京都俳句推敲指導経過とその解説    
磯 野 香 澄
原句梅の花添えてはんなり京御膳 寿 一
この句の欠点として「はんなり」と言う形容詞が書かれている事です。俳句は読んだ人がその情景に臨場して作者の情感に同化させられるのが最終目的ですから、作者の思いは書くのではなく、「はんなり」と感じた時の状況を書きます。そこで

京御膳梅の花添え目の高さ
御膳が運ばれてきた時にその気分が強く感じられたと言う事で、その侭目の高さとしてみます。俳句ばその情感を受けた場所が不可欠です。御膳だけを書く場合なら「目の高さ」で場所に成り得る時もありますがこの場合これでは情感が出ません。そこで範囲を広くして「はんなり」と楽しい気分になったのはどこだったのか、その背景である「離れ部屋」と入れ替えてみます。

京御膳梅の花添え離れ部屋
これでその場を写生出来ました。しかしこれではまだ作者の思った情感が出ていません。これからが推敲のテクニックで、どこを動かすと情感をにじみだす事ができるか、多くは助詞を一字替える事で驚くべき変化で叙情が表現出来るのですが、この句の場合「添え」の「え」だけですので「う」と「い」だけですので助詞では駄目で、上五と下五を入れ替えてみます。

◎離れ部屋梅の花添え京御膳
こうして上下を入れ替えるだけで、いみしん?な状況で梅の花が添えられた料理がより嬉しくはんなりと感じられる事が書けました。

トップ  戻る  次へ