読書感想文

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小説「ワイン一杯だけの真実」(村上龍)
格言集「人生を一人歩きするために」(村上龍)
格言集「人間というもの」(司馬遼太郎)
漫画「ドラゴンボール」(鳥山明)
エッセイ「夜回り先生」(水谷修)
エッセイ「崖っぷちで踊るやつ、すくむやつ、逃げるやつ」(落合信彦)
小説「インストール」(綿矢りさ)

小説「恋愛写真〜も一つの物語〜」(市川拓司)
小説「淋しい狩人」(宮部みゆき)

教本「日本語ドリル」(齋藤孝)
経済本「決断の株」(長浜流一郎)
小説「蹴りたい背中」(綿矢りさ)「蛇にピアス」(金原ひとみ)
小説「廃用身」(久坂部羊)
漫画「台湾論」(小林よしのり)
エッセイ「器量をつくる」(邑井操)
人生訓「ユダヤ人大富豪の教え」(本田健)

漫画「ブラックジャックによろしく」(佐藤秀峰)
漫画「戦争論3」(小林よしのり)


 本「ワイン一杯だけの真実」(村上龍) ★★★★☆

8種類のワインにまつわる女性達の恋愛。
とても官能的。それでいて物悲しい。村上の表現が絶妙(2004年10月)。


 本「人生を一人歩きするために」(村上龍) ★★★★☆+

下の司馬遼太郎同様、村上の小説の言葉言葉を集めたもの。(2004年10月)


 本「人間というもの」(司馬遼太郎) ★★★★☆+

司馬遼太郎の小説で英雄達が吐いた格言集。
ただそれだけだが、重みがある。読みやすい。(2004年10月)


 漫画「ドラゴンボール」(鳥山明) ★★★★☆

昔途中までしか読んでいなかったがデラックス版でやっと読了。
今までセル編までしか読んでいなかった。しかしまあ、最後はちょっと帳尻あわせに苦労したなって感じが否めない。死んだとか生き返らせたとか、ドラゴンボールで何人生き返るとか、かなり無理があるように感じた。登場人物を増やしすぎて最後はもうごちゃごちゃで意味がわからない。大体死んでも頭に天使の輪がつくだけなら死んでも一緒じゃないか?とか思ったり。面白かったしいいけど。(2004年4月)


 本「夜回り先生」(水谷修) ★★★☆☆+

すごい先生がいると思った。
元々、「ヤンキー〜になる」シリーズなど、この本など本当にすごい人は本など書いて自己顕示をせずに、ひっそりと仕事をしているものだと思っていたが、やっぱり本を読んですごいと思った。水谷先生は夜間学校の先生で放課後=深夜に生徒の見回りに夜の街を歩く生活を何十年もしている。生徒のために自分の小指をやくざに渡したこともあったし、生徒の自殺を助けられなかったこともある。そういうことを切々と書いていてこの人は本当に生徒の幸せを考えて教師をしているのだと思った。おそらくこの本を読むことでいろいろな人が勇気付けられるのだろう。(2004年4月)


 本「崖っぷちで踊るやつ、すくむやつ、逃げるやつ」(落合信彦) ★★☆☆☆

また読んでしまった。突っ込みながらだが^^;
落合信彦の相変わらず若者に書き続けている人生訓。落合は嫌いだが読みやすいので思わず立ち読みしてしまう。いちいち突っ込みを入れながら。(2004年2月)


 本「インストール」(綿矢りさ) ★★★★☆

私のプチ登校拒否で広がった不思議な世界。綿矢リサの表現力は本当にすごいと思った。
何不自由なく日々を過ごす高校生「私」は何もかもが嫌になり、部屋の中のものを全て捨て親に内緒に学校に行かないことを決めた。彼女は同じマンションの小学生と仲良くなりlアダルトチャットの「サクラ」のアルバイトをはじめる。無機的なやり取り。嘘だらけの世界。そんな漠然とした毎日は終わりを告げる。本当にそれだけのストーリーなのだが、作者の表現力は本当に見事。ラストシーンで親が彼女を怒るところや、「私」をサクラだと見抜いたアダルトチャット利用者のシーンでは、今までの無機的な世界からぱっと現実の人とのつながりのある世界に戻されたことが感じられて、読んでいるこちらまではっとした気持ちになった。(2004年4月)


 本「恋愛写真〜もう一つの物語〜」(市川拓司) ★★★☆☆

恋をすると死んでしまう。プラトニックな恋愛小説

広末涼子が推薦していたので読んでしまった。っていうか映画に出演するそうだ。
主人公の大学生誠人(まこと)は、ある日静流(しずる)に出会う。メガネをかけていて魅力的とは言えない女の子だが、謎めいていて、どこか不思議な雰囲気のある女の子だった。静流は誠人に好きだと言うことを告げるが、誠人はグループ内のアイドルに片思いをしていたのだが、彼女との微妙な距離の関係は続く。そして卒業が近づき、彼女は消えてしまう。アメリカに行ったという手紙が届くが誠人はいつの日か彼女は死んでしまったことを聞く。彼女は遺伝的に「誰かを好きになると死んでしまう」病気を持っていたからなのだ、というストーリー。素敵なストーリーだと思ったがどんな病気や?という疑問も。(2004年4月)


 本「淋しい狩人」(宮部みゆき) ★★★☆☆

短編集。殺人事件が起こりすぎのような。
古本屋の店主イワさんの周りに起きる様々な殺人事件を解決していく短編集。宮部みゆきの文体はやはり読みやすい。短編なので、5話ほど収録されているが、そんなにしょっちゅう周りで殺人が起こるか!と少し突っ込みたくなる。しかし仕方がない。(2004年3月)


 本「日本語ドリル」(齋藤孝) ★★★★★

「日本語力」とは、仕事、コミュニケーション、勉強、全てにおいて大切だと思った。
近年日本人にとって低下してきているといわれる、要約力や構成力、説明する力などを鍛える「国語の授業」の応用版。自分が日ごろ苦手な、文を簡潔に要約する力などがやはり不足しているのだな、と感じた。何度も繰り返して読むと、必ず実力がつき、必ず仕事や生活に役立つだろう。いや本当に。(2004年2月)


 本「決断の株」(長浜流一郎) ★★★☆☆

単純明快で分かりやすかった。
株や経済の事をあまり知らないので、教養と将来のための肥やしに読んだ。チャート式で単純。分かりやすかった。(2004年2月)


 雑誌「文芸春秋」
「蹴りたい背中」(綿矢りさ) ★★★★★、「蛇にピアス」(金原ひとみ) ★★★★★−

 最年少受賞で話題になった芥川賞の作品を読みたくて買った。
「蛇にピアス」はアングラ的な内容の作品。
この作品を読んで昔見た映画「バウンズ・koギャル」を思い出した。この映画は若くして将来の希望も夢もない女子校生の前に現れた一人の女の子が、「アメリカに行きたいから今日中に金を作る」と言い、彼女達はその子に協力する、というストーリーだ。夢も希望も目標もなく惰性で過ぎていく毎日の中で、友情や愛だけは拠り所でありたい、と願う彼女達の儚い希望が切なさと感動を誘った。
この作品の主人公「私」も、おそらく両親とは連絡を取っていないだろうし、学校にも行っておらずバイトもしていない。将来が見えず人生を迷走している女の子だ。そしてボーイフレンドのアマもイケも同様だ。しかし彼女は、二人と一緒にいる愛と言えるのかどうかもハッキリしない時間の中に、純粋を求めようとする。
この作品をよんで思ったのは、金原ひとみは僕よりも一回り年下の子であるのに高校中退やパチスロ生活など僕のしたことのないような体験をしていてその体験を基にしてストーリーを作っている。本当にすごい、本当に感性の世界だと思った。

「蹴りたい背中」は高校のクラスで集団行動が得意ではない主人公「長谷川」と同じくクラスでは浮いた存在のオタク少年「にな川」の関係を描いたもの。
にな川は、オリチャンというモデルの大フアンだ。彼の頭の中はオリチャンのことで一杯で、話も、行動もずれてしまう。長谷川は、そんなにな川に少し興味を持つのだが、常にオリチャンの事しか考えていないにな川に対して、嫌悪感、気持ち悪さ、自分の事を見てくれないもどかしさ、怒り、等様々な微妙な感情が生じてくる、というストーリー。
このなんともいえないような感情を見事に描写していて、この子も「すごい!」と思った。掘り下げ方がすごすぎる。僕なら何も考えずに流してきた、普段の些細な感情や情景も全て見事に捕らえている。彼女の作品「インストール」も読んでみたくなった。

どちらのほうが良かったかというと、これはもう好き嫌いしかないと思うが、個人的には「蹴りたい背中」の方が面白かった。「蛇にピアス」は、僕にとっては、スネーク・タン、浮気、タトゥー、SMのような性描写と非日常的な世界が舞台であったのに対して「蹴りたい背中」、舞台は高校で登場人物はクラスメイトだけ、どこにでもある誰もが経験するような、ありふれた日常の風景をものすごく深く掘り下げていたからだ。
ついでに、選考者批評も読んだが、村上龍が描写で「戦慄」凡庸という言葉が使われていて、しかも二度も繰り返されている、
と書いていたが、プロはそういうところに着眼するんだなぁ〜、とびっくりした。僕は本当に素人的に、読み終わった後にカタルシスを感じるかどうかを基準にしていたが。(2004年2月)


 本「廃用身」(久坂部羊) ★★★★☆

立ち読みで3日かけて読破した^^。
 かなり現実味のある未来小説。
主人公の外科医漆原は、リハビリ医療に興味を持つ真面目で熱心な30代の男である。
彼は、寝たきり老人の介護のつらさ、家族のストレスや虐待、そして患者自身の生きていることに対する苦痛、
などの現実を何とかしたいと考えていた。
ある日彼は「いらない手足を切断する方法・切断(amputation)=Aケア」を考え出す。
彼の治療は成功し好評を得たが、マスコミが嗅ぎ付け社会から猛パッシングを受けることとなる。
 この本を読んで、僕も実際に医療に関わっていく人間として、
患者のQOLや家族の幸せなど本当に患者とその家族のためになることは何になるのかを改めて考えさせられた。
 物語の後半で漆原は周囲に非難されてだんだんと追い詰められているが、
そのその時に彼が言った言葉は自分にも多少重なりショックだった。
「老人介護というのは、弱い人を助けたいといっても、自分が圧倒的に優位な立場に立てることが快感なのだ」
「優しさというサディズム」
医療に携わる人間には多少なりとも存在する心理なのかもしれない。ドキッとした人もいるのではないだろうか?
(2003年8月)


 漫画「台湾論」(小林よしのり) ★★★☆☆

この本を台湾人が読んだらどう思うのだろう?
小林が台湾で李登輝前総統に会い日本が肯定的に捉えられていることを聞く。
その後台湾の現状、台湾の歴史、そして将来台湾がどういう道を歩むべきかを書いている。
書いてあることの幾分かは正しいと思う。
日本の統治は台湾にインフラ整備をもたらし、教育を普及させた、というのはそうかもしれない。
戦後台湾に渡ってきた中華民国軍は、日本軍と違って教育が行き届いておらず、野蛮だった、というのもそうかもしれない。
僕らのような戦争中や戦争前後の歴史をあまりよく知らない人間が歴史を知るということはとても大切だと思う。
台湾論で書かれている台湾と日本とのかかわりも、勉強にはなった。
しかし、いくらよい統治をしたといっても、それを台湾人に日本人が説くのは複雑だ。
僕なら、もしアメリカ人が「安保条約のおかげで日本は経済発展した。
アメリカは正しかった」というと、例えそういう側面があるとしても、実際かなりむかつくと思うのだが・・・・。(2003年8月)


 「器量をつくる」(邑井操) ★★☆☆☆

読んで疲れた。
 題名どおりに人間としての器量を作るにはどうすればいいかを説いた本である。
別にこの本が悪いわけでなくむしろ良い事を書いているのだが、正直PHP文庫はもうお腹一杯といった感じだ。
PHPは「人として生きるには〜」とか「魅力的な人間になるには〜」といったテーマが多いが、
何冊も読んでいると、もっと突っ込んだ内容を知りたくなってくる。どうも書いてあることが浅いような気がしてならない。
歴史にしても哲学にしても、だ。まあ、古本屋で100円で買えるし読みやすいからいつも買う僕も悪いのだが^^;。(2003年8月)   


 漫画「ブラックジャックによろしく@〜E」(佐藤秀峰) ★★★★☆

面白い!医療の現状をかなり突っ込んで漫画にしている。

 研修医の斉藤栄二郎が病院で直面する理想と現実の葛藤を鋭く描いている。
現在の医療制度の問題点や矛盾点、医者としてのあり方や患者の尊厳の問題など深く掘り下げていて、
読んでいて色々と考えさせられる。
漫画だからか表現や演出がオーバーだと感じることもあるが、作品のテーマがしっかりとしているので気にはならない。(2003年8月) 


 漫画「戦争論3」(小林よしのり) ★★★★☆

 連載がサピオに移って、「新ゴーマニズム宣言」になってから、
僕は小林が大嫌いだったが、この本は納得できる意見が多かった。
今回のイラク戦争に至るまでのあまりにも卑怯な米英のやり方や、アメリカのあまりにも自分を正義化した姿勢、
国連や国際法を無視して大量虐殺や劣化ウラン弾などを使用しながらも、
何かあると国連やジュネーブ条約を口にする態度、
極端なマスコミ操作、戦争を仕掛けるという前提がまずありきで、イラクにどんどん難癖をつけるやり方。
それらに憤りを感じていたからかもしれない。
この本は、戦前の日本もイラクと同じように、アメリカに陥れられて戦争に進んでいったと書いてある。
多分そうだろう。日本に原爆を落としたのも納得がいく。小林が「歴史を大切にしろ」というのも納得がいく。
あれ?納得いくことばかりではないか?
僕は「新しい教科書を作る会」から抜けた後の小林は少し好きである。(2003年8月)