■ 相関は必須条件
サヤ取りは2つの銘柄を使って行うが、銘柄の間には相関がなければならない。
相関とは2つの銘柄の値動きがペアになって動く度合のことである。
統計学では、相関を「相関係数」によって定義する。相関係数は1と−1の間の値である。
■ 留意点
相関に関して、留意すべきことがある。
◎ 第一の留意点:「回帰式」
統計学を使うが、2つの銘柄の価格がセットになって同時に動くことを分析する手法に、「回帰分析」がある。
回帰分析とは、Xという変数からもう一方の変数Yの値を予測することで、例えば、以下のような式(「回帰式」)によって予測される。
一般に、Aを「傾き」、Bを「切片」という。
さて、Xという銘柄とYという銘柄の価格が同じように動くならば、このような「回帰式」によってXからYがじゅうぶん予測できるはずである。
◎ 第二の留意点:「限月」
例えば、大豆相場を例に説明する。
Xを99年12月限大豆の終値、Yを2000年2月限大豆の終値としよう。そこで、
という回帰式によって、予測式を求めるわけである。
が、限月が変わって、2番限であった12月限が1番限になっても、12月限と2月限が以前と同じようにペアで動く保証はない。
したがって、念のため、限月が変わってからは、しばらくの間、様子を見た方がよいであろう。例えば、限月が変わる前の回帰式と、限月が変わった後の回帰式とを比べてみるとよいだろう。データを取る期間であるが、サヤが収斂するまでの期間が長いほど、多くのデータが必要となろう。もちろん、限月交替に影響されず、高い相関を示すペアもありえる。
◎ 第三の留意点:「価格とリターン」
回帰式
における変数XとYであるが、価格を変数とすべきではない。
リターン(return)とは日足でのリターンで、金融工学ではdaily returnなどと呼ばれる。
と定義され、これに100を掛けて、百分率で表示してもよい。
このdaily returnであるが、以下の式によって近似される。
lnは自然対数である。オプション取引でのボラティリティー、先物で現物をヘッジするためのヘッジ比率やシャープのベータなどは、この近似式によるリターンを使って計算される。
相関係数には落とし穴がある。データを多く取り、価格を使って相関分析・回帰分析すると、高い相関が得られることがある。が、これは必ずも正しくない。相関は価格どうしの相関だけではなく、リターンどうしの相関もあってこそ、サヤ取りの道は成功するのである。
価格とリターンの両方を使っても、高い相関が出ているならば、一方の価格から他方を高い精度で予測できる。