m● 山村の生命力伝えたい ●
(平成14年9月23日 朝日新聞)

● がん克服の林さん旬の料理法やエッセーも

 「ここは何もないところですが、自然はいっばい有ります。四季のうつろいの中で、野菜を作ったり、山菜を摘んだり、キノコを採ったりしています」。かやぶき屋根の民家が残る里として知られる京都府美山町から、がんを克服した女性が、山菜料理の作り方や自然に包まれた暮らしぶりをインターネットで発信している。開設から1年半。「末期がんの家族に、本物の自然の味を食べさせたい」といったメールも届くようになった。


 「美山旬菜塾」と名付けたホームページで、つくったのは林江津子さん(54)=写真。
 林さんは31歳のとき、甲状腺がんの手術を受け、声が出なくなった。今もかすれ声で、長くしゃべると、息が苦しくなる。絶望的な気持ちになったとき、畑の野菜や山菜、木々の芽吹きの生命力に「生きる力をもらった」という。以来、山の産物にこだわり、食べ方も工夫してきた。
 ホームページを作ったのもこんな思いを多くの人に伝えたいと考えたからだった。携帯電話はつながらず、パソコン接続も一般の電話回線しかない山村。だが、町内在住の元コンピューター技師から指導を受けて昨春、ほとんど独力で開設した。
 メーンは「旬菜料理レシピ」。冬はキンカンのつくだ煮、春はワラビやイタドリ、ツクシの山菜サラダ、夏はナスやトマト、ピーマンを使う夏野菜カレーなど、季節ごとに自ら工夫した創作料理を4点ずつ写真付きで紹介する。9月はサツマイモの甘煮。続いてトチの実やキノコを使った秋の料理を準備中だ。
 ほかに、畑を耕し、木の実や山菜を採る生活とその日の食事を記す「私の食日記」、自然や気候の変化で山菜や木の実、キノコ類が少なくなったこと、野生動物による農作物の被害などをつづる「エッセイ・深山の里から」、野生の鹿を捕まえるほど元気な飼い犬(しば犬)を一人称で紹介する「紋次郎のひとり言」など。山村での暮らしが生き生きと伝わってくる。
 さらに無農薬野菜や山菜、キノコ、木の実、平飼い卵など地元産物のネット販売のページもある。
 データ入力は電話回線が混雑しない夜中になる。林さんは「料理はもちろん、花も自分で撮ります。写真の入力に半日かかったり、ウイルスの侵入でパニックになったりとパソコンと格闘する日々ですが、ページ作りは新しい楽しみになりました。今後は美山町の情報ももっと発信していきたい」と話している。


写真説明:「美山旬葉塾」のホームぺ−ジ
アドレスは、http://wwwOO4.upp.so-net.ne.jp/syun/