e-mail版 三月書房販売速報(仮題)
旧号合冊 第3冊[21号〜30号]
通巻021号 1999.11.25発行 通巻026号  2000.02.10発行
通巻022号 1999.12.16発行 通巻027号  2000.02.23発行
通巻023号 1999.12.30発行 通巻028号  2000.03.08発行
通巻024号 2000.01.16発行 通巻029号  2000.03.26発行
通巻025号 2000.02.01発行 通巻030号  2000.04.09発行
※各号の最終版を一部修正して掲載しました    ※非営利目的の転送は歓迎します
三月書房販売速報(仮題)総目次へ

 

三月書房販売速報[021]  
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1999/11/25 [01-18-21]  SISIDO,Tatuo      

        e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 21号
                      
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[#01] 最近売れてるような気がする本

◆「唯臓論」 後藤仁敏 風人社
   三木成夫のお弟子の本。すでに何冊も出している著者らしいが、こ
   の本が出るまで気がつかなかった。10冊くらいは売れるだろう。
   三木成夫の影響を受けたらしい人の本は、布施英利、西原克成に続
   いて、うちではたぶん3人目である。
   
◆「血と雨の墓標:評伝岸上大作」 小川太郎 姫路文学館
   短歌関係書。発売元は神戸新聞総合出版SCとなっている。

◆「レコード・コレクター紳士録」 大鷹俊一 ミュージック・マガジン
   LPもCDもたくさん持っているが、コレクターになるつもりはまっ
   たくないので、こういう本に出ているコレクターを見ても、あまり共
   感はできないが、現代奇人伝の一種として読めばたいへん面白い。
   
◆「南天堂:松岡虎王麿の大正・昭和」 寺島珠雄 皓星社
   18号にて、「年内に10冊は売れるだろう」と予測しましたが、
   はるかに売れ行きがよく、まもなく20冊に達しそうな勢いです。
   書評もたくさん見かけましたが、11月22日の入荷分もまだ初版のま
   までした。初版何部かは知りませんが、まだ世間ではたいして売れ
   てはいないようです。うちでは、売れ残っていた寺島珠雄旧著数冊
   もつられて売れたしごきげんです。

   まだまだ売れそうなので、「南天堂」に登場する人々の本の在庫リ
   ストを、HPにて公開する作業をはじめましたが、予想以上に在庫
   があり、かなり手間がかかりそうです。
   うちは、けっして、「南天堂フェア」などというものをするつもり
   はありませんが、ジュンク堂でも紀伊国屋でもいいですから、気が
   向かれたら、「フェア」をしてみてください。


[#02] これから売れそうな気がする本

◆「古くさいぞ私は」 坪内祐三 晶文社
   「ストリートワイズ」も「靖国」も10冊前後売れているから、これ
   もその程度は売れるだろう。


[#03] 「新刊選71号」より転載

   出版流通対策協議会に頼まれて、「新刊選」に寄稿した作文を転
   載します。「新刊選」は書店向けの新刊案内ですが、およそ千部
   超配布しているとのことでした。
   内容は、人文書院のウエブマガジンや、この「速報」に書いたの
   と同工異曲ですが、どれもこれもノーギャラなので、そのあたり
   はぜんぜん気にしてません。

   <個性的な>という、ちっとも<個性的>ではない形容詞は不要
   と思いますが、このタイトルは編集部がつけてくれたものです。
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「スキマ狙いの個性的な棚づくり」

  うちの店は2000年3月で開店半世紀を迎えますが、当初のままの
 10坪の極小書店です。自慢できるのはお客様の質と、無借金経営であ
 ることくらいしかありません。景気は世間同様に一向によくありません
 が、なんとか横ばい程度を維持しているようです。横ばい程度というの
 は、うちの場合いまにはじまったことではなく、物価の変動を考慮にい
 れると、いわゆるバブル景気のときですら、実質的には同じだったよう
 です。しかし、今年はよほど世間が不景気なようで、横ばい程度でもほ
 めてくれる人が少なくないのは、今までの記憶にないことです。

  それにしても、うちの経営状態はもともと商売と言えるレベルのもの
 ではなく、ほめられたものではありません。家賃と人件費が不要だから、
 何とか成り立っているにすぎません。それでも50年間つぶれなかった
 のは、その損益分岐点の低さを生かして、よその書店が敬遠するような
 本を主力にしてきたからです。よその書店が敬遠する本とは、回転率が
 低いとか、正味が高いとか、返品ができないとか、普通に流通していな
 いとかのものです。

  当然うちだって、そんな本ばかりではやっていけませんが、その手の
 本が在庫に占める比率が、他店よりかなり多いことは間違いありません。
 その結果、うちが力を入れている分野の棚は、かなりの大書店の棚と同
 程度、あるいはもっと上質だと言えるでしょう。もちろんそんな分野は
 100に1つか2つの割合でしかありませんが、それでもそんな分野が
 ひとつでもあれば、遠方からでもお客様が来てくれますし、通信販売の
 申し込みも少しは来るようになります。

  よーするに、千坪級の書店が相手ではあっても、探せばスキマはある
 ものです。では、そのスキマがなぜ生じているのかと言えば、全部が全
 部大書店の怠慢であったり、あるいは儲からないと見切られた結果だと
 いうわけではないでしょう。最大の理由は、年間7万点にも及ぶ出版点
 数と、数千社に及ぶ出版社の存在、そして流通機構の整備が追いつかな
 いというところにあるのだと思います。言うならば、世間では評判の悪
 い、いわゆる過剰出版のおかげで、うちが存在しうるスキマが生じてい
 るといえるでしょう。

  そのスキマ狙いのうちの店にとっても都合の悪いことに、ぼちぼち書
 店バブルの崩壊とか、取次の不良債権の表面化とかの噂が現実味を帯び
 つつあるようです。また、再販制が廃止になれば、永江朗さんが指摘さ
 れているように、再販制によって「有価証券」化している在庫商品が大
 幅に値崩れして、致命的な信用不安が引き起こされる可能性があります。
 業界が崩壊したならば、うちが生存していたスキマも消えてしまうこと
 でしょうが、うちは借金がなく、固定経費も少額なので、何とか巻き添
 えは食わずに済むのではないかと予測しています。その後のことは何と
 もいえませんが、読書人口はほぼ無傷で残るのですから、業界の再建は
 困難ではなく、うちもふたたび適当なスキマを見つけることができるだ
 ろうと期待しています。
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[#04] 「ふたば書房京都タワー店」ほか京都の書店のうわさ(その1)

   10月26日にオープンした、ふたば書房さんの「京都タワーブッ
   クセンター」を11月初旬に見てきたが、予想以上に<よい書店>
   だった。ただし<よい>のは品揃えだけであり、ビルの立地や、
   他の階の様子や、ビルの質はかなり低レベルなので、無責任な感
   想だが、繁盛するのはなかなか難しいのではなかろうかと思う。

   もとタワーデパートだった建物はかなりくたびれていて、エスカ
   レーターは上りしか見あたらず、30年以上前の田舎デパートの
   雰囲気だ。B1と1Fは、みうらじゅん氏言うところの<いやげ
   もの>屋街であり、2Fは100円雑貨店が入っている。3Fが
   660平米の、まことにオーソドックスな品揃えの、悠々とした
   書店だったが、かなり場違いな感じがした。東西本願寺が近いか
   ら、仏教書に力を入れるなど、たいへんけっこうなことだが、も
   う少し、他の階に合わしたレベルまで品揃えを落として、お気楽
   な通俗路線にしたほうがいいのではと、個人的には思うが、あま
   りあてにはならない。

   いずれにしても、ここは新刊書店向きの物件ではなく、その上、
   となりの京都近鉄百貨店には、来春、千坪超の書店(旭屋さんが
   内定?)ができることでもあり、ビル会社としては「BOOK 
   OFF」の類を誘致したほうが、よかったのではないかと思う。
 
   「BOOK OFF」といえば、市内中心部には五条堀川の店し
   かなかったが、本日、うちから10分の三条京阪北ビル1〜2階
   に新店がオープンした。堀川五条店には、日販京都支店への帰り
   に、よく立ち寄る。商売柄、半額では割安感がほとんどないが、
   100円コーナーにはよい本がよく混ざっていて、読みもしない
   のについつい何冊か買ってしまう。近所に開店してくれたので、
   散歩の楽しみがひとつ増えてうれしい。

   (「書店のうわさ」はたぶん次号に続く)


[#05] 角川春樹事務所の買切制について

   角川春樹事務所が、文庫新書以外の単行本を、12月から買い切
   りにすることになった。やはり、これは、取次の不良債権に対す
   る対策の一つだろう。当然、どこの書店も仕入れを控えめにする
   だろうが、売上げが落ちても、入金の確実性と返品リスクからの
   脱出を優先することにしたのだろう。書店としては、事前予約が
   確実に入荷するらしい以外のメリットはないが、出版社のデフレ
   対策としては正解かもしれない。12月の新刊予定は2点だけだ
   から、大勢には影響ないだろうが、もしこの方式がうまく行って、
   追随する出版社が増えれば、不良債権を抱える取次は、さらに、
   資金繰りがきつくなってたいへんだろう。書店としても、買い切
   りなら、正味を下げてもらわないと、まったく割が合わないから、
   あまり歓迎はできない。
   

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三月書房販売速報[022]  
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1999/12/16[01-19-22]  SISIDO,Tatuo      

         e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 22号

                      
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[#01] 最近売れてるような気がする本

  ◆「アルベルト・ジャコメティのアトリエ」 J.ジュネ 現代企画室
  ◆「螢の海:アメリカへ日本の私へ」 小島ゆかり 本阿弥書店
  ◆「谷岡ヤスジ傑作選 天才の証明」 実業之日本社
  ◆「岩波現代短歌辞典」 岡井隆他編 岩波書店
  ◆「青の美術史」 小林康夫 ポーラ文化研究所

[#02] これから売れそうな気がする本

  ◆「逆説の王道」 呉智英&宮崎哲弥 時事通信社
  ◆「愛と幻想の日本主義」 宮崎哲弥&福田和也 春秋社
  ◆「西欧精神医学背景史」 中井久夫 みすず書房
  ◆「生涯は夢の中経」 吉増剛造 思潮社


[#03] 「本やさん直行便」について

   うちには案内が来てないので、業界誌などで読んだだけだが、「本
   やさん直行便」には、あまり魅力を感じない。客注はけっこう多い
   方だが、鈴木書店は版元品切れでない限り、翌日〜7日で入荷する
   し、日販のほうも、版元へ直接FAXすれば5日〜12日程度で入
   荷するから、平均すると以前よりはかなり早くなっている。

   また、インターネットによる受注を、小学館に続いて角川も始めた
   が、当然ほかの大手もいずれは似たようなシステムを始めることに
   なるだろう。小学館のはうちも利用しているが、たいへんに便利だ
   から、大手が出そろえば、普通の取次ルートでも、流通がかなり改
   善されることは間違いない。

   したがって「本やさん直行便」に手数料を払ってまで利用しようか
   というのは、多目に考えても客注のうちの2〜3割くらいしかない
   だろう。うちの客注は平均すれば1日に軽く10冊以上あるはずだ
   が、普通に仕入れても間に合うものを、こちらに回す気にはならな
   いから、ルール通りにしていたのでは、最小単位の10冊にはなか
   なかならないだろう。10冊になるまで何日も溜めていたのでは、
   何をしているのかわからなくなる。
   
   もちろん、客注以外は発注しないというのは、タテマエであり、普
   通では入荷しづらい調整出庫のベストセラー品などを、客注という
   ことにして仕入れるのが、一番有効そうな使い道だが、どの程度送
   品してくれるのだろうか。もちろん、一切返品しないということも
   タテマエであり、余れば普通に返品することになるだろう。こんな
   見え見えのタテマエは、現在の委託制の矛盾を表しているわけで、
   流通問題の完全なる解決は、やはり全面買切にする以外ないという
   ことだろう。


[#04] 京都の書店のうわさ(その2) 蒙御免

   <駸々堂京宝店>については、鹿島茂センセイが数年前に、「週刊
   文春」で、「こんな書店は東京にもない」と絶賛されたことがあり、
   東京の書店はそこまでひどい状態なのかと、少し驚いた覚えがある。
   今秋、書店に詳しいお客が、<駸々堂京宝店>の人文書が大幅に減
   少したと言うから見に行ったが、それほどとは思わなかった。ただ、
   コンピュータ書が次第に増えて、音楽書と美術書の場所が変ったの
   と、映画グッズのコーナーが出来て、本棚が減ったのとのしわ寄せ
   が、少し社会科学や哲学思想関係などに来たような感じではある。
   
   <丸善京都河原町店>は10月に増床リニューアルされた。8階の
   催し会場が書籍売り場になったので、従来の5階分から6階分に売
   り場が増えたようだ。4階の文具と5階の服飾は以前のままである。
   今回の改装でフロワーが増えたにもかかわらず、洋書売場は一段と
   縮小したようだ。横文字には弱いので不確かだが、昔は少しあった
   英語以外のフランス語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語、ギリ
   シア語、ラテン語などがほとんど見あたらなくなった。英語のも、
   専門書が減って、ビジュアルなものと、ペーパーバックスばかりが
   目につくようだ。やはり、並行輸入やインターネットに負けてしまっ
   たのだろうか。その他の和書の階は1,2,3,6,7階に別れて
   いて、慣れないとどこに何があるのかよくわからない。そのあたり
   は、やはり、ワンフロワーの<駸々堂京宝店>のほうが、よほど探
   しやすい。
   
   20号でその閉店を報告した、<ミレー書房>さんは、12月初め
   より返品不能品と思われる在庫品の一掃セールをしておられます。
   ビデオ半額、文庫とコミック80円均一、単行本格安というところ
   でしたが、かなりうまく返品できたのか、たいした量は残っていな
   いようでした。それから、なぜか、新品の雑誌類をわざわざ仕入れ
   て、定価で売っておられましたが、こんなことが可能なのは、やは
   り立地が抜群だからでしょう。
   
   (天に唾する<書店のうわさ>は不定期連載の予定です)


[#05] いわゆる「2000年問題」について (その5)

   やっとテレビや新聞でも連日話題になり始めたが、年内にパニック
   が起こることはなさそうだ。買いだめ騒ぎが起きるとしても、最後
   の1週間だろう。
   
   うちの店は、いちおう予定していたささやかな対策を、ほぼ終えた
   つもりである。対策といっても、お釣りの硬貨を普段の数倍にした、
   手提げ袋やカバーなどを補充した、レジ用紙やFAX用紙なども少
   し備蓄したという程度のことである。ほかにせねばならないことは
   あまりないようだ。FAXの買い換え時期が来ているような気がす
   るが、これは年を越して無事を確かめてから買うほうがいいだろう。
   生活関係はいちおう1週間分くらいの食料などを備蓄したが、主と
   して普通に使うものを前倒しで買っただけで、特別なものはほとん
   ど買っていない。
   
   それにしても、原発爆発などは困るが、1週間ほど単に電気が止ま
   るくらいのことは、珍しくていいような気がしないでもない。TV、
   ビデオ、テレビゲーム、ケータイ、パソコン、パチンコ、映画、カ
   ラオケ、デパート、遊園地などなどが全部だめとなれば、日向ぼっ
   こをしながら本を読むくらいしかすることがなくなり、案外読書が
   見直されるかも知れない。
   
   ところで、2000年問題便乗商品の最高傑作は、祇園の八坂神社
   が売り出したCD−ROM版お守り「パソコン祇園守2000」だ
   ろう。コンピュータのトラブル(厄)や疫病(ウイルス)の進入防止を
   祈願するものらしい。ウイルスをワクチンソフトではなく、お祓い
   で避けるというのが実によろしい。内容はバーチャルな参拝・お祓
   い・おみくじなどらしい。価格も千円とてきとーなようだから、ひ
   まがあれば記念に買いに行こうかと思う。
   

***お知らせ***

   人文書院のHP http://www.jimbunshoin.co.jp/に連載中の
   「京洛・寺町通信」の第4回がUPされましたからよろしく。

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三月書房販売速報[023]  
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1999/12/30[01-20-23]  SISIDO,Tatuo      

    e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 23号

                      
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[#00] これが今年最後の「販売速報」です。ご購読に感謝いたします。お
   かげさまで、かなり読者が増えました。ちかごろご無沙汰の「八百
   リク通信」の第3号目も、なんとか年明けには送信したいと考えて
   はいます。期待せずにお待ちください。
   
   それにしても、2000年問題はどうなるのでしょうか。これで、
   何にもなければ、ちょっとがっかりなので、たいして実害はないが、
   思いもしなかった事態、というのが起きてくれると、楽しいお正月
   になるのではと期待しています。
   
   どう転んでも、来年の出版業界は、たいへんややこしい年になりそ
   うですから、正月くらいは面白いことがあってもいいでしょう。
   ちなみに、うちの店は例年通り4日までお休みです。何はともあれ、
   2000年問題でインターネットがパンクしなければ、次号は1月
   中旬発送の予定です。
   皆様のパソコンとプロバイダーのご無事をお祈りします。
   

[#01] 最近売れてるような気がする本

   まだ最終的な数字はわからないが、どうやら、今年は前年並みの売
   上げを維持できたようで、デフレを考慮すれば、けっこう悪くない
   成績だったといえるだろう。

 ◆「逆説の王道」 呉智英&宮崎哲弥 時事通信社
 ◆「愛と幻想の日本主義」 宮崎哲弥&福田和也 春秋社
 ◆「生涯は夢の中径」 吉増剛造 思潮社
 ◆「西欧精神医学背景史」 中井久夫 みすず書房
 ◆「女は存在しない」 中沢新一 せりか書房
 ◆「辻まこと全集1」 みすず書房
 ◆「思想1999/12 特集・ゲーテ自然の現象学」 岩波書店
 ◆「芸術新潮1999/12 特集・白洲正子全一冊」 新潮社

 ◆「雑草物語」 大島弓子 角川書店
   角川のPR雑誌の連載漫画の第1回で、癌の手術をされたこと
   を知ったときには驚いたが、幸い最悪の事態は避けられたよう
   で、本当によかった。岡崎京子さんに続いて、大島さんまで消
   えてしまったら、その穴は大きすぎる。それにしても、高野文
   子センセイと川原泉センセイは、どこかお悪いのでしょうか。
   どこもお悪くないくないのなら、もっと仕事をしてほしい。
   

[#02] これから売れそうな気がする本

 ◆「神秘学入門」 高橋巌 筑摩書房 1月刊行
   イザラ書房と訣別以来、いまいち出版量が少な目だった高橋氏
   は、どうやら筑摩書房から継続的に出されることになるようで、
   大いに期待できる。この本は、網野善彦、阿部謹也、養老孟司、
   吉本隆明などが大量に売れたプリマーブックスだから、これも
   大量に売りたい。
   
 ◆「ビリーバーズ1〜」 山本直樹 小学館
   12月上期に出たらしいが、入荷が半月遅れたので、実売はこ
   れからだが、長く売れるだろう。


[#03] 柳原書店の廃業について

   関西の取次の老舗、柳原書店が24日(金)の営業終了をもっ
   て廃業された。内部では、慎重に準備されていたようで、突然
   ばったりということではなかったようだ。月末に目一杯集金を
   して、年が明けてから告知することもできたのに、数日の余裕
   を残して廃業されたのは、良心的だったといえるだろう。

   廃業の「ご通知」には、経営不振の原因のひとつとして、わざ
   わざ、「取次業界の抱える構造的な問題」があげてありました。
   取次業界は、大も中も小も、構造は同じだから、抜本的な構造
   改革がなされなければ、遅かれ早かれ、みんな潰れることにな
   るでしょう。

   それから、この「ご通知」には、「迅速に膨大な量の返品作業
   等を行う必要があり、それには法的手続きでは充分に対応しえ
   ず、弊社は最終的には任意整理の方法以外にないと判断致しま
   した。」ともありました。よーするに、返品入帳を終えてから
   でないと、書店に対する請求額と出版社に対する負債額が確定
   しないということでしょう。出版社は、返品が戻れば債権がそ
   の分減少するし、書店は返品と相殺できれば、支払いが少なく
   てすみます。一方、当然債権者に名を連ねているであろう銀行
   など、業界外の人たちにとっては、木の葉か紙くずのようなも
   のでしかありませんから、あえて商品を押さえたりされること
   はなさそうです。これがすなわち、再販制による、書籍の業界
   内でのみ通用する<有価証券>化の効用?であり、逆にいえば、
   世間一般の破産法では対処できない、特殊ルールだということ
   でしょう。いずれにしても、本格的な取次倒産のテストケース
   として、その処理の進展が大いに注目されます。


[#04] 「まんだらけ」の買い取りについて

   実家の押入に突っ込んであった、30年以上前の漫画を取り出
   してみたら、カビが生えかけていたり、酸性紙が変色していた
   りで、限界が見えたので、試しに一部を「まんだらけ」本店の
   買取処に送りつけてみたら、噂通り、予想以上のよい値段で買
   い取ってくれた。タイトル的には、水木しげる、つげ義春、林
   静一、赤塚不二夫、永井豪などお宝本ばかりだが、何しろ、保
   存状態が悪くて、美品はほとんどなかったから、あまり期待は
   していなかったが、23冊で39650円になった。完全美本
   だったら、この数倍以上になっただろう。ちなみに、もとの定
   価は100円からせいぜい300円くらいだから、へたな貯金
   よりはよほど率がよい。同じころの、単行本や文庫もたくさん
   あったが、こちらはほとんどが1冊10円程度にしかならない
   い代物と思われる。
   
   そこで思うのだが、まっさらの新刊漫画本を、まったく読まず
   に大事に保存しておけば、国債や貯金や年金保険等よりも、よ
   ほど安全で確実で高利回りになるのではなかろうか。
   もちろん、選書を間違わなければということだが、株や債券類
   よりはよほど銘柄の予想がしやすいと思う。もちろん、ふた昔
   前にあった、文芸書の初版本ブームのように、空振りに終わる
   可能性がないではないが、コミックとアニメは数少ない輸出超
   過文化であり、芥川賞作家などよりもよほどインターナショナ
   ルだから、その意味でも安心感がある。実行するかは別にして、
   今なら、どんな漫画本が有望か予測してみるのも面白いだろう。
   
   それと、「まんだらけ」はやはりエライと思う。プレミア本は、
   目録掲載売価の半額で買い取ってくれるという評判を守り続け
   ていることが、現在の大繁盛の一番の理由だろう。従来の古書
   店が、ともすれば、安く買いたたいて高く売るという評判を、
   後生大事に持ち続けておられるかのようにみえるのと対照的だ。
   なお、第1回の取引に大いに満足したから、すぐに第2回も送
   りつけた。入金が楽しみである。
   
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三月書房販売速報[024]  
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2000/01/16[02-01-24]  SISIDO,Tatuo      

        e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 24号

                      
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[#00] 今年もよろしく

   2000年問題はまったくの拍子抜けで、ちょっとがっかりしまし
   た。うちの備蓄は、5人家族にペットボトル1ダース級でしたから、
   とくに無駄になるというものはないようです。世間の人々が何をど
   のくらい備蓄されたかは知りませんが、本を備蓄された人はおられ
   なかったようで、年明けはわりと順調に売れています。もっとも、
   昨年の1月は、景気が底の底だったので、それと比べてよいという
   程度ですから、たいしたことはありません。


[#01] 最近売れてるような気がする本

 ◆「海のタッチ」鈴木翁二 ワイズ出版
 ◆「アニマの鳥」石牟礼道子 筑摩書房

 ◆「尾形亀之助全集」 思潮社
   これは売れていると言ってもまだ3〜4冊だが、定価や初版部数か
   ら考えるとよく売れているといえるだろう。まだあと数冊は売れる
   はずである。
 

[#02] これから売れそうな気がする本

 ◆「米・百姓・天皇」網野善彦&石井進 大和書房 ※2月刊予定
 ◆「若月祭」梅内美華子 雁書館 ※1月上旬入荷済み

 ◆「風翩翻」齋藤史 不識書院 ※2月下旬刊予定
   齋藤史の前歌集「秋天瑠璃」は100冊ほど売れた。これもとりあ
   えず50冊くらいは売れるだろう。現在、うちの店では詩歌句の中
   で、もっともよく売れる著者である。


[#03] 柳原書店の任意整理について

   柳原書店の任意整理は、去る14日の債権者集会で承認されたと聞
   いた。さる筋から入手した貸借対照表などによると、出版社に対す
   る買掛金が14億6742万円で、返品予定が5億0398万円。
   差し引き残額が債権額となり、現在16%の配当が予定されている。
   返品受け取りを拒否する出版社が多いと、当然配当率が低下するこ
   とになるから、よほどひどいものでない限りは入帳したほうがまし
   ということになるのではなかろうか。

   一方、書店には売掛金が6億4729万円あり、これを現金45%、
   返品50%の割合で回収し、5%を回収不能としている。この放棄
   する分は、おそらく今年度に倒産した書店に対する売り掛け残かな
   にかだろう。書店としたら、まじめに入金していて、ほとんど請求
   残がない書店は、返品する余地があまりなくて、少し損なような気
   がするかもしれない。請求額より多く返品しても、現金が戻るとは
   思えないから。それに対して、多めに請求残がある書店にとっては、
   ショタレに近い本を処理する、よい機会かもしれない。

   他に、柳原書店自体が抱える棚卸し資産が4億1586万円あるが、
   そのうち割賦商品1億8973万円は返品不能で、簿価の10%で
   処分する。これらはおそらく、ヴァージョンの古い百科事典や美術
   全集の類だろう。一般商品は2億2612万円あり、その98%が
   返品可能となっている。
   
   筆者はこういう会計書類を読むのが不自由なので、あまりあてには
   ならないが、出版社に対する買掛金が14.6億円で、書店に対する
   売掛金と棚卸資産の合計が10.6億円ということは、ここですでに
   4億円分の商品が行方不明になっているのではと思う。これが昨年
   来小田光雄さんが指摘しておられる、取次業界の不良債権の一部と
   いうことになるのだろうか。もちろんこの10.6億円には、返品不
   能品がおよそ2億円含まれているから、不足分はさらに増えて6億
   円位になるだろう。これが、あくまで柳原書店の特殊ケースだとい
   いのだが、廃業の「ご通知」にもあったように、「取次業界の抱え
   る構造的な問題」のひとつなのだとしたら、程度の差こそあれ、他
   の取次も似たようなことになっているかもしれない。


[#04] 天に唾する<京都の書店のうわさ>(その3) 蒙御免

   きょう16日、河原町オーパの「オーム社書店」さんが閉店された。
   このメルマガの第1号(1998/11/27)で、そのオープンの報告をし
   てからわずか一年少々なのに、さっさと見切りをつけられたのは、
   実にすばやい決断だったように思う。よほどひどい成績だったのだ
   ろうか。これは想像だが、オーム社さんは、もともと河原町に面し
   て店があり、このビルの地権者の一人のはずだから、書店を止めて
   テナント料をもらうほうが、いい稼ぎになるのだろう。
   
   それにしても、ふた昔前には、日本有数の書店過剰地帯といわれた、
   河原町通りの三条〜四条間だが、萬字堂書店、そろばんや書店、京
   都書院、オーム社書店と消えて、もはや過剰とは言えないだろう。
   なお、11月に閉店されたミレー書房さんは、売れ残り品の安売り
   と、新刊雑誌のスタンド風販売をしておられますが、新たに「本買
   います」という看板を新調されたので、どうやら古書店を始められ
   るようです。うちも、再販制廃止か何かで、新刊書店として立ち行
   かなくなれば、古書店になりたいというのも、有力な選択肢のひと
   つですから、ミレー書房さんの転進には関心があります。

   また、京都駅前の京都近鉄百貨店に入る書店は、旭屋さんに決まっ
   たようです。初めにうわさのあった、1500坪よりは狭くなり、
   1100坪ということになったようですが、それでも1フロワーの
   書店としては、日本一、二の広さのようです。月商2億2000万
   円の予定らしいですが、これが強気の数字なのか、控えめな数字な
   のか、大書店の経営については、まったくシロウト同然なので、さっ
   ぱりわかりません。また京都駅ビルの伊勢丹でも、開店時には見送っ
   た、書籍売り場を再検討しているとのうわさがあります。もしも、
   そんなことになれば、アヴァンティとの三つどもえは、なかなかの
   見物でしょう。


[#05] おまけ

   「まぐまぐ」でこんなメルマガを見つけました。まだ何とも言えま
   せんが、うまく続けば、面白いものになるかもしれません。
   ============================================================
   自主流通出版本リンク&紹介メールマガジン・創刊号「希望の船出」
    http://www.asahi-net.or.jp/~qv1h-isi/hon/mag.html
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 *お知らせ*

   人文書院のHP http://www.jimbunshoin.co.jp/に連載中の
   「京洛・寺町通信」の第5回は17日UP予定ですからよろしく。

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三月書房販売速報[025]  
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2000/02/01[02-02-25]  SISIDO,Tatuo      

    e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 25号

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[#00] 天に唾する<京都の書店のうわさ>(その4) 蒙御免

 ●駸々堂書店の自己破産について
 
   1月31日夜のTVニュースには驚いた。今年はどこの書店が潰れ
   ても不思議はないと思ってはいたが、その先頭が地元の駸々堂書店
   だとは予想もしていなかった。同社の関係者とはつきあいがないの
   で、今のところ、新聞報道以上のことは何もわからない。
   
   朝日新聞によると、「取引先の大手取次店から、今年一月末を期限
   に債務の全額支払いを求められ、自己破産を決断したという」こと
   だ。この大手取次店は日販だが、同社は昨年上期が赤字決算だった
   ことでもあり、いよいよ余裕がなくなってきたのだろう。小田光雄
   さんの説によると、大手書店を破綻させるときに生じる損失負担に
   耐えられないから、協力して不良債権を飛ばし続けているとのこと
   だったが、はたして日販は、この負債135億円という倒産に耐え
   うる見込みがあって潰したのか、もはや飛ばし続けることすら不可
   能になって、放り出したのかどちらなのだろうか。

   それにしても、駸々堂は1981年から債務超過だったというのに、
   なぜ、1993年にトーハンから、わざわざ帳合を奪い取ったのだ
   ろうか。たまたま、その帳合い変更の数日前に、メタローグの今社
   長と安原顕編集長を迎えた呑み会があって、同席した駸々堂の人に
   尋ねたら、「上の方で急に決まった。一日も閉店せずに伝票だけで
   切り替える」と教えてもらった記憶がある。ついでながら、このと
   き当時のポルタ店長さんに、「いつもよくはやってますね」と言っ
   たら、「はやっているのと、儲かっているのとは別です」と教えら
   れ、大型書店については、シロウト同然だとつくづく思い知った。

   それはともかく、上の方でどういう話があったのかは知らないが、
   日販がトーハンへの未払い分を立て替え払いする、というようなこ
   とは、まさかなかっただろう。普通に考えれば、トーハンに未払い
   金を残したままで、新たに日販と取引を始め、その後の6年間でま
   たも莫大な未払いが積もったということだろう。そして、日販にす
   れば、金額こそ大きいものの、取引を初めてからの日が浅く、根が
   らみで抜き差しならない、というような関係ではまだなかったから、
   案外あっさりと清算に踏み切れたというところかもしれない。

   朝日新聞によると、「三宮店のような優良店については、取引先を
   通じて、買い取りたいとの意思表示をしている企業もあるという」
   ことです。三宮店が優良店とは初耳で、震災の影響もあって、思っ
   たほど売上げが伸びていないと聞かされていたような気がするので
   すが。優良店は河原町の京宝店のほうではないでしょうか。この京
   宝店は70年代初頭の開店以来、30年近くにわたって、間違いな
   く、地域一番店でした。大きさも400坪弱で手頃だし、パチンコ
   屋や100円ショップになるよりは、どこかの書店が引きついで営
   業してくれるほうが、京都駅前地区との対抗上もいいような気がし
   ます。

   大きなお世話かもしれませんが、個人的な意見で言うと、御池の地
   下街の紀伊国屋さんが移転されるのが一番ではないかと思います。
   御池地下街は、いっそ場外馬券売り場にでもしたらという声が、商
   店街の内部からも出ているほどの惨状らしいですから。なお、業界
   外の人からの、あまりあてにならない伝聞によると、紀伊国屋さん
   の御池店は、グループで最下位の心斎橋オーパ店に次いで、下から
   二番目の成績だということです。京宝店に移れば、広さも2倍にな
   ることだし、もっと上に行けるでしょう。伊勢丹京都駅店に移る話
   もあるようですが。

   前号にて、オーム社書店が河原町オーパから撤退し、かっては日本
   有数の書店過剰地帯といわれた、河原町の三条〜四条間も、もはや
   過剰とはいえないだろうと書いたばかりですが、今回、駸々堂書店
   の京宝店、朝日会館2Fのコミックランド、そして三条店の3店が
   一挙に閉店されることになり、過剰どころか見る影もなくなってし
   まいました。京都近鉄百貨店の1100坪、アヴァンティの400
   坪、ふたば書房の京都タワー店200坪、そして伊勢丹にも書籍売
   り場ができるかもしれないという、京都駅周辺には完敗しそうです
   が、街というのはそんなに単純なものではありません。

   御池地下街がよい例ですが、規格通りの白っぽい薄っぺらなショッ
   プをいくら並べても、面白くも何ともありません。やはり、河原町
   周辺の集積度と幅の広さと深さ、そして複雑性は、駅周辺とは比べ
   ものにならない面白さです。例えば書店部門だけを比べても、新刊
   書店の面積でこそ劣りますが、京都を代表する古書店が、30年前
   とほとんど変わらない顔ぶれで、10店近くも健在なのは、京都駅
   前にはない圧倒的な魅力です。

   さて、京宝店がこのまま閉店してしまった場合の、他店に及ぼす影
   響ですが、まずうちには何の影響もないでしょう。これについては
   わかりやすい経験があります。1980年代の河原町では、駸々堂
   京宝店、丸善の旧店、そして京都書院が代表的な書店でしたが、
   1988年にジュンク堂が進出することになったときのことです。
   駸々堂はジュンク堂の開店を迎え撃つために、数ヶ月も店を閉めて
   大改装されました。その間、京都書院は五割以上売上げが伸びたそ
   うですが、駸々堂が再開すると元に戻り、ジュンク堂が開店したら、
   何と五割近く売上げが落ちてしまったということです。しかしその
   間、うちの店は駸々堂書店の閉店中に伸びることも、ジュンク堂開
   店後に落ち込むことも、観測できる範囲ではまったくありませんで
   した。それゆえに今回も、駸々堂書店からうちにお客が流れてくれ
   るということはほとんど期待できません。しかし、ジュンク堂、丸
   善、紀伊国屋のほか、ふたば書房河原町店や文祥堂書店あたりは、
   目に見えて売上げが伸びることでしょう。こんなことなら、オーム
   社オーパ店も、もう少し頑張ればよかったかもしれません。

   さて、出版業界のこれからですが、ひょうし抜けに終わったY2K
   とは大違いで、どこがいつ潰れても、誰も驚かないような状況にな
   りつつあるようです。とくに、3月決算を目前に控えた日販が、今
   回の駸々堂の清算をいかにスマートにできるかどうかが、大きなポ
   イントでしょう。法的に可能かどうかはともかくとして、何らかの
   形で出版社に負担を回すようなことがあれば、委託制の根本を揺る
   がす信用不安が起きる可能性が高いと思います。おそらく年度末ま
   での2月足らずを、日販の経理担当者は、われわれには見えないと
   ころで、スリル満点の綱渡りをなさることでしょう。どこかにセー
   フティ・ネットは張られているのでしょうか。


 *お知らせ*
 
   ごらんのように、25号は駸々堂書店自己破産の特別号になってし
   まいました。ほぼ仕上がっていました通常号は、一部修正して数日
   後に送信します。


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 三月書房販売速報(仮題)おまけ
 2000/02/04
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「選択」2月号 企業研究シリーズ
      <日販・出版危機が大手取次まで>について

 ●この雑誌がいつ出たのかは不明。

 ●さる筋からうちにfaxが届いたのは2日朝。

 ●わかる限りでも、そのfaxは再転送だった。

 ●おそらく、業界のあらゆるネットワークにて、この記事は
  コピー、fax、メールなどで回覧されているでしょう。

 ●したがって、4日現在、初耳だという業界人は、一度自分たちの
  平素のつき合いを再検討して、情報感度を上げることが必要では

 ●3日に、週刊誌も持つ大出版社の人に聞いたら、当然読んでおられて、
  内容よりも、タブーが雑誌に掲載されたことのほうを驚いておられた。

 ●ちなみに、「選択」は直販雑誌です。

 ●4日に、文庫は出しているが、週刊誌は出していない出版社の人に聞
  いたら、そんな記事は知らないと言われた。その社全体が知らないの
  か、その人に情報が伝わっていないだけなのかは不明。

 ●1日の夜になってから、駸々堂さんが潰れたそうですが、本当でしょ
  うかと、うちにメールをくれた、立派な専門書しか出さない出版社さ  
  ん。もう少し、世間のことにも注意を払われたほうがよろしいかと。

 ●内容については、ご自分でコピーを手に入れてお読みください。
  なお、うちのは、転送を重ねているため読みづらく、もはや再転送は
  不能です。あしからず。
 
 ●この記事を読んで、31日の駸々堂さんの破綻も、ほるぷの破綻もす
  べて合点がいきました。
 
 ●それにしても、日販の杉浦元会長と、長銀の杉浦元会長が、実の兄弟
  で、ふたりでカルチャーリースというノンバンクまで設立して、拡大
  政策を推進していたとは、驚きでした。
 
 ●このカルチャーリースは、トーハンから書店帳合いを奪うときに、
  借金返済の肩代わり融資までしていたそうです。
  
 ●長銀が破綻した今、メインバンクは以前の住銀に戻っています。

 ●以上あくまでもこの記事が正しければということです。
  取り扱いにはくれぐれもご注意ください。

 ●これは、小生の予想ですが、おそらく、今年度末か来年度中に、
  日販は不良債権を旧社に凍結し、新社を設立することになるのでは
  ないでしょうか。これは、三和銀行が毎日新聞社に対して、20年
  ほど前に行った処置と同じです。  

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三月書房販売速報[026]  
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2000/02/10[02-03-26]  SISIDO,Tatuo      

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 26号
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[#00] 天に唾する<京都の書店のうわさ>(その5) 蒙御免

  続・駸々堂書店の自己破産について
 
  ●いいかげん、このネタは飽きてきましたが続きです。

  ●朝日新聞の9日と10日(関東のみ)の、日販関係の記事については、
   「選択」を読んだあとなので、とくに驚く内容ではありませんでし
   た。それよりも9日の記事が、関東では端っことはいえ、1面に載っ
   たことの意味が大きいように思います。すなわち、日販の倒産は社
   会的影響が大きいということが、認定されたのではないでしょうか。
   社会的影響が大きいということになれば、住友銀行もそうあっさり
   見捨てるわけにもいかないでしょう。先日の「おまけ」号に書きま
   したように、業務を一日も休むことなく、正常取引のみ新社に移行
   させるのが、もっとも社会的影響の少ない方法と思います。旧社に
   残す負債がどうなるのかは知りませんが、毎日新聞の場合の資料を、
   さる研究所から送ってもらうことになっていますから、わかればお
   知らせします。

  ●それから、静岡の八島屋書店の破綻は朝日新聞の10日の記事で見
   るまで知りませんでした。駸々堂書店の倒産直後、さる出版社の人
   から「**・静岡・**の大書店もこの3月までに倒れそうだと言
   う噂が流れて…」というメールをいただきましたが、静岡というの
   はこの八島屋さんのことだったのでしょうか。他の2件の県名は伏
   せ字にしておきますが、東北と中国でした。日販は今年度中にあと
   どれくらいの書店破綻に耐えられるのでしょうか。駸々堂書店の場
   合のように、自らが引導を渡す形で、書店の破綻をコントロールで
   きている間はよいでしょうが、予定外の破綻が続いた時にどうなる
   かが不明です。

  ●京都書院、光琳社、保育社(和議)、柳原、駸々堂書店と、関西系の
   破綻が続き、ある出版社の人からは「先週東京に行った際、やはり、
   関西は大丈夫かという声があり、関西版元に対する、あるいは、マ
   ーケットに対するいささかの不信感、これが怖いです…」というメ
   ールをいただきました。関西系に対する不信と、日販系に対する不
   信を兼ね備えた、関西の日販系書店は、日販の信用保証能力が落ち
   た分を、自力で回復するように心がける必要があるでしょう。うち
   もこの仲間であり、それゆえに、しつこく、うちは借金がないし、
   固定経費も最少だから大丈夫だと、言い続けているわけです。この
   ふたつに加えて、さらに元柳原系という、三重に気の毒な書店も少
   なくありませんが。

  ●取次の信用不安はともかくとして、書店に対する消費者の信用はど
   うなるでしょうか。取り寄せ注文をするときに、予約金を預かる書
   店もあるようですが、駸々堂書店はどちらだったのでしょうか。書
   店に予約金を預けるのが不安になったお客は、後払いでいい書店に
   流れることになるでしょう。
   
  ●ここで問題なのが、一月中旬に締め切ったばかりの、平凡社の「白
   川静著作集」の一時払い特価です。平凡社は駸々堂書店に一時払い
   のお客が何人いるかはわかっても、名前も住所もわかりません。そ
   れから、柳原書店帳合いで一時払い定期のあった書店には、別の取
   次を通さず毎回直送するそうです。このような業界状況になると、
   半年先のことも分からないのに一時払いを設定するのは、大いに考
   えものでしょう。

   ついでながら、平凡社といえば、12日発行の月刊「太陽」3月号
   の骨董特集に、京都・寺町が大きく取り上げられ、うちの近所のお
   店がたくさん出ています。うちも地図に名前と、小さな写真を載せ
   てもらってますからご覧ください。街の雰囲気がよくわかります。
  
  ●駸々堂書店は「本のメルマガ」によると、全国で22位の書店グル
   ープだったそうです。また、みすず書房が公開している「売上げカ
   ード一覧表」によると、98年11月〜99年10月期のランキングでは、
   京宝店が京都で2位(1位は京大生協)、全国10位の好成績で、グ
   ル−プ内では堂々の1位でした。ちなみに、朝日新聞に優良店とあっ
   た三宮店は27位です。もちろん、みすず書房だけのデータでは断
   定できませんが、京宝店のほうが優良店だったようです。この京宝
   店など京都の5店は、一時京都駸々堂書店という別会社になってい
   たことがあります。知らぬ間に元通り合併していましたが、これら
   は比較的経営状態がましだったので、別会社のままだったら、巻き
   添えを食わずに済んだかもしれないし、食ったとしても、こちらだ
   け切り離して身売りできたかもしれません。

  ●駸々堂書店グループの崩壊で影響を受けそうなのは、案外児童書の
   版元かもしれません。百年以上の歴史があった同社の店売は、最近
   参入した書店に比べると、比較的児童書の棚が多く残っていました。

  ●前号にて、「日販がトーハンへの未払い分を立て替え払いする、と
   いうようなことは、まさかなかっただろう。」と書きましたが、例
   の「選択」を参照すれば、杉浦兄弟のカルチャーリースが低利融資
   した可能性が高そうです。それにしても、当時既に10年以上も債
   務超過だった会社に、わざわざ融資してまで帳合いを奪ったのだと
   したならば、時効かどうかはともかくとして、れっきとした背任行
   為だったのではないでしょうか。

  ●いずれにしろ、大型書店のバブルは、崩壊かどうかはともかく、ピ
   ークを過ぎたことは間違いないでしょう。そのあたりのことは、人
   文書院のHP連載コラム「京洛・寺町通信」の第6回に書きました
   からお読みください。 http://www.jimbunshoin.co.jp/
   なお、このコラムはこれにて受け持ち分の予定終了です。
   来月からは青山BCの神谷さんが担当されるとのことです。


 *お知らせ*

   ごらんのように、26号も駸々堂書店自己破産の特別号になってし
   まいました。保留中の通常号は、さらに一部修正して数日後に、た
   ぶん送信します。

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三月書房販売速報[027]  
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2000/02/27[02-04-27]  (c)SISIDO,Tatuo      

    e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 27号

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[#00] この号は破綻情報ありません。24号以来1月ぶりのふつう号です。
    先の連休中は京都中のホテルが超満員で、観光客があふれていま
    した。うちの近所も妙に人通りが多くて、商店街のみんなも不思
    議がっていました。Y2K問題で年末年始に観光を控えた分が、
    この3連休に回ったとも聞きますがよくわかりません。
    うちも景気がよいというほどではありませんが、1月頃から並の
    売れ行きに戻りつつあるようです。もちろんこのまま上向くとは、
    とても思えませんが。

[#01] 最近売れてるような気がする本

 ◆「白川静著作集」 平凡社
   3回配本時にやっと5人目の全巻予約者を獲得した。予想よりも
   少し遅かったが、まずまずという成績だろう。例の八百リクが成
   功して、やっと某市の図書館が購入してくれたという報告を受け
   たので、長らくほったらかしだった「八百リク通信第3号」が制
   作できそうです。他館でも成功された方があれば、お知らせくだ
   さい。
   
 ◆「神秘学入門」高橋巌著 筑摩書房
   表紙がとても綺麗で定価も安く、シュタイナー関係書を初めて買
   う人には最適だと思う。さらに安いのがよければ、講談社新書の
   「シュタイナー入門(西平直)」をどうぞ。

 ◆「栞と紙魚子 殺戮詩集」諸星大二郎 朝日ソノラマ
   とぼけたホラー漫画で、どこかメアリー・ポピンズを思わせる。
 
 ◆「(歌集)旧制度」高島裕 ながらみ書房  
 ◆「永田和宏の歌」三井修 雁書館

 ◆「ひとりのひとを哀しむならば」大澤恒保 河出書房
   昨年上期に出た本だが、吉本隆明の関係書であることがわかった
   のが昨年末だったので、売れ出したのは今年になってからである。
   ちなみにばななさんが解説を書いている。
   
 ◆「樹が陣営20号:村瀬学ロングインタビュー」 飢餓陣営発行所
   これも吉本関係書として売れている。インタビューのテーマは、
   吉本隆明の心的現象論についてである。
   
 ◆「秘儀と習俗」オコナー 春秋社
   復刊されたので仕入れたらなぜかよく売れる。筑摩書房から昨年
   新刊や文庫が出た人だとは、最初気づかなかった。週刊朝日か何
   かの書評でやっと知って並べた。昔からけっこう有名な人だった
   らしく新潮文庫にも一冊ある。
   
 ◆「笑う吸血鬼」丸尾末広 秋田書店
   B5判で並べにくく場所ふさぎだが、久しぶりの新刊なので出足
   がよい。
   
 ◆「へたも絵のうち」熊谷守一 平凡社
   世間でも熊谷守一はよく売れているらしく、この他にも書の本が
   一冊出たし、スケッチ集の近刊予定もある。
   
 ◆「保田與重郎文庫:既刊8冊」 新学社
   他店があまり置いていないらしいせいもあるのだろうが、たいへ
   んによく売れている。第1回配本分は30冊を越えた。この文庫
   につれて、「イロニア」全12号も各1の在庫では補充が追いつ
   かないので、各2に増やした程度に売れているし、10点近いそ
   の他の関係書もよく動いている。ちなみに文庫は各5平均在庫し
   ている。


[#02] これから売れそうな気がする本

   ここに予定していた本は、破綻特集号が2回続いた間にほとんど発
   行されてしまい、[#01]へ移動したので休みます。


[#03] 「三月書房販売情報(仮題)」53号発行のお知らせ

   紙の53号は2月5日に発行しました。以前は年に8回程度発行し
   ていましたが、今年は年に4回の予定です。ニュースはすべてこの
   メルマガで扱いますから、紙のほうはデータ中心となります。
   なお、紙の定期購読は出版社様に限らせていただいております。
   書店の方は出版社の営業の人からコピーを貰ってください。
   定期購読ご希望の出版社の方は、料金受取人払いの封筒を数枚お送
   りいただけば、定期送付いたします。切手を貼った返信用封筒も可。

   53号の内容は下記の通り。(全4ページ)
   ▽「たいへんよく売れた本 1999年のTOP10」実売部数公開
    これは7位までが吉本隆明関係の本でした。8位以下は「二重言
    語国家・日本(石川九楊)」NHK出版、「ちびくろさんぼのおは
    なし」径書房、「ブント私史(島成郎)」批評社、「倚りかからず」
    筑摩書房、「美しくなるにつれて若くなる(白洲正子)」角川春樹
    事務所、「海・呼吸・古代形象」うぶすな書院。
   ▽「1999年出版社別総合売上冊数TOP50」
    1位岩波、2位講談社、3位筑摩書房、4位新潮社、5位中公、
    6位小学館、7位河出書房、8位文春、9位平凡社、10位朝日
    以下略。よーするに上位は文庫・新書を持つ出版社が来ます。

   ▽「かなりよく売れてる本」「わりとよく売れてる本」略

   ▽「1999年の<吉本隆明>本」「昨年の三木成夫の本の売上」略

   ▽「返品率について」
    昨年後半は出版社の破綻が続いたので、自衛のために少し頑張っ
    て返品したつもりだったのですが、不思議なことに書籍の返品率
    は 19%で、前年の20%よりも1%低下していました。金額的には
    ともかく、在庫量は間違いなく少し減っているのですが、なぜこ
    んなに返品率が低いのか少し謎です。出版業界の危機的状況は、
    今年に入ってから一段と加速しているので、3月末までにもう少
    し在庫の見直しをする必要がありそうです。

   ▽「e-mail版販売速報(仮題)について」略

   ▽「三月書房販売情報(仮題)第6巻[48号〜52号]総索引」略


[#04] Yahoo! JAPANへの登録について

   昨年9月にHPを仮オープンした際、参考書が推奨していた「一発
   屋太郎」というフリーソフトを利用して、多数の検索サイトに申し
   込みをした。数日の内に登録完了のメールをくれたサイトもいくつ
   かあったが、多くは何の返事もありませんでした。ヤフーは12月
   に入ってから、下記のようなメールをくれましたが、仕事の遅いと
   こだと思ってそのまま忘れていました。
   
   >こんにちは、Yahoo! JAPANカスタマーサービスです。
   >貴殿が管理されているサイト「三月書房」<http:〜>を広くユーザ
   >ーの方にご紹介させていただきたく、ただいま Yahoo! JAPAN へ
   >の登録手続きをさせていただきました。後略

   しかし「アエラ」の先々週号によると、申し込みのあったサイトす
   べてを掲載するのではなく、担当者が実際に見てから登録するのだ
   そうで、載せてもらえない方がはるかに多いらしい。何でも1日に
   2〜300しか新規の登録ができないらしく、登録してもらえたら
   喜ばねばならないらしい。検索サイトはほかにもあるし、ヤフーに
   載ったからといって、どの程度効果があるのかはわからない。しか
   し、確実に利点として言えることは、URLを聞かれた時に、ヤフ
   ーで三月書房を検索してくださったら、必ず見つかりますと返事で
   きるようになったことだ。うちのURLは、月額500円固定料金
   の格安プロバイダだから、ドットコムとはいかず、やたらに長いが
   ぜいたくは言えないだろう。書いたものを見ながら打ち込んでもよ
   く間違えるから、検索サイトで探していただくほうが、結局簡単で
   ある。
   ヤフーのおかげでとは限らないだろうが、今月に入ってからネット
   で通販の申し込みが増えだしてきた。まだ1日に1名平均というと
   ころだが、岩手県九戸、北海道江別市、秋田県本荘市、など従来は
   まったく縁のなかった遠方からも注文がくるのが、いかにもインター
   ネットらしくていい。


[#05] ISBNの出版社番号(11)はどこの出版社でしょうか?

   ISBNの10桁コードは、4-********-* となっていて、先頭の
   4は国別番号の日本を表し、最後の桁はチェック用とかいうもので、
   残りの8桁が出版社名と書名を表示する。出版社番号が2桁なら残
   りの6桁をその出版社が自由に使用でき、3桁の出版社なら5桁使
   える。最低ランクの7桁の出版社は1桁しか使用できないから、10
   点出版すれば満杯となる。
   
   この出版社番号は、20年ほど前に決まったのだが、当時出版点数
   が多かった出版社らが、何らかの談合をして、2桁ないしは3桁の、
   よい番号を取ったのだろう。未来社の故前社長が、出版社番号の桁
   数が、出版社の格付けとして利用される危険を指摘しておられたよ
   うな記憶があるが、これは考えすぎだったようだ。20社ある2桁
   番号の出版社は下記の通りだが、今となっては少し意外な出版社も
   混ざっているような気がする。今や見る影もない旺文社や、リスト
   ラ中の主婦の友社あたりは、今なら20社には選ばれなかったので
   はないだろうか。
   
   番号は当てなくてもよいから、20社の社名を挙げろというテスト
   をしたら、業界人は平均何社くらい当てられるのだろうか。大蔵省
   印刷局などはきっと盲点だろうと思う。それにしても、***にし
   た11番だけは、なぜこんなよい番号なのか、ぜんぜんわからない。

   さて、この(11)の出版社はどこでしょうか?(答えは最終行に)

    00 岩波書店
    01 旺文社
    02 朝日新聞社
    03 偕成社
    04 角川書店
    05 学習研究社
    06 講談社
    07 主婦の友社
    08 集英社
    09 小学館
    10 新潮社
    11 *****
    12 中央公論社
    13 東京大学出版会
    14 NHK出版
    15 早川書房
    16 文藝春秋
    17 大蔵省印刷局
    18 明治図書出版
    19 徳間書店
   
 なお、「ISBNから出版社名を調べる」という検索サイトがあり、
 番号順にすべての出版社が並んでいるのを参考にしました。
 何の役に立つのかは知りませんが、いろんなサイトがあるものです。
 http://muse.cc.kurume-it.ac.jp/home/general/
              sibhome/siryou/isbndb6.html


{[#05]のクイズの答え。(11)は全音楽譜社です。ご存じでしたか。
    ピアノピースか何かを大量に出しているのでしょう。}

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三月書房販売速報[028]
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2000/03/08[02-05-28]  (c)SISIDO,Tatuo      

    e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 28号

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[#00] 2月はなぜかたいへんに売上げ好調でした。駸々堂書店のおかげで
   はないと思いたいのですが、ちょっとぐらいは関係があるかもしれ
   ません。いずれにしろ、この好況は一時的なもので、基調としては、
   あと数年は不景気が続くでしょう。うちの店は何とか持ちこたえら
   れそうですが、地味な固い本を出してくれている出版社が、あとど
   れくらい持ちこたえられるかが気がかりです。
   
   何しろうちで売れている本は、下の欄にあるような地味なものばか
   りで、400万部売れたとかいう「五体不満足」ですら、まだ10
   冊も売れていない有様です。そのかわりに初版数千部の本を3冊、
   5冊、あるいはうまくいけば「唯臓論」や「南天堂」のように20
   冊以上も売ることによって、店が成り立っています。この手の地味
   な本を売ろうとする書店が少ないから、うちが生存する余地がある
   わけで、けっこうなことではありますが、それがあまりに行き過ぎ
   て、上記の2点の本のように、うちの販売シェアが1%以上もある
   というのは少し異常でしょう。たくさん売れてうれしいというより
   も、そんなにも世間では売れていないのかと心配になります。この
   手の本におけるうちのシェアは0.1%〜0.2%位がいいとこだと思い
   ますから、よその書店にも、もう少し売っていただきたいものです。


[#01] 最近売れてるような気がする本

 ◆「耳をすます旅人」友部正人 水声社
 ◆「石原吉郎<昭和>の旅」多田茂治 作品社
 ◆「昔着物のたのしみ(別冊太陽)」平凡社
 ◆「古くさいぞ私は」坪内祐三 晶文社
 ◆「花山多佳子歌集」砂子屋書房
 ◆「佐野洋子画文集 あっちの女こっちの猫」講談社
 ◆「私は臓器を提供しない」近藤誠、吉本隆明ほか全11名 洋泉社


[#02] これから売れそうな気がする本

 ◆「ヘーゲル 法哲学講義」長谷川宏訳 作品社
 ◆「佐伯裕子歌集」砂子屋書房
 ◆「米・百姓・天皇」網野善彦&石井進 大和書房

 ◆「月刊吉本隆明」 吉本隆明研究会発行(三交社発売)
   これは、「読書人」に長期連載中のインタビューを再構成して、
   毎月配本するものだ。現物を見ていないから断定はできないが、
   140頁で2000円は少し高いような気がする。それゆえに、
   コアな吉本ファン以外は手を出しにくいだろう。
   
 ◆「吉本隆明資料集1〜」 猫々堂
   直接頒布もので、現在交渉中だが、たぶん出荷してもらえるだ
   ろう。これもかなりのマニア向けだが、未刊行の座談会などを
   テーマ別にまとめたパンフのようだ。詳しいことは、入荷が確
   定したら、うちのHPに載せます。


[#03] 4軒となりにコンビニがオープンした

   うちの店から南に3軒目が京都銀行で、これが寺町二条の西北角、
   そして、道を挟んだ西南角にコンビニがオープンした。セブンかF
   マートかローソンを期待していたのだが、残念ながらampmだっ
   た。これで、うちの200m圏内のコンビニは4軒になったが、ど
   れもTOP3ではない店ばかりだから、街全体がB級と言われてい
   るようで、少し面白くない。とはいえ、殺風景なガソリンスタンド
   が、コンビニ付きマンションに変わったのは大歓迎だ。このamp
   mは角地で、面積も形状もコンビニの理想型に近いから、なかなか
   感じのよい店構えである。とくにこの店には他の3店にはない、フ
   ルカラーのコピー機(50円)があるのがうれしい。うちの子ども
   たちも、コミック雑誌の立ち読みに行くのが便利になって喜んでい
   るが、なかなかよい品揃えとのことだ。うちの店は、おそらく数種
   の雑誌類を除くと、コンビニとはまったく競合しないので、売上げ
   が落ちる心配はない。それよりも、商店街全体としての利便性が向
   上したことの好影響の方がはるかに大きいだろう。


[#04]  天に唾する<京都の書店のうわさ>(その6) 蒙御免

  ●新聞報道によると、京都駅前の元近鉄百貨店は25日に「プラッツ
   近鉄」としてオープンするそうだ。1フロワーの書店としては国内
   最大となる旭屋書店以外のテナントも発表されたが、これがなかな
   かよい顔ぶれだった。無印良品の国内最大の売り場「MUJI」、
   京都初のソフマップ、そして米国カジュアルウエアのGAPもかな
   り大きい売り場で出るらしい。CDショップは新星堂でいまいちだ
   が、ここにはぜひ京都初のディスクユニオンを併設してほしい。も
   ちろん蓋を開けてみないとわからないが、この時点で予測するなら
   ば、書店部分以外はかなり見劣りがしてしまうアヴァンティが、ま
   ともに食われることになるだろう。「プラッツ近鉄」の見学報告は
   次々号あたりに載せる予定です。

  ●元・駸々堂書店の旧店舗については、紀伊国屋書店やリブロなどが、
   すでに営業を始めた所もあるようだが、京都市内はまだ決定してい
   ないようだ。元・京宝店はいくつかの書店の名前も聞くが、建物自
   体が老朽化しているため、立て替えが先になるとの話もあるようだ。
   元・ポルタ店は保証金が莫大なため、なかなか決まらないという話
   を聞いている。京都タワーに出る前なら、ふたば書房が最適だった
   と思うが、タイミングが悪かったようだ。それから、元・三宮店は
   「新文化」の記事によると、予定よりも毎月1億円もの売上げ不足
   の上、店舗の構造上万引き率が異常に高かったとのことである。と
   ても、朝日新聞が倒産翌日に書いたような優良店だったとは思えな
   い。ただし、この「新文化」の記事は、ジュンク堂の<回し者>の
   ような某作家のレポートなので、少し割り引く必要があるかもしれ
   ないが。

  ●駸々堂といえば、倒産翌日の朝日新聞が「取引先の大手取次店から、
   今年一月末を期限に債務の全額支払いを求められ、自己破産を決断
   した…」と報じたが、どうも日販はこれが気に入らなかったようで、
   2月3日の梓会における菅社長の講演や、8日と9日の記者会見で
   は、「知らなかった、驚いている」と述べている。普通なら話はこ
   の辺でうやむやになるはずなのだが、朝日新聞は妙にしつこくて、
   2月24日付けの「書店に生存競争時代」という記事では、同じ話
   をさらにくわしく蒸し返した上で、日販の反論も掲載した。どうや
   ら、銀行も含めた3者間では、このあたりの経緯が何か重大な問題
   になっているのかもしれない。素人考えで言うと、大きな取引先の
   倒産を、まったく予測できなかったと言うほうが、よっぽど恥ずか
   しいような気がするのだが、なぜわざわざ知らなかったという必要
   があるのだろう。この程度の危機管理能力すらないと自分で宣伝し
   つつ、これ以上の取引先破綻はないから、向こう3年間で黒字にな
   ると言われても、だれも信用しないと思うのだが。

  ●また、読売新聞3月2日の夕刊に載った「本はどこへ:過渡期の出
   版界(上) 揺れる取次」には、珍しく鈴木書店のことも載っていた。
   この鈴木書店はうちの大事な取次店であり、ここがこけたら、うち
   はたいへんなことになる。ただし、読売の記事にもあったように、
   岩波書店などの協力で、すでに危機は脱したようだ。先日も某役員
   がわざわざ説明に来てくださったが、もはや打つ手がないという状
   態の正反対で、ごく普通に打てる手がいくらでもあり、すでにその
   効果が上がっているようだった。ようするに、それ以前には、ただ
   ただぼーっと過ごしていただけらしく、じたばたしていなかっただ
   け傷が浅くてすんだようだ。世間が乾いたぞうきんを絞るようなと
   いうリストラをしているときに、ボタボタのぞうきんを持って立ち
   つくしていたようなものだから、軽く絞っただけでもたちまち大き
   な効果が上がるということだろう。聞いて笑えたのは、商法改正以
   前は資本金がわずか300万円で、改正後にやっと1000万円を
   ちょいと越しただけという話だった。とても売上げ100億円の企
   業とは思えず、うちの商店街の八百屋か魚屋並の資本金である。こ
   れも、来年度あたりに取引出版社から出資をあおいで増資するとの
   話だった。(この項は、鈴木書店の<回し者>みたいになってしまっ
   たような気が、少ししないでもない)

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三月書房販売速報[029]  
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2000/03/26[02-06-29]  (c)SISIDO,Tatuo      

    e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 29号

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[#00] いよいよ年度末ですが、出版業界に限らず、危ないといわれている
   会社達は、はたして無事に年度を越すことができるでしょうか。

   プラッツ近鉄は、去る25日に新装開店し、長蛇の列とのニュース
   を見ましたが、まだ見に行けません。たぶん、今週中には行けるで
   しょう。開店日の折り込み広告はタブロイド版16頁もあり、旭屋書
   店以外の売り場も、なかなか魅力的なようでした。少なくとも、以
   前の近鉄百貨店よりは、はるかに面白そうです。


[#01] 最近売れてるような気がする本

 ◆「縄文の音」土取利行 青土社
 ◆「その日暮らし」森まゆみ みすず書房
 ◆「モロッコ流謫」四方田犬彦 新潮社

 ◆「可能なるコミュニズム」柄谷行人 太田出版
   これはよく売れているが、少し後で出た「倫理21」というのは出
   足があまりよくない。これはタイトルの差かもしれない。

 ◆「てまり唄」永井陽子 砂子屋書房
   これは別に新刊ではない。先日お亡くなりになってから、急に売れ
   出した。誰かがどこかにグッと来る追悼文を書かれたのかも。同じ
   著者の「モ−ツァルトの電話帳」もよく売れている。

 ◆「吉本隆明資料集1」 猫々堂
   無事入荷して順調に売れている。八重洲BCさんからも問い合わせ
   があったほどだから、他の書店ではほとんど扱っていないのだろう。
   こういう商品は、他店との違いが出るので、たいへんにありがたい。


[#02] これから売れそうな気がする本

 ◆「ほとけさま」白洲正子 ワイアンドエフ
 ◆「別冊太陽:白洲正子の旅」

 ◆「三角寛選集1:山窩物語」ほか全9巻 現代書館
   母念寺版以来ほぼ30年ぶりに古書店のドル箱が、新刊書店に帰っ
   てくることになりうれしい。出版社の宣伝文にも、「サンカ社会の
   研究」本巻と資料編、セットで古書価10万円と書いてありました。
   全共闘時代の大ベストセラー、「共同幻想論」の参考文献リスト中、
   異彩を放っていたのが「サンカ社会の研究」であり、おかげで母念
   寺版がたくさん売れました。私見によれば、この本は、古田武彦の
   「謎の筑紫舞」とともに、<伝奇文学>の傑作として後世に残るだ
   ろうと思います。なお、角川文庫版の「共同幻想論」には残念なが
   ら参考文献リストはついてません。
   おそらく今回は「ト学会」の方面や、「幻想と怪奇」ファンなどに、
   大いに受けることになるのではと思います。


[#03] ネット通販は「在庫僅少」本がよく売れる

   ヤフーに登録されたためかどうかは知らないが、昨年9月に仮オー
   プンしたHPには、この2月頃からほぼ毎日のように、通販の問い
   合わせや注文が来るようになった。その注文の特徴は、圧倒的に、
   在庫僅少本のねらい撃ちというところである。元々ネット以前から
   通販をしていた短歌関係や人智学関係はそれほどでもないが、それ
   以外のページは、ほとんどその手の問い合わせばかり来る。在庫僅
   少と表示しておいた筑摩書房の「吉岡実全詩集」はたちまち2冊売
   れて、完売してしまったが、「つぶれた出版社の本」のページや、
   「地味な文庫本」のページも、なかなか人気がある。福武文庫の内
   田百間には、イタリア在住の人からも注文が来た(東京の実家送り)。
   つぶれた出版社の本などは、ほとんど在庫がないので、あまり売上
   げには結びつかないが、京都書院の本を探している人は、想像以上
   に多いようだ。これらの人には、京都の古書店のページなどを紹介
   している。
   あまり何もかも、<在庫僅少>表示をするわけにもいかないが、少
   し基準を甘くして、もっとたくさん表示したら、売上げが増えるか
   もしれない。


[#04] リクルート活動について

   最近の就職戦線がたいへんらしいという話は知っているが、うちの
   店に、大学の就職部が大量生産した、「御社を志望しております」
   と印刷された資料請求カードを寄越す女子大生は、一体何を考えて
   おられるのだろうか。たまにバイトに使ってほしいという問い合わ
   せはあるが、これはまだしも理解できないことではない。もちろん
   今のところは、バイトすら雇う予定はないが、もしも、うちの店の
   実物を知っていたなら、大学生の就職活動の対象になりえないこと
   ぐらいはわかるはずだ。おそらく、電話帳か何かで調べた書店に片っ
   端から郵送しているのだろう。それにしても、実物を確かめて回る
   のがめんどうならば、せめて(株)印の会社だけに絞る程度の頭は働
   かしてほしいものだ。なお、この手のはがきは数年前に1枚来たこ
   とがあり、今回で2枚目だが、紀伊国屋さんやジュンク堂さんには、
   毎年1万通くらい届いているのではなかろうか。


[#05] スコラが今頃になって返品を受けるらしい

   昨年3月に潰れたスコラが、今頃になって返品入帳の特別処置をと
   るからと言ってきた。例によってわかりにくい文章だが、新刊委託
   商品およびムック、コミックについては引き取ってくれるらしい。
   うちには、期限切れの本1冊と文庫1冊とコミックが2冊あるだけ
   だが、文庫とコミックを返品してみることにした。それにしても、
   「陰陽師」などの人気商品は、とっくに別の出版社から再刊されて
   いることでもあり、もはや商品価値がゼロに近いものを、なぜ定価
   で引き取ろうとしているのか、気前がよすぎて信じられない。いわ
   ゆる倒産ではなく、任意整理だから可能なのだろうが、一体誰が資
   金を提供するのだろうか。もし事前にインサイダー情報を入手して
   いた書店があれば、他の書店の在庫を二束三文で買い集めて、定価
   で返品し、ボロ儲けすることも可能だっただろう。それにしても、
   こんなことは、他業界ではあり得ないことのような気がするがどう
   なのだろう。今後も、任意整理の出版社の場合は、気長に待ってい
   れば同じことが期待できるのだろうか。


[#06] 偽札を掴んでしまった話

   先日の夜、売上金を整理していたうちの者が、五千円札の偽物を発
   見してしまった。言われてみれば、両面カラーコピーの透かし無し
   という、お粗末なものだったが、店番をしていたときはまったく気
   がつかなかった。おそらくうちで買い物された方も、知らずに使わ
   れたのだろう。たまたま最後までレジに残っていて発見されたが、
   営業中に気づかずに、お釣りとして渡してしまう可能性も充分にあっ
   た。偽札と知って見ればすぐにわかるが、本物と信じてやり取りし
   たら、普通は双方とも気がつかないだろう。警察の話では、この手
   の偽札は管内では一年ぶりとのことだったから、宝くじ並の確率か
   もしれないが、五千円損してしまった。お客さんや近所の人に、こ
   の話をすると受けるので、せいぜい言いふらして五千円の元を取ろ
   うとしているところである。


三月書房販売速報[030]  
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2000/04/09[02-07-30]  (c)SISIDO,Tatuo      

    e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 30号


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[#01] 最近売れてるような気がする本

 ◆「ほとけさま」白洲正子 ワイアンドエフ
 ◆「短歌という爆弾」穂村弘 小学館
 ◆「Garden」古屋兎丸 イースト・プレス

 ◆「木村蒹葭堂のサロン」中村真一郎 新潮社
   予価が高かったので3冊しか予約しなかったら、二日目の朝に売り
   切れてしまった。京阪の地元本だから、ある程度は売れると予想し
   ていたがそれ以上だった。なお、お買いあげ客の一人、老舗道具店
   主氏の話では、書画骨董の資料本としても使えるとのことだ。
   
 ◆「書字が教えてくれる」石川九楊 求龍堂
   こう書くと、石川氏のまともな著書のように思えるが、実はこの本
   は福原某のサクセスフル対談とかいう、ぞっとしないシリーズの1
   冊であり石川氏はゲストである。ただし、一冊全部石川氏だけがゲ
   ストであり、ご本人に直接聞いたところによると、書くときよりも、
   思い切ったことが言えたとのことだから、1200円ならお買い得
   かもしれない。


[#02] これから売れそうな気がする本

 ◆「オートバイ少女」鈴木翁二 筑摩書房
   鈴木翁二は取りあえず3ヶ月で10冊ほど売れる。まんだらけ発行
   の「A遠」も予約したが、広告を見ると、直販オンリーのようでも
   あり、入荷するかどうかわからない。
 
 ◆「短歌はプロに訊け」穂村弘、東直子ほか 本の雑誌社
   ちょっと先に出た「短歌という爆弾」の売れ行きがたいへんによい
   が、これもかなり売れそうである。元がオンライン短歌なので、予
   約もメールで来たが、いずれは地べたでも話題になるだろう。それ
   にこの本は、本の雑誌社としてはめずらしく、装丁がきれいだ。


[#03] 「季刊 本とコンピュータ 12号」の宣伝

   10日頃発売の、本コ12号に「転送歓迎、三月書房メールマガジ
   ン」という作文を載せて貰いました。編集者のかたからメールで原
   稿の依頼が来たときは、てっきり字数は1万ピクセルでとか、枚数
   は1キロバイト以内で、とか言われるのではと緊張しましたが、電
   話でお話したら、昔ながらの4百字詰5枚だったので、少し拍子抜
   けしました。提示された原稿料がスコブルよかったので、拍子抜け
   はすぐに直りました。それはともかく、今回の拙文はこのメルマガ
   読者の皆様にとっては、何ら目新しい内容ではないはずです。
   
   唯一目新しい情報としては、今秋刊行の「図書館とメディアの本 
   ず・ぼん」の7号に、「図書館で八百長リクエストをする会(仮)」
   の活動報告を載せてもらう予定だと宣伝したことぐらいです。この
   活動は、予想に反してちっとも順調ではなく、なかなか「八百リク
   通信(仮題)」の3号を発行する気になりません。そこで、「ず・
   ぼん」の件を発表してしまえば、あまりサボってもいられないだろ
   うと、ちょっとだけ自分にプレッシャーをかけてみたわけです。
   
   この「販売速報(仮題)」も直接購読者が200名を越え、昨秋の
   「八百リク通信(仮題)」をご存じでない、新しい読者の方もおら
   れるかもしれませんから、三月書房のHPにバックナンバーを貼り
   付けました。下記のショート・カットから飛んでください。この会
   はその性質上、あまり公然とは活動できませんから、このバックナ
   ンバー・ページは隠しページとなっています。

   ついでながら、「本コ12号」ですが、最寄りの図書館になければ、
   ぜひリクエストしてみてください。図書館の0番台の書棚に、全号
   揃えておくべき本だと思います。
   
   それから、八百リクに関するネタがあれば、些細なことでもかまい
   ませんから、ぜひお教えください。よろしくお願いします。


[#04] 続・リクルート活動について

   前号で資料請求カードを寄越した女子大生について書きましたが、
   彼女は京都市内の学生にもかかわらず、うちの店の現物をチェック
   する手間を惜しんだのだから、あの程度の悪口は言ってもいいでしょ
   う。ところが、こんどは、驚いたことに、千葉県の某女子大生から、
   こんなメールが来ました。

   「私は現在、就職活動のための企業研究をしております。御社のホ
   ームページを拝見致しまして、大変関心を持ちました。つきまして
   は、会社案内などがございましたらご送付願えませんでしょうか。
   お忙しい中とは存じますが、よろしくお願い致します。」

   正直なところ、これは例のはがきとは違って、少しうれしいような
   気がしないでもありません。パソコンのおまけソフトを使用して、
   てきとーに作成しているお粗末なホームページが、まともな会社の
   ように見えると、ほめていただいたようなものですから。ただし、
   ていねいに読んでいただけば、この「販売速報(仮題)」のバック
   ナンバーも公開していることですから、うちが会社案内を送付でき
   るような会社なんかではなくて、バイトすら雇えない個人商店であ
   ることがわかったはずです。こういうそそつかしい方が、就職活動
   のための貴重な時間を浪費されるのも気の毒ですから、ホームペー
   ジに、「リクルート資料の請求はご無用に願います」という一文を
   新たに掲示しました。
   
   それにしても、「就職活動のための企業研究」をしていて、うちの
   店のHPに挨拶してしまう女子大生は、きっとのん気で楽しい方で
   しょう。リクルート活動の幸運をお祈りしたいと思います。


[#05] 天に唾する<京都の書店のうわさ>(その7) 蒙御免

  ●プラッツ近鉄の旭屋書店について

   新装開店5日目の29日水曜日に見てきましたが、格別の印象はあ
   りませんでした。いつも言っていますように、大型店の経営につい
   ては、まったくド素人なので、あまりあてにせずにお読みください。
   
   千坪超でワンフロワーの書店としては日本一とのことでしたが、雑
   然と広いだけで、圧倒されるというほどの感じはありませんでした。
   よーするに、五百坪程度の店の品揃えを、水増し増量して千坪にし
   ただけ、というのが率直な感想です。すなわち、数千坪分の商品か
   ら、単品を選んで絞り込んだ結果の千坪とは見えないということで
   す。極端に言えば、有名出版社の常備や長期の点数を、五百坪の場
   合の2倍しただけのようにしか見えません。
   
   ただし、ではそれは間違いかといわれれば、ぜんぜんわかりません。
   昔の池袋のリブロのように、プロやマニアに受けすぎる品揃えより
   も、この旭屋さんのようなイージーゴーイングの方が、駅前百貨店
   には向いているかもしれません。いずれにしろ、半年もすればおよ
   その結果がわかることでしょう。
   
   他店の短所は簡単に分かりますが、長所というものは、お客として
   通い続けなければ、なかなかわかりません。30分ほどの滞在でわ
   かった長所は、コミックがポリ封されていないし、児童書売り場も
   イスなどあって、ゆったりとしているので、子供達をそこで放し飼
   いにして、親がゆっくり棚を見て回れそうなことぐらいでした。
   
   しかし、プラッツ全体としたら、以前の田舎百貨店状態から考えれ
   ば、見違えるように良くなっていますから、かなりの集客は見込め
   るはずです。伊勢丹とはほとんど重複しそうにありませんが、アヴァ
   ンティは完璧に食われることになるでしょう。なお、元・駸々堂の
   ポルタ店は、4月6日から「くまざわ書店」が営業されているとの
   こどです。


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