大腸内視鏡

 内視鏡の挿入手技により苦痛が大きく異なる検査です.

 当院では“軸保持短縮法(昭和大学藤が丘病院工藤進英先生の命名)”と“無送気挿入法(小生の命名)”とを基本に痛くない大腸内視鏡検査をモットーとしております.大腸は伸展されたときに痛みを感じますが,“軸保持短縮法”では,大腸を伸展させることなく,むしろアコーデオンを縮める様に常に短縮し,最短距離で大腸を通過しながら挿入します.内視鏡挿入時は通常は送気して視野を確認しますが,送気が多くなると大腸が伸展し軸保持短縮法が出来なくなります.そのため,極力送気を少なくする必要があります.送気量を少なくする努力を日々行っているうちに,気が付いたら送気量が完全にゼロになっていました.そこで,“無送気挿入法”と命名しました.これら挿入法を用いるとX線透視も必要なく被爆もありません.

 また,通常は柔らかくてしなやかで,必要なときだけ硬くできる硬度可変式の内視鏡を用いています.痛みを感じられる場合は鎮痛剤を併用しますが,大部分の患者様は鎮痛剤なしで受けておられます.

 さらに,当院では狭帯域光を用い拡大観察が可能な内視鏡を使用しており,特に大腸では腫瘍の詳細な観察が可能です.  

 大腸内視鏡検査では,患者さんの大腸の走行状態や術後の癒着の存在と術者の技量の問題などで内視鏡が盲腸まで到達せず,全大腸内視鏡検査ができない場合があります.当院では上記の挿入法を用いることにより,盲腸への到達率が向上し,最近に施行した1000例のうち盲腸へ到達できなかったのは7例のみでした.すなわち,盲腸到達率は99.3.%でした.

検査内容:先端に小型のCCD(超小型のテレビカメラ)が内蔵された管を肛門から挿入し大腸と必要に応じ小腸の末端を観察する検査です.必要に応じ粘膜の小片を採取し顕微鏡で検査することもあります.当院では通常大腸の一番奥まで挿入するのに2分から10分,抜きながら観察するのに10分から15分要し計20分前後ぐらいで終了します.

前処置:前日は野菜は海草などを禁止しますがほぼ通常の食事を摂って頂いています.夜にコップ一杯に溶いた下剤を服用します.当日朝は絶食で,1.8リットルの腸管洗浄液を飲んでいただきます.検査直前に肛門を麻酔するゼリー状の薬を塗ります.また,腸の動きを抑える注射をします.当院では原則として鎮静剤は使用していませんが,希望される方は申し出てください.

検査後:撮影した像をお示しし結果説明をします.検査後直ちに歩いて帰宅可能です.腸の動きを抑える注射の作用で一時的に目のピントが合わなくなることがありますので,車やバイクを自分で運転しての帰宅は禁止しています.検査後直ちに食事可能です.