確率分布

Probability distribution

 

■ 期待値の定義

期待値については、すでに少し述べた。が、ここではもっと数学的な定義をする。期待値がわかると、確率分布も容易に理解できるからである。

離散型の確率変数X(大文字のX)が取りうる値を、Xの小文字に添数iを付けて、

xi

と書く。Xが取りうる値は

X=x1,x2,...

と書くことができる。また、添数iを

i=1,2,...

と定めると、iによってランダム(でたらめ)な実験・試行の結果(事象)を数えることができる。

確率変数の値xiに、それぞれの値が実現する確率p(xi)をかけたものの和を期待値(数学的期待値)または平均値という。期待値は英語でexpected valueまたはexpectationなので、頭文字のEを使って「Xの期待値」という意味で、期待値をE[X]と書くと、

E[X]=x1p(x1)+x2p(x2)+・・・

によって期待値を求めることができる。

少々、記号が多くなり、記号の意味が重要になったが、数学の発展とは記号の発展のようなところもある。概念や考え方などを記号によって簡潔に表現することで、論理的な展開が明確になるためであろう。

 

■ 期待値の計算例

 

● 硬貨投げ

硬貨投げの場合、事象は2つしかないため、i=1,2である。したがって、X=x1,x2となり、確率変数には2つの値しかない。

x1=0(裏)

x2=1(表)

とすると、硬貨投げの期待値は

E[X]=x1p(x1)+x2p(x2)

=0(0.5)+1(0.5)

=0.5

と計算できる。

ただし、これは表を1、裏を0と決めた場合の値である。

硬貨を投げたときの事象を横軸、それぞれの事象が実現する確率を縦軸にとり、グラフにすると以下のようになる。このように事象が実現する確率を表わしたものを確率分布(probability distribution)という。

赤い矢印で示したところが期待値(0.5)である。硬貨を投げて表と裏の間の値である0.5が出ることはありえない。が、これはあくまでも数学的期待値である。この期待値が意味するのは、「硬貨を何回も繰り返し投げると、約半分は表が出ることが期待される」、ということである。 

 

● サイコロ振り

サイコロを振って賞金が当たるというゲームの期待値を計算してみよう。

ルールは簡単で、サイコロを振り出た目によって以下のように受取金額が決まる。ただし、サイコロを振る前に300円の参加料金を払わねばならない。

出た目

受取金額(\)

1

100

2

200

3

300

4

400

5

500

6

600

サイコロには6つの目があり、それぞれの目が出る確率が等しいと仮定する。それぞれの目が出る確率は1/6となり、各受取金額がもらえる確率も1/6となる。Xをサイコロの目とすると、このようなゲームによってもらえる金額の期待値E[X]は

E[X]=(1/6)(100+200+300+400+500+600)

                 =350円

である。

ゲームへの参加料金が300円なので、このゲーム期待収益率

(350-300)/300=0.167=16.7%

となる。

このゲームをすると、必ず16.7%の収益率(リターン)が出るという意味ではなく、「何回もこのゲームを繰り返すと、長期的な平均値として、収益率が16.7%に収れんすることが期待される」、という意味である。

このゲームの確率分布は、このようになる。

赤い矢印で示したところが期待値(350円)である。硬貨投げのゲームと同様、各試行においてこの期待値が出ることはありえない。が、「このゲームを何回も繰り返すと、平均的には、350円が手に入る」というわけである。そして、参加料金が300円なので、「長期的にみると16.7%のリターンが出る」ことが期待される。したがって、このゲームは、主催者よりも参加者にとって得なゲームである。もし、参加料金が350円なら、長期的なリターンは0%なので、主催者にとっても、参加者にとっても「公平」なゲームである。

 

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