論文がJournal of Neuroscience(Volume 16, Number 24, Issue of December 15, 1996 pp. 7859-7867)に掲載されました。

詳しくは以下の通りです。

 グルタミン酸は中枢神経系における主要な興奮性伝達物質です。その興奮を伝える、受容体であるグルタミン酸受容体は、イオンチャネル型と代謝調節型に大別されます。イオンチャネル型はさらにそのアゴニスト特異性に基づいて、NMDA型とnon-NMDA型(AMPA/カイニン酸型)に分類されます。
 NMDA受容体は、記憶、学習や、シナプスの可塑性、神経細胞死などに重要な役割を果たしていることが知られていました。
 成熟マウスの小脳顆粒細胞では、グルタミン酸性のシナプス伝達に重要なNMDA受容体のNR2サブユニットの内、NR2AおよびNR2Cが発現しています。そこで、NR2A・NR2Cおよび両者の欠損マウスを作成し、小脳顆粒細胞における電気的反応と運動機能の変化を調べました。
 NR2A,NR2Cのそれぞれの遺伝子を単独に欠損すると、NMDA受容体による小脳顆粒細胞の電気的反応の大きさは約半分になり、両者の遺伝子を欠損するとほとんど反応が見られなくなりました。
 また、それぞれ単独の遺伝子欠損マウスでは運動失調はみられなませんが、両者の遺伝子欠損マウスにおいては従来の小脳変異マウスで知られている運動失調とは異なる独特の協調運動の障害が認められました。
 以上の結果より、小脳顆粒細胞においてNR2A,NR2Cは相補的な役割を持って、協調運動に関わっていると考えられます。