交配し結実させることは比較的簡単にできます。難しいのは結実した種子をうまく発芽させることです。
セッコクなら親株の鉢に播いておけば苗が得られるかもしれません。
ナゴラン・フウランは無菌培養に依らないと子苗を得ることはまず無理でしょう。しかし根気よく親株に播き続ければ
これらの発芽困難種でも苗が得られるかもしれません。
まずは交配して種子を得てみましょう。
花の中心部に雌しべと雄しべが一体化した蕊柱(ずいちゅう)があり、先端部の葯帽の中に黄色い 花粉塊が2個入っています。
葯帽の下に湿らせた爪楊枝をあてがい、下からそっとこすり上げるように葯帽を持ち上げると 花粉塊が付きます。
交配には茎が10本以上で元気な株を選び、開花して数日経った花を用います。
爪楊枝の先に付いた花粉塊。 セッコクの花粉塊には付着糸が無いので強く動かすとポロリと落ちます。
作業はそーっとやりましょう。
葯帽のすぐ下に柱頭(雌しべの先端)があります。
柱頭は少し窪んで薄緑色をしており、てかてかしています。
花粉塊をここに押し付けます。粘性があるので簡単に付きます。
柱頭に花粉塊が付きました。
受粉に成功すると花は翌日には萎れ、数日後には花軸(子房)が太り始めます。
受粉しても、うまく受精するとは限りません。しかしセッコクの場合はほぼ確実に受精するようです。
交配後は従来通りの管理で吊るしておきます。
1つの花芽から咲いた花の、下の花にだけ受粉させました。
受粉後1週間です。子房の違いがはっきり判ります。
親株を健全な状態に保って種子の成熟を待ちます。種子が熟すのは半年後です。
予備のため複数個受粉させた場合や、虫が受粉させた花を見つけたら、一鉢に一つ残して
後は摘み取った方が親株の消耗が抑えられ、充実した種子が得られます。
花の基本的な構造はセッコクと同じです。葯帽には花粉塊が2個入っています。
柱頭はセッコクのようなヘコミではなく、深さ2mmほどの穴になっています。
母親にする株は葉が10枚以上の元気な株を選びます。一般に自家受粉は避けたほうがよいとされています。
爪楊枝を葯帽の下にあてがって持ち上げると、大抵葯帽ごとはずれます。強く持ち上げると葯帽がポーン と飛んでしまうので要注意。
花粉塊には付着糸が付いています。かなり強い粘着力があります。
柱頭の穴に花粉塊を押し込みます。付着糸が爪楊枝に付いたまま押し込むと、なかなか爪楊枝から離れません。 花粉塊を直接爪楊枝につけた状態で作業します。
押し込む花粉塊は1個でよいですが、奥に入り込んで見えなくなってしまったので、撮影のために3個入れました。
受粉すると柱頭の穴は閉じてしまいます。
充実した株を母親にしないと、健全な種子は得られません。子房だけ膨らんでシイナになってしまうこともあります。