転換社債と株券オプションを使って儲ける方法


 転換社債は株式へ転換する権利の付いた社債である。ただし、転換価格があり、株価がこの価格以上にならないと転換できない。転換価格をオプションの行使価格と考えると、転換社債を購入することは、株券オプション(個別株オプション)を購入することと同じである。

 したがって、転換社債と株券オプションを組み合わせて、儲けることができる。オプション・トレーダーはブル・スプレッドまたはベア・スプレッドと呼ばれる戦略を時折利用するが、この戦略を応用して、転換社債と株券オプションの合成ポジションをつくれば、損をせずに、無リスクで、必ず収益を確保することができる!(ブルやベアの戦略には何通りかあるが、ここでは行使価格のコールを買い、行使価格のコールを売ることだ。Bがブルで、この逆がベアである。

 ところで、我が国の転換社債市場であるが、ミスプライシングがしばしば起こり、一部のトレーダーはこれを利用して儲けている。例えば、1998年11月29日(21:00-22:15)に放映(このシリーズは1999年4月24-25日深夜に再放送)されたNHKスペシャル「マネー革命」・「世界は利息に飢えている」の中で、日本の転換社債市場で大儲けをしているヘッジファンドの取材があった。ニューヨーク郊外にある会社である。このファンドはここで紹介する方法などをコンピュータのプログラムの中に入れて儲けているものと思われる。アービトラージとは、売買が成立した時点で儲けが確定し、リスクもないという方法である。この他、日本国債(JGB)の先物やオプションも利用していた。ニューヨーク大学教授などの協力も得て、日本の転換社債やJGBオプションなどの市場価格が理論値から乖離していることなどにも着眼して、独自のアービトラージ戦略を構築していたと考えられる。

 もちろん、多額の資金を運用するヘッジファンド会社が、ここで説明する転換社債と株券との組み合わせによるアービトラージのみで収益を出しているはずはない。儲けの多くは債券先物やオプションなどによるものであろう。しかし、オプション理論を応用して、確実に益が出ているとすれば、転換社債やワラントなどのオプション理論によって適性価格が算出できる金融商品であることは、間違いない。事実、番組の中でも、「多くの人が気付いていない」と述べていた。

 ちなみに、弊社のSpaceTraderを使えば、JGBオプション(利回りに直利を入れる)や転換社債(行使価格は転換価格で、転換社債はコール・オプションである。転換社債の評価にブラック・ショールズ式を応用することは可能であるが、詳細は専門書等のみに出ており、高度の専門知識が必要である。)の理論価格を計算することができる。弊社ソフトでも、ほぼ同レベルのことができる。


 まず、転換社債であるが、株券オプションが東証か大証で上場されている企業のものを探す。

 次に、転換社債の価格であるが、できるだけ安いものを狙う。つまり、株の市場価格が低すぎて転換価格を償還日までに上回ることが考えにくい銘柄を選択するのだ。(したがって、償還差益が狙える。今、ほとんどの銘柄がそうであろう。)転換社債を転換価格で買う。

 狙いをつけた銘柄のコール・オプションを株券オプション市場で売るわけであるが、行使価格が転換価格よりもどれだけ安いかで、最終的損益(ペイオフ)は変化する。以下は、当社のTraderを使って行使価格と転換価格が同じ場合のペイオフをシミュレーションした結果である。(シミュレーションには、オプションの残存日数が120日、短期金利が0.5%、配当利回りが0.8%、ボラティリティーが30%を入力値とした。が、ここで紹介する方法では、転換社債の満期がオプションの満期日よりも後ならば、ボラティリティーなどの変数は儲けるには不要である。)


 アンダーパー(¥100以下のもの)の安い転換社債を買う。コールのプレミアムであるが、アンダーパーならば、ゼロを入れる。オーバーパーならば、償還価格の¥100との差額をコールのプレミアムと考えて、この差額を入れる。ここでは、ゼロとした。転換価格は500円である。

 この転換社債を発行する企業の株券オプションのコールを売る。ここでは、行使価格を500円とした。プレミアムは10円としよう。

 最後に、以上2つのポジションの合計を見る。Traderを使うと、すぐに見れる。

 株式相場がどのように動いても、プレミアム分の10円を、絶対に儲けることができる。リスクなしで、儲けることができるのである。コールを行使されても、転換社債を株式に転換すればよいので、リスクはない。償還差益も入る。転換社債の満期までが長いならば、転換社債を株式に転換する必要性がない限り、ずっとこの社債を保有し、コールを売りまくれば、無リスクで大儲けができるのである。これはアービトラージのひとつである。


 もし、コールの行使価格が500円ではなく、600円になったとする。このようにコールの行使価格が転換価格より高い場合は、コールが行使されても転換社債を株式に転換価格500円で転換すれば損失を補うことができ、ペイオフは以下のとおりになる。相場が上がっても下がっても、利益が出る。無リスクで絶対に儲かる方法である。これがアービトラージだ!

 

 


備考

 以上の方法の他に、転換社債の価格と株券オプションの価格とに市場でミスマッチが起これば、転換価格がコールの行使価格を上回っても儲けることができる。実際に転換社債を使って株式を取得するには、転換比率などがあるため、売却したコールが行使されても損失をじゅうぶんに補えるだけの転換社債を購入しておく必要がある。が、これはコールの行使価格にも依存するため、計算には注意が必要である。

 また、転換社債ではなく、ワラントを使っても同様のことができる。

 転換社債にせよ、ワラントにせよ、本質的にはコール・オプションなので、コールを購入したと考えて、株券オプション市場を利用して無リスクで儲けるには、ここで紹介したアービトラージがベストであろう。

 しかし、このようなことは、もはやパソコンを使ってやらなければ、勘ではできない。


相場はパソコンに聞け!

 

Copyright (C) 1998 by Ken Muranaka