京都俳句推敲指導経過とその解説 | |||
磯 野 香 澄 | |||
原句尋ね来し甥の就職花便り 寿 一 | |||
この原句の欠点として三つ切れになっている事です。「甥の就職」としてしまったので誰が訪ねて来たのか分らなくなりました。その上「花便り」と言う季語を持ってきたので、上中下がばらばらになってしまったのです。そこで | |||
春風や甥挨拶に紺の服 |
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「花便り」と言う抽象的な言葉を現実的に「春風」としてみます。そして甥は何をしに来たのか訪れた目的をはっきりさせます。しかし「紺の服」ではもう一つ就職と言う意味がはっきりしません。そこで | |||
紺の服着て挨拶に甥の春 |
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これで大分解りやすくなったのですが、字数の都合で「甥の春」としましたがこれ又抽象的で、言わんとする事は分かっても詩的情感が無く、これではまだ俳句とは言えません。そこで | |||
◎濃紺の服で来し甥花日和 |
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やっと現実その侭の情景が書けました。これで挨拶と言う訪問の目的を書かなくても「花日和」と言う楽しい感覚を持つ言葉によって、就職が出来た報告をしに訪れた事がそして喜びがしっかり表現出来ました。 |