京都俳句推敲指導経過とその解説    
磯 野 香 澄
原句紙の鉾カウンターに置いて割烹店 寿 一
この原句の場合二つの疑問がおこります。その一つは「紙の鉾」で切れているので、カウンターに何が置いてあるのかはっきりしない事です。何故かと言えば常々置いてある物なら切れていても分かりますが、で無かったらそれは何かとも分からない。そしてもう一つの疑問は「紙の鉾」とするなら何故置いてあるのかはっきりさせる事です。そこで

カウンターに紙鉾飾り割烹店
これでどうなっているのかはよく分かるのですが、紙の鉾が飾ってある位では句材にする程のものではありません。そこでこの風景にどう思ったのかを感じられる様に持って行かなければなりません。

割烹店カウンターに紙の鉾並べ
字余りですがこれで割烹店がお客へのサービスに、祇園祭りの雰囲気を出そうとしている事が分かります。しかしこれでも楽しさも何も伝わりません。そして字余りを解決する必要があります。そこで

◎止まり木や紙鉾並べ割烹店
カウンタ−と言うどこでも使う言葉で無く、飲食店独特の「止まり木」とする事により字数も解決し「止まり木や」として切る事でお客の心が言える表現ができました。「紙鉾並べ」で鉾が一つで無い事、そして紙の鉾と言えども折り紙状で無く鉾として立っている事も分かります。これで祭り気分でお酒の一杯も多くなると言った楽しさが書けました。

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