この作業は3月頃、新芽が成長を始める直前が適期です。
前年までに伸びた根は着生せず、新芽から伸びる根だけが着きます。着けた年は灌水を多めにしましょう。
茎が1株あたり8本ぐらいの株を用います。
3号鉢と2.5号鉢に水苔で植えてあった株。
水苔は全て取り除きます。
作業中、ある程度の根の痛みは仕方ありませんが、できるだけ丁寧に水苔を取り除きます。
特に株元の新芽や花芽を傷つけたり落としたりしないように注意します。
株を置いて全体のバランスを見ます。1株だけ着生させても十分な大きさです。
もう少し小さめで、根が少ない株の方が適しています。
同じ個体を増殖して複数着生させると観賞価値が高まります。
今回は別個体の株を用いていますが、こんなときは開花が同時期になるような株を用います。
ヘゴ板の上に直に根を広げて、しっかり固定します。小株の場合は麻紐で十分ですが、 これくらいの大きさであれば、ビニールタイを用いると安定します。
古い茎が残っている方を下(土台側)に、新芽がついた方を上(外側)にします。
1,2年前に開花した古い茎を押さえ込むようにビニールタイを巻けば、
株をしっかり固定することができます。
下に水苔を敷くと活着しにくくなります。
上からうっすらと(一重になるように)水苔を被せ、麻紐を用いて根を土台に密着させるように縛り付けます。
必ずしも水苔で覆う必要はありません。
今回用いた株のように、根や葉が多い場合は湿度保持のために被せた方が後の管理が楽で、根も抑えやすくなります。
前年伸びた茎の根元には、今年の新芽が付いています。ここを水苔や紐で抑えてしまわないように注意。
最後にクリーニング用のハンガーを真直ぐに伸ばして「吊り下げ具」を取り付けます。長さは茎の大きさ、好みに応じて適当に。
ヘゴへの取り付け部分は、下のように加工し、指が2,3本入るようにしておけば取り扱いしやすくなります。
個体の特徴や作業日などを書いたラベルを、細い銅線(#26)で下げます。
高芽をはずして1〜3年間、小さめの鉢に寄せ植えして育てます。
ここで用いた株は長生蘭の一品種「紅木田」です。
小型の普及品種で、茎の葉緑素が抜けて飴色になった高芽が出やすく、
品種名も「金鶴」と変わります。
同じ親株や品種からはずした株を用いるようにします。
生育の度合いや開花時期をそろえるためです。
水苔を全て取り除いてからヘゴ棒の上に置き、どこに着けるかを決めます。
ヘゴ棒1本当たり4〜5本が適当です。株が小さく根も少ないので棒ごと縛り付けます。
今回の作業では、棒を板状に組むのは作業の最後になります。
古い茎を一緒に縛り付ければ、株が安定してしっかり固定することができます。
根も重なり合わないように広げて縛ります。上になる方の株から順次下の株を着ければ作業がやりやすく、
麻紐も少なくてすみます。
麻紐は引いて締め付けるのではなく、押さえるような感じで締めるようにしましょう。根が傷みません。
ビニールタイで縛ったり、水苔で覆うことも必要ありません。
ただし、適期(3月頃)に作業し、いつも乾ききってしまわないうちに灌水することが大事です。
このままの状態で1本ずつ吊るしても育ちますが、場所をとるうえに渇きが非常に早く、 頻繁に灌水しなければならなくなります。
このあとヘゴ棒を板状に組むときの要領でひとつにまとめます。
棒と棒の間に隙間ができますが、セッコクの根が伸びてふさがります。
灌水のときに水がいきわたりやすく、またここに水が溜まったりするので湿度保持に役立ちます。
板状に組み終わったら、バケツに張った水の中に全体を10分くらい沈めておきます。 (ヘゴ着けの株はいつもこのようにして水分補給する方法もあります。数が少なく病気の心配が無ければ、 いい方法です。)
目立たず長持ちすることから、釣り糸のテグスを使って株を固定する方法もあります。
締め付けるには要領がいるし、締め過ぎると麻紐よりも根を傷めやすくなります。目障りでも2年間の我慢です。
(これくらいの辛抱がないと蘭の栽培はできません。)
水気も含んでくれるので、麻紐がお薦めです。
株が順調に増えて込み合ってきたら、1本ずつはずして両側から新しいヘゴ棒で挟み、
改めて板状に組みなおすことができます。
ただし、根と株を切る覚悟が必要です。