e-mail版 三月書房販売速報(仮題)
旧号合冊
第2冊[11号〜20号]
通巻011号 1999.05.31発行 通巻016号 1999.08.18発行
通巻012号 1999.06.06発行 通巻017号 1999.09.07発行
通巻013号 1999.06.26発行 通巻018号 1999.09.27発行
通巻014号 1999.07.15発行 通巻019号 1999.10.25発行
通巻015号 1999.07.31発行 通巻020号 1999.11.15発行
※各号の最終版を一部修正して掲載しました    ※非営利目的の転送は歓迎します
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三月書房販売速報(仮題)総目次へ

三月書房販売速報[011] 
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1999/05/31 [01-08-11]  SISIDO,Tatuo      

    e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 011号
                      
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[#00] お知らせ

   この号から、表題の「テスト版」表示をはずしました。
   (仮題)の方はかっこいいタイトルを思いつくまでは、はずせません。

[#01] 最近売れてるような気がする本

 ◆「La Vacanza」 紀野恵 砂子屋書房
   34歳にしてこれが第8歌集とのこと。うちで売れ出したのは第4歌
   集からだが、いまだに4〜7歌集は品切れにもならず、年に5冊程度
   のぺースで売れ続けている。
    
 ◆「タオ、気のからだを癒す」 法蔵館
   武道の関係書が一棚ほどあり、その横の棚には野口体操などの棚があ
   る。この本はその中間あたりの位置でよく売れている。ただし、この
   本が本当にさえてる本なのか、それとも単に地元の著者の本だから、
   知り合いがつぎつぎに買いに来られてるだけなのかはわからない。

 ◆「掌の美」 新潮社
   以前に出た本で、従来は年に数冊程度の売れ行きだったのが、このご
   ろは、1冊で回しているから、棚に並んでいる時間よりも、補充中の
   時間の方が長い気がする売れ行きである。新刊ではないし、やや高価
   な本だから、置いている店が少ないらしく、口コミで芋蔓式に買いに
   来られているような感じである。

 ◆「少年」 吉本隆明 徳間書店
   売れ行きはぼちぼちというところ。3ヶ月で40冊は行くと思うが、
   いまいち、出足に勢いがない。前著「匂いを讀む」も30日で30冊
      の予定が、40日かかってしまった。しかし、3月下旬に出た「詩人
     ・評論家・作家のための文学論」は予想よりも1月早く、2ヶ月ちょ
      いで40冊に達したからこれは順調である。

 ◆「ルポライター事始」文庫版 竹中労 筑摩書房
   月の輪書林と同書店を紹介した坪内氏の本の影響で、昨年あたりから
   竹中労の本を探す人が増えている。ところが手に入る本は、5点弱し
   かなく、それも品切れ寸前だから、文庫とはいえ再刊されるのはあり
   がたい。

 ◆「野口体操・自然直伝」 柏樹社
   最初の1か月の入荷状態が最悪で、3冊しか入荷せず、店に在庫して
   いた期間は延べ数日しかなかった。とくに、今回は地方小センターが
   ダメで、事前予約分も追加注文分も、いまだに1冊も入らない。
   NDCの店売で拾えると思っていたのもあてがはずれて、直接FAX
   注文した分しか入荷してない。とりあえずは5冊以上売り損ねたこと
   は確実だが、他店が山積みにしているわけでもないし、生ものでもな
   いから、この遅れは致命的ではなく、いずれ取り返せるだろう。


[#02] これから売れそうな気がする本

 ◆「二重言語国家・日本」 石川九楊 NHK出版
   この本も10冊は固い。
   それはいいのだが、これ以外に売れそうな近刊本を何も思いつかない。
   うちの店の景気は、2月後半から上向きで、3,4,5月はわりと順
   調だったのだが、この分では6月はさえないかもしれない。


[#03] 「三月書房 販売情報(仮題)第50号」発行のお知らせ

   50号は去る5月22日付けで発行しました。

   p1. [かなりよく売れてる本]
   p1-2.[わりとよく売れてる本]

   p2. [人智学関係書の売上]1998/05〜1999/04  
      この期間の人智学書の売上げは、横這い微減というところ。
      単品の売上げ1位「自己教育の処方箋」24冊
            2位「シュタイナー経済学講座」19冊
            3位「シュタイナーヨハネ福音書講義」16冊
               以下略。本紙には上位17点掲載。

   p2-2. [e-mail版三月書房販売速報(仮題)のその後] 略

   p3. [京都書店地図(テスト版)第2版:1.寺町二条周辺]
      第1版は6年前の制作で、5回に分けて京都の中心部の書店地
      図を作ったところで中断していた。今回はとりあえずうちの店
      の周辺の改訂版を作ったが、東西300メートル、南北500
      メートルほどのところに、書店が古書店を含めて17軒ある。
      多くは地味な専門店だが、けっこう書店密度が高いといえるだ
      ろう。ほかに、コンビニが6軒あるが、これはまだ増える余地
      が少しありそうだ。ワープロで地図も書いたが、残念ながらこ
      のメールで送るのは、方法がよく分からないので、今のところ
      無理です。

   p4.[光琳社出版ほかの倒産・廃業について」
      昨年来ばたばたと出版社が潰れているが、スコラやジャパン・
      ミックスは、日販から返品の逆送を食った。光琳社のはムック
      を2冊返したが、結果はまだわからない。
      うちは、他店よりも、返品期限切れの本の在庫率がかなり高い
      が、それでも、最終的には返品できるからこそ残した本と、返
      品不能を承知で在庫している本の2種類があり、スコラや光琳
      社の本は前者だから少し困る。       
      それと、潰れないまでも、うちが在庫している旧刊本を、ゾッ
      キに出されてしまうとばからしくてやっていられない。最近も
      京都の某美術書出版社が、スリップをさしたままの本を数百点
      古書業界に投げ出したから、うちの在庫を激減させたばかりで
      ある。
      この出版社が潰れるかどうかはともかくとして、この手の情報
      は、当然ながら取次は教えてくれないし、軽々に教えるべきで
      もないから、古書店方面に注意していると察知できることが多
      い。

   p4-2.[昨年の出版社別ハードカヴァー売上げTOP32]
      総売上から、文庫・新書・ブックレット・コミックなどを除い
      たランキング。あまり厳密ではない。
      1位岩波、2位筑摩、3位新潮社、4位講談社、5位小学館で、
      6位に砂子屋書房が来るところが珍しくていいと思う。以下略。

   ※毎度お知らせしていますように、紙の「販売情報(仮題)」は、料
    金受け取り人払いの封筒または、宛名書きして切手を貼った封筒を
    お送りくださった出版社様にのみお送りしています。


[#04] 三一書房が復活したらしい。

   4月の青林堂の再開に続いて、三一書房からも、5月25日付けで、
   新刊の案内とともに、在庫品の出荷も再開できる体制が確立されとの
   お知らせが来たが、このまますんなりと行くかどうかはもうしばらく
   様子を見ないとわからないだろう。それにしても、この不景気な時に
   半年さぼっても大丈夫らしいのは、蓄積がよほど大きかったというこ
   とだろう。
 

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三月書房販売速報[012]  
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1999/06/06 [01-09-12]  SISIDO,Tatuo      

    e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 012号
                      
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[#01] 最近売れてるような気がする本

 ◆「二重言語国家・日本」 石川九楊 NHK出版
   この本は予定通り売れているが、前号発行以来まだ1週間しかたって
   いないから、他には何も思いつかない。


[#02] これから売れそうな気がする本

 ◆「武術の視点」 甲野善紀著 合気ニュース
 ◆「大野一雄 でたらめの限り尽くして(仮題)」 フィルムアート社
 ◆「経済・歴史・民俗」 網野善彦・宮田登著 新書館
 ◆「器つれづれ」 白洲正子著 世界文化社

   前号で、これから売れそうな本をほとんど思いつかないと書いたが、
   売れそうな本がいろいろ見つかった。ただし、以上4点の刊行予定は
   いずれも6月下旬から7月にかけてとなっている。
   したがって、6月上旬から中旬にかけて、売れそうな気がする本が、
   見あたらないという状況は変わらない。
   今のところ、その唯一の例外が次の本である。

 ◆「ちびくろサンボよ すこやかによみがえれ」 灘本昌久著 径書房
   これはとてもよくできた本だから、たくさん売りたい。
   この本は6月3日に発売されたのだが、4日に著者からの贈呈本をい
   ただくまで、こんな本が出るということをまったく知らなかった。
   さっそく灘本氏にお礼かたがた問い合わせたところ、堺市の例の団体
   から出版妨害を受けることをおそれての、完全極秘のプロジェクトだ
   ったとのこと。何はともあれ、原作をそのまま訳した絵本ともども無
   事出版できてよかった。あとは、堺市の団体がどんどん騒いでくれる
   とよい宣伝になるだろう。
 (◆「ちびくろさんぼのおはなし」 径書房)
    
   読み落としていたが、3日の朝日新聞に紹介記事が載っていた。いつ
   も、堺市の団体のちょうちん持ちばかりしている朝日としては、なか
   なか公平な記事だったが、灘本氏の話では、この記事のおかげで出版
   社には絵本5000部の注文が、たちまち来たとのこと。

   いま思えば、10年前の絶版騒ぎのときに最悪だったのは岩波書店の
   対応だった。長年にわたって「良書」として売り続けてきた絵本を、
   何の説明もなく絶版にしたのは、あまりにも無責任だった。あの時点
   では、岩波版はオリジナルではなく、アメリカ版の1種を元にしてい
   たのだということすら、ほとんどの読者は知らなかったのだから。
   あの対応は、岩波書店の総意だったのか、出版人というよりも、政治
   屋のようだった、故安江社長の独断だったのか。今からでも遅くはな
   いから、絶版にした理由を、過去の読者に明らかにすべきだろう。


[#03] 京都書院がつぶれた

   6月2日、ついに京都書院が倒産した。今回の倒産は、5月の連休こ
   ろからうわさされていたし、古書展でゾッキ本の山を目にもしていた
   から、意外ではなかった。たとえば、京都古書情報社が4月に発行し
   た、京都古書情報第9号には、京都書院の本約500点が、ほぼ定価
   の半額見当で載っている。おそらく、3月決算対策で換金処分したも
   のだろう。

   ここ数年、文庫サイズの美術書を大量に出版していたが、このシリー
   ズも初期に比べると、クズが多すぎた。うちでは、年間に100冊前
   後売れていたが、よく売れるのはせいぜい10タイトル強だった。
   連休明けからどしどし返品していたから、残った20冊程度は、よい
   本ばかりである。もし、うわさを知らないままだったら、かなりつま
   らないものを50冊ほど抱えてしまうところだった。

   このようにして最後は出版社の倒産として終わったわけだが、もとも
   とは京都一の書店として有名だった。しかし、1993年に河原町四
   条上るのメイン店舗を失った時点で、堀川御池の本店は残ったものの
   書店としてはほぼ終わっていた。筆者が大学に籍のあった70年代初
   頭の京都では、京都書院の河原町店は新築したばかりで、プレイガイ
   ドがあり、ギャラリーがあり、輸入画集があり、その上に美術書稀覯
   本の古書まで扱っていて、文句なしに京都一の書店だった。それにし
   ても、その一番店が四階建でて、売場面積延べ百坪にすぎなかったの
   だから、今思うとウソみたいだ。(本当は丸善京都店の方が広かった
   かもしれないが、当時は、わざと手を抜いたような経営ぶりで、書籍
   小売部門はまったくやる気がないような感じだった)

   京都書院河原町店の百坪の店には、二〇代の男女が数十人も働いてい
   て、そこの早朝野球のチームには筆者も混ぜてもらっていたが、京都
   書院の外商部とか、柳原書店京都支店とかと試合すると、女子店員も
   大勢応援に来てくれたし、試合後も遅番や非番の選手と朝風呂に入っ
   たり、昼酒を飲んだりして、実にのんきな時代だった。いま千坪の大
   書店でも、こんな気楽なことをするのは、むつかしいのではないだろ
   うか。もっとも、同じ職場の人となんか遊ばずに、もっとスマートに
   遊んでおられるかもしれないが。

   よーするにそのころが頂上で、あとは時代の流れについていけずに、
   相対的地位が下がる一方だったにもかかわらず、河原町店の根本的な
   改革は最後までできずに、駸々堂やジュンク堂が大型店を出すと、じ
   り貧になってしまった。その下降の過程では、元早朝野球の面々がシ
   ロウト労組を結成し、とりあえず思いついたことすべてを要求してみ
   たら、シロウト経営者がいきなり、プロのヤクザ労務を雇ってしまっ
   たりする、下手くそでコクのない労組紛争もあった。ふたば書房とと
   もに圧倒的に強かった、呉服業界向けの外商部も、呉服産業の壊滅と
   ともにいつしか成り立たなくなり、経営者は経営再建をいわゆる多角
   化に求めたが、その中身は原宿進出を図るとか、ヨットの輸入販売に
   手を出しかけるとか、ほぼすべてがバブル後期の典型的無駄遣いばか
   りだったようだ。それでも、堀川の本店は、美術書にのみ扱いを絞り
   和書と輸入書の新刊と古書を揃えた立派な専門書店だったから、閉店
   してしまうのはもったいない。
    

[#04] おまけ

   連休中の古書展で30年近く前の雑誌、梶山季之編集の「噂」の揃い
   を買って、ぼちぼち読んでいるがなかなか面白い。文壇の裏話はもち
   ろん面白いが、創刊号では若き日の今井信子(世界でも有数のヴィオ
   ラ奏者)さんが、「野坂昭如はモーツァルト以上の天才芸術家だ」と
   言っておられるのがあほらしくてよかった。また、紀伊国屋書店の創
   業者の田辺茂一氏の、連載読物「芸者の肌」の第四回の中で、書店を
   始めるにあたり、銀座の近藤書店に奉公に行き、前垂れをして午前中
   3時間ばかり店頭に立っていたらだいたいの見当がついたような気が
   して、昼休みに店主に挨拶して店を止めた。つまり彼の本屋修業は半
   日だけだったというのもよかった。

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三月書房販売速報[013]  
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1999/06/26 [01-10-13]  SISIDO,Tatuo      

    e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 013号

                      (ver.1.01)1999/06/28
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[#01] 最近売れてるような気がする本

 ◆「ちびくろさんぼのおはなし」 径書房
   訳者の灘本氏の署名原稿が朝日新聞に載ったり、NHKの特集番組も
   あっりで、世間ではかなりよく売れているようだ。うちでも、そこそ
   こ売れている。
   NHKの放送は、90年に出版された「〜絶版を考える」を、一切無
   視した10年遅れの内容で、せっかく灘本氏に出てもらったにもかか
   わらず、彼の最新著書「〜すこやかによみがえれ」を完全に無視した
   ばかりか、「〜おはなし」の訳者であることすら紹介しないというひ
   どさだった。
   なお、この番組に対する灘本氏の感想は、同氏のサイト
   http://www.kyoto-su.ac.jp/~nadamoto/にて読めます。

   このサイト記事によると、新宿の**國屋書店では、引き合いがあれ
   ば、カウンターの隠しからそっと取り出して売っているとのこと。何
   か地下出版物みたいですが、居合わせた別のお客が、すごいエッチ本
   と間違えて、中も確かめずにあわてて買ったりしたら、売上げが増え
   るかもしれません。

 ◆「いじめと不登校」 河合隼雄 潮出版社
   河合隼雄の本は、本人が全部書いておられるとは信じられないくらい
   のテンポで出続けているが、どれもほぼ数冊は売れる。その中でもこ
   の本はとくに出足がよい。近年、文部省が、こころの相談の類に予算
   を潤沢に回しているから、学校カウンセリング関係書の公費買い上げ
   が多いが、その中では河合氏の著書が、ダントツの一番人気である。

   教育委員会関係の買い上げにも、はやりすたりがあり、一昔前は生涯
   学習の本が、ふた昔まえには部落問題関係の本が大量に売れたものだ
   った。

 ◆「戦後史の証言・ブント」 島成郎監修 批評社
   島成郎著「ブント私史」はすでに20冊以上売れているが、これもわ
   りと出足がよい。この本は「ブントの思想」の別巻だが、本巻が高価
   なために各2〜3冊しか売れなかったのに比べると、これは手頃な値
   段だから買いやすいのだろう。
   本巻に予定されていた「関西ブント」の巻が中止になったのが、地元
   本だけにやや惜しい。

 ◆「母なる色」 志村ふくみ 求龍堂
   志村氏は京都の某人智学会の代表だから、うちでは人智学関係書とし
   て売っているが、もちろん美術書として買われるかたも少なくない。
   最近、美術系出版社が次々に潰れている中にあって、求龍堂はむしろ
   近年にない好調さのような気がする。うちの店に向いた本が、たまた
   ま続いて出ているから、そんな気がするだけかもしれないが。

 ◆「京都・魔界マップ」 洋泉社
   94年に発行された、別冊宝島「京都魔界めぐり」の続編にあたる。
   「〜めぐり」は98年に改訂版第14刷が出ているから、かなりよく
   売れたらしい。うちでも、100冊ほど売れている。

   以前の別冊宝島は、書籍のように重版をして、ロングセラーになるの
   も多かったのだが、最近はやたらに点数を増やしたかわりに、重版を
   しない方針にしたようだ。最近の号では、スリップで補充しようにも
   番線印を押す場所すら無いようになっている。内容的にもうちには不
   向きなものが大半だから売上げは落ちる一方だ。


[#02] これから売れそうな気がする本

 ◆「現代をどう生きるか」 吉本隆明ほか ボーダーインク
   ボーダーインクからは、芹沢俊介の小さい本が何冊か出ていて、うち
   ではロングセラーになっている。この本も、吉本氏の著書というより
   は、芹沢氏がメインの本だとは思うが、千円と安価だからたくさん売
   れるだろう。

 ◆「癒える力」 竹内敏晴 晶文社
   竹内氏の本は、昔ほどは売れないが、それでもとりあえず5冊くらい
   は売れるだろう。


[#03] 「超激辛爆笑鼎談<出版>に未来はあるか」(編書房)について

   面白い本だった。とくに安原氏の語る、元中公のジュニア社長の行状
   記がけっさくで、金正日さんをうんと小物にしたような人という印象
   を受けた。ただ、面白いけれども、出版業界のゴシップに関しては、
   ペヨトル工房が活動を停止しているというように、明らかに間違った
   情報もあったから、全面的に信用しない方が無難だが、再販制につい
   ての意見などには、けっこう同意できる部分も多かった。

   ペヨトル工房については、昨年リブロポートの倒産時に、読売新聞が
   活動停止と誤報したのがいまだに響いているようだ。同工房の今野氏
   に、この本のことをメールしたら、よく間違えられますといって、あ
   まり気にしていないようだった。同社は無理な活動はしていないよう
   だし、取次帳合もごく限られているから、落ち着いていられるのだろ
   う。つぎつぎに出版社が潰れる現況では、書店が風評に過敏反応をす
   る可能性があり、本当に少し危ないような、どこか別の出版社だった
   ら、混乱が生じたかもしれない。
 
    (ver.1.01)この件については、版元より、「重版しまして、ペヨト
    ル工房の部分を永江さんに書き換えていただきました。」というメ
    ールをいただきました。えらく早い重版で、まことにおめでたい。


[#04] おまけ

   「噂」の1972年2月号の梶山季之のコラムを読んでいたら、紀伊
   国屋書店が札幌に大型店を開店し、その記念講演会に柴田練三郎ほか
   当時の人気作家が勢揃いし、銀座のバー7軒からホステスがかけつけ
   るという大盛会だったとか。ところが梶山氏の文によれば、「紀伊国
   屋書店が、百坪、百五十坪という大型書店を各地につくり成功してい
   るのは、多種類の本を、長期間にわたって店頭に置く……と云う、書
   店本来の存在理由を、実行して示しているからに他ならない。」と書
   いてあるから、この札幌店もせいぜい百五十坪程度にすぎなかったよ
   うである。

   単に昔は良かったと言っても仕方がないが、わずか百五十坪で、今の
   千坪書店よりもゆとりがあるかに思える経営が可能だったのは、なぜ
   なのだろう。マージン率は、現在の方が明らかに増加しているし、書
   店員の待遇が他業界に比して低いのは、昔も今も変わらない。出版点
   数が増えたといっても十倍にはなっていない。もちろん、再販制も委
   託制も変化がない。おそらく、書籍・雑誌の価格が、物価上昇率に比
   して低すぎるということが、最大の原因であろうとは思うのだが、オ
   ーバーストアということも、やはりあるかもしれない。
   
    (ver.1.01)札幌店の広さについて、紀伊国屋さんのどなたかからの
    メールが、さる読者より転送されてきました。

    < 梶山先生(創業者のお友達)のコラムを引用されて札幌店が150
    坪と記されておりますが、札幌店は開店時から400坪ぐらい(現在
    は463坪)ありました。
    この店は阪急3番街をモデルに札幌地下街が計画されたことから、
    当初地下街に500坪で出店しないかとの話がありましたが、浪花
    さんを筆頭に道組合が猛反対した結果、地下街は180坪に留まり
    隣接した地上ビルに200余坪の店舗を開き、合わせて「札幌店」
    と称したものです。
    地下街店のみでとらえてのご発言であれば近い値ですが、当時から
    そろそろ200坪以上なければ本が揃わない時期になっていたと思
    います。>

    たいへんよくわかるご説明なので、これが正解なのでしょう。

    この「速報」の内容について、補足、訂正、蛇足、ご意見などあり
    ましたらどんどんご送信ください。重版のときになどといわずに、
    ただちに訂正増補いたします

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三月書房販売速報[014]  
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1999/07/15 [01-11-14]  SISIDO,Tatuo      

    e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 014号
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[#01] 最近売れてるような気がする本

◆「石原吉郎のシベリア」 落合東朗 論創社
   1960年代の終わりごろ、「シベリア画集」の香月泰男、「望郷と
   海」の石原吉郎、「行き急ぐ」の内村剛介と、元シベリア抑留帰還者
   の本が、ものすごくたくさん売れた時期があった。このうち内村氏は
   ちかごろまったく売れず、失礼ながら生死のほども知らないが、ほか
   の二人の故人の本は、いまでもわりとよく売れている。
   
◆「シュタイナー入門」  講談社現代新書
   シュタイナーの入門書としては、いままでで一番手軽なよい本だと思
   う。ただし後ろの図書案内は、ず〜とむかしに、偽札殺人事件にまき
   込まれて潰れた創林社や、去年ごろ廃社になったらしい泰流社、ある
   いは在庫の多くが品切れの人智学出版社の本が並んでいて、入門者に
   は不便だろう。これらの本のほとんどは、別の出版社から再刊された
   り、新たに訳し直して刊行されているのだから不親切だ。

◆「竹林の隠者」 大川公一 影書房
   富士正晴さんは子どものころから実物を知っていたが、隠者というほ
   どには脱世間の人ではなかったと思う。70年代初頭にお邪魔したと
   き、大江健三郎は「うまいこといいのええかっこしいの顔や」と言わ
   れたから、喜んで同意したが、次いで小田実を「おもろいやっちゃ」
   と評されたのには同意しがたく、ややがっかりした記憶がある。

◆「海・呼吸・古代形象」 三木成夫 うぶすな書院
   この本はうちの店が、92年の刊行以来98年末までに、全発行部数の推
   定5%以上、230冊も売ったドル箱商品だ。本来うちが全体の5%も
   売ることはありえないのだが、買い切りのためか、よその書店ではほ
   とんど在庫していないからであるらしい。それでもさすがに最近では、
   月に1冊程度の売れ行きに落ちていた。版元も96年の第5刷以来重版
   をしていないようだったから、全体としての売れ行きも落ちていたの
   だろう。
   それが、数週間前の朝日新聞の日曜読書欄で、赤瀬川原平さんのコラ
   ムに取り上げられて以来、世間でも突然売れ出したようで、うちも手
   持ちの5冊を1週間ほどで売ったあとは、在庫切れになってしまった。
   今回の人気が一時的なものかどうかは、7月下旬予定の重版を待たな
   いとわからない。

◆「水木しげるの大冒険 メキシコ妖怪楽園案内」 祥伝社
   水木しげるは、一部の古書店によるお宝本扱いのせいもあって、講談
   社の限定版などは仕入れすら困難だが、貸本時代の復刻版ばかりでな
   く、角川の「怪」なども順調で、この新刊もよく売れている。

◆「現代をどう生きるか」 吉本隆明ほか ボーダーインク
   現物は事前の予想通り、吉本氏の出番は3分の1以下だったが、定価
   が安いこともあり出足はよい。この本は、先の三木成夫の本と同じく
   地方小出版センター扱いだから、一部大書店は返品可能とはいえ、原
   則は買い切りで、ほとんど配本もないだろうから、置く書店がごく限
   られるために、初版をたっぷりと仕入れたうちの店には有利な商品だ。

[#02] これから売れそうな気がする本

◆「絶望の書・ですぺら」 辻潤 講談社文芸文庫 7月刊行予定
   文芸文庫は先の山之口貘といい、なかなか渋いよいものが出るが、ま
   さか辻潤が出るとは思わなかった。数年前、河出文庫が数冊のコレク
   ションを出す予定だと、関係者から聞いていたがあれはどうなったの
   だろう。
   それはともかく、文芸文庫は、最初は1冊でも、売れればどんどん同
   じ著者の本を出してくれるから続きを期待したい。

◆「辻まこと全集・全3巻」 みすず書房 秋刊行予定
   まだ詳細は不明だが、価格が高すぎずかつ珍しい内容なら、大量に売
   れるだろう。20年近く前に、48000円の全画集を20冊以上売
   ったが、それ以降も、辻まことの本は途切れずに売れ続けているから
   だ。もし、今度の全集があまり珍しくもない内容で、しかも割高な本
   だったとしても、5組や10組は売れるだろう。

◆「白川静著作集・本巻全12冊」 11月刊行予定
   待望の著作集だが、実はさらに膨大な別巻が予定されていて、これが
   無事に出るかどうかが重大な問題である。そして、この別巻が出るか
   どうかは、当然のことながら本巻の成績次第ということらしい。この
   本巻の内容はもちろん最高だが、文庫や新書やライブラリー、そして
   単行本などで、ごく普通に手に入る本が多くを占めているから、重複
   を承知で高価な著作集を買ってくれる人が、どの程度あるかがまだわ
   からない。地元のことでもあり、5名ほどは定期が欲しいところだが
   どうなるか。
   それに、11月刊行開始というのが、後述の2000年問題もあって
   やや不吉な気がする。だから残念だが、お客には一時払い特価を奨め
   ないほうが無難だろうと考えている。


[#03] いわゆる「2000年問題」について (その1)

   いくつかの本とインターネットで少々調べたところによると、どうも
   組め込みチップ類の対策は、決定的に手遅れらしい。
   そして、この問題の発生時期は大きく分けて、3つに分けられるよう
   だ。もちろんそのひとつは明年1月1日に電気などのインフラや金融
   ネットがダウンするかどうかだが、可能性はゼロではない。ゼロでは
   ないが、万一の場合も数日以内に復旧する可能性がとりあえずは高そ
   である。

   次の問題が、インドネシアやアラブ、北海などの石油や天然ガスのプ
   ラントが無事かどうかだが、日本国内よりも危険度がやや高そうであ
   る。最悪の場合は食糧とエネルギーが危機になり、世界恐慌になるだ
   ろう。そこまでは行かなくても、70年代の石油ショック程度の危機
   になる可能性は、けっして少なくはない。
   なお、米・中・露・朝鮮民主主義人民共和国などの、核ミサイルの誤
   発問題は、どうしようもないから考える気にもならない。
   
   以上のふたつは来年のことだが、実はさしあたって問題なのは、来年
   ではなく、今年後半の社会混乱である。銀行の取り付け、備蓄用食糧
   の買い占め騒動などが、10月頃になれば発生する可能性が少なくな
   い。今はまだ不自然なくらいに静かだが、テレビが騒ぎ出したら、他
   のことは考えられない位の騒ぎになるだろう。そうなれば、生活必需
   品ではない書店業界などは、年末商戦どころか、開店休業になってし
   まう可能性がある。(次号に続く)

   皆様も http://www.y2kjapan.com/ あたりのサイトを覗いてみて、
   ご研究ください。

   どうでもいいけど、「2000年問題」とか「Y2K」とかいうより
   も、中国語の「千年虫」というのがネーミングとしてはいいと思う。


[#04] おまけ

   またまた「噂」の1972年5月号、田辺茂一「芸者の肌」を読んで
   いたら、新宿の紀伊国屋書店は、昭和5年木造鉄筋2階建の新店舗を
   建設、「間口も六間、奥行き十二間と成り、漸く本屋から書店へと云
   った段階の体裁と成った」と書いてあった。

   本屋と書店はどう違うのかと、時々人にも聞かれるが、こんなに簡単
   な分け方だったとは知らなかった。うちは人に聞かれたら「本屋」と
   答えていたが、どうやら間違っていなかったようでよかった。

   紀伊国屋書店は、昭和2年に、間口3間奥行き6間でスターしている。
   はたちそこそこの田辺氏は、売上げの一割以上を持ち出して、遊びま
   くっていた。例えば、6月号によると、月末の商品支払いが三千円ぐ
   らいだったにもかかわらず、芸者屋1軒の支払いだけで、毎月三百五
   十円ぐらいだったという。それなのに、わずか3年で大拡張できると
   は、よほどすごい経営の才能があったのだろう。もっとも、この「芸
   者の肌」を読んでいる限りでは、いつも実家に頼って、穴埋めをして
   もらっていたようだが。

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三月書房販売速報[015]  
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1999/07/31 [01-12-15]  SISIDO,Tatuo      

    e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 015号
                      
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[#01] 最近売れてるような気がする本

◆「どぶさらい劇場」 山野一 青林堂
   青林堂は再開後、何とか無事に続いているようだ。補充もなかなか
   早く戻るし、新刊も毎月1点は出ているようだ。この本は新刊という
   よりも復刊というべきだろうが、長く切れていたから出足がよい。

◆「カフェ3号」 枯野社
   1号と2号は20冊を越えた今も売れ続けているが、3号も出足がよ
   い。「本の雑誌」を売り始めたのは5号からで、それからしばらくは
   毎号数10冊売れたものだったが、現在は3冊がやっとである。これは
   京都中のまともな書店なら、どこでもふつうに売るようになったから、
   わざわざうちまで買いにくる人が、いなくなっただけのことである。
   「カフェ」もそのうちそういうことになるかもしれない。

◆「西遊妖猿伝」10〜12巻 諸星大二郎 潮出版社
   掲載誌が次々につぶれ、版元も変わり、先行きが危ぶまれていたが、
   1〜9巻は大幅に書き直され、装丁もよくなり、そしてついに、待望
   の第2部も配本され始めた。あとは無事に完結してくれることを祈る
   のみである。そして「海神記」の続きもいつかは出てくれるのだろう。

◆「神と資本と女性」 網野善彦・宮田登 新書館
   予想ほどの出足ではないが、もちろん売れている。

◆「買ってはいけない」 週刊金曜日
   ケチって仕入れすぎで、在庫切れの期間の方が長いから、かなり売り
   損ねている。取次がなぜいまさら「週刊金曜日」などを扱うのか不思
   議だったが、これが売れることがわかっていたのならえらかった。
   それに本多氏も、これだけ売れれば、<中間搾取>されても、たぶん
   文句はないだろう。(この項は「販売速報07号」を参照のこと)


[#02] これから売れそうな気がする本

◆「決定版尾形龜之助全集」 思潮社
   何で見たのか忘れたが、まだかなり先の話みたいだった。
   元版は30年ほど前に出て、高価本だったがすぐに売り切れた。
   同じ頃に出ていた「山之口貘全集全4巻」も、増補版を出すか、それ
   が無理なら、復刊してほしい。この2点は古書店でもかなり高い。

◆「書に通ず」 石川九楊 新潮社
   数ヶ月前のうわさでは、旧著「書の終焉」の改訂増補とかいう話だっ
   たが、新刊案内を読む限りでは、新著のような感じもする。

◆「黒旗水滸伝」 竹中労作 かわぐちかいじ画 皓星社 
   竹中労の人気が妙に上がっているから、少しは売れそうだ。

◆「世間論序説」 阿部謹也 朝日新聞社
◆「人間の発見(仮題)」 養老孟司・甲野善紀 PHP研究所
   この2点は、入荷さえ順調なら、売れることはまちがいない。

◆「観音(くわんのん)」 水原紫苑 河出書房
   まだ文芸書ということしかわからないが、ほぼ歌集だと思う。
   歌集だったら久しぶりだから10冊位売れるはず。


[#03] 「販売情報(仮題)51号」は7月23日に発行しました。

   P.01 「たいへんよく売れた本:最近1年間のTOP10」
        1位は吉本隆明著「父の像」65冊だった。
   P.02 「かなりよく売れてる本」
   P.03 「わりとよく売れてる本」
      「無気力読書の会(仮称)へのお誘い」
   P.04 「平凡社の本の販売ランキング」
        平凡社の営業部がくれた、売上げカードによる販売データ
        を見たら、三月書房は全国で405位、京都府で14位と
        いう好成績だった。これは少し良すぎるから、おそらく、
        もっと売っているにもかかわらず、売上げカードを送付し
        ていない書店がたくさんあるのだろう。うちは全国で千位
        以内なら上出来だと思う。
      「e-mail版三月書房販売速報(仮題)の宣伝」

   ※毎度お知らせしていますように、紙の「販売情報(仮題)」は、
    料金受取人払いの封筒または、切手を貼り宛名書きをした封筒を
    お送りいただいた出版社様に限り、ご購読を受けつけております。


[#04] 海越出版社が潰れた

   日販が7月29日に、ファックスで倒産のお知らせを流してくれた。
   こういうお知らせをもらったのは、覚えている限りでは初めてだ。
   5月〜7月に出版された3点に限り返品可能となっているが、うちに
   は新刊も旧刊も在庫がなかった。この出版社は、宮城谷昌光の直木賞
   で有名だが、それ以外の仕事はほとんど記憶に残っていない。
   

[#05] いわゆる「2000年問題」について (その2)

   NTTやドコモの正社員(ただし守秘義務でとぼけてるかもしれない)
   を含む、いろんな知り合いにたずねてみたが、まだ出版業界に限らず、
   ほぼ誰一人問題にしていないようだ。京都府だか市だかが用意した、
   中小企業向け融資の申し込みもゼロだと新聞に書いてあった。
   この問題を知っている人でも、コンピュータだけの問題だと思ってい
   て、埋め込みチップのせいで、インフラが崩壊する可能性があるとは
   思っていないようだ。

   さるサイトで読んだところでは、アラビア方面の石油基地の対策は、
   確実に間に合わないらしい。インドネシアも同じだろう。
   原子力発電所を安全のために止めるとしたら、1ヶ月前には最終決定
   しなくてはならないから、それが発表されたら、やっと世間も少し騒
   ぐかもしれない。なお、すべての原発を止めても、冬季の電力は不足
   しないそうである。

   最悪の場合はどうしようもないが、石油ショックのきついやつ程度を
   想定して、準備をしておいたほうがよいのではと思う。書店として考
   慮すべきことを、順不同にリストアップしてみたが、まだいまのとこ
   ろは、お笑いで済む程度のことしか、実行する気にはならない。

    ▼新築や大改装は来春の無事を確かめてから。
     工事の途中に年を越すのはこわい。
    ▼POSや万引き防止装置などを、新規に導入するのも来春以降に
     したほうが無難。クルマの購入も同様。
    ▼年末に向けて返品は早い目にしたほうがよい。
    ▼年末の支払いも早い目にすます。
    ▼年末に向けてお釣りは多い目に、早い目に準備する。
     ※アメリカの赤十字が、1週間分の現金を小銭で持つようにと奨
      めているが、日本でも皆がそうすれば硬貨が不足になる。
    ▼包装紙、ブックカバー、レジ用紙などは早い目多い目に準備する。
    ▼多額の売り掛けを来年に回さないようにする。
    ▼1月以降売上げが激減する可能性を織り込んで資金計画をたてる。
     ※早ければ12月の売上げも激減する可能性がある。
    ▼来春以降の新刊予約を受けるときは確約しない。
    ▼少なくとも元日は休業して様子をみる。
    ▼万一の場合の、テナント料や取次との契約などをチェックしてお
     く。

   この項は今後も適時追加します。
   
   それにしても、物置にしまってあった謄写版セットを、今春、ガリ版
   研究家で「謄写技法」発行人の、坂本君に寄贈してしまったのは、早
   まったかもしれない。ワープロもコピー機も使えなくなったら、ガリ
   版が復権するのは確実だから。


[#06] 「図書館で八百長リクエストをする会(仮称)」その後

   この「販売速報(仮題)」の読者の皆様には、別冊として送信しまし
   たが、お読みいただいたでしょうか。「図書館で八百長リクエストを
   する会(仮称)」というのをでっちあげてみましたが、どうも会名に
   八百長とつくのが評判悪いようです。そこで、相撲協会にならって、
   「無気力読書の会(仮称)」と改称してみました。
   詳しくは、8月中に送信予定の「〜通信02号」をお待ちください。

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三月書房販売速報[016]  
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1999/08/18 [01-13-16]  SISIDO,Tatuo      

    e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 016号

                      
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[#01] 最近売れてるような気がする本

◆「日本の無思想」 加藤典洋 平凡社新書
   この本は平凡社新書の中でも売れ行きがよいほうだったが、その内容
   のおもしろさが書評などで知られるにつれて、さらに売れている。
   それにしても、いま普通に使われている、「タテマエとホンネ」とい
   うことばが超新しくて、1970年代に現れたばかりだというのは、
   実に意外だった。

◆「戦争妄想論」 宮台真司ほか 教育史料出版会
   うっとうしいから歴史の見直し論争関係は、この本を含めてほとんど
   読んでいないが、よーするに、両方とも閉塞した国民国家主義者でし
   かないのだろう。「自虐史観」のひとたちは、南京大虐殺と同じ基準
   では、中華人民共和国による、チベット侵略と大虐殺を批判しないし、
   「皇国史観」の人々がいう日本古来の伝統とは、その歴史観を含めて、
   そのほとんどが明治初期に起源を持ち、昭和20年に破綻した短期的
   なものでしかない。
   こんな不毛な論争を読むよりは、網野善彦の社会史を読むほうが、少
   しは開放感があり、少しは未来の展望も感じられるように思う。


[#02] これから売れそうな気がする本

◆「辻まことセレクション(全2冊)」 平凡社
   14号にみすず書房から3巻本の全集が出ると書いたばかりだが、平
   凡社ライブラリーからも、さらに2冊出ることになった。現在、辻ま
   ことの本は、わずかな単行本を別にしても、ちくま文庫2点、平凡社
   ライブラリー1点、小学館ライブラリー2点とたくさん出ている。
   ここに平凡社の2点がさらに加わるとなると、みすずの全集の詳細は
   不明だが、よほどめずらしいものがなければ、さすがに売れ行きが落
   ちるかもしれない。

◆「CDブック*土方巽」 アリアレコード
   このCDブックが出ていることを知ったのは、「現代詩手帖8月号」
   に載っていた「ぱろうる」さんの広告だった。連絡先も「ぱろうる」
   さんの筋から教えていただき、直接仕入れることができた。教えても
   らったからほめるわけではないが、この広告にはいつも注目しており、
   たいへん役に立ちます。正直なところ、「現代詩手帖」で必ず読むの
   は、自社広告とここだけといってもいいくらいだ。えらそうなことを
   いわせてもらえば、この広告と、紙の「三月書房販売情報(仮題)」
   とを読んでいれば、現代詩と現代短歌の売れ行き良好書の、ほぼ8割
   くらいは把握できるのではと思います。俳句はほとんどわかりません
   が、いったい、どこの書店でよく売れているのでしょうか。
   なお、このCDの紹介は「アンボス・ムンドス2号」に、少しくわし
   く載ってます。

◆「ケガレ意識と部落差別を考える」 辻本正教 解放出版社
   まだ出たばかりで、ほとんど売れていないが、画期的な本だから、こ
   れから売れるだろう。京都部落史研究所の本や、阿吽社の本などを読
   んでいる人には常識だが、「近世政治起源説は嘘っぱち」とはっきり
   書いた本を、解放同盟の中央執行委員が解放出版社から出すとは、一
   昔前なら考えられなかったことだ。さらにこの著者は、「SAPIO
   08/25号」で井沢元彦と対談しているが、これも画期的なことである。
   井沢氏の言霊論などは、一部で評価されていたものの、「自虐史観」
   派の人たちなどからは、ボロかすに言われ続けていたからである。

◆「三角寛選集:全6巻予定」 現代書館
   来春の予定だが、ついに三角寛の著作が復刊されることになった。著
   者自営の母念寺出版が、著者の死去とともに活動停止して以来、遺族
   の意向で、25年以上にわたって新刊屋では入手不能だった。だから
   「サンカ社会の研究」や「〜資料編」は、古書店の目玉商品として、
   版によっては数万円の値段がついていた。
   この本が出た当時のことは知らないが、1960年代末に、ばか売れ
   したのは、当時の大ベストセラーだった、「共同幻想論」の参考文献
   に挙げられていたからである。なお、現在の角川文庫版では、この参
   考文献リストが省略されている。今なら吉本よりも、怪奇小説のネタ
   本として探しているひとのほうが多いだろう。

◆ お詫び:
   第15号のこのコーナーに「世間論序説 阿部謹也著 朝日新聞社刊」
   を取り上げて、「入荷さえ順調なら、売れることはまちがいない」と
   書きましたが、無事入荷した現物を見たら、92年刊の「西洋中世の
   愛と人格」の副題と書名を入れ換えただけのものでした。元版は品切
   れではなかったから、300円強安くなっただけくらいでは、ほとん
   ど売れそうにない。
   どの新刊案内を見て発注したのかは忘れたが、改題とは書いてなかっ
   たので、うっかり新刊だと思ってしまったようです。まあ、買い切り
   ではないからいいようなものですが。


[#03] 日販のNDCが営業時間を延長した

   NDCは8月から、すべての土曜日も平日と同様の営業をすることに
   なった。従来は第2と第4土曜が完全休日で、その他の土曜も2時ま
   でだった。流れとしては、いずれは完全週休2日に向かうのだろうと
   思っていたから少し意外だった。ただ、ほぼすべての書店にとっては、
   週休2日制など考えられない状況だから、取次としては、当然のサー
   ビスのような気もする。それに、聞くところによると、日販の業績も
   ちかごろよくないらしく、出版社への支払いを、突然日延べしたりも
   してるようだから、少しでも売上げを伸ばそうとしているのだろう。
   NDCには、ほぼ毎週仕入れに行くが、ちかごろ、なかなか新刊の品
   揃えが豊富で収穫が多い。


[#04] いわゆる「2000年問題」について (その3)

   ぼちぼち本も出ているが、まだ目立っては売れていないようだ。
   今までに手にとってみた本は下記の通り。

 ★01★ 「Y2K」最新最終情報
             越智洋之&足立晋著 三五館 発行日99/04/30
      この本の著者二人が、いまのところ日本における代表的な人た
      ちらしく、さすがに恐ろしいことが、かなりの説得力をもって、
      くわしく書かれている。出してくれる出版社を見つけるのに、
      半年近くかかったらしい。

 ★02★ 2000年問題のほんとうの恐ろしさ 
                深野一幸著 東京書籍 発行日99/03/27
      まとな本と思って読んでいたら、ノストラダムスなどの<大予
      言者>たちが予知していた世紀末の大破局とは、この問題のこ
      とだった、というようなことが最後に書いてあった。東京書籍
      が、こんなトンデモ本を出す出版社だとは知らなかった。

 ★03★ 2000年問題のすべて
            野辺名豊ほか著 PHP研究所 発行日99/07/26
      上記2冊に比べるとかなり押さえ気味だが、大丈夫とはいいき
      れないから、少しは準備も必要であろうという雰囲気の本。

 ★04★ 本当の「2000年問題」 
             越智洋之[監修] 青春出版社発行日99/08/20 
      01の本と同じ傾向で、少し新しい情報も加えて簡略に書かれ
      ている。

 ★ほかには、日本実業出版社のムックが出ていたが、ちらと立ち読みした
    だけで読んではいない。
    また、今月の20日発売の文春新書に1冊予定されている。


 ※ 「八百リクの会」からのお知らせ

   お待たせしていますが「図書館で八百長リクエストをする会(仮称)」
   の通信第2号は、何とか今週中には送信できると思います。

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三月書房販売速報[017]  
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1999/09/07 [01-14-17]  SISIDO,Tatuo      

    e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 017号

               改訂増補版  ver.1.01(99/09/15)
                      ver.1.02(99/09/20)
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[#00] お知らせ 人文書院HPにて連載コラムはじめました

   人文書院のHP http://www.jimbunshoin.co.jp/で読めるネット冊
   子『読書メイトじんぶん』の創刊号から、《京洛・寺町通信》という
   コラムを連載することになりました。すでに第1回目がアップされて
   いますから見に行ってください。このタイトルは編集部がつけてくれ
   ました。月刊の予定です。メルマガと違って、HPマガジンを定期的
   に見に行くのはめんどくさいですが、バックナンバーも保存公開され
   るようですから、ときどきチェックしてください。

 [#00.01]となりのページに、福嶋聡君(ジュンク堂 仙台店)の「本屋と
   コンピュータ」の連載もあります。


[#01] 最近売れてるような気がする本

 ◆「私の<戦争論>」 吉本隆明(聞き手・田近伸和) ぶんか社

   この本が出ることはまったく知らなかった。版元さんのはなしでは、
   「ペントハウス」の9月号に広告が載ったらしいのだが見落としたよ
   うだ。もっとも、いま見直してもまだ見つからないから、よほど目立
   たない広告だったのだろう。もっともあの雑誌の中で目立つのは至難
   だが。それにしてもかなりの緊急出版だったらしく、事前のインフォ
   メーションはほとんどなかったらしい。そーいうわけで、事前予約は
   できなかったが、日販の配本係の配慮で、普通ならゼロの新刊配本を
   10冊にしてくれたから、発売日に出版を知ることができた。さらに
   その係りの人が追加を30冊を手配してくれて、それも翌朝入荷した
   から、結果はオーライだった。日販でも係りの人によっては、ここま
   でやってくれることもある。
   この本は、最近の<吉本>本のなかではとくに出足がよく、10日目
   までで23冊売れた。内容も、最近のインタビューもののなかでは、
   かなり元気なほうだと思う。

 ◆「書に通ず」 石川九楊 新潮社
   発売日に予約数が満数入荷し、売れ行きも順調で、早くも10冊を越
   えた。どの本もこうだと楽だが、すぐに何十でも思いつく理由によっ
   て、なかなかそううまく行かないことは言うまでもない。

 ◆「いろいろずきん」エランベルジェ原作 中井久夫文・絵 みすず書房
   中井久夫さんが挿し絵まで描いた絵本。まだ文は読んでいないが、挿
   し絵の雰囲気はなかなかよい。ファンが多いから10冊くらいは売れ
   そうだ。

 ◆「別冊太陽:100冊の絵本」 平凡社
   半年以上前に出たものだが、コンスタントに売れていて現在十数冊。
   別冊太陽の骨董もの以外がよく売れるのは、最近ではめずらしい。


[#02] これから売れそうな気がする本

 ◆「万葉の月」栗木京子 柊書房
   先週入荷済み。「綺羅」に続く第4歌集。今までの歌集の売れ行きか
   らすると、これも数十冊は売れるはずだ。

 ◆「僕なら言うぞ!」 吉本隆明 青春出版社
   9月中旬刊行予定。今年の<吉本>本は出版過剰になりつつあると思
   うのだが、それでも平均部数は売れるだろう。

 ◆「南天堂:松岡虎王麿の大正と昭和」 寺島珠雄 皓星社
   昨日入荷済み。先日亡くなったこの著者の本は、もともとたいして売
   れないから、あまり期待はしていなかったのだが、実物を見るとたい
   へんによい本だった。中身はまだ読んでいないが、装丁や帯の雰囲気
   が最高である。松岡虎王麿という人は知らないが、うちで人気のある、
   辻潤、辻まこと、きだみのるなどともつきあいがあった人で、書店も
   経営していたらしい。この本はかなり<八百リク>向きだと思う。

 
[#03] 京都にもついに千坪級の超大書店がオープンの予定

   毎日新聞9月1日号によると、京都駅前の京都近鉄百貨店は、来春、
   6階の書籍売場を現在の約630平方米から、ほぼワンフロアの約5
   200平方米に拡張するとのことである。5200平方米といえば、
   約1575坪にもなるから、少し広すぎるような気もするが、調整し
   たとしても千坪を軽く超えるのはまちがいない。
   京都近鉄百貨店は、構造不況の百貨店業界の中にあっても、とくに売
   上げの下落が目立ち、親会社が近鉄でなければ、とっくにつぶれてい
   ても不思議ではなかった。現在の書籍売場は95年に拡張し、京都一
   (<ただし百貨店では>と小さくつけ足してある)の売り場面積がう
   たい文句だった。ここと食堂街だけは閉店時間の延長をしたりして、
   力を入れているようだったから、何らかの手応えがあってのことだろ
   う。テナント書店の名前は忘れたが、旭屋や駸々堂ほどは有名ではな
   い、大阪の書店だったような記憶がある。

 [#03.01]この書店については、数人のかたがメールをくださいました。
    現在の店名は「近鉄ブックセンター」。東京・八王子に本部を置く、
    くまざわ書店系のブックスイケダチェーンで、本社名は「カルチェ
    イケダ」、店名は「ブックスいけだ」「ブックスイケダ」で60店
    舗以上の全国展開をしているとのことです。また、「トーハンの別
    働隊」とか「トーハンの半ば傀儡書店」とかいわれているようで、
    あまり品揃えなどの評判はよくないようです。

 [#03.02]くまざわ書店ではなくて、紀伊国屋書店が出てくるかも、という
    うわさもあるようです。

   京都駅前ではアヴァンティブックセンターが有名だが、かなり客を取
   られるだろう。アヴァンティと近鉄百貨店の交通の便は、JRと地下
   鉄はほぼ互角で、近鉄奈良線はアヴァンティが圧倒的に有利。一方、
   市バスは圧倒的に近鉄百貨店の方が便利という感じである。アヴァン
   ティは、京都市内よりも、近鉄奈良線やJRのびわこ線、奈良線方面
   からのお客に強いといわれているが、近鉄百貨店はまず京都市内のお
   客を集められるかどうかが問題だろう。

   同じ京都駅前では、ふたば書房が駅地下専門店街キューブのテナント
   (約130平方メートル)を撤退し、京都タワービルの3階に進出す
   ると報道されている。10月中旬オープンで、660平方メートル、
   約20万冊を揃え、年間売上げ4億円を目指すそうだ。京都タワービ
   ルは、通天閣のようなキッチュ性もない、安っぽいタワーの土台部分
   で、もとは観光客相手の土産物店などが入っていたが、ポルタ地下街
   や新しい駅ビルの完成とともに、寂れる一方だった。現在2階には百
   円均一ショップが入っているが、こんなぱっとしないビルで、中途半
   端な広さの書店を出しても大丈夫なのだろうか。専門書など一切置か
   ず、通俗路線に徹すれば何とかなるかもしれないが。

   なんてえらそうなことを書きましたが、いつも言っていますように、
   大型書店の経営については、まったくシロウトなので、ぜんぜんあて
   にはなりません。

 [#03.01]ついでながら開業2周年の京都新駅ビル周辺の状況は、最近の新
    聞などによれば、書店のない伊勢丹は健闘しているが、ふたば書房
    が逃げた駅地下キューブは前年比ふた桁の下落、駸々堂があるポル
    タ地下街は大拡張の効果が少なく微増、アヴァンティは改装効果が
    現れているとのことだが数字は不明、ふたば書房京都駅店がある近
    鉄名店街はかすんでしまって記事にもならない。また、駅ビル3本
    柱のひとつだったシアター1200は、吉本興業とジャニーズ事務
    所が逃げたため、貸し劇場になったが、集客力は激減確実らしい。
    

● おことわり 
 
   このメールマガジンは、あくまでも出版業界向けに制作しています。
   最近お申し込みが増えている、業界関係者以外の読者も歓迎してはお
   りますが、内容につきましてはなんら配慮しておりません。業界用語
   など意味不明の部分がおありかと思いますがなにとぞご容赦ください。

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三月書房販売速報[018]  
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1999/09/27 [01-15-18]  SISIDO,Tatuo      

    e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 018号

                      ver.1.01(1999/10/25)
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[#00] 三月書房ホームページ開設のお知らせ

   http://web.kyoto-inet.or.jp/people/sangatu/

   とにかくやっと仮アップに成功しました。
   ほぼ全ページ準備中で、字ばっかりのあいそのないしろものです。
   2000年問題が無事に過ぎたら、ホームページビルダーでも買って、
   もう少し見栄えをよくしようと思っています。
   字を並べるだけでも、メールの10倍ほどめんどくさいので、なかな
   か更新する気になりません。当分は、パソコンと妙に相性がよいらし
   い、シュタイナー関係あたりを中心に、手入れをしていく予定です。
   気が向かれたらリンクしてください。


[#01] 最近売れてるような気がする本

◆「僕なら言うぞ!」 吉本隆明 青春出版社
   続けて出すぎではと思ったが、あまり影響はないようで、順調に売れ
   ている。
    

◆「南天堂:松岡虎王麿の大正と昭和」 寺島珠雄 皓星社
   予想以上に出足がよく、すでに5冊を越えている。年内に10冊は売
   れるだろう。
    [#01/01]予想以上に順調で、すでに10冊ほど売れた。年内にあと
        5冊は売れるだろう。清岡卓行の新潮社の新刊や、辻潤の
        講談社文庫、みすずの辻まこと全集などとも関連があるか
        ら、このあたりが年末の売れ筋のひとつになるだろう。

◆「万葉の月」栗木京子 柊書房
   予定どおり順調に売れている。

◆「下等百科辞典」 尾佐竹猛 批評社
   犯罪関係の隠語辞典。この手の本は根強い人気があり、地味に長く売
   れる。この本は、宮武外骨なんかと同じ時代のものだから、当然復刻
   版だろうと思ったが、新聞連載を初めて単行本にまとめたものだった。


[#02] これから売れそうな気がする本

◆「春日井建歌集:白雨」 短歌研究社
 「道浦母都子歌集:青みぞれ」 同
 「伊藤一彦歌集:日の鬼の棲む」 同
   例年9月〜10月は歌集の新刊が目立って多い。この3点も5冊前後
   は売れるだろうが、短歌研究社は日販の正味が89と、やたらに高い
   ので別の出版社から出してほしかった。
   [#01/01]春日井と道浦は出足がよいが、伊藤はよくない
   
◆「女性の社会的地位再考」 網野善彦 神奈川大学評論
   網野善彦も過剰出版の傾向があるが、これはブックレットだから、た
   くさん売れるだろう。このブックレットは新シリーズだが、河合や作
   陽のと似たタイプのようだ。
   [#01/01]予想に反してまだちっとも売れない。なぜでしょうか。
   
??売れるといいけどあまり期待はできないような気がする本
◆「色彩論 完訳版」ゲーテ著高橋義人ほか訳 工作舎
   ゲーテの自然科学は、現代のアカデミズムからは非科学的だと無視さ
   れているが、シュタイナーや三木成夫が高く評価したために、両者の
   熱心な読者には必読文献となっている。現在簡単に入手できるのは、
   潮出版のゲーテ全集の中の1冊と冨山房百科文庫くらいしかないが、
   うちではどちらもロングセラーだ。岩波文庫にも「色彩論」があるが、
   現在は品切れになっている。この3点で読める「色彩論」は抄録だか
   ら、本邦初の完訳で訳者も一流となれば、楽勝で売れそうなものなの
   だが、問題は定価が高いことである。まだ現物を見たわけでないから、
   高すぎると断定はできないが、単行本1冊で25000円というのは、
   なかなか売れる値段ではない。10000円くらいなら、年に数冊は
   確実に売れるのだが。買い切りだと仕入れるのがたいへんだが、委託
   なら在庫したい。
   [#01/01]予約が1名入った。

[#03] 年間でもっとも売れないのが9月である

   93年から98年までの、店頭現金販売のデータを計算してみたとこ
   ろ、一番ひまな月は9月だった。平均を100とすると、最高の12
   月が124.3で、最低の9月が88.9。今年の9月もデータ通りひまだが、
   それでも今のところは、昨年よりも少しはましのようだ。
   このデータによると、一般的にはだめといわれている、2月と8月は、
   それぞれ97.6と98.2だからそれほど悪くはない。下から2番目は1月
   の89.0だが、これは4日まで休むから、営業日数がほかの月よりも少
   ないためである。9月に限らず、10月と11月もさえないから、秋
   は春に比べると、なぜかだめみたいな傾向があるようだ。
   このデータの詳細は、近日発行の出版社向け限定配布の「(紙の)三月
   書房販売情報(仮題)第52号」に載せる予定です。


[#04] いわゆる「2000年問題」について (その4)

   9月15日の京都新聞によると、いよいよ日本政府も、10月末ごろ、
   2〜3日分の食料や飲料水の備蓄を、国民に呼びかける予定とのこと
   だ。おぶちさんのいうことを聞く人がどのくらいいるかは不明だが、
   テレビでみのもんたが呼びかけたら、たちまち日本中が買いだめに走
   ることだろう。

   それでもまだ今のところ世間は静かなものだ。しかし、少しにぎやか
   になる兆しがないでもない。おいしいとこだけ食い散らかして、さっ
   さと逃げてしまう、ブーム便乗男の津村喬が、「Y2K関西情報セン
   ター」代表世話人と称して、週刊プレイボーイでコメントしたり、洋
   泉社から「<2000年危機>から身を守る本」とかいうのを出した
   りし始めたからだ。この人は、60年代の文化大革命便乗本から始まっ
   て、差別問題だの、自然食だの、東洋体育だの、人智学協会だの、宮
   沢賢治だのと、ブームに便乗する才能だけは、確実にあるようだから。

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三月書房販売速報[019]  
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1999/10/25 [01-16-19]  SISIDO,Tatuo      

    e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 019号
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[#00] ちょっとお久しぶりです

   いろいろ忙しくて、前号発行以来一カ月ぶりになってしまいました。
   定期的に発行すると約束したことはありませんが、月1回では、や
   や「速報」の名に恥じるような気がしますから、月に2回は無理と
   しても、2カ月に3回くらいのペースを何とか維持したいと思いま
   す。なお、この号は[#03]が超長くなったので、ほかのコーナーは
   簡略にしました。


[#01] 最近売れてるような気がする本

  ◆「道浦母都子歌集:青みぞれ」 短歌研究社
  ◆「竹中労・無頼の哀しみ」 木村聖哉著 現代書館
  ◆「倚りかからず」 茨木のり子 筑摩書房
  ◆「吉増剛造詩集」 文庫版 角川春樹事務所


[#02] これから売れそうな気がする本

  ◆「女は存在しない」 中沢新一 せりか書房
  ◆「諸怪志異3」 諸星大二郎 双葉社
  ◆「地図のない道」 須賀敦子 新潮社
  ◆「岡本太郎の世界」 齋藤眞爾編 小学館 
  ◆「モロッコ流滴」 四方田犬彦 新潮社
  ◆「雑草物語」 大島弓子 角川書店
  ◆「友の書」 春日井建 雁書館


[#03] 出版業界のこわい話

   「本とコンピュータ:99秋」に載った小田光雄さんの文によると、
   八十年代から続いた書店の出店バブルによって、書店市場は債務超
   過状態におちいっている。そして、取次全体の書店に対する売掛金
   が推定六千億円あるにもかかわらず、書店の総在庫は五千億円未満
   しかない。すなわち取次業界は、膨大な不良債権を抱えている可能
   性が高いとのことです。また、同氏は「新文化 10/21号」紙上で、
   2大取次の不良債権は2600億円とも言っておられるようです。
   
   金額はともかくとして、膨大な不良債権の存在が事実だとすると、
   ノンバンクの一種といえる取次の金融部門は、住専などと同じコー
   スを、数年遅れでたどっているということになるでしょう。この数
   年遅れというのは、書店の出店バブルが、むしろ、世間のバブル崩
   壊後に、テナント料の低下などによって、拡大したことを考えると、
   時間的にも一致します。いわゆるバブル経済の崩壊過程でわれわれ
   が学んだことは、不良債権を先送りすればするほど、傷が深くなる
   ということです。
   
   ここ何年も書店業界の売上げは低迷したままであり、いつまでたっ
   ても不良債権を解消できそうにはありません。おそらく、取次の決
   算は、住専などがやったように、不良債権や灰色債権を、正常債権
   に見せかける、粉飾すれすれの経理操作を何年も続けていることで
   しょう。それに、取引先の問題ばかりではなく、自らも膨大な設備
   投資資金を借り入れているでしょうから、神風でも吹かないかぎり
   は、もう先送りも限界に近づいていると思われます。先日も某大取
   次が、出版社への支払日を、突然ジャンプしたという噂をチラと聞
   きました。
   
   それと、もうひとつこわいのは、書店の在庫が五千億円あるとは言
   えども、実はこれが再販制によって保証されているだけの、お寒い
   金額でしかないということです。
   編書房の「<出版>に未来はあるか」を読むと、再販制によって本
   は偽金化していて、有価証券と同じような意味を持つようになって
   いると、永江氏が指摘されています。
   よーするに膨大な不足が発生しているとはいえ、それでもまだ五千
   億円はあるはずの在庫が、もし再販制がなくなれば、たちまち、大
   幅に目減りしてしまうことを意味します。
   
   もし再販制がなくなると決まれば、五千億円の<有価証券>が大幅
   に目減りする前に、出来る限り速やかに換金することを、すべての
   書店が考えるでしょう。この換金とは、早い話が返品です。そして
   取次も、<有価証券>が値崩れする前に、不良債権の処理をしない
   と、さらに傷が深くなりますから、入金不足の書店から商品を引き
   上げて換金することになるでしょう。五千億円分すべてが返品可能
   ではないでしょうが、それにしてもぞっとする話です。もちろん業
   界を挙げて、<有価証券>としての価値を維持するために、非再販
   下でも無理矢理委託制を残そうとはするでしょうが、再販制に支え
   られていない委託制では、<有価証券>の格付けの大幅な低下は免
   れません。
   
   取次が、不良債権処理の先送りをあきらめ、その処理に追い込まれ
   る外的な要因として考えられるのは、金利の上昇、銀行の資金回収、
   会計監査法人からの意見などが考えられますが、再販制と委託制の
   どちらかの崩壊も、やはり先送り政策の破綻に直結するでしょう。
   
   書店バブルの崩壊と、取次の不良債権処理が、避けられないとした
   なら、どのような事態を招くのでしょうか。いわゆる、ハードライ
   ディングとか、ソフトライディングとかが想定されているのでしょ
   うか。もちろん、取次と書店ばかりでなく、大部分の出版社もまた
   無事で済むことはありえませんが、読者層はほぼそのまま残るので
   すから、どんな形になるにせよ、出版業界の再建はあまり時間がか
   からないとは思います。それなら早いとこ一度潰れたほうがすっき
   りするかもという気がしないでもありません。
   
   うちの場合は、取次にも銀行にも借金がないので、何があろうとも
   直撃だけは避けられるとは思うのですが、業界そのものが崩壊して
   しまえばどうしようもありません。となるとできるのは、破局に備
   えて返品を増やすくらいのことだけしかありません。<有価証券>
   が不良在庫に化けたらたまったものではありませんから、在庫の質
   の平均を上げつつ、総量を減らす必要があるでしょう。もう手遅れ
   かもしれませんが、うちの返品率は世間よりも1割半ほど低いので
   返品を増やす余地は充分にあるはずです。
   
   小田氏は先の「新文化」紙上で、1年間は新刊を発行せず、それで
   生き残れる出版社と書店だけで、再スタートすればいいと述べてお
   られます。そんな相談が業界としてまとまるわけはありませんが、
   もしも、例の2000年問題が、最悪の展開になれば、否応なしに
   1年間くらい出版活動が停止するでしょうから、そのときは、案外
   結果オーライになるかもしれません。
      
   それにしても、どうやら2000年代の初頭は、動乱の予感がして、
   こわいもの見たさで少しわくわくしないでもありません。
   まさか、あと10年も20年も、この再販制と委託制と超低金利に
   支えられた書店過剰状態が続くとも思えませんが、不良債権がどう
   であれ、出版業界の閉塞状況は、何らかの打開策が必要な時期にさ
   しかかっていることはまちがいないでしょう。
   

[#04] その他のお知らせ

   「OLIVE」10月18日号の京都系特集に載りました。
   本屋はうちと恵文社一乗寺店さんだけです。うちはかなり場違いみ
   たいな感じですが、それでもタダで宣伝していただきありがたいこ
   とです。

   人文書院のHP http://www.jimbunshoin.co.jp/の連載コラム
   「京洛・寺町通信」は10月10日に第2回をアップしました。

   「三月書房販売情報(仮題)52号」を10月20日発行しました。
   常設欄以外では、<ひまなのは何月か?>とか<忙しいのは何時ご
   ろか?>とか<主なシリーズものの定期予約者数>などのデータを
   掲載しました。この情報紙は、返信用封筒をお送りくださった、出
   版社様にのみお送りします。

   次号では、書籍売り場をほぼ1フロア増やしたが、洋書売場が減少
   したらしい丸善、専門書が減少したのではという噂の駸々堂京宝店、
   駅前タワービル3Fで新規開店のふたば書房などの見学レポートを
   掲載する予定です。どうも、東京の版元さんには、その手の情報の
   受けがもっともよいようなのでサービスです。
   

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三月書房販売速報[020]  
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1999/11/15 [01-17-20]  SISIDO,Tatuo      

         e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 20号
                      
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[#00] 三月書房のホームページが東京新聞に紹介されたらしい

   うちのHPはまだ仮オープン中の粗末なものですが、なぜか先日の
   東京新聞に紹介されたようです。それを読まれた、関東在住の昔の
   お客さんが、メールをくださいました。まだその記事を見ていない
   ので、何と紹介されていたのかはわかりませんが、今のところ、反
   響はその1名だけです。
   
   そのHPは毎日少しづつコンテンツを増やしているので、少し中身
   が濃くなってきたような気がします。それでも、まだ300KB弱
   しかありません。プロバイダの無料サービスの500kB一杯にな
   るまで詰め込んでみて、それからぼちぼちと整理しようと考えてい
   ます。
   
   この「E-mail版 三月書房販売速報(仮題)」は、ちかごろ購読者が
   増えて、直送分だけで150名近くになり、新規読者のバックナン
   バー希望に応じるのが、ちょっとめんどうになってきました。
   そこで、バックナンバーを合冊にしたページを作ってみましたから、
   お暇な方は読んでみてください。現在10号までアップ済みですが、
   何しろ「速報」なので、かなり気が抜けてしまっているようです。
   

[#01] 最近売れてるような気がする本

 ◆「倚りかからず」 茨木のり子 筑摩書房
    朝日はずっととっているが、「天声人語」というものを読む習慣は
    まったくない。それにしても、「いかなる権威にも倚りかかりたく
    ない」という詩の本を、「天声人語」がほめたから買うという行動
    はかなり漫画だと思う。そういうことを気にしない人たちが買うか
    らこそベストセラーになるのだが。
    この本の初版は5000部だから、谷川俊太郎以外は、よくて4桁
    の前半、2桁もざらという現代詩としては破格の部数だが、それで
    もこんなに売れるとは予定していなかっただろう。うちは初版を5
    冊仕入れてごく普通に売ったが、そのあと完全に品薄になり、10
    日すぎに追加がまとめて入るまでは、予約者の分を仕入れるのがやっ
    とで、店売分はずっとないままだった。現在は、よほど大量に重版
    したらしくて、どこの書店も詩の本とは思えない馬鹿積みをしてい
    る。この勢いで、大ベストセラーになるか、尻すぼみになるかは、
        20日までの1週間がひとつの山だろう。

 ◆「地図のない道」 須賀敦子 新潮社
    発売日に無事10冊入荷してくれたので、1冊の売り損ねもなく、
    順調に売れている。いつもこうだといいのだが、どこの出版社の場
    合も、百ほどある理由により、なかなかそううまくはいかないとい
    うことについては、いまさらいうまでもないだろう。このフレーズ
    は前にも使ったことがあるような気がするが。

 ◆「自分の頭と身体で考える」 養老孟司&甲野善紀 PHP研究所
    入荷状況がよくなかったので、出足がよくなかったが、在庫が3冊
    以上になって、やっと調子が上がってきた。3冊というのは、ショ
    ウウインドウと養老孟司の棚と、甲野善紀の棚に各1冊並べるのに
    必要な最少の冊数である。あと数冊あれば新刊コーナーに積むこと
    もできるから、発売日に最低5冊はほしいところだった。
   
 ◆「鬼市:諸怪志異3」 諸星大二郎 双葉社
    諸星氏は一段と筆が上がり、あのつげ義春と池上遼一がアシスタン
    トをしていた、全盛期の水木しげるを抜いたと思われるほどの出来
    映えだ。もちろん手塚治虫や横山光輝あたりは、とっくに抜き去っ
    ていて問題外である。再開後の「西遊妖猿伝」第2部の出来もすば
    らしい。


[#02] これから売れそうな気がする本

 ◆「戦後的思考」 加藤典洋 講談社
 ◆「金輪際」 車谷長吉 文藝春秋
    この2冊が発売日に必要数入荷することはまず考えられない。両社
    とも事前予約を受け付けず、パターン配本ばかりだからだ。うちは
    パターン配本は断っているが、受けていたとしても、0〜1冊のラ
    ンクに違いない。ちかごろは取次の自由になる部数もほとんどない
    から、1週間後に注文扱いで何冊か入ればいいほうだろう。
   

 ◆「ケガレ:差別思想の深層」 宮田登&沖浦和光 解放出版社
    「ケガレ意識と部落問題」も16号で予想した通りによく売れてい
    るが、これもそこそこ売れるだろう。それにつけても、この問題の
    先駆者である横井清さんの全集を、どこかが出すべきだと思うのだ
    が、計画している出版社はないのだろうか。


 [#03] 続・出版業界のこわい話

   前号の「こわい話」につきましては、出版業界の方々からは同意の
   返信をいくつかいただきましたが、さる古書店の知人には「公然の
   事実ではなかったのですか」の一言で片づけられました。本当に不
   思議なのですが、小田氏の本が春に出るまで、大多数の業界人は、
   個々の書店や取次や出版社の経営が行き詰まる可能性には当然気づ
   いてはいたものの、それが業界の崩壊に結びつくような大問題とは
   考えていなかったようです。とくに、書店全体の店頭在庫金額が、
   書店全体の負債額を大きく下回るという試算は、その計算法自体が
   初耳だったのではないでしょうか。もちろん公然の事実であり、筆
   者以外の大部分の方々は、知って知らぬふりをされていた可能性も
   ゼロではありませんが、どうもそうではなかったようです。

   また、永江氏が指摘された、再販制による商品の有価証券化につい
   ては、春に光琳社出版が倒産したころから、やっとその換金能力に
   少し疑問符がつきかけたばかりで、大部分の書店は委託制によりか
   かって、安心しきっていたのではないでしょうか。そのことは、取
   次が倒産出版社の返品入帳についてのルールを初めて明言したのが、
   今夏だったことからも明らかでしょう。

   それにしても、返品条件付き買い切りというのも、よく考えるとお
   かしな取引形態です。再販制があるから成り立っているとはいえ、
   実質的には、以前に問題になったインチキ宝石店の買い戻し保証と
   似たようなものかもしれません。販売した価格で、引き取らねばな
   らない可能性がある出先在庫に対して、その買い戻し準備金を、た
   とえ一部でも積んでいる出版社があるとは思えません。それどころ
   か、返品されてくる可能性のある出先在庫量について、把握してい
   る出版社も皆無でしょう。準備金を積むことが税法上可能かどうか
   はまったく不明ですが。

   その上、さらに恐ろしいことに、先の古書店氏の指摘によると、古
   書価のほうも下落しつつあるそうです。ショタレを古書店に引き取っ
   てもらうさいの、買い取り価格の激安については、一昔前からあき
   らめてはいますが、販売価格のほうも下落しつつあるようです。
   古書価格は、とくに専門書の出版には大きな関係があり、出版社が
   復刊や重版を決める際の、重要な判断材料のひとつになっています。
   かなり古い話ですが、講談社の学術文庫が発足したときに、「源氏
   物語湖月抄」など、古書価格の高い専門書をねらい打ちにして軒並
   み文庫化した話は有名です。
   
   またわれわれ書店も、買い切りの返品不能品を在庫する時には、古
   書価の動向を少しは参考にしています。かっては、古書価が定価以
   上になりそうな本ならば、いずれは必ず定価で売れるという安心感
   がありました。たとえば岩波の個人全集なら、ふた昔以上前までは、
   完揃いなら必ず値上がりしましたから、書店も安心して在庫できま
   したが、いまでは値崩れがはなはだしいので、余分を仕入れる気に
   はまったくなりません。

   結局のところ、先の買い戻し保証の問題や、古書価の値下がり問題
   は、ふた昔以上前のインフレ時代のシステムが、現今のデフレ経済
   に合致しなくなったことのひとつの現れでしょう。それゆえに、出
   版業界としては、デフレ時代に適した取引形態を、至急に確立する
   必要があります。もちろん、確立したところで、積み上がった不良
   債権の処理ができるわけではありませんが、これ以上増やさないよ
   うにする助けにはなるでしょう。


[#04] 「ミレー書房」が閉店されました

   今回も[#03]が長くなったので、予定していた京都の書店レポート
   は次号に回しますが、河原町蛸薬師西入にて50年以上続いていた
   「ミレー書房」さんが、11月10日ごろ閉店されたニュースをお
   知らせしておきます。ここは、日本共産党系の書店として有名でし
   たが、近年は政治的な本はほとんど置いておられなかったようでし
   た。店舗は売らずに貸される予定と聞いていますが、本屋以外なら
   何をしてもはやりそうな、市内最高の立地です。

 

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