六斉念仏・獅子と土蜘蛛


 今年は8月31日が二百十日。立春から数えて210日目は台風襲来の時期にあたります。「雨降り盆」と呼ばれるこのころは農家にとって厄払いの日です。折りしも、日本列島を台風16号が縦走していきました。
 京都周辺で稲は早稲品種を栽培される農家が多く、昔のような晩稲(おくて)品種が少なくなりました。それでも二百十日は中稲(なかて)の開花期であり、農家では風雨による災害を警戒します。富山・八尾町「風の盆」も、二百十日に稲の着果期が穏やかでありますように、と願う町流しの踊りです。

 京都の各地で受け継がれている六斉念仏は、こうした庶民の生活行事として催されてきました。平安時代に空也上人がはじめた踊躍念仏に起源があるといわれています。つづみ太鼓の曲打ちや、雅やかな祇園囃しなど。おかめ、ひょっとこも登場して舞台を盛り上げます。獅子と土蜘蛛の曲踊りは佳境です。参道には露店が並んでいます。十五夜の月を遠目に見ながら、伝統文化と夜店のにぎわいを楽しんだ宵でした。

 新涼。あんなに暑かった日がうそのように夜風が涼しく、いつのまにか虫の音が、網戸の向こうに聞こえてきます。季節は律儀に訪れます。

(2004年8月31日、久世六斉念仏。京都市南区久世上久世町・蔵王堂光福寺で)

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