いま考えていること 140(2003年07月;8月;9月)
|
今朝(2003.07.03)の毎日新聞を読んでいて、いくつか目につき私にこの文を書く衝動を迫るものがありました。
インド政府は、14日内閣安全保障会議を開き、米国が6月上旬要請していたイラクへの派兵を拒否することを決定しました。
以上2件、15日付しんぶん赤旗掲載の特派員報告。他の新聞が15日現在取り上げていないのでここに収録。
しんぶん赤旗から
◆18日の参議院外交防衛委員会の公聴会で栗田禎子・千葉大助教授は、外務省がイラクへの軍隊派遣国16の内に数えているサウジアラビアとヨルダンは、両国とも「軍隊派遣とはとらえてない」事を両国大使館への確認のうえ発言しました。なお、外務省によれば「治安維持活動」への派遣国は米、英、デンマーク、リトアニアの4カ国です。
7月28日米国務省バウチャー報道官はイラクでの米軍主導の治安維持活動に日本を含む30カ国が参加の意思を表明したと発表しました。(29日追記)
(8月02日追記)
毎日新聞を読んで
◆パキスタン政府は現時点では米国の要請に基づくイラクの治安維持活動への兵士派遣に応じない方針を固めました。国内で米国のイラク攻撃自体への反発が強いことと米国への協力に消極的な中東各国との関係悪化、イスラム社会での孤立を恐れたためと書かれています。
◆米英軍占領当局が設置した統治評議会とは別個にシーア派の最大派閥の指導者ムクタダ・サドル師は「米英軍による占領は認められない。イラクの全国民によって支持された民主的な政府が必要だ。」現在の統治評議会は「占領軍が拒否権を持っており、フセイン政権の独裁と変わりがない。真のイラクの代表ではない。」として独自に「国民会議」創設を進めています。
(8月07日追記)
◆21カ国とパレスチナ自治政府で構成されているアラブ連盟は5日、13カ国の外相会議を開催し、イラクへ派兵しないこととイラク統治評議会を当面イラクを正統に代表する機関とは認めないことを表明しました。
(9月24日追記)
◆2003年5月ポーランドの有力紙ジェチポスポリタの調査ではポーランド軍のイラク駐留賛成45%反対46%でしたが、8月の世論調査機関CBOSの調査では賛成34%反対61%になりました。ポーランド軍は9月3日イラク中部の治安任務を米軍から引き継ぎ、現在2400人の将兵が駐留していますが、ポーランド兵に対する攻撃もあり、週刊誌『ブプロスト』は「バビロンののろい」と言う記事で「わが兵士は、後頭部にも目が必要だろう」と書いています。以上本日の赤旗岡崎衆史記者の記事から。
◆夕刊によると[ニューヨーク共同]イラク暫定統治機関、統治評議会のチャラビ代表は23日ニューヨーク・タイムズとのインタビューで「評議会側に直ちに財政や治安関係の部分的権限を与えるべきだ」と述べ、また「これ以上の外国軍部隊の派遣は拒否する」と述べたと言います。現在のアメリカの基本路線との食い違いが明らかです。
(9月26日追記)
◆asahi.comによると、国連のアナン事務総長は25日、イラク国内で復興支援に従事している外国人スタッフの規模をさらに縮小し、大半を隣国ヨルダンに退避させることを決めました。米政府は24日、アナン事務総長に「撤収」という言葉を使わないよう圧力をかけたとされます。今回の措置は一時的とはいえ、「事実上の撤収」(国連事務局筋)だとする見方が関係者には強いそうです。
(9月27日追記)
◆アメリカの民主党寄りのブルッキングス研究所に所属しておられた中野氏のアメリカ内部から見た現在の状況を「萬晩報」030927 アメリカと国連で読むことができます。ご一読をお勧めします。
いま考えていること 141(2003年07月)
|
いま考えていること 142(2003年07月)
|
いま考えていること 143(2003年08月;9月;10月)
|
アメリカの空気の変化は、次の発言からも読み取れます。兵士の父親の一人Larry Syversonさん(リッチモンドの環境技師)54才は、 昼食時にリッチモンドの裁判所の前で平和を求めて車の警笛をならそうと運転手達に呼びかけてきたのですが、「イラク戦争中はお前は共産主義者だとか、非国民だとかとなじられたが、今は変わってきた。“兵士の死が増えれば増えるほど警笛を鳴らしてくれる人が増えてきた”」と述べたとワシントンポストは報じています。今後もこの様な動きには注目していきたいと思っています。
来月出版される著書"Winning Modern Wars. Iraq, Terrorism and the American Empire"のなかで、1997年から200年までNATO最高司令官を勤め、次期大統領選の民主党有力候補 Wesley Clark氏は、次のように書いている:「アメリカ主導のイラク侵略と占領は勝利を収められない軍事作戦の完全な例である。」「2001年11月にブッシュ主導のフセイン排除を目的としたイラク戦は5ヶ年にわたる7カ国を対象とする軍事キャンペーンの1部分であることを知った。同月国防総省を訪問したとき、軍幹部からイラクの次はシリア、レバノン、リビヤ、イラン、ソマリア、スーダンだと聞かされた。」「軍の構成にも不必要な危険を持ち込んでいるし、戦後プランも不適切で、不注意にも極めて大事な国際的協力をなおざりにされている。」
"ブッシュ米大統領がイラク占領継続のために求めている、八百七十億ドルの2004年度補正予算案は、議会で厳しい批判に直面しています。支持率も急落し、ブッシュ政権は苦境に追い込まれています。 二十四日の上院歳出委員会公聴会「八百七十億ドルは巨額だが、米国の安全保障に必要な金だ」と言い放ったラムズフェルド国防長官に、民主党の長老バード議員が迫りました。「イラクの復興や民主化を、米国民が政府に求めたというのか」イラク戦争を「大統領の戦争」と呼ぶバード議員。「長期にわたって、高いものにつくこの占領は、避けられないものではなかったと指摘しました。
★米軍の新聞スターズアンドストライプから。「戦争の意味がわからない」という兵士が3割以上、「自分達の志気が低い」と思っている兵士は34%、「部隊の志気が低いと思っている兵士」49%。これに対しマイヤーズ統合参謀本部議長も憂慮の念を表明(ロサンゼルス・タイムズ2003.10.17)。
★ニューズウイークの世論調査結果:ブシュ政権によるイラク戦後統治費用870億ドルの支出は多すぎるという回答58%、概ね妥当とする回答31%。ブッシュ政権にはイラクの戦後処理に綿密な計画がないとする回答49%。
◆ブッシュの対イラク政策是認 (%) 47 ギャラップ社の分析:この結果は 承認できない(%) 51 ベトナム戦争の泥沼化で支持率を56% (65年12月)から32%(68年2月) 迄落として、再選断念に追い込まれたジョンソン大統領と共通点が見られる。 2003年4月中旬のブッシュ支持率は76%でした。◆ブッシュの外交政策に賛成しますか はい (%) 49 いいえ(%) 47 ◆来年の大統領選でイラク事情を考慮しますか はい (%) 93 いいえ(%) 6 ◆来年の大統領選で外交問題は重要ですか はい (%) 94 いいえ(%) 4 ◆イラクでの長期にわたるまたコストのかかる平和維持活動に アメリカは行き詰まるかも知れませんがこの問題に関心がありますか はい (%) 96 いいえ(%) 4 ◆ブッシュは今年初めイラク復興のために790億ドルを支出しましたが、 さらに870億ドル支出するのに賛成ですか はい (%) 34 いいえ(%) 64 ◆イラクでのアメリカ軍人の死傷者数は納得できる数ですか はい (%) 35 いいえ(%) 62 ◆イラクに市民の安定が復活しなくてもアメリカは軍人の犠牲から見て撤収 すべきだと考えますか はい (%) 38 いいえ(%) 58 ◆アメリカ軍のイラク駐在はテロとの戦いの一環だと考えますか はい (%) 61 いいえ(%) 37 ◆アメリカ軍のイラク駐在はテロとの戦いの一環だと考えますと、アメリカ軍 のイラク駐在は1.テロとの戦いでもっとも重要だと思う 2.テロとの戦いで 重要だが一番大事とは思わない 3.そんなに大事だとは思わない 1.の人 (%) 23 2.の人 (%) 67 3.の人 (%) 8 ◆あなたの考えに近いのは今のところ共和党ですか、民主党ですか 共和党(%) 36 民主党(%) 31 どちらでもない(%) 32 |
いま考えていること 144(2003年08月;9月)
|
アメリカの野心が具体的な形を取り始めました。今日の新聞によるとブッシュ大統領は国連安保理に、多国籍軍の指揮権はアメリカが確保することを前提にイラク派遣多国籍軍の創設をする新決議案を提案する方針を固めたというのです。何とも虫の良い提案です。先日この様な方式をロシアのプーチン大統領も口にしたというのですが、真意は明らかでありません。もしこの様な多国籍軍が派遣されてもゲリラ的攻撃を受けないという保障はありません。否、むしろイラクの反米・反国連の空気を助長するでしょう。イラク評議会に暫定自治政府を発足させ各省大臣の任命をさせるという決定も報じられていますが、次官はかっての植民地国家満州国と同様アメリカが任命するとも伝えられています。これで事態が解決するとは思われません。ドビルパン仏外相は8月21日国連安保理で「占領を終結に導き、イラク人の主権回復を可能にする速やかな政治的移行」が「(米英の)占領軍でなく、国連に体現された国際社会全体の援助を受け、イラク人自身によって推進されなければならない」と訴えましたが、今後の安保理での各国の対応が注目されます。
|