオフセット(25〜60cmほど)という。
ヘッドがあればどんなシャシでも連結できるのがトレーラーの強み。よって、トレーラの盗難も少なくない。リヤゲートのロックを壊して荷物を盗むケースが多いが、中にはシャシごと盗まれる場合も少なくないという。そこで、キングピンのロックが最近増えてきた。開錠してロックを外さないと連結できない仕組みである。

連結と切り離し
【連 結
トレーラとトラクタの連結は左右の幅を合わせてまっすぐ後退し、そのままキングピンにぶつけるような形でカプラーをはめる。キングピンがカプラーに納まるとジョーというロック機構でピンが押えられる。自動的にロックされる。運転しているとガクンと衝撃があって、接続された感じが分かる。確認のため少し前進してみて抵抗があることを確認する。通常はシャシの前方にヘッドの後方を平行に合わせてバックするが、縦列駐車などでシャシ前方にヘッドのスペースがない場合は、斜め45度や真横からキングピン目指してバックする場合もある。側方からの進入ではカプラーとシャシの高さをきっちり合せてから進入しなければならない。
【切り離し】切り離しはエアホースとケーブルを切り離しし、トレーラのライディングをハンドルで降ろす。 カプラーのクラッチを握りレバーを引きロックをはずしたのち、トラクターを前進させればよい。最近では、エアサスペンションの車高調節機能を利用してカプラー高を調節できる車種がある。

接続ケーブル
【接続ケーブル
これらは電気と空気圧の配線で、折れによって伸びきらないように長さが調整されている。トレーラとトラクタの連結ホース(ジャンパーホース)やブレーキホース等に使用されるホースは内径10ミリと13ミリがあり、金具の取付方式はカシメ式とバンド式がある。
SERVICE LINE トレーラーブレーキ用エア(青)
EMERGENCY LINE 通常トラクターと連動してかかるブレーキ用エア(赤)
ABS LINE ABSコネクター
ELECTRIC LINE 電気系統

抜き差しならぬ状態
【車庫入れ
トレーラが俗にいう車庫入れをしていた。一生懸命敷地にバックで入れようとしいるのだが、いくら折ってもトレーラが入りきらない。焦った運転手は、結局前進して、塞いでいた道路を開けていたが、その後どうなったか知らない。やっぱりけん引は後退がポイントだなと感じた。(もう少しでジャックナイフが見れたのに)
トラクタのブレーキなど
フットブレーキ
トラクタのブレーキだが、トレーラを連結するとトレーラ連動となる。
サイドブレーキ トラクタのみ効く。従来はワイヤー式だが、最近はエアー式もある。
排気ブレーキ
補助ブレーキのひとつ。排気口を塞ぐことによるエンジン抵抗を利用するものでエンジンブレーキだけの場合の1.8倍の制動力がある。エンジンブレーキの一種。走行中のトラクタの駆動輪に効く。
リターダ
最近、トラックの第2の補助ブレーキとして普及している。ドライブシャフトに強力な磁石による磁気抵抗を加えるもので、。これも排気ブレーキと同様、走行中のトラクタの駆動輪のみに効く。そのため、スイッチは排気ブレーキのレバーと兼用され2段階式の2段目となっている場合が多い。
トレーラーブレーキ トレーラのみに効くブレーキで、停車中・走行中にかかわらず、ブレーキコントローラーについている手動式レバーで調整して掛けることができる。信号一時停止の時にサイドブレーキの代わりとして使ったり、下り坂での突き上げ防止や上り坂での坂道発進の時などに使う。
マキシブレーキ
スプリングブレーキ)
「マキシマ」ともいう。トラクタの後輪に掛かるスプリングブレーキ。安全のためエアー圧力が異常に下がると自動的に作動する構造になっている。基本的に停車時に掛ける駐車補助ブレーキで、スイッチによるON・OFFしかできない。トラクタのPTOを作動させるときには、必ずサイドブレーキとともにマキシブレーキを使用する。
離脱ブレーキ 走行中牽引車とトレーラーが離脱した際、トレーラードローバーに取付てあるエマージェンシーブレーキスイッチが作動し、トレーラーに最高の制動が加えられる。エマージェンシーブレーキスイッチにはピンが入っており、このピンは3ミリ程度のワイヤーでトレーラに接続されている。離脱するとこのピンが抜け、スイッチが作動し、トラクタに装備されているバッテリー電源により制動される。
ABS Antii-Rock Break System 制動時の車輪ロックを抑制し、安定した車両姿勢を確保する。
ASR Anti-Slip Regulater 発進・加速時の車輪の空転を抑制し、安定した車両姿勢を確保する。
EBS Electric Break System 電子制御によるブレーキ関係の総合コントロールシステムで、従来のABS/ABR機能に加え、積載状態に応じてトレーラ側も含めた制動力の最適コントロールを行うことにより、トレーラ連結状態での制動安定性を向上させる。

ジャックナイフ物語
トレーラがトラクタを突いて、トラクタが急激に内側に入り込む現象で、トラクタの後輪がロックしたときなどに起こる現象。トラクタとトレーラはキングピンを中心に左右90度(計180度)までは折れるが、折れすぎると、特に安全装置もないのでトレーラの荷台がトラクタのキャビンに当たったり、トラクタがトレーラのアンダーガードに当たって破損することがある。

諸費用