肝・胆・膵臓疾患

 日本人に多い主な肝臓・胆嚢・膵臓疾患について簡単に記載しました.

 症状は代表的なものを挙げているに過ぎません.気になる症状があれば,かかりつけ医にご相談下さい.

 肝臓癌,膵臓癌は””のページに記載しました.

急性肝炎  

 急性肝炎を起こす主なウイルスには,A型,B型,C型があります.A型肝炎は,経口感染で,A型肝炎患者の便中のウイルスを摂取したカキなどを,生で食べたときに起こります.B型肝炎は,血液を含む体液を介して感染します.最近は性行為に伴うものが多いようです.C型肝炎は,従来は輸血によるものが多かったのですが,現在の輸血ではほとんどなく,刺青・薬物乱用などによるものが多くなっています.   

 A型は2~6週,B型は1~6か月,C型は2週~6か月の潜伏期を経て感冒様症状,次に黄疸や褐色尿を認めます.ただし,C型は症状が比較的軽く,3割は全く自覚症状がありません.まれには,急性肝炎から劇症肝炎といった命にかかわるような重篤な状態に陥ることがあります.  

 黄疸や褐色尿はもちろん,全身倦怠が強いときは,早い目にかかりつけ医を受診しましょう.   

 薬剤,アルコール,自己免疫疾患などでも同様の病状となることがあります.

B型慢性肝炎  

 B型慢性肝炎は主に生下時の母子感染が原因です.小児期は肝機能の正常な無症候性キャリアーとして経過し,思春期から成人にかけ肝機能異常が出現します.大部分の患者さんは3から4年でこの肝機能異常は沈静化しますが,一部の患者さんが肝機能異常が持続し慢性肝炎となります.慢性肝炎の患者さんも,年率5%から10%の割合で強い肝炎を起こしたのちに沈静化します.肝炎の強さと期間の長さにより,肝硬変へ進むかどうかが決まります.肝硬変まで進むと年率5~8%で肝細胞癌が発生します.時に肝硬変を経ずに肝細胞癌が発生することもあります.    

 成人になってからのB型肝炎は通常慢性化しないと考えられていましたが,主に外国で感染するゲノタイAというタイプのB肝炎ウイルスの感染では成人における感染でも慢性化することがあり,最近増加してきています.   

 インターフェロンの注射または内服薬でウイルス量を減らす治療をおこない,肝硬変への移行や肝癌の発生の抑制を行うことができます.   

C型慢性肝炎 

 成人がC型肝炎ウイルスに感染すると,約40%が肝機能異常が持続する慢性肝炎になります.慢性C型肝炎の自然治癒は少なく,平均約20年で肝硬変,約30年で肝癌へ移行します.   

 ウイルスのタイプと量により治療が異なり,インターフェロン注射単独,インターフェロン注射と内服薬の組み合わせで治療が行われてきました.最近では内服薬のみでの治療も開発され,これらの治療で高率にウイルスを排除し肝硬変や肝細胞癌への移行が防げるようになってきました.

 C型慢性肝炎は癌に至ることもある疾患ですが,治療による制御が可能です.一方,この疾患は,急性増悪期以外は自覚症状に乏しく,血液検査で偶然発見される場合が多いのです.肝機能異常を指摘されたら,自覚症状がなくてもまずかかりつけ医を受診してください.

非アルコール性脂肪性肝疾患および非アルコール性脂肪肝炎  

 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は中性脂肪が肝細胞に沈着し肝障害をきたす疾患の総称.非アルコール性脂肪肝炎(NASH)はNAFLDのなかのいわば重症型で,脂肪の沈着だけでなく,炎症,壊死,線維化を伴い,肝硬変さらには肝細胞癌にまで進み得る疾患です.いずれも肥満,糖尿病,脂質異常症などが危険因子です.

 いずれも自覚症状は通常なく,健診などで見つかることが多い疾患です.現在のところ特効薬はなく,食事療法が治療の中心です.

肝硬変症  

 前述の慢性B型肝炎,慢性C型肝炎,非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の他に,アルコール性肝障害,自己免疫性肝炎の持続により,肝細胞が破壊され,徐々に硬い組織に置き換わっていくことにより,この病気になります.

 肝臓の機能が落ちて,全身倦怠を覚えたり,進行すると黄疸や腹水が出現します.食道の静脈が瘤状に腫れて破綻したり,肝癌が出現したりもします.

 肝移植以外には,肝硬変を根本的に治す治療は,未だ確立されていません.今のところ,肝臓の炎症を抑え肝硬変の進行を遅くする治療と,症状に対する対症的な治療が中心です.

 また,定期的に,超音波検査やCT検査で肝癌を早期に発見すること,内視鏡で食道の静脈の腫れを見ることが大切です.

胆石症  

 胆嚢に結石ができる病気で,無症状の場合も多いです.この場合は通常,経過観察のみとします.

 右上腹部に痛みが生じたり,胆嚢炎を併発し,やはり痛みと発熱がおこることがあります.これらの場合は胆嚢摘出が考慮されますが,小さな傷で済む腹腔鏡下の手術が多くなっています.   

急性・慢性膵炎   

 アルコール,胆管の結石などが原因でおこります.原因不明の場合もあります.みぞおちや背中のひどい痛みが生じます.