韓国の世界遺産
 
八萬大蔵経の納められた伽耶山海印寺

海印寺は韓国屈指の大寺院。その壮大な伽藍を見ていると、えもいえぬ懐かしさのようなものが感じられた。それはこの国が日本の仏教の故郷であることと関係があるのかもしれないが、一方で、堂の軒下にはことごとく「丹青」という鮮やかな文様が施され、ここが異国の寺であることを物語っていた。
さて、この海印寺を有名にしているのは、総数8万枚以上に及ぶ「八萬大蔵教」の版木。韓国も日本と同様、12世紀に蒙古の襲来に悩まされるが、この版木は仏法で国を守ろうという願いをこめて彫られたもので、実際に蒙古はその力を恐れ退散した。日本では神風が蒙古を退けたが、韓国では仏教が蒙古を退けている。
石窟庵と仏国寺

朝鮮半島に新羅、百済、高句麗が鼎立していた三国時代のことは、日本史の教科書にも登場する。当時、新羅の都だった町が慶州であり、慶州にある世界遺産が仏国寺だ。門前に白雲橋・青雲橋という二段の橋を擁する仏国寺は、慶州のシンボルとして知られるが、仏国寺はその名の通り仏の国。地上に住む俗人は、この白雲橋・青雲橋を昇り、境内へと進みゆくことで仏の世界に到達する。
このように「寺院の基壇部=俗世間、高く築かれた寺院の上部=天上界」と、寺院そのものが宗教の世界観を表現しているという構造は日本の寺には馴染みがないが、ボロブドゥールやアンコールワットをはじめ、アジアの寺院建築には共通して見られる構造だ。

『イヤイヤ訪ねた世界遺産だったけど』
第1章「似て非なる国再見の旅」より