着生蘭の作業部屋

フウラン,ナゴランをヘゴに着生させる

この作業は4月頃、根が伸び始める直前が適期です。
株元から数本の新根が出て、前年伸びた根もさらに伸長します。これらの新しく出てきた部分だけが ヘゴに着き、くいこんでいきます。
作業の手順はセッコクをヘゴに着ける場合と同じです。ナゴランも同じようにしてヘゴに着けます。

フウランをヘゴに着ける

鉢植えのフウラン

フウランの株を準備する

6年前に2本(左)と1本であった株です。
3年前に一度植え替えをしました。 この年数で標準的な成長ぶりか、やや物足りないか。

画像右側の株程度の大きさなら、安価で入手できます。
その際は葉に痛みが無くできるだけ根の多いもの、元気な子株がたくさん付いたものを選びます。

鉢から抜いたフウラン

フウランを鉢から抜く

1週間ほど水を切って根を少し乾かすと根痛み無く作業ができます。 逆に水苔は乾ききって堅くなってしまうと取り除きにくいので、作業直前にザッと水をかけます。

鉢の内側にも根が張り付いています。前後に揺すって剥がしてから持ち上げると 簡単に鉢から抜くことができます。

枯れた根(ハリガネ状)や腐った根(ブヨブヨ)があれば、全て取り除きます。

フウランを分ける

株を分ける

大きい方の株は芽数が多いので2つに分けます。
塗箸を挿した位置を目安に、株元をしっかり持って両側に裂きます。ハサミやナイフで切る場合は 消毒してから。

1株あたり3芽以上にしないと後の生育が思わしくありません。特に今回のようなヘゴ着けは 水苔植えよりも環境が厳しくなるので、小分けしません。

株分けしたフウラン

株の準備ができました

4芽、5芽、6芽の株が準備できました。1年当たり1つの子芽が出てきたことになります。

フウランの殖え方は気まぐれです。新芽が2つ出るときもあれば、全く出ない年もあります。
1本の茎が数年で寿命を終えるセッコクと違い、何十年も生き続けるわけですから、 あわてて子株を殖やす必要が無いのでしょうか。

ヘゴにつけたフウラン

フウランのヘゴ着け完成

株本体をヘゴに押し付け、根だけを麻紐でヘゴにくくり付けます。 向きは気にする必要ありません。 (作業日:07/04/25)

フウランは根が太く、乾燥に強
いので水苔で覆いません。

作業後はたっぷりと水をかけ、
直射光の当たらないところに下
げておきます。
開花したフウラン


    無事に開花しました。
    
 フウランの開花期にも個体差
 があるので、同じ頃に咲くの
 を確認して着けると豪華にな
 ります。(撮影日:07/07/17)
一年後の開花 →08/07/15

フウランをヘゴバスケットに植える

ヘゴバスケットとアマミフウラン

フウランを鉢から抜く

大きめの株を分けずにそのままバスケット植えにすると見ごたえがあり、その後長年植え替えの必要もなくなります。
特にアマミフウランは大型で生育も旺盛なので、ヘゴ棒やヘゴバスケットに植えつけるのに最適です。
今回は中程度の大きさのアマミフウランを素材として使いました。

ヘゴバスケットは市販のヘゴ棒(支柱)で作成します。
30mm×45mm×900mmのサイズが入手しやすいですが、少し太いので縦に切り、30mm×22.5mm×200mm程度に切ります。
画像のバスケットは14本のヘゴを井桁に組んであります。余った短いヘゴは2〜3pに切って植え込み材として使います。

根の間に残った水苔は全部取り除きます。
このままではバスケットに収まらないので根を切り摘めます。

根を切り詰めたフウラン

フウランの根を切り摘める

根は間引かずに、半分ほどの長さ(バスケットに収まるくらい)に思い切って切り摘めます。
新しい根が残った根の途中からも出てきます。生育開始前に作業をすれば弱ったり、枯れたりする事はありません。

もう少し小さい株や、根の数が少なくてバスケットにそのまま収まる場合は切りません。

中心部にヘゴを詰める

根の間にヘゴを詰める

根の中央部にヘゴの小片や木炭・竹炭を砕いたものを抱かせるように詰めます。

この植え込み作業では水苔は使いません。
しかし水苔を使ってはいけないという事でもありません。 あくまでも後の管理次第です。ヘゴ棒に着けた株と同じような管理にするならば必要ないということで、 好みや心配だという理由で植え込みに水苔を用いても支障は無いでしょう。

フウランをバスケットに入れる

フウランをバスケットに入れる

抱き込んだヘゴ小片などをこぼさないようにして、一気にバスケットに押し込みます。
中でガサゴソと株を動かすと、ささくれ立ったヘゴ棒で根がかなり傷つきます。株の傷みは最小限に留めましょう。

株を固定するために、ヘゴや炭の小片を隙間に詰めます。大雑把にざっくりと詰める感じ。

バスケットに植えたフウラン

フウランのバスケット植え完成

フウランを入れ込み、株が固定できたらヘゴを組んである銅線をまとめます。        (作業日:09/03/27)

ヘゴ棒は80cmの長さに切った銅線を2本用いて組んであります。
作業の邪魔になるので、植え込みが終わるまでは一つにまとめずに開いておきます。最後に上部でまとめ、 吊り下げ具を取り付けます。

作業後に水をたっぷり、特にヘゴに十分に浸み込むようにかけます。 その後も葉とヘゴにかけるつもりで水をやります。

開花しましたが、今回のような作業をした場合はどうしても花が貧弱になります。
               (撮影日:09/08/07)
開花したアマミフウラン

ナゴランをヘゴに着ける

ヘゴ着けのナゴラン

ナゴランのヘゴ着け

作業はフウランとほぼ同じですが、少しだけ異なります。

1.株には表と裏がある。

栽培の環境によっては、ナゴランは株が明るい方へ向く傾向が強く出ます。 そのため葉の表と裏がはっきり異なり、全体としても平面的で表裏が違います。
光沢のある表側を外に向けて着けます。

2.株は下向きに着ける。

葉も株も大きいので、上向きでは葉が光を求めて反り返り、変な格好で垂れ下がってしまいます。

3.本体もくくりつける

ただし、1回だけ。
画像で一番下の株では麻紐を巻きつけたあたりから来年新根が伸びます。 ここを押さえると、根の出口を押さえることになるので1回だけきつく縛ると株が安定します。 2年後、麻紐が気になるようならむしり取れば簡単に取り除くことができます。

左の画像は4月にヘゴに着けたもので、撮影は11月です。
半年の間に、新しい根が麻紐を覆うように伸びています。 フウランをヘゴに着けると根は大抵垂れ下がって伸びますが、 ナゴランは横や上に伸びる傾向があります。
               (撮影日:07/11/17)

開花したヘゴ着けのナゴラン

ヘゴに着けてから2年後の開花の様子

ヘゴに着けると、馴染むまでの数年間は生育が緩慢になり、葉数が減って株が縮んでしまう場合もあります。

ナゴランは水苔で植えたほうがよく育ちます。セッコクやフウランでは差を感じませんが、 ナゴランの場合は2年も育てると歴然と差が出ます。
それでもヘゴに着けるのは「植替えの手間を省く」ことと 「たくさん垂れ下がった花を楽しむ」ことにあるでしょうか。

               (撮影日:09/06/23)
開花したナゴラン

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