ホテルのロビーにピエロが、いました。人形のふりで、客を驚かすはずが・・・。
みんなが、遠巻きにしている中、ユウは、何の警戒感もなく、ピエロに近づきました。抱きついたり、手をあげさせたり、抱き上げようとしたり、自分の思いのままにピエロを動かして遊びだしました。困ったのは、ピエロです。人形のように静止し、突然の動きで驚かし、人間か人形かと考えさせて、自分のペースに引き込み、不思議な雰囲気を作り出し、楽しませるはずが。
ユウは、そんなことに頓着しないで、しかし楽しそうにかかわってきます。動きが少ない、しゃべっりかけられない、おまけにコントロールさせてくれる。こんな相手は、なかなかいません。
ピエロは、ユウに遊ばれながらも、考えています。動きが制約されたなかで、この子をどう驚かそうかと。突然、抱きつく。相手に体重をかけて倒れかかる。これで、大体の相手なら反応するのですが、ユウには効かず、ことごとくはずしました。ピエロが、焦っているのがよく分かります。遠巻きにしていた子供達も、近寄って触りだしました。そこで、頃合だとおもい、助け船をだしました。
ピエロがユウに感じた戸惑いは、相手の立場に立てない、相手と共感できないためか、人か人形かの違いに頓着しない、自分サイドの都合だけでかかわってくる、一方通行の関わりだったからで、自閉症の本質的なところから来ているように思えます。