いま考えていること 147(2003年09月)
――年金改革の方針――
来年度の年金制度見直し時期を控えて、新聞などでも年金制度の論議がよく見られるようになって来ました。私見を述べてみます。
現在のわたしの生活を見ても中心は年金収入です。わたしは1954年に私学共済制度が始まったときから加入している”第一期生”ですから、当時はまだ受給者はなく、年金掛け金は膨大な資金として蓄積されていきました。この年金積み立ての膨大な原資としての魅力から、多くの私大で当初私学共済に加盟することなく独立した年金計画と徴収が行われたものです。この試みはやがて各私大で運用の行き詰まりを迎え、なにがしかの基金を納付して私学共済に横滑り加入していきました。共済組合が競うように各地に立派な保養所・宿泊所を開設したのはこの資金運用目的からでした。その内に施設の利潤で皆さん方の年金はカバーするので安心ですという声も聞かれたのです。注目してほしいのはいまのように現役世代の納付金で退職者の年金という前提はなかったことです。いまはこの立派な施設が重荷になり二束三文で売り払われる例さえ見られるのですから、誠に今昔の感に堪えません。
かなりの年金をこうしていまわたしなどは受け取っているのですが、以上のような経緯からは当然のことだと思っています。問題はこれからの世代の年金です。事情はすっかり変わりました。ソ連邦の崩壊で資本主義諸国も最大の弱点であった社会保障で、ソ連にひけを取らないようにという様な考慮はもうしなくても良くなりました。我が日本では戦後蓄積してきた国家の冨はすっかり食いつぶしてもはや破産状態です。デフレのままでも仮にインフレに移っても膨大な低金利の国債を抱えていますから、事態の深刻さは深まるばかりです。ですから国家に税金を原資に年金を給付させることはもはや不可能です。消費税を財源にしても消費税増税を常に準備しなければなりません。坂口さんなどはいまのやり方を基本的に守る姿勢のようですが、それは無理でしょう。国民年金の掛け金を納めない人が増え、私的年金保険に加入している人の保険料控除を国民年金納付済を条件にしようとする動きもあるようですが、おそらく保険業界を代表する自民党族議員の反対で実現しないでしょうし、何とも手段が姑息に見えます。
21世紀日本の制度はすべて「少子高齢」を前提に置かなければならないことはいま考えていること 62(2001年01月)−21世紀を迎えて−これからの日本−−で指摘したことですが、率直に「これまでの国民年金制度はもはや少子化で維持できない」と宣言するのが先決だと思います。それではその代わりをどうするのか国民全体で考えましょう。住民基本コードも正式に発足しています。プライバシーが脅かされるなどといっていますが、インターネットの懸賞など大抵家族が何人かとか、既婚か未婚かとか凡そプライバシーに属する情報を提供して初めて応募できるのが普通です。それには喜んで情報提供する人も多いのです。膨大な資料・データを処理する手段をコンピューターによって獲得したいま、これを賢く活用しない手はありません。幽霊口座問題など金融機関で口座を開設するのに住民基本コード番号の提示を条件にすればよいのです。各人の口座はすべて住民基本コード番号で管理すればよいのです。納税も現在使っている納税者番号を住民基本コード番号に吸収してしまえばよいのです。きっと脱税者は減るでしょう。国に隠さなければ危険な個人情報は思想・信条・宗教等でしょう。健康情報は先刻医療保険を通じて国に告知しています。何でも住民基本コードは悪であるという考えは頂けないのです。国民年金についてもこの住民基本コード番号で各個人別の納付金総額を管理し、それに見合う給付を将来個別に支給すれば良いのです。納付最低額を決めてそれに上積みは自由にさせるのです。たくさん国民年金をほしい人はせっせと若いときから納付するでしょう。この提言はスエーデンの年金方式からヒントを得たものです。いまのように学生から老人まで貧富に拘わらず定額を納付させるのがそもそも間違いです。国に余裕ができてきたら税金でさらに補助して多くの年金給付をすれば信頼は増し、年金積み立てを納付する人は黙っていても増えます。破産した国から自分は納付もしないで恩恵を引き出すことは手品でなければできないことです。自民党総裁選を前に依然として赤字国債を出して、そのお金をばらまく思想の人が立候補していますが、あれが古い自民党の思想です。日本を破産に導きました。
(9月5日追記)今日発表された坂口厚生労働相の「有限均衡方式」は147兆円の年金積み立てを既に生まれている世代が年金受給を終えるまで約95年間食いつぶして支給して行くと言うのですが、それ以後は年金支給を廃止することを前提にする考えです。また一端この財産ともいうべき年金積み立てに手を着けるとおそらく、なし崩しに食いつぶす速度は速まり、目論見通りには維持できないでしょう。147兆円の資産の運営を真剣に検討実行しその果実をさらに未来のために資産に上積みする発想がなぜないのでしょうか。この様なことは家計の運営でも同じことです。財産があるからといって食いつぶす家は早晩家そのものがつぶれるのです。坂口さんの考えには年金制度を発展させる思想のかけらも見られません。もう少し年金制度を発展させ、納付金をみんなが明るい希望を持って喜んで納付する方策を出してほしいものです。わたしは坂口さんの退任を求めます。
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