京都俳句推敲指導経過とその解説    
磯 野 香 澄
原句群なしてゆく赤とんぼグリ−ンの空  寿一
この原句の侭を読み取るととんぼが渡り鳥等の様に空を飛んで行ってしまいます。せっかくゴルフ場の芝のグリ−ンに赤とんぼが群れている美しい光景を捉えているのですから、読み手にその素晴らしい光景をきちっと渡したいものです。そこで

ゴルフ場グリ−ンに群れる赤とんぼ
先ずはっきりと色の対比が分かる様にグリーンに群れる赤とんぼと書きます。ところがグリーンだけですと野山は何処でもグリーンですから当り前になります。そこでどうしてもゴルフ場と入れなければなりません。これで状況はよく分ったのですが、グリーンとゴルフ場と言う同義語で半分字数を使ってしまい、単なる写生で終ってしまい俳句として未熟です。そこで

プレーするグリ−ンや群れる赤とんぼ
このゴルフ場でプレー中なのだ。〈プレーするグリーンに群れる赤とんぼ〉と一本で言い切る作業が先にあるのですが、〈プレーするグリーンや〉とや切りにする事で現在只今プレーしていると生き生きしてきます。これで一応は出来て居るのですが、俳人として句材にする場合もっと感動した情景であったはずです。

◎赤とんぼ群れるグリ−ンのプレーオフ
俳句の言葉は一字一句どれもがもっともなと言う前提があって完成するのです。グリーンと言えばプレーが上がる場所です。そこに赤とんぼが群れている美しい光景が展開されている。表現として上下をひっくり返して赤とんぼを上五へ持ってきて、美しい光景の中で今プレーが終わる。ここではもうスコアは問題ではなく、遊びとは言えプレーの緊張が解ける。その場の風景と心情が一致した一句になりました。

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