日本人に多い主な癌を簡単に解説しました.ただし,小生の専門外の乳癌(外科)と卵巣癌,子宮癌(婦人科)は省いていま.

 症状は,代表的なもの挙げているに過ぎません.気になる症状があれば,かかりつけ医にご相談下さい.また,症状が出てからではかなり進行している場合が少なからずあります.

 健診を受けることが,癌の早期発見・早期治療につながります.

食道癌   

 悪性度の高い癌です.しかし,一方,早期に発見すれば,内視鏡治療で完治可能です.

 高危険群は50歳以上の男性で,飲酒,喫煙をする方です.フラッシャーといって,お酒を飲むと顔が赤くなる人およびお酒を飲み始めたころにフラッシャーであった人は特にリスクが高いことが分かっています.これらの方は,年1回の内視鏡による検診をお薦めします.

 高危険群でなくても,ものが飲み込みにくい,痛い,胸部につかえ感がある方も,内視鏡検査を受けられることをお薦めします. (→症例写真)

肺癌   

 男性の癌死亡率の第1位,女性では胃がんに次いで第2位です.

 治りにくい咳や胸痛,息切れ,血痰,声のかれなどが多い症状ですが,無症状のものも少なからずあります.

 肺野型(肺の奥のほうにできる)肺癌はレントゲン写真に写りやすいので,年1回レントゲン写真を撮ることはある程度意味があると思われます.しかし,喫煙と深く関係している肺門型(肺の入口にできる)肺癌は,レントゲン写真に写りにくく,痰の細胞診で補う必要があります.50歳以上の重喫煙者の方は,できれば,レントゲン写真に写りにくい癌も描出できる,ヘリカルCTと呼ばれる肺のX線断層検査を受けるようにしましょう.

 治療は病気の進行度により,手術,放射線,抗癌剤あるいはこれらの組み合わせが行われます.

胃癌   

 昔から日本人に多い癌で,女性の死亡原因第1位です.現在の中・高年以上に多いヘリコバクター・ピロリ(いわゆるピロリ菌)感染により引き起こされる慢性萎縮性胃炎が胃癌の原因の一つと考えられています.

 胃痛,もたれ感,食欲不振などを伴うこともありますが,早期癌は多くが無症状です.年1回の内視鏡による検診をお薦めします.内視鏡で完治する早期癌の発見が増えてきています. (→症例写真)

 ピロリ菌の除菌治療 は胃癌の予防に有効と考えられます.保険診療で除菌治療ができるようになりました.希望される方はご相談下さい.

肝細胞癌   

 多くはB型,C型慢性肝炎,非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とアルコール性肝障害から肝硬変を経て発症します.

 B型およびC型慢性肝炎の患者さんは肝炎ウイルスに対する薬物治療,NASHの患者さんは食事療法,アルコール性肝障害の方は禁酒がまず必要です.その上で,定期的に血液,超音波,CT検査を受けて癌の発生の有無をチェックを受けてもらって下さい.

 がんが見つかった場合は,肝臓の予備力と癌の大きさと数に応じ,手術の他に,電磁波で癌を焼いたり,癌をを栄養している血管を閉塞させたりして治療します.

膵臓癌   

 進行するまで無症状のことが多く,膵臓は背中寄りにあり検査しにくいため,早期に発見されることは残念ながら多くありません.背中の痛みや黄疸などで発見されることがあります.検診では比較的早期に見つかることもあります.

大腸癌   

 欧米人に多い癌ですが,最近日本人にも増加しています.血便,便秘,下痢,腹痛で発見されることがありますが,無症状の方も多いです.スクリーニングとして便検査がある程度有効ですので,年1回の便検査をお薦めします.

 比較的悪性度の低い癌で,手術成績は比較的良く,また,早期のものは内視鏡治療で完治します.大腸ポリープの多くを占める腺腫性ポリープは癌になり得ますので,内視鏡的に切除することが薦められます. (→症例写真)

腎癌  

 大きくなると,血尿,痛み,腹部の腫瘤触知で見つかることがありますが,最近は無症状の時期に腹部超音波検査で偶然見つかる小さな癌が増えています.

膀胱癌  

 血尿や痛みなどが起こりますが,かなり進行するまで症状がないこともあります.膀胱炎様症状(頻尿など)のみのこともありますので,症状が長引く場合は要注意です.

前立腺癌  

 前立腺とは膀胱の出口にあって尿道を取り囲むようにある小さな臓器で,男性のみにあります.早期には自覚症状はありません.進行すると排尿障害や血尿がみられることがあります.

 この癌は血液検査(PSA)でスクリーニングできる,数少ない癌です.中・高年男性はぜひPSA検査を受けましょう.