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● 地域のニーズ掘り起こし ●
(平成15年1月5日 京都新聞丹波版)
弁当をつ<る「三色スミレ」の従業員。「注文が多くて、配達が間に合うか気になります」
(美山町鶴ケ岡)
八木町八木の商工会館にある京都中部部地域中小企業支援センター。口丹波一市八町の中小企業の新規開業をサポートしている。2000年4月の開設以来、三十件以上の起業を手助けした。
今年一月、巻き取り式ブラインドを生産する」京都カーブラインド工業」(亀岡市余部町)の電話が鳴った。「そちらのブラインドを、新聞記者席のパソコン用雨よけに使いたい」。ワールドカップ開催を控えた日本サッカー協会だった。
同社は、社長の浅田學さん(48)が昨年一月、同センターの支援を受け、たった一人で開業した。取り付けビスの不要な他社にないブラインドを開発していた。
早速、商品を送った。協会の求めに応じて改良し、四月末にGOサインが出た。ところが、当初は「約六千本を二回分割で納入」する予定が、「五月下旬までに一括」に変わった。一人では月千本が限界だ。
センターに相談すると、八木町内で冬に凍結防止剤を生産する工場を借りることができた。「場所を提供してもらったのだから」と、稼働休止中の同工場の従業員らをアルバイトで雇った。
納期を守った。今期の販売数量は、約三倍に伸びた。
現在、同社の営業活動は、インターネット上の紹介だけ。浮いた費用は、商品開発に回す。「デザイン、メカニズム、コストに優れ、簡単に生産できる商品を開発してこそ、大企業と競える」
美山町鶴ケ岡で今年四月、センターで企画を練り上げた主婦三人が、昼食用の弁当を配達する店「三色スミレ」をオープンした。当初は高齢者向けと考えていたが、少量の注文にも対応できることが職場や若者層に受けた。すでに「毎月の収支はとんとん」だ。
代表の相模愛子さん(46)は「三人の夢が現実になった。店の形態が偶然、地域の実情に合ったのでは」と振り返る。
浅田さん、相模さんとも、顧客のニーズにこたえた。だが、開業にいたるまでには、いばらの道も覚悟しなくてはならない。
民間参入を認める介護保険法が施行されたのを契機に、福祉施設などで働いた経験のある西垣篤江さん(60)は、自宅を改築し、痴ほう性のある高齢者を対象にした民間グループホームを開設しようとした。
行政の反応は鈍かった。「調整区域なので、大きな改築は無理では」「住宅の用途変更は難しい。福祉施設と申請して、商売に悪用する人もいるし…」
「人の役に立ちたいという心を見極めてほしい」。センターと相談、市や府の関係部署に何度もかけ合い、ようやく許可を得た。今年三月にオープンした「三愛の里」(亀岡市千歳町)は二カ月後、満室になった。
センターのコーディネーター八木真澄さん(42)は「きめ細かくサポートし、一件でも多くの開業の実現と雇用促進を進めたい」と力を込める。今も四件が地域のニーズを掘り起こし、開業に向けて準備している。