コスモス揺れて

〜里へ下りる野生動物

 最近、野生動物が増えている、と感じます。この棚田にもイノシシやシカが荒らした跡が残されていました。里へ下りるイノシシは稲や芋の美味しさをおぼえます。猟師が生業にできた時代は遠い昔。天敵がいなくなってバランスが崩れたゆえ、里山の資源が底をつきます。人影が引いた静かな棚田に下りたイノシシの親子も、その恵みをそっともらっているのでしょう。 (2006年10月15日、長岡京市浄土谷北谷で)

丁亥
 年賀状にイノシシのイラストをよく見かけました。2007年の干支は丁亥(ひのとい、ていがい)です。  イノシシの警戒心はとても強く、本来人前に姿を現す動物ではありません。大きくなるにつれて食欲旺盛となり、ときには里地に下りてミミズや虫を食べるために、畑を掘ったり石垣を崩したりして農作物を荒らします。大人になったイノシシは体重が百キロを超え、雄は大きな牙が出てきます。雌は年に一度、4〜5頭の子を産みます。強い繁殖力です。

 運動能力や学習能力も高く、1メートル以上ジャンプできます。急な崖でも登ります。泳ぎも得意。数を数えることもできるといわれています。力持ちで、かしこい動物です。イノシシの好物はサツマイモやスイカ、稲、果物など農作物、昆虫の幼虫、ヘビ、ミミズなどです。雑食性で、家庭の残飯なども食べます。

 イノシシは特に土の中のものが好物なため、鼻で地面を掘り起こし、大きな穴をあけることがあります。水田へは稲の穂が出そろったころ、集団でやってきて穂を食べたり泥あびをしたりすることがあります。棚田の稲を一晩で一枚づつ食べ、山あいの水田を全滅させることもあります。最近では、家庭から出る生ごみをねらって住宅地の近くに現われ、道ばたでイノシシと出会う場面が増えています。

 近ごろ、人々は農業から離れ、かつて田畑であった場所は竹林ややぶがひろがっています。 林家が生業として機能しなくなり、山の手入れも行わなくなりました。山は荒れてごみ捨て場となっているところさえあります。こんな場所はイノシシには格好のえさ場です。やがてイノシシの棲みかとなり繁殖します。皮肉にも、大量消費社会を営む人がイノシシにとっての楽園を提供することになりました。

 このような生活習慣や環境を次の世代に受け継いでよいのか…。歳を重ねて気づくことがあります。人生この繰り返しのようですが、欧米型の合理主義文明に浸って、少しずつこころの破滅へ向かっていると思うのはわたしだけでしょうか。(2007年1月18日)

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