・・歴史の表舞台とその舞台裏・・(上)・・

吉田 隆      

 コロナ禍にあって、世界の国々は自国の対応に追われています。一方で、今から約70年前の世界は、 米ソ対立の構図の中にありました。2022年を迎えようとしている現在はどうでしょうか?  アメリカ合衆国を上回る力を示してきた中国の力(軍事力・経済力・人口etc.)を、世界の国々は恐れています。 日本はその隣国です。しかも、この国は共産主義の国であり、国家主席の権力は非常に大きいものと言われています。 聖書には、キュロス(クロス)という異邦の王を神が用いた記事が出てきますが……。


 キュロス(クロス)については『彼はわたしの牧者。わたしの望むことをすべて成し遂げる』と言う。 エルサレムについては『再建される。神殿はその基が据えられる』と言う。主は、油注がれた者キュロスについてこう言われる。 「わたしは彼の右手を握り、彼の前に諸国を下らせ、王たちの腰の帯を解き、彼の前に扉を開いて、 その門を閉じさせないようにする。……それは、わたしが主であり、あなたの名を呼ぶ者、 イスラエルの神であることをあなたが知るためだ。」(イザヤ44:28〜45:3)

 異教徒の王キュロス(クロス)を用いられた神

 キュロスとよばれる異教徒の王様が、「わたし=神」によって、その望むところを成すために用いられました。 みことばに示されている通り、「その成し遂げる」と言われる中身は、3つです。第1は、ユダの民が連れて行かれた バビロンの国を終わらせることであり、第2は捕囚となった、愛する民を解放して故国に帰らせることであり、 第3にエルサレムに神殿を再建させることでした。

 預言者イザヤは、キュロスが歴史に登場する140年から150年も前に、神からの啓示によってその王の実名と行為を預言しました。 バビロン捕囚からの解放を経験したその時代のユダの人々にとって、また諸国の人々にとっても、それは驚嘆すべきことでした。

 イザヤは、歴史の表舞台ではキュロス王が活躍するが、その舞台裏では神の望むことを成し遂げるという全能の神のご意志が 働いていることを教えてくれます。この事実は、まさしく現代の世界情勢にも反映しています。 神様は変わることなく御座について世界を支配していらっしゃいます。

 毛沢東中国支配の時

 第二次世界大戦後の混乱した中国は、蒋介石の中華民国政府を台湾に放遂し、共産主義の国として建国宣 言をしました。1949年10月1日のことでした。戦後、再び宣教のために遣わされてきた西欧の宣教師たちは、 中国から国外退去になりました。

 その後も、中国の宣教への扉は開かれませんでした。宣教師を志願していた私は、1989年6月に京都でメッセージを してくださったアジア・アウトリーチ創設者のアメリカ人宣教師ポール・カウフマン師を通して、驚くべきことを知ったのです。 それは、まさに天安門事件の最中で民主化に立ち上がった中国人の学生たちが、政府から投入された軍隊と戦車からの 発砲によって殺されていく衝撃的な映像が世界に流れた時でした。

 カウフマン師は、「中国から宣教師を追い出し、キリスト教会の牧師や指導者を投獄し、聖書や信仰良書を焼き、 クリスチャンを迫害したあの毛沢東主席を、活ける神は用いられた」というのです。それは、キリスト教の宣教師や牧師たちが 時間をかけても成し得なかった改革を、毛沢東は権力を用いて短期間にしたというのです。実は、毛沢東の教え(毛語録)を 国民に徹底するために、権力を用いました。偶像を破壊すること、漢字を簡略化し皆が読めるようにすること、 共通のことばを理解できるようにすること、インフラを整えることなどです。私にとっては目からうろこの衝撃でした。

 イエスを信じる信者たちを迫害し、一掃しようとしましたが、この国の信仰者は忍耐しました。どんなに迫害されても、 イエスに対する信仰は強くなり、リバイバルが起きました。

 中国の迫害はなくなりませんでした。しかし、信者の数は増えていきました。教育が行き届き人々が聖書を読めるように なったからです。インフラが整備され、他の地方に行くことが容易にできるようになりました。 別の地方に行っても共通語で福音を伝えることができるようになりました。(たとえば同じ中国語でも北京語と広東語では、 全く通じません。漢字は同じでも発音はまるで外国語ほど違います。)生きた信仰を持つクリスチャンの数は、 世界でトップと言われるようになりました。

 平和な時

 毛沢東の死後も宣教の扉は公には開かれませんでした。しかし、中国のクリスチャンにとって平穏な時が ありました。三自愛国教会と家の教会、そして都市部に生まれてきた第三の形の教会が成長したのです。あ る教会は大きな会堂を建設しました。この時代に成長した若者は、教会への迫害というものを知らないとさ え言われました。

 困難な時の再来

 習近平が国家主席の地位に就き、毛沢東路線を復活しました。貧しい中国は豊かになり、経済力を持つよ うになりました。その軍事力は諸国の脅威となりました。

 こうした中で、再び中国のキリスト教会は明らかな迫害を受けるようになりました。大きな教会堂が無残 にも破壊される様子がインターネットを通じて報道されるようになりました。中国の教会からは、自由がな くなりました。学生や職業を持って滞在していた宣教師たちは、国外へ退去になりました。

 今後の展開

 習近平は、少なくともクリスチャンにとっては有り難くない存在です。しかし、神の手が置かれるなら、 キュロスのように用いられることもあるでしょう。私は預言者ではありません。ですから、これからこのよ うになると予言しているのではないことをご承知ください。しかし、聖書の中で神が異教徒のキュロスを神 が愛するイスラエルの解放のために用いられたように、また毛沢東を中国宣教の発展のために用いたよう に、たとえ現在の中国の教会がむずかしい環境の中に置かれていても、必ず福音は前進します。

 中国の教会はバック・トゥー・エルサレムという大宣教の目標を掲げています。中国からエルサレムへ向 かうアジア諸国への宣教の展開です。中国の表舞台での進出が、習近平らを用いて神が演出されたものであ るとするならば、裏舞台ではバック・トゥー・エルサレムを進行させていらっしゃるのだと考えることがで きます。(次回に続く)



ニュースレター「グレイト・コミッション・第92号」 2021年11月19日・発行

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