「小公女」セーラのパン(2)

「小公女」という本で「甘食」と訳された本は本当にあるのでしょうか

「小公女」セーラのパン(1)



「小公女」いろいろ
刈田 元司という訳者について


「小公女」いろいろ

大阪国際児童文学館所蔵の「小公女」
少なくとも調べる対象の本は昭和30年以前に出版されたものに限定してみまし た。 1 小公女 1940/11/25 バーネット/作 主婦之友社 2 小公女 1946/11/15 水島 あやめ/著 大日本雄弁会講談社 3 小公女 1948/12/01 バーネツト/作 鎌倉書房 4 小公女 1949/03/20 バーネット/著 新月社 5 小公女 1950/07/15 バ−ネット/原作 東和社 6 小公女 1950/07/25 バーネット/原作 大日本雄弁会講談社 7 小公女 1953/06/20 バーネット/著 三笠書房 8 小公女 1953/12/25 バーネット/著 新潮社 9 小公女 1954/03/25 バーネット/作 岩波書店 10 小公女 1954/03/25 フランセス・ホッジソン・バーネット/著 岩波書店 11 小公女 1954/03/25 バーネット/作 岩波書店 12 小公女 1955/08/15 バーネット/原作 河出書房 13 小公女 1957/08/10 バーネット/原作 集英社 14 少年少女世界文学全集13 アメリカ編3 1958/11/20 安倍 能成/[ほか]監修 講談社 15 少年少女世界文学全集13 アメリカ編 3 1958/11/20 伊藤 貴麿/[ほか]編 講談社 この15冊のうち14冊は「甘パン」もしくは「あまパン」という日本語訳になっ ていました。 さて、たった1冊「甘食パン」と訳されている本がありました。 それは、 刈田 元司/訳 新月社 4 小公女 1949/03/20 バーネット/著 新月社 シリーズ名新月少年世界文学 当時の価格は「110円」 階 場所 資料コード 請求記号 状態 閲覧室 書庫 5500732382 N481205/1-(2)// 閲覧できます 59ページ 「それから、まっすぐ正面の店を見ると、ー決して夢や空想ではなくーそれはパ ン屋であった。そして薔薇色の頬をした元気な頑丈なおかみさん風の女が、窓の なかに美味しそうな熱い甘食パンー葡萄入りの大きな丸々とした眩しいようなパ ンの盆を並べようとしていたのである。」 「甘食」と訳されている本がありました! ちょっとどきどきしましたね。 この本は、1949/03/20発行。昭和24年です。 国際児童文学館の一番古い訳本は、 伊藤 整/訳です。 1 小公女 1940/11/25 バーネット/作 主婦之友社 伊藤整訳は最近のものも「甘パン」という訳になっていますし、 1940年の訳も「甘パン」でした。 1 小公女 伊藤整訳1940/11/25 バーネット/作 主婦之友社 2 小公女 水島あやめ訳 1946/11/15 水島 あやめ/著 大日本雄弁会講談社 3 小公女 伊藤整訳 1948/12/01 バーネツト/作 鎌倉書房 4 小公女 刈田元司訳 1949/03/20 バーネット/著 新月社 5 小公女 岩下小葉訳 1950/07/15 バ−ネット/原作 東和社 6 小公女 水島あやめ訳 1950/07/25 バーネット/原作 大日本雄弁会講談社 7 小公女 伊藤整訳 1953/06/20 バーネット/著 三笠書房 8 小公女 伊藤整訳 1953/12/25 バーネット/著 新潮社 9 小公女 吉田勝江訳 1954/03/25 バーネット/作 岩波書店 10 小公女 吉田勝江訳 1954/03/25 フランセス・ホッジソン・バーネット/著 岩波書店 11 小公女 吉田勝江訳 1954/03/25 バーネット/作 岩波書店 12 小公女 川端康成訳 1955/08/15 バーネット/原作 河出書房 13 小公女 1957/08/10 バーネット/原作 集英社 14 少年少女世界文学全集13 アメリカ編3 村岡花子訳 伊藤整訳 1958/11/20 安倍 能成/[ほか]監修 講談社 15 少年少女世界文学全集13 アメリカ編 3 1958/11/20 伊藤 貴麿/[ほか]編 講談社 12 小公女 川端康成訳 1955/08/15 バーネット/原作 河出書房 川端康成訳は、「甘パン」ではなく、「ぶどうパン」となっていました。 「ふっくらしたぶどうパン」
刈田 元司という訳者について 小公女 1949/03/20 バーネット/著 新月社 この本の訳者は「刈田元司」という人です。 この方はいったいどういう方かと調べたら、サリンジャーや フィッツジェラル ド、ポーなどの訳で知られた超有名な翻訳者でした。パール・バックの「聖書物 語」は私の手もとにもあって、刈田元司訳でした。 刈田元司のおもな仕事 サリンジャー選集(2) 若者たち〈短編集1〉 サリンジャー選集 J.D.サリンジャー (著), その他 単行本 (2000) 荒地出版社 パール・バック聖書物語 旧約篇 現代教養文庫 パール・バック聖書物語 (新約篇) 現代教養文庫 (1632) パール・バック (著), 刈田 元司 文庫 (1999/11) 社会思想社 パール・バック聖書物語 新約篇 (2) パール・バック (著), 刈田 元司 (翻訳) 単行本 (1981/12) 社会思想社 ポー・アンソロジー―The World of Edgar Allan Poe 刈田 元司, その他 単行本 (1987/04) 弓プレス(鷹書房弓プレス) ポカホンタスとマシーセン―アメリカ文学試論集 刈田 元司 (著) 単行本 (1986/10) 山口書店 フィッツジェラルドの文学―"アメリカの夢"とその死 刈田 元司 アメリカ文学史 H.C. ブラシャーズ (著), 刈田 元司 (翻訳) トム・ソーヤーの冒険  著者:マーク・トウェイン著、刈田元司訳 出版社: 研究社出版 エドガー・アラン・ポー/刈田元司(訳)旺文社 割合簡単に手に入る最近の「小公女」8冊と1950年代あたりに出版された15冊、 あわせて23冊の「小公女」を調べた限りでは、そのほとんどが「甘パン」もし くは「あまパン」や「かしパン」といった訳になっていますが、たった1冊19 49年発行刈田元司訳の本だけが「甘食」という訳になっていました。 「小公女」の訳本はたぶん100冊前後はあるのではないかと推測しているので すが、「甘食」という訳になっているのは、いったい何冊あるのでしょうか。そ れともやはり刈田元司訳のみが「甘食」という訳になっているのでしょうか。 でも、それにしたら「セーラのパン」は「甘食」だったと記憶している人がそれ なりおられるというのはちょっと不思議な話ではないかとも思います。

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