Case Methodで学ぶ「儲けの戦術」
1998年4月24日金曜の日経平均終値は16,011円。行使価格が16,000円の5月を限月とするオプションの市場価格は、終値で
プット 200円
コール 285円
であった。オプションの残存日数は14日である。
短期金利を0.77%(短期CDなどから)とし、Spaceを使って、オプションの市場価格からインプライド・ボラティリティーを計算すると、以下のとおりとなった。
プット 16.6% 割安だから「買い」
コール 22.1% 割高だから「売り」
本来、市場でのボラティリティーは1つである。日経平均の場合、ヒストリカル・ボラティリティーは20から30%の間を推移している。プットとコールで、5.5%もの乖離がある。これは、おかしい。そこで、プットが割安で、コールが割高であると判断し、プットを買い、コールを売ることにした。プットの購入コストはコールを売ることで、賄えた。
1998年4月27日月曜の日経平均終値は15,649円。行使価格が16,000円の5月を限月とするオプションの市場価格は、終値で以下のとおりであった。オプションの残存日数は11日となった。オプションは時間とともに、価値が変動し最終期日が来ると、権利が消滅してしまう消耗資産である。オプションは時間との勝負、短期決戦型商品である。手仕舞うかどうか、毎日の判断が必要である。
プット 500円 インプライド・ボラティリティー = 26.9% 「転売」
コール 100円 インプライド・ボラティリティー = 21.3% 「買い戻し」
コールのインプライド・ボラティリティーは、プットに比べると比較的安定している。が、プットは大きく変動している。市場関係者の間での下げ相場に対する不安が原因であろう。したがって、現状では、プットのインプライド・ボラティリティーをどう読むかが、相場に勝つ秘訣と考えられる。割安であったプットが、割高になり、割高であったコールが割安になったのである。もちろん、ここでプットとコールを反対売買し手仕舞うことはできる。その場合、プットを転売し、コールを買い戻すわけである。500円-100円+85円=485円の利ザヤを得ることができる。これが、オプションを使って儲ける秘訣の第一である。が、オプションには、まだまだ儲ける方法が隠されているのだ。「儲けの戦術 2」をみてみよう。
注意:インプライド・ボラティリティーを見てプレミアムを売買することの本質はバクチである。詳細は次ページの儲けの戦術 3 ショート・ストラドルを訪問してください。
オプションは時間との勝負であるから、最終期日である5月の第二金曜日までオプションを保有するのは危険である。「プットの買い、コールの売り」という投資戦略の最終的ペイオフは、現物を空売りしているのと同じである。実際、日経平均という指数を売ることはできないので、リスクは日経平均の先物を行使価格の1,6000円で売却しているのと、同じになる。これでは、オプションという新しい投資戦略の意味がない。以下のペイオフ図を見ていただきたい。茶色い線が、「プットの買い、コールの売り」の合成ポジションである。
これでは、余計な取引コストを考えると、採算が悪いことになる。
これをカバーするには、現物を買うしかない。日経平均に連動するインデックス・ファンドを購入するることも可能だが、日経平均の先物を使う方がよいだろう。もちろん、すでにそのようなインデックス・ファンドを持っているなら、「プットの買い、コールの売り」によってリスクはヘッジできるが、ブレイクイブン・ポイントはファンドをいくらで購入してかによる。先物は現物に対して通常は順ザヤ状態にある。行使価格にできるだけ近い金額で(16,000円近辺)、先物を買えばよい。この戦術の最終的結果をグラフで示したのが、以下のペイオフ図である。日経平均オプションはヨーロピアン型なので、途中で売り建てたオプションが行使されることはない。つまり、現時点においてこのペイオフは確定したことになるのだ。つまり、現時点で手許にある85円(オプション売買によって生じた残りの金額)が儲けとして確定したことになるのだ。これがオプションの醍醐味である。ぜったいに損をせずに、儲けることができるのである。
このようなペイオフを生むトレイド方法には、名前がすでにあり、conversionという。
ところが、ここに儲けの極意がさらにあるのだ。割安のプットを1枚以上4月24日の時点で買っておくのである。プットを3枚購入したときの、最終的ペイオフをは以下のとおりとなり、プットをもっと買えばもっと儲かる。儲けは、プットがどれだけ買えるかにより、実質上は青天井である。すごい。すごい。
これを見ると明らかであるが、相場が16,000円以下になると儲かり、これ以上になると、損失はプットを購入することによって支払った合計の315円に、リスクが限定されるのである。オプションには「保険」としての役割があるのだ。
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