平年なら雪に閉ざされ、五月まで根雪が残ることも珍しくない京都府美山町の芦生、佐々里両地区などに、今年は節分を過ぎても雪がない。地域の古老が「こんな冬は記憶がない」と驚くだけでなく、暖冬でクマも冬眠から目覚めたとみられている。
両地区は由良川の源流域にあり、町内で最も山深い。近くの府周山土木事務所田歌観測所のデータでは、昨年十二月十五日から二月八日までの間に雪が降ったのは、わずか九日。
最大積雪量は、先月二日夜半から三日にかけての二八aが最高で、その後の気温の上昇や降雨によって、すっかり雪が解けた。先月十日以来、積雪ゼロが続いている。
芦生に生まれ育った清水藤太郎さん(七五)は「豪雪は幾度もあったが、雪のない冬は体験したことがない。春から夏にかけての渇水が心配ですね」と首をかしげている。
同町田歌から福井県名田庄村に抜ける林道五波・染ケ谷線の標高約七〇〇bの峠付近のわずかな残雪では、厳寒期にあるはずのないクマの足跡がこのほど見つかった。里から離れており危険性はないとみられ、府京北地方振興局の池谷和博農林課主幹は「冬眠しなかったのではなく、暖冬で冬眠から目覚めたのでしょう」と話している。
(写真説明:上) 河原や田畑にも雪がない美山町芦生の集落
(写真説明:下) 日陰のわずかな残雪に、くっきりと残るクマの足跡(京都府美山町田歌・五波峠頂上付近) |