エッチングパーツの自作


 1/7秋山澪 学祭ver.のジャズベースのヘグハンドルが余りにも薄くレジンパーツ化は断念したのですが、ワンダーフェスティバル2010{冬}に向かう道中でエッチングパーツなら或いはと思い、試行錯誤の末、トレジャーフェスタ in AKIBA向けの完成品で実用化に至りました。

 エッチングパーツの製作工程は大まかに言ってマスク製作とエッチング作業、廃液処理の三工程に分かれるのですが、エッチング自体はマスキングした金属板を腐食液に浸すだけなので、様子を見ながら行えば失敗する要素は少ないので、要はマスキングと材料調達でしょうか。



 マスキング

 マスク製作に必要な物は腐食させる金属板と、金属板の表面を研磨するヤスリや研磨剤、 マスクする為のシールやテープ、マスクを切り出す工具類です。

 金属板は色々ありますが真鍮板が一番手軽で扱い易いと思います。0.1mmや0.3mmならホームセンターで売られている事も多いと思います。
 今回へグハンドルに使ったのはKSモデルから鉄道模型用に販売されている0.2mm厚の10mmの帯を使いました。ボークスホビースクェア京都で200円位だったと思います。

 マスクの前に表面の錆や酸化皮膜でエッチング不良にならない様、スポンジやすりや紙やすり、ピカールや研磨剤を塗ったティッシュやウエスで磨いてやります。
 好みに応じて、研磨する代わりにクエン酸水溶液に浸して還元処理しても良いかもしれません。クエン酸は薬局やダイソーでも売られています。


 マスク用のシールやテープはビニールやフィルムタイプのテープやシールが良いのですが、ラッカー塗料でコートすれば紙タイプのマスキングテープでも代用可能です。

 マスクの切り出しにはクラフトロボCC330-20(カッティングプロッター)を使いましたが、プリンターやコピー機、手書きでマスク用のシールやテープにマスクパターンを描いてカッターナイフで切り出しても良いでしょう。
 カットや印刷のデータの製作はペグはスキャナ付属のPhotshopで行いましたが、サイズが決まった幾何学的パターンはアドビIllustrator10で製作しました。クラフトロボCC330-20(の付属ソフトのロボマスターだとBMPやJPEGからアウトライン抽出が可能なので、グラフィックソフトなら何でも構わないと思います。私はフルデジタルでデータ生成しましたが、手書きのデータをスキャンした物からのアウトライン抽出でも良いでしょう。
 カッティングプロッターでパターンをで切り出す際は研磨してマスク用のテープやシールを貼った金属板ごとCC330-20の専用台紙に貼り付けて切り出しました。台紙の位置は有る程度指定出来るのですが、それでも多少ズレるので、一度台紙に適当な紙を固定して試し切りして、加工位置を確認してからシールした金属板を台紙に貼り付けました。ズレを考えると金属板はサイズに余裕を持たせた方が良いでしょう。

 マスクにパターンを入れるのは片面のみで、もう片面はは全面シールする片面エッチングで行いました。
 当初は両面エッチングで行っていたのですがマスクの位置合わせが難しいのと、0.3mm程度までなら片面エッチングでで十分妥協できる水準のパーツが仕上がります。
 片面エッチングはマスクの容易さの他に、全面マスクしてるシールやテープが持ち手になるのでパターンに持ち手を設けたり、マスクにパーツが固定されているので散乱防止にパターンをランナー状にする必要が無いと言った利点も有ります。

 切り出しが終わった後にピンセットで腐食させる部分を露出させてマスキングは終了です。
 マスキングを剥がすと空気中の酸素で酸化するかもしれないので可能な限りエッチング処理直前に剥がすと良いと思います。



 エッチング処理

   エッチング処理に必要な材料や道具は、腐食液、金属板の腐食部分を中和する為の重曹、容器類、竹や樹脂製のビンセット、手袋類、センサータイプ温度計、保温器具、使用済みの腐食液を入れるポリ容器です。

 腐食液は塩化第二鉄と呼ばれる薬剤で、銅版画のエッチング用に画材店等で取り扱われてる事が多い様で、私が良く利用する美術用品店の画箋堂では常時在庫していました。画材店や美術用品店で在庫して無くても取次店は大抵共通なので取り寄せが可能だと思います。
 塩化第二鉄は劇薬指定では無いので通販でも入手可能で、腐食液の他に、エッチングに必要な消石灰重曹クエン酸と言った薬剤は全てゆめ画材で一括購入が可能です。

 腐食液を扱う道具に金属類は使えないので、腐食液を入れる容器や腐食液に金属板を沈めたり取り出したりするピンセット類は樹脂や陶器、ガラスを使います。ピンセットは割り箸や塗り箸でも代用可能です。
 私は100円均一で3枚セットで売られている小さめのトレイに腐食液を少量入れてエッチング処理しています。腐食液が零れた時の用心に作業は大き目のトレイの上で行っています。

 腐食液は素手で扱ってもちゃんと手洗いすれば問題は有りませんが、個人差も有りますし気を付けるに越した事はないので、ポリエチレンやラテックスの様に液体が浸透しない手袋を作業中に付けた方が良いでしょう。

 エッチングの化学反応により、水素と塩酸ガスが発生するので作業は風通しの良い所で行い、火気の使用は控えましょう。
 発生するガスは何れも人体への蓄積性はありませんし量も微量なので意図的に部屋を密封して大量のエッチング長時間をしない限り、生命に関わる事は先ず無いと思いますし、引火して爆発したりもしないと思いますが、可能で有ればエアブラシ塗装を行う様な換気環境が欲しい所です。

 腐食液は40〜50℃の温度帯がもっとも化学反応が進むので、保温しながら行うと短時間でエッチング作業が終わるのですが、常温でもエッチング作業は可能です。
 予め腐食液を容器ごと湯銭しておいたり、センサー式の温度計で腐食液の温度を管理をしながら保温バスケットやトレイを使うと良いそうなのですが、作業環境によっては準備の手間の割にそれ程時間短縮にはならないかも知れません。 特に夏場だと腐食駅を直射日光に晒すだけで40℃程度になると思うので、態々加熱や保温は必要無いと思います。

 腐食は下面の方から進むので、マスクした金属板はパターンの方を下にして腐食液に浸すのが効率は良いのですが、 薄い場合は直ぐにエッチングできてしまい過剰に腐食させてしまいがちなので、薄い金属板を使う場合は上向きにした方が良いでしょう。
 腐食時間は腐食液の濃度や温度、金属板の種類や厚みに依存するので、要領が掴めない内は常に様子を見ながら行いましょう。

 不要部分が腐食されて無くなったら樹脂製のビンセットで引き上げ、紙コップにでも入れた水道水で腐食液を洗い落としてからティッシュやキッチンタオル、布切れ類等で拭き取り、重曹を溶かした水溶液に浸して腐食部分を中和してから、流水で重曹の水溶液を洗い流します。
 腐食部分の中和に使う重曹は薬局やダイソーで手に入ります。水溶液は水10に対して重曹1程度で作ります。 分量はおおよそで良いので厳密に計測する必要は有りません。

 マスクのテープを剥がし、必要に応じてヤスリで研いて完成です。



   廃液処理

 エッチング作業後にまだ使える様なら元の容器とは別の容器に保存しておくと良いでしょう。
 容器に移す時の漏斗もプラスチック製の物を使ってください。

 エッチングに使って腐食液の付着した容器やトレイは、ティッシュやキッチンタオルで拭き取り、重曹の水溶液を掛けて中和してから大量の流水で洗浄します。
 使い捨てにするなら問題はありませんが、洗浄した容器に重曹が残っていると次に使う時に腐食液と反応してしまうので、洗浄は念入りに行いましょう。

 腐食液の拭き取りに使ったティッシュやキッチンタオル、布切れ類は、重曹の水溶液を染み込ませて中和処理してから可燃ゴミとして処理して下さい。

 腐食液が金属を溶かせる量は限られていて、色が変色して金属板の腐食が鈍くなった時点で腐食液は寿命ですので廃棄しましょう。

 エッチング作業に使った腐食液を下水に流すのは法律で禁止されていて、配管のパイブが腐食したりもするのでやめましょう。腐食液から出してすくに洗浄に使った水も腐食液の溶液になっているので同様です。
 重曹やクエン酸の水溶液は使用済みの塩化第二鉄水溶液と異なり、料理や掃除と言った日常的な用途に使う物なので、下水に捨てても問題は有りません。

 使えなくなった腐食液や洗浄に使った水はポリ容器にためておき、有る程度たまったら腐食液を中和する消石灰を投入して中和します。消石灰は専用の物が腐食液とセットで売られている場合が多いのですが、ホームセンターで売られてる安価な園芸用でも代用可能です。
 腐食液100mlに対して消石灰60gが目安らしいのですが、一度に大量に消石灰を入れると反応熱が高温になりがちなので、消石灰は様子を見ながら少量づつ加えて行くとと良いと思います。
 中和には数日掛かるので必要量の消石灰を加え終わったら一月程度放置しておきましょう。中和後は液体と沈殿物に別れ、沈殿物は容器の底に固着している筈なので、液体はキッチンタオルや不要な布等に染み込ませて可燃ゴミとして、沈殿物が固着した容器は不燃ゴミとして処理して下さい。

 エッチングに関わる作業で一番面倒なのが、この廃液処理じゃないかと思いますが、実際に行うと大した手間ではありません。



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