日本心理学会第60回大会ワークショップ企画・・・その後


「感情と認知の研究の最先端」

おかげさまで、立ち見が出るほどの盛況でした。パッと見渡して、普段顔を合わせる
方以外の参加者が多かったことから、この分野への関心が多方面から寄せられている
ことが伺われました。ご参加くださったみなさん、ありがとうございました。また、
ずっと立っておられた方、入ることができなかった方、ごめんなさい。

ワークショップの概略報告 企画責任者 高橋雅延(聖心女子大学) 司会    川口潤(名古屋大学) 話題提供 ・川瀬隆千(宮崎公立大学)「記憶に及ぼす感情の影響」

 実験のパラダイムとして、実験者が準備した記銘材料の学習−再生手続きを とったものと、被験者の経験に基づいたものとに分け、それぞれにおける感情の 効果の概説、基本的な用語の説明を行った。そして、特に個人的記憶の再生に おける再生事象の分類とその数量的検討に関する問題を指摘した。

・谷口高士(大阪学院短期大学)「認知的判断に及ぼす感情の影響」

 ここでは、理論的枠組みなどは一切抜きで、絵画の印象判断や刺激人物の印象 形成において、被験者の気分がどのように歪みをもたらすかについての実験の 紹介を行った。そして、認知−感情研究は本当に「温かい」のか、また、感情を ポジティブ/ネガティブの2面で捉えることが妥当なのかについて疑問を述べた。

・池上知子(愛知教育大学)「社会的判断に及ぼす感情の影響」

 感情プライミングモデルと感情情報モデルから、感情が情報処理システムの中で 処理される情報の内容を規定するという、機能的役割を指摘。さらに、感情には 外界への反応様式自体を変える働きがあることから、感情の本来の適応的意義に ついて言及した。

指定討論 ・大平英樹(東海女子大学)

 はたして、感情と認知の研究とは新しいものなのか?  感情とは何なのか?  認知−感情研究の今後に可能性はあるのか?  などについて、鋭い視点からの批評を行い、一同をうならせた。 心理学の部屋にもどる


「他者を動かす感情」

 感情の操作が様々な社会的問題(悪質商法など)を引き起こしている現実。
私たち心理学者、特に感情操作の研究に携わる者は、社会的責任として、何を
研究し、声にしていかなければならないのか、考えていかなければなりません。

 「他者を動かす感情」研究会(TUK)は、1995年の対人研でのワークショップ
をきっかけにして生まれました。96年の日本心理学会でのワークショップは、
2回目の活動ということになります。

 この研究会は、様々な領域で研究されてきた感情と行動との関係を、「感情
操作による他者の行動のコントロール」という共通の枠組みで捉え直そうと
いうものです。

ユーモアや不安の喚起、慰めなどの感情操作と、他者の行動のコントロールに
ついての具体的な研究報告を中心に行い、それらを先の枠組みの中に位置づける
方策を探っていきたいと考えています。

TUKメンバーは、以下の通りです。

上野行良(福岡県立大学)、川瀬隆千(宮崎公立大学)、谷口高士(大阪学院短大)、
友田貴子(東京都立大学)、山上真貴子(お茶の水女子大学)、
渡辺暁子(白百合女子大学) (50音順)

ワークショップ概略 ・山上真貴子「悪徳商法と不安」

 「何だか分からないけれど不安だ」「どうしてよいか分からず不安だ」等々、 「不安」という感情の生起には、何らかの「曖昧さ」が関わっている。そして、 誰かが他者を不安によって「動かそう」とするとき、その「誰か」はこうした 曖昧さを操作する。不安の「曖昧さ」という性質がどのように利用されてしまう のかについて、悪質商法という文脈を通じて検討を行った。

上野行良「笑いと対人魅力」

 前回の対人研の前半部分「対人関係におけるユーモアの重視」をすすめた形で、 2つの調査を中心に報告を行った。 1.なぜ笑わせる人が好きなのか(上野, 未発表) 2.笑わせたがる者の対人特性(上野, 1996)

渡邉暁子・友田貴子  「落ち込み」と「なぐさめ」における対人行動

 他者の感情を操作することを意図して他者に働き掛ける行動−その一つとして、 「落ち込み」と「なぐさめ」における対人行動が考えられる。まず第一に、落ち込 んだ人が他者になぐさめてもらいたいが故にとる「落ち込み」の自己呈示。なぐさ めてもらうために、自らの落ち込んだ気分を呈示し、他者の共感を引き出し、「な ぐさめ」という行動を導く。さらに、第二として、落ち込んだ人に対峙した人が、 相手を立ち直らせるためにとる「なぐさめ」という行動。第一の「感情操作」、第 二の「感情操作」それぞれについて、質問紙調査を実施し、その結果を示した。 心理学の部屋にもどる


日本心理学会第60回大会ワークショップ企画

「一般教育としての心理学をどう教えるか」

 −教育理念と実践を心理学的見地から考える−

9月12日(木) 15:30〜17:00  5407室

 ほとんどの大学では一般教育の中で心理学を開講しています。心理学はなぜか 1、2を争う人気科目ですが、一般教育の心理学を受講した学生の大多数は、 その後は二度と学問としての心理学に触れることはないでしょう。特に、テレビや 雑誌で心理学「らしきもの」が広く紹介され、それが心理学だと思っている学生が 多いという現状で、一般教育としての心理学の授業では、何をどのように教えたら よいのでしょうか?   日本心理学会第60回大会では、学生の要求と授業の内容は同じ方向を向く べきなのか、その必要はないのかなど、心理学の授業の目的や実践について、具 体例を交えながら考えていきたいと思っています。  企画推進メンバーは、以下の通りです。 菊池聡(信州大学)、谷口高士(大阪学院短大)、道田泰司(琉球大学)、 宮元博章(兵庫教育大学) (50音順)  ワークショップで私の方から示す資料のデータです。   アンケートの結果を見てみる  昨年のワークショップでは、教官に対するアンケートの結果と  学生の意識の違いを大まかに示しました。今回は、そのときの  学生の回答と、半年(セメスター制なので)の授業を終えた後  の回答の比較を行います。もちろん、私の授業なので、一般化  はできませんが。  #いろいろと反省すべき点も出ているので、公表するのは   恥ずかしいですが(^^;

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