実用編 『家庭で出来るおいしいケチケチ料理』

 私のは、全部、ケチケチ料理だから、ぜいたくなものは何もないの。何県の何でなけりゃいけないなんて、いいだしたらきりがない。手近に入る材料でなけりゃね。今が時期のものというと、そうね、シイタケのかけ汁をかけた揚げカキなんてどうかしら。カキは片栗粉をまぶして、水がプチプチィ出ではじめる程度に軽く揚げ、シイタケのかけ汁を熱くしてかける。あつあつ同士にするのよ。これには、ユズの天盛りがいいと思う。

《シイタケのかけ汁》

 生シイタケ、今は一年中あるけれど、一応、秋ものね。これを細かく刻み、かなり濃いめのだしと醤油で煮たもの。小松菜とかホウレンソウをゆでたのにかけてもいい。このときは、汁を冷たくして使う。このかけ汁が、カキの揚げたのにとても合う。


料理 石井 恵子、撮影 石井 孝典 2000年3月


《だし》

 うちでは、ソウダガツオを使ってきた。家庭ならば、普通のカツオぶしの皮のところや血合いの部分。おひたしのときによけてしまうようなところを使えばいい。
 
 ここでついでに、私がいつも台所に欠かさず作っておいたものについて、話しておきましょう。それは三つあるの。まず、

《合わせ酢》

 割合はって聞かれると、これが困っちゃう。醸造酢をだしで割ったものなんだけれど、砂糖は少しだけ、普通の三分の一位しか入れない。酢の三割ぐらいのだしを入れると、砂糖、醤油は少しでも間に合い、あとは塩だけ。これを一度わかしておく。これだと、酢の物の下に残ったのを、そのまま飲んでもまずくない。この合わせ酢は、一度にたくさん作っておき、必要に応じて使っていく。材料さえあれば、いつでもチャッと酢の物が作れるわけよ。必要なだけ使えるから、ムダが出ないし、冷蔵庫に入れておけばひと月ぐらい、味も変わらない。
 私は、この合わせ酢と酢みそ、だしと同割りの醤油をいつも作っておくの。

《酢みそ》

 特に上等のみそを使うことはない。砂糖はやはり少なめで、普通、みそと砂糖同量のところを三分の一ぐらい。みそと砂糖を合わせ、よく練り、みりん、酢を入れて、ドロドロッとするくらいに仕上げる。砂糖が少ないので、あえるときは量を少なめに、材料に色が付く程度にしないと辛い。あとは、材料によっては甘くしてもいいし、何か入れてもいい。とにかくこの基礎さえ作っておけば、酢みそあえがおっくうでないわけ。
 酢みそに加えるものとしては、おろしたユズ、ときガラシ、すりゴマ、サンショウなど。シソやショウガは合わないみたいね。カラシも、和ガラシの香りはよいけれど、アクとりが大変だから、もっぱら洋ガラシ。サンショウだって葉をすりおろすのが大変ならば粉サンショウで十分。
 酢みそであえるならば、ゆでたカキ、イワシやアジ、サッとゆでた貝類。ネギやワカメ、野菜を入れた方がおいしいわね。

《同割り醤油》

 だしと醤油を半々にまぜ、一度わかしたもの。味が丸くなって醤油の匂いがピッとこないので、おひたしやナメコおろしなどにかけるといい。これに使うだしは生臭いくらいの濃さにとらないと醤油に負けてしまう。化学調味料を少々。薄めれば、おつゆだって作れる。

《納豆揚げ》


 同割り醤油を使う料理で評判のよかった私の創作料理。
 山イモをすりおろし、納豆とまぜあわせて油揚げの中に入れ、楊子で口をとめる。コンブできんちゃくにしてもよい。これを油でサッと揚げ、さらしネギとダイコンおろしをたっぷりのせ、同割り醤油で熱いところを食べる。

《アン肝》

 同割り醤油に一割のポン酢を入れたタレで食べる。やわらかく、お年寄りにも喜ばれる。
 アンコウの肝に塩をして、冷蔵庫で、一晩おく。翌日、すだれで巻いて四、五十分蒸す。あとは切ってタレをつけて食べるだけ。すだれで巻くと身がしまるし、形もよく作れる。蒸しものをするときには材料から出た汁が材料につかないようにしなければいけない。すだれやふきんで汁が落ちるようにする。タレに使うポン酢はびんづめのものでもいいし、スダチを使ってもいい。
 サケの白子など、たいがいの白子はこうやって食べるとおいしい。手間を省く気ならゆでるだけでもよい。

《レモン漬け》

 カキ、アジ、サバなどを、それぞれタマネギといっしょにレモンで漬ける。アジ、サバの場合は三枚におろしたものにたっぷりの塩をしておく。これを二時間ほどおいておきます。サッと塩を洗いながしてから、今度は酢に漬ける。何時間ていえないのよ、気温によって漬かり方が違うでしょ。夏なら一時間、冬なら二時間ぐらいかな。表面が白くなるくらいに漬ける。カキの場合はサッとゆでておく。
 薄く切って水にさらしたタマネギと、下準備のできたカキ、アジ、サバなどを交互に重ねてレモン汁をたっぷりかけ、お皿などで押し蓋をし、軽めの重しをして二、三時間でできあがり。タマネギは好きな人ならば、アク抜きをせず、そのままでもいい。
 できあがったレモン漬けに、レモンの輪切り、切りゴマなどをのせ、醤油を少しかける。これは夏ミカンとサバで作る山口県の料理の変形なのよ。  
 家庭でならば、半身をしめサバにして、残りをレモン漬けに。残ったしめサバや、切り落としのようなところ、鍋物をして残ってしまったカキなどを漬ければ、次の日には違った形で出せるでしょ。
 保存は冷蔵庫でせいぜい三日早めに食べきった方がよいでしょう。

魚………………………………4尾
タマネギ………………………1個
レモン…………………………大1個

《変形ママカリ漬け》

 干しシイタケを水でもどし、刻む。それをつけてあった水でゆで、さましておく。ダイコンは五ミリ、ニンジンは二〜三ミリぐらいの厚さのイチョウ切りにして、塩大匙二杯ほどふって、ボールごとゆすってまぶしつけ、一時間ほどおいておきます。しんなりして水けがでてきたら、洗って水分をきっておきます。アジ、サバ、ママカリなどの魚を、酢でしめる。三枚におろし、塩を真白に振りかけて、夏なら一時間、冬なら二時間ほどおきます。塩がとけたら水でサッとすすいで、毛抜きで小骨をとり、平たい容器に並べ酢(米酢)かけてそのなかにひたしておきます。時間は塩のときと同じ位ですが、気温、室温によって加減します。魚は皮をひいて細切りにします。
 野菜と魚を重ねたところに、魚を漬けておいた酢一カップとシイタケのもどし汁1/2カップ、みりん(煮切りみりんならなおよい)少々、塩小匙一杯の見当で合わせた三杯酢を作り、材料の上からかけてまぜ合わせ、軽い重しをのせておきます。このときの三杯酢の分量は、材料にひたひたより少なめ、手で押して水分がちょっと見えるぐらいです。このまま冷蔵庫へ。十日から半月でほどよく漬かる。さて、食べようという日にキュウリを足す。食べる二、三時間前に一センチぐらいの厚さに切って塩をして、一緒につけ込む。少し厚めのバリバリィとしたのがおいしい。好みでトウガラシをかけたり、ゴマ油を少したらしたりする。わざわざ魚を酢でしめるところからしなくても、しめサバの端や残り野菜を漬けておけばよいのです。魚ごとなら一品として出せますし、野菜だけをとりだして魚料理の付け合わせにするのも、さっぱりとしておいしい。
 岡山のママカリ漬けの変形で、海岸ばたの地方ではよく作られるもの。うちではおでんをやっていたので、毎日ダイコンの頭のところやしっぽの部分が余ったの。しめサバの端のほうなど、残りもの整理にもってこいだったわけよ。

サバ………………………………中半身一本
ダイコン…………………………中一本
ニンジン…………………………一本
キュウリ…………………………一本
干しシイタケ……………………適宜

《ハゼの煮びたし》

 焼いたハゼを売っているでしょ。あれをたっぷりの水に酢を少々、醤油と酒を入れて、ごく弱い火で二時間ぐらいじっくり煮る。みりんは甘いので使わないが、その分お酒をいっぱい入れる。うすあじでことこと煮こむとふっくらとできる。
 みりんは照りがでるので使うのかしら、かっこうよくするために。私らの強いところは、見栄に気を使わなくていいところよね、おいしければ。たとえばサトイモの煮たものでも、ふちがドロドロッとなってるぐらいの方がおいしい。ダイコンのしっぽのほうなんかもドロッと煮たりする。

《カキの佃煮》

 加熱調理用の安いカキがあるとき、こうして佃煮風にしておけば便利。お正月などにも楽しめます。
●あさりの佃煮も同じようにします。

カキ…………………………………500グラム
ショウガ千切り……………………1片分

 カキは塩水で洗い、水をよく切っておく。みりん一、酒一、醤油二に、ショウガを刻んで合わせて煮立てる。そこにカキをポンと放り込み、ホーッと煮立ってきたら火を止め、カキを取り出す。カキは硬くなってしまうので、タレだけを煮つめる。あぶくがだんだんと細かく、あぶくの上がツヤツヤしてきたところで、取り出してあったカキを入れ、煮つめる。しゃもじを使うとカキが壊れちゃうでしょ。鍋をゆすって、まんべんなくまぜる。

《ナメコ豆腐》

 ナメコはサッとゆで、ザルに入れて水の中でゆする。ナメコの汚れがとれる。豆腐はサイの目に切り、飲むには辛いぐらいのだしと醤油で煮る。煮立つ寸前に火を消し、そのまま冷めるまで蒸らす。冷たくなったところで、ナメコと合わせ、スダチの皮のさらしたものを散らす。ナメコも豆腐もつるつるっとして、はしでは食べにくいのでスプーンをそえて。

《卯の花ずし》

 卯の花(おから)を水にさらし、ふきんでよく絞り水を切る。五目ずしの具でもよいし、アサリとネギ、干しエビとネギ、肉とネギの組み合わせでもよい。これを醤油と少々の砂糖で濃いめに味つけする。煮えたところで、卯の花を入れ、焦げないように二重鍋を使ってかきまぜていく。つゆが出てくるころに酢少々を入れ、煮つめる。ボロボロより少しやわらかめのほうが、口当たりがいい。

《焼きネギ》

 これからネギがおいしくなる。ネギだけでも、カキやイカを一緒にしてもよい。串にさしてこげめをつけて焼く。これにみそをつけて食べる。みそは多めのみりん、トウガラシ、ゴマ油を加えてかなり練ったもの。焼きたてにつけて、フーフーと熱いところを。こげめがつかなきゃダメなのよね。下仁田ネギなんか最高。

《干物》

 うちでは九割までが自家製だった。天日に干さないと味が悪い。今売られているのはみんな電気干しなんでしょ。だから買ったのも酒をぬってもう一度天日で干す。
 イカだったら、酒と塩をかなりしょっぱいくらいにしたのをぬって干す。歯がよければゲソなんかでもいい。干す時間は天気によって違ってくる。どっちにしても生干し。サッとあぶったのは刺し身よりおいしいくらい。
 イワシなら濃い塩水につけたのを金串にさして目ざしを作る。キスならばほんのひと塩と酒をつけて風干しに。赤ヒゲは見てくれは悪いが最高級品。これと甘ダイはひと塩して冷蔵庫で一晩ねかす。次の日に酒をつけて半日も干せばできあがり。甘ダイは身くずれしなくなるし、味もよくなる。

●魚のひと塩干し
 アジ、甘ダイ、かます、ひげだらなど、魚のひと塩干しは、身がほどよくしまり、おいしい食べ方の一つです。魚はわたを出して開くか、三枚におろし、きれいに洗います。ことにかますは、布巾を使って血のかたまった部分をていねいに洗います。高いところから、全体にかかるようにバラバラと塩をふり、一晩冷蔵庫にねかしておきます。
 翌日干す前に、ボールに酒を用意し、一度魚をくぐらせてから、洗たくばさみなどで戸外に干します。天候にも好みにもよりますが、三時間くらいで干しあがります。魚の丸干しをつくる場合は、一晩塩水につけてから干します。

●イカの生干し
 イカは開いてわたを出して、きれいに掃除し、骨も抜きます。酒一カップに塩を小匙四杯入れてよくまぜ、そこにイカを10分くらいつけておきます。天日に干し二〜三時間、さわって外がさらさらしていらたらでき上がり。強火で表面をこがして、中まで火を通さないように焼くのがおいしい食べ方です。

●キスの風干し
 キスを腹から開いてきれいに洗います。氷水二カップに塩大匙一杯くらい(三〜四%)の塩水に30〜40分漬けておきます。このとき、だし昆布のせん切りを一緒に入れておくと味が良くなります。一晩干します。
 焼くときは皮の方から八分通り焼き、身はさっと火を通します。

《みりん干し》

 市販のみりん干しより、さっぱりとした味にでき上がります。アジ、イワシ、サンマ、サバ、何でもいいです。ことに、脂ののった大ぶりの魚はおいしく、三枚におろして作ります。みりん一、酒一、醤油二のつゆに魚をつけ、冷蔵庫で一晩、次の朝干す。甘い方が好きな人は、みりんと醤油を同量にしてもかまいません。翌日、天気が良ければ三時間ほど干します。天気がくずれた場合は、そのまま漬けておいて、晴れるまで待つこともできます。干し上がったものは、冷蔵庫で10日は保存がききます。

《魚の素揚げ煮》

 魚のアラや、山盛りで安く売っているような魚、それをブツ切りにして、そのまま揚げる。もうどうしようもないような、力もなく茶色になってしまった油をためておいて使う。魚の身が黒く網目になるくらいまでよく揚げ、お湯をかけて油抜きをする。これをたっぷりの水とわずかの醤油だけで煮る。…(味は清汁の倍くらいの濃さ、好みでショウガのうすぎりやトウガラシを入れます。煮立ったら魚を入れ、一五〜二十分にて味をしませます)。コトコトと時間をかけてできあがったのは、魚は嫌いだという人でも喜んで食べてくれる。甘辛く煮つめれば、お弁当のおかずに最適。揚げたままの魚は冷蔵庫で七〜十日は保ちます。
 アジだったら丸ごとよく揚げ、油抜きしたのを、たっぷりのダイコンおろしと醤油だけで煮る。細長く切ったネギをたっぷりのせて仕上げる。
 私、実をいうと、青い魚はひと切れも食べないの。アラなんかもまったく。小さいころ、私が食べないもんだから、父がおこって、一ヶ月くらいおかずをくれなかった。漬け物だけでご飯を食べていたら、ついに学校でひっくり返ってしまった。それで、恥ずかしいことをしてくれた、親不孝だってこてんぱに殴られ、あげくのはて嫌いな青い魚をムリヤリ口に押し込まれた。それをもどして寝込んでしまったから、さすがに父も「食べろ」とはいわなくなったけれども、以来、拒絶反応を示し続けているの。 
 店をやるようになってからは、もう割り切って、「これはおいしいのよ」なんて、お客様に勧めて、お客さまも喜んでたべてくださる。おかしいわねえ。

《しめじの佃煮》

 しめじは石づきをとり、いったんさっと茹でてから、酒一、醤油三、かつお節(粉がつおがよい)で汁けがなくなるまでいります。一週間ぐらい保ちます。

《蕗のとううす味煮》

 ほんのりと苦味の感じられるおいしいうす味煮です。蕗のとうは、重曹を水一リットルに小匙1/2杯の割合で加えた湯で、しなっとなるくらいまで茹でます。茹だったら新しい水にかえ、半日その中につけておきます。
 水からあげ、食べやすい大きさに刻んでしぼり、鍋に油をしいて炒めます。調味料は酒と醤油半々、それに粉かつお節があれば少し入れて、醤油がなくなるまで煮ます。

《松前漬け》

 剣さきするめ(安くて小さいもの)を、たわしでざっと洗い、骨をとってはさみでなるべく細く切ります。
 昆布はするめの半分くらい用意します。煮昆布のできるだけ粘りのあるものを選び、酢でふいて細く切ります。
 ニンジンは皮をむいてせん切りにし、一日天日に干し、使う前にサッと湯をかけます。かずのこのくずは、塩出しして掃除しておきます。
 材料を全部合わせ、同割の酒と醤油を一度わかして、あたたかいうちに注ぎます。材料がふやけるので、かなり多めに調味料を入れます。
 一〜二日でふやけます。箸で持ち上げてみて昆布が糸をひくはずです。ひかない場合は、昆布をたします。一週間から十日でおいしくなります。

《イカの塩辛》

 イカとわたと塩だけでつくります。かんたんで、あきがこないおいしい塩辛です。今は冷凍イカが一年中手に入りますから、随時作れます。

イカ………………………………5はい(約1.5Kg)
塩…………………………………65g(約4.5%)
柚子の皮…………………………1/2個分

 塩辛は、わたのよしあしが決め手。油のってむっちりした、水けの少ないわたが適しています。イカは新鮮な大ぶりのものを用います(冷凍の方が大きいものを選べます)。イカがあまり小さいと、わたを買い足さなくてはならなくなります。脚とわたをぬき出し、縦に包丁を入れて開き、中をきれいにします。皮はぬれ布巾を当ててひくと、かんたんにスーッととれます。
 エンペラの皮は包丁で筋を入れてむきます。わたのすみをとり、脚についている目玉をとり、脚先やゴツゴツしたところもとり除きます。脚を一本一本切り離し、適当な長さに切ります。
 エンペラは縦に細切り、胴は縦に三つに切ってから、横に細く包丁します。細切りのイカをボールに入れ、上に裏ごし(ふるい)をふせ、イカのわたをつまんでしごき出します。手のひらでキュッキュッと押して裏ごしします。(わたは袋から出したままでは固まってしまいます)
 柚子の皮をへぎ、細かく切ります。イカとわたをまぜたところへ塩を加えてまぜます。よくよくていねいにしないと、塩が固まっていることがあります。
 柚子の皮をちらして、瓶に詰めます。四〜五日して上がブクブクしてきたら上下まぜてやります。
 十日位から食べられますが、その間塩をなじませるため、一〜二回かきまぜます。この塩辛は塩が少なめですから、冷蔵庫に入れ、二十日位のうちに食べきってしまいます。

《魚の味噌漬け》

 さわらや甘ダイ、サバ、イカなど、白身で水けの多い魚は、味噌漬けにすると、臭みもとれて身もしまり、おいしい焼き魚として食べられます。
 魚の切り身に塩を少々しておきます。味噌は赤味噌や西京味噌など、好みのものを使います。味噌が辛めのときは、みりんを少し多めに入れるなどして調整します。
 味噌(魚5切れに約400グラム見当)に酒とみりんを適当に加えて練ります。平らな器に味噌をしき、ガーゼに包んだ魚をのせ、上に味噌をのせてフィルム(ラップ)をかぶせ、冷蔵庫に入れておきます。一日たったらもう味がしみていますし、冷蔵庫でしたら一週間は保ちます。焼くときは、さっとぬれ布巾で表面をふいてから。

 新鮮なイカのわたがある時、袋ごと味噌漬けにしておくと、ちょっと洒落た味の一品になります。わたはすみだけ取り除き、ガーゼにはさんで、酒と焼酎を同割で入れ、よく練った味噌に漬けます。冷蔵庫に入れ、半月位から食べられます。

《魚の粕漬け》

 サケ、まながつお、甘ダイ、あこうダイなどは、粕漬けにすると、味噌漬けとはまた違ったおいしさを味わうことができます。生のものは、うす塩をして一晩冷蔵庫に入れておき、サッと塩を洗って布巾でふき、粕の中に二〜三日漬けます。
 生粕が手には入らないときは、板粕をひたひたの焼酎に漬けておき、練ってどろりとさせます。長くおきたい場合は、粕から出して冷蔵庫に入れておきます。

 生で食べられる新鮮なサケやすじこ、たらこ、かずのこをガーゼの間にはさみ、生粕または板粕を焼酎でとかしたものの中に二〜三日漬けておき、そのまま食べると、その味わいは格別です。塩気のあるものはそのまま、またはちょうどよい味まで塩抜きし、生のものはうす塩をして一晩冷蔵庫におき、味がなじんだところで漬け込みます。一週間はおいしく食べられます。

《白花豆の甘煮》


 みつがたっぷりの、やわらかい煮豆。なるべく新しい今年の豆を使いましょう。落とし蓋をしないで煮ますが、これは花豆のように、皮のかたい豆に向いています。豆はざっと洗って、三倍ぐらいの水で煮始めます。全部で三回茹でこぼします。煮立ってしばらくしたら汁を捨て、また新たに水を入れて火にかけます。三回目はある程度やわらかくなるまで煮てから水をかえます。豆の五倍ぐらいの水を入れて、鍋蓋をし、火にかけます。
 煮汁が多いので、落とし蓋はいりません。(するならアルミ箔ぐらいの軽いものを)豆がおどらないように、とろ火でせかずに煮ましょう。煮はじめたら一日かかると思って下さい。常に豆が汁をかぶり、その中で浮いているように、煮汁が減ったら途中で差し水をします。
 食べてみて豆がやわらかくなっていたら砂糖の半量と塩少々を入れて、砂糖がとけはじめたら火を止め、かきまぜずに、冷めるまで蓋をしてむらします。さめたら再び火にかけ、ふっとう前に火から下ろして味をみて、残りの砂糖を入れ、また火にかけます。好みの味になるまで砂糖を足してはむらします。(大体二〜三回ぐらいでしょう)
みつ(煮汁)は材料が浮く程度に残っているぐらいに仕上げます。

白花豆………………………………700g
砂糖…………………………………400g
塩……………………………………小匙3/4杯




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