SpaceTraderを使って儲ける
儲けの戦術 3

ショート・ストラドル
今が、オプションと先物の出番だ!

日経225オプションの例

 

 1998年5月28日木曜の日経平均は終値で15,796.55円。行使価格が14,500円の6月物プットの市場価格は、終値で20円。Spaceを使って、オプションの市場価格からインプライド・ボラティリティーを計算すると、26.8%(短期金利は0.7%、残存日数15日)である。これに対し、行使価格が16,500円の6月限コールの市場価格は60円、インプライド・ボラティリティーは、21.6%である。割安のコールを買ってプットを売ってもよいが、コールの方が高いので、現時点でポジションが40円マイナスになってしまう。また、パキスタンが核実験を行ったこともあり、国際情勢は不透明である。有事のドル買いによって、日経平均が、来週に入ってさらに下落する可能性はじゅうぶんある。そうなれば、プットを行使され、相場に負けてしまう。

 インプライド・ボラティリティーからオプション価格が「割安」か「割高」かを判断することは、本質的にはバクチである。「真理は一つ」であるから、ボラティリティーも一つであるはず。しかし、真のボラティリティーはわからない。したがって、インプライド・ボラティリティーを見る戦術は、「割高のものは安くなり、割安なものは高くなる」という、あくまでも「仮説」が正しいと判断されるときに限って効力があるのだ。オプション相場で勝ち抜くことは、ボラティリティーを読むことでもある。ここが、オプションの勝負どころでもある。が、オプションだけではなく、先物と組み合わせて儲ける戦術がある。それには、まず「仕込み」が必要である。以下が、今の相場を見ての提案である。

 

異なった行使価格でコールとプットを、双方ともに同時に売却しよう。

 

 事実、29日金曜の午前、日本の完全失業率が過去最悪なこととパキスタンが核実験を行ったことなどを背景に株・円ともに値下がりした。とくに円相場は、一時139円台まで下落した。ボラティリティーが今後、下落することと時間的価値が減少することで、オプションの価格が安くなる可能性はじゅうぶんある。そのときは、オプションを転売して、手仕舞えばよいではないか。

 相場が乱高下し、ボラティリティーの上昇によってオプション料が跳ね上がることも考えられる。そのような場合、転売は損失につながる。コールのインプライド・ボラティリティーがプットに比べて低いのは、相場が下落する不安が高まっていることである。上場企業の決算内容の悪化や景気の低迷だけではなく、印パ戦争勃発の危機感も相場の落ち込みに拍車をかけるであろう。相場が動いたとしても、下がる方向へ動くであろう。

 だから、コールとプットを今、違った行使価格で売り建てるのである。この戦術には名前があり、ショート・ストラドル(short straddle)と呼ばれている。コールを行使価格16,500円、プットを行使価格14,500円で同時に売ろう。青い線がオプションの理論値で、満期が近くなるにしたがって、最終的なペイオフを示す茶線に近くなっていく。さらに、この図の下の表に示したのが最終的ペイオフである。日経平均がコールとプットの行使価格の間でフィニッシュすれば、現時点のオプション料である80円が儲けになる。もっとたくさんオプションを売れば、もっと儲かる。(シミュレーションにはコールとプットのインプライド・ボラティリティーの平均値24.2%ボラティリティーとして使った。)

 

 

満期における

オプション

ポジション

満期における

オプション

ポジション

原資産価格

P/L

の価値

デルタの合計

原資産価格

P/L

の価値

デルタの合計

12500

-1920

-1916.0647

0.998628

15400

80

12.9856

0.019798

12600

-1820

-1816.2451

0.997691

15500

80

12.7505

-0.024456

12700

-1720

-1716.5441

0.996223

15600

80

8.0937

-0.068729

12800

-1620

-1617.0259

0.993990

15700

80

-1.0129

-0.113530

12900

-1520

-1517.7818

0.990686

15800

80

-14.6436

-0.159268

13000

-1420

-1418.9369

0.985936

15900

80

-32.9071

-0.206214

13100

-1320

-1320.6580

0.979289

16000

80

-55.9309

-0.254477

13200

-1220

-1223.1596

0.970234

16100

80

-83.8450

-0.303999

13300

-1120

-1126.7099

0.958219

16200

80

-116.7652

-0.354557

13400

-1020

-1031.6334

0.942678

16300

80

-154.7778

-0.405785

13500

-920

-938.3099

0.923072

16400

80

-197.9278

-0.457207

13600

-820

-847.1699

0.898937

16500

80

-246.2090

-0.508265

13700

-720

-758.6849

0.869927

16600

-20

-299.5488

-0.558364

13800

-620

-673.3530

0.835860

16700

-120

-357.8283

-0.606912

13900

-520

-591.6810

0.796754

16800

-220

-420.8617

-0.653350

14000

-420

-514.1628

0.752845

16900

-320

-488.4123

-0.697189

14100

-320

-441.2577

0.704587

17000

-420

-560.1994

-0.738027

14200

-220

-373.3689

0.652636

17100

-520

-635.9072

-0.775567

14300

-120

-310.8258

0.597810

17200

-620

-715.1959

-0.809621

14400

-20

-253.8710

0.541032

17300

-720

-797.7121

-0.840108

14500

80

-202.6540

0.483262

17400

-820

-883.0993

-0.867051

14600

80

-157.2206

0.425430

17500

-920

-971.0077

-0.890556

14700

80

-117.5408

0.368365

17600

-1020

-1061.1021

-0.910804

14800

80

-83.5007

0.312733

17700

-1120

-1153.0680

-0.928029

14900

80

-54.9313

0.259000

17800

-1220

-1246.6165

-0.942505

15000

80

-31.6290

0.207408

17900

-1320

-1341.4871

-0.954522

15100

80

-13.3775

0.157968

18000

-1420

-1437.4490

-0.964381

15200

80

0.0303

0.110486

18100

-1520

-1534.3011

-0.972375

15300

80

8.7729

0.064593

18200

-1620

-1631.8710

-0.978782

 では、満期の5日前になって相場が急上昇し16,500円を上回るところまでになったとしよう。オプションを転売することもできるが、ボラティリティーが高いと転売しても、結果がマイナスになろう。オプション料は、ボラティリティーが高くなるにつれて高くなるからだ。オプションの価値は時間の経過とともに、急速に減少するから、ボラティリティーが下がると、プレミアムの転売は儲けにつながる。しかし、これだけでは、あまり大きな儲けは期待できないし、ボラティリティーを読むことはバクチでもある。

 ここでこそ、先物を使うのだ。先物で買いポジションを取って、さっと逃げ切るのである。以下が、シミュレーション結果である。(相場が逆に14,500円以下になったら、先物市場で、日経平均を売り建てればよい。同じように、儲けを持ったまま逃げ切ることができる。)

  6月12日金曜、朝方は日経平均が一時的に14,784円まで下がり、15,000円のサイコロジカル・ラインを割り込んだ。しかし、後場に入って銀行株を中心に買い注文が入り、日経平均は反発。結局、前日比8円29銭高の15,022.33円で引けた。また、この日は株価指数先物とオプションの満期日であるため、特別精算指数(SQ)算出に伴って、東証一部売買高は8億株台となった。日経平均のSQは14,980.52円となった。

 ここで使ったショート・ストラドル戦略では、日経平均が14,500円を割り込まなければプレミアム益が出ることを想定していたので、結果としてこの戦略で相場に勝ったことになる。この戦略を立案したのは、満期の約2週間前のことである。このように、オプションを使えば、相場がある一定の幅に入りさえすれば、儲けることが確実にできるのだ。

 


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