オプション取引とは

 

    通貨オプションの例をアメリカン形式のオプションとするなら、コールの買い手はドルが110円以上になったとき権利行使すると有利である。これに対し、売り手は買い手から保険料としてプレミアムを受け取る。3カ月間ドルが110円以上にならなければ権利行使されない。その場合、プレミアムは返却しなくてよいので、売り手にとってプレミアムが収入となる。

    プレミアム(premium)とはオプションの価格のことで、もともと「保険料」という意味である。

    オプション取引では、プレミアムが権利の代金で、プレミアムが売買されることで権利が売買されるわけである。

 

ドルが110円以上になると権利行使は有利であるが、3円のプレミアムを払っているので損益分岐点(ブレークイブンポイント)は113円である。ドルが110円のとき権利行使しても、儲けはゼロで、3円のプレミアムを払っているので、トータルではプレミアム分3円の損失になる。

ドルが113以上に値上がりすると、コールの買い手にとっては有利である。

コール・オプションの場合、原資産価格(ドル)が行使価格以上のときのオプションを「イン・ザ・マネー(in the money)」という。逆に、原資産価格(ドル)が行使価格以下のときのオプションを「アウト・オブ・ザ・マネー(out of the money)」という。

仮にドルが120円のとき権利行使しても、これは120円のドルを110円で買うわけであるから、すぐに売って10円の利益を確定しなければならない。

が、一般に実際のマーケットではこのようなことはできない。為替の取引では売り値と買い値の開き(スプレッド)があり、すぐに売る場合でも相場が急変すると有利な価格で取引できるとは限らない。

オプション取引には決済方法についてのルールがある。日経平均のルールは通貨とは違うし、先物(大豆やとうもろこしなど)とも異なる。例えば、商品先物のオプションでは権利行使すると先物でポジションを取ることになり、証拠金が必要となる。このため、商品先物のオプションでは、オプションの最終取引日(納会日)は原資産である先物の納会日よりも早い。日経平均のオプションではSQ算出日が最終日(オプション契約の満期日)で、差金決済である。日経平均オプションは現物指数のオプションで、先物の最終取引日とオプションの満期日が同じになる限月がある。

このように、オプションの取引ルールを念頭に、オプションの損益図は、必ずしも実際の損益ではないことを留意すべきである。

また、コールの売り手は権利行使できない。権利を売っているわけであるから、行使する権利を持っていないのである。買い手に権利行使されたとき、不利であっても買い手の条件に応じる義務が発生する。商品先物オプションの場合、権利行使されると買い手と逆の約定を先物市場でしなければならない。コールの売り手なら、先物を売り建てねばならない。商品先物の場合、アメリカン・オプションなので権利行使はいつでもでき、権利行使があった場合は、抽選によって売り手が選ばれる。

コールの売り手の損益図は以下のようになる。

 

行使価格110円のコールを売る場合、円安になると不利になる。コールの買い手は110円以上になると行使するかもしれない。コールのプレミアムが3円なので、コールの買い手にとっても売り手にとっても損益分岐点は113円である。

アメリカン・オプションでの権利行使であるが、商品先物のオプションでは、抽選によって売り手に義務が発生する。

以上のオプション取引はドルが110円のときに成立している。行使価格とスポットが同じ値段のときである。行使価格と原資産価格が同じときのオプションを「アット・ザ・マネー(at the money, ATM)のオプション」という。また、原資産価格にもっとも近い行使価格のオプションを「ニア・ザ・マネー(near the money, NTM)のオプション」という。

実際のマーケットでは、オプション取引が成立したとき原資産価格と行使価格がぴったり一致していることはあまり起こらない。NTMをATMとみなして、「ATMのオプション」または「ATM近辺でのオプション」などということもある。

 

Copyright 1999 by Ken Muranaka