私たちの幸せとは



幸せな暮らしを願わない人などひとりもいないでしょう。
現実の暮らしに、
実にさまざまな問題を抱えている私たちにとって切実なものなのです。
健康であったり、家庭の経済であったり、
教育であったり、人間関係であったり・・等々・・。
安定した収入を望み、不安のない将来を願い、
家族そろって健康であることを願っています。
そのために神や仏にキリストに祈りもします。

自分が今かかえている問題が、
自分にとってもっとも大事ななものと考えているわけですから、
まず、それが解決しなければ、心の平安は来ないのです。

私たちは、常に人とのかかわりの中で、
社会とのかかわりの中で幸せというものを考えています。
幸せへの熱い思いは、
常に人間関係にその根を持っていますから、
影響を受け左右されますから、
人間関係にそれを実現しようとするわけです。

しかし、そのことが人との間にきしみを生み出す原因でもあります。
対立を生みだし争いさえ生まれてきます。
社会で共同生活を送る以上、
避けることのできないことなのです。
それこそが人間の営みの姿そのものなのです。

ここで言うところの信仰とは何でしょうか。

心から実現することを望んでいる願いは、
自分にとっての幸せへの望みは、
自分の望みを実現しようとするすべての試みは、
信仰によらなければ、
目的を達することができないと考えます。
神や仏やキリストや、ときには方位や色や、
星座や星の位置などに気持ちを置き、
身を向けた暮らしを送りはじめたら、
同時に、抱えていた問題が解決され始めると・・・・。
信仰することによって解決するものだと。
これではご利益信仰と言われても仕方がありません。

人間というものは、
自分の考え方ややり方にこだわりを持っています。
ですから、自分のすべてを、
神や仏やキリストに、すっかり任せることはできません。

神や仏やキリストにたいする人間の意識の共通性は、
唯一絶対視される存在ではなく、
常に、人間とのかかわりの中から生み出されてくることになります。
経済であったり、医療であったり、教育であったり、
共同社会の人間関係であっても、
それらは、本来は、暮らしを豊かにするための道具であるはずなのですが、
それが、いつしか目的になってしまうものなのです。
それが手に入れば幸せになれると・・・・。
そこでそれらを、人間は、
自分たちにとってもっとも大切なものを、
”神や仏やキリスト”に祭りあげてしまうのです。
「何々の神」というように。

聖書・バイブルでは、
キリストへの信仰というものは、
私たちを創造された父なる神に、
神から来るところの平安を、
なにものにも比べようのない安息を熱く求めるものなのです。
経済とか健康とか教育とか人間関係などにまどわされず、
飲み食いさえも忘れたように生きることができるのです。
まったくの非現実的だと言われそうですが、
神の意志を知り、
創造主なる神は、被造物としての人間に、
何を求めておられるのかを知ろうとすること、
それが、すなわち信仰であるわけです。
神のビジョンを知り、神の計画を知り、
神の啓示を知り、
それを自分たちの暮らしの中に描くことによって、
現実に今かかえている問題が、
自分にとって最も大事なものと考えているものまでが、
実は取るに足らないものなのだと知らされるのです。

神の意志が何であるかを知ることではなく、
現実の問題が解決されることを第一義に考えている人にとっては、
それこそが救いだと考えている人にとっては、
神による安息は価値を持たないでしようし、
見出されることはありません。

「今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、
神はこのように装ってくださる。
まして、あなたがたにはなおさらのことではないか、
信仰の薄い者たちよ。
だから、『何を食べようか』『何を飲もうか』『何を着ようか』と言って、思い悩むな。
それはみな、異邦人が切に求めているものだ。
あなたがたの天の父は、
これらのものがみなあなたがたに必要なことをご存じである。
何よりもまず、神の国と神の義を求めなさい。
そうすれば、これらのものはみな加えて与えられる。
だから、明日のことまで思い悩むな。
明日のことは明日自らが思い悩む。
その日の苦労は、その日だけで十分である。」

(新約聖書・マタイによる福音書・6章30~34節・新共同訳聖書)

現実の問題が解決されることを第一義に考えている人にとっては、
ひとりの人がすべての人のために死んだという出来事は、
イエス・キリストの十字架の死による贖いのわざ(あがないのわざ)という出来事は、
意味を持ちません。
イエス・キリストの生と死と葬りと復活とによって備えられた救いは、
意味を持たないのです。


北白川 スー

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Wrote up on October 30, 2013.